NAVではリーマン・ショック後に近い。しかし、金利まで見れば景色はまったく違う
こんにちは、J-REIT研究ラボ上級研究員ジーピです。
2026年9月末、東証REIT指数は1,707.14ポイントまで下落しました。
8月末の1,783.49ポイントから1か月で約4.3%下落。さらに10月に入ってからも下値を探る展開となっており、J-REIT市場にはかなり重い空気が漂っています。
指数だけを見れば、かなり売られたことは間違いありません。
しかし、
「価格が下がった」ことと「割安になった」ことは同じではありません。
1,700ポイントなら安いのか。
1,600ポイントなら十分に安いのか。
あるいは、金利環境そのものが変わった現在では、これまで「安い」と考えられていた価格帯をさらに下回る必要があるのか。
価格そのものを見ているだけでは、この問いにはなかなか答えられません。
そこで今回は、一般社団法人不動産証券化協会(ARES)が公表している「ARES J-REIT Databook」の長期データを使い、現在のJ-REIT市場がどのような位置にいるのかを確認してみます。
主に見るのは、
平均NAV倍率
平均予想分配金利回り
そして今回はさらに、
10年国債利回りとのイールドスプレッド
です。
調べ始める前は、「NAV倍率0.78倍なら歴史的にかなり割安なのではないか」と考えていました。
実際、NAV倍率だけを見ればその認識はおおむね正しいようです。
しかし、リーマン・ショック後の金利水準まで比較すると、少し違った景色が見えてきました。
今回の結論を先に書くなら、
資産価値との比較では、現在のJ-REITは歴史的な割安圏にある。
しかし、国債との相対利回りまで考えると、リーマン・ショック後と同じ程度に割安とは言いにくい。
というのが、現時点での当ラボの見方です。
2026年9月末のJ-REIT市場
ARES J-REIT Databook 2026年9月30日版によると、9月末の主要指標は以下のようになっています。
| 指標 | 2026年9月末 |
|---|---|
| 東証REIT指数 | 1,707.14 |
| 時価総額 | 約14.91兆円 |
| 上場銘柄数 | 58銘柄 |
| 平均予想分配金利回り | 5.47% |
| 平均NAV倍率 | 0.78倍 |
ARESは10月2日に2026年9月版のJ-REIT Databookを公開しています。
8月末は、東証REIT指数1,783.49、平均予想分配金利回り5.15%、平均NAV倍率0.82倍でした。ARESマンスリーレポートでも、8月末時点のこれらの指標と、長期金利・イールドスプレッドの長期推移が掲載されています。
わずか1か月で、
NAV倍率 0.82倍 → 0.78倍
予想分配金利回り 5.15% → 5.47%
まで評価が切り下がったことになります。
数字だけを見れば、かなりのディスカウントです。
NAV倍率0.78倍とは何を意味するのか
ARESのNAV倍率は、各投資法人について、
投資口価格 ÷ 1口当たりNAV
で算出した値を時価総額加重平均したものです。
したがって0.78倍を単純化すると、
J-REIT市場全体が、現在公表されている純資産価値に対して約22%のディスカウントで取引されている
ことになります。
ただし、この「22%安い」をそのまま「22%のお買い得」と読むのは危険です。
NAVの計算に使用される鑑定評価額等は、リアルタイムで毎日更新されるわけではありません。
一方、投資口価格は毎日動きます。
したがって金利や不動産投資市場が急激に変化している局面では、
投資口価格が先に下落し、後から鑑定評価額が下がる
可能性があります。
その場合、NAV倍率0.78倍のディスカウントの一部は、将来のNAV低下を市場が先回りして織り込んでいるだけかもしれません。
したがって今回は、
「資産価値より22%安い」
というより、
「現在公表されているNAVに対して、市場が約22%のディスカウントを要求している」
と捉えた方がよいでしょう。
NAV倍率0.78倍は過去25年でどの位置なのか
ARES J-REIT Databookでは、NAV倍率について2002年2月以降のデータを確認できます。
2026年9月までの利用可能なデータは296か月。
この296か月を当ラボで集計すると、次のようになりました。
| NAV倍率 | 水準 |
|---|---|
| 平均 | 約1.11倍 |
| 中央値 | 1.06倍 |
| 25%点 | 約0.92倍 |
| 10%点 | 約0.82倍 |
| 最低 | 0.58倍 |
| 2026年9月 | 0.78倍 |
そして、
0.78倍以下だった月は296か月中19か月。
割合にすると約6.4%です。
つまり、
過去の約94%の月では、現在よりNAV倍率が高かった
ことになります。
NAV倍率という物差しだけで見るなら、
現在のJ-REITは歴史的に明確なディスカウント圏にある
と言って差し支えない水準でしょう。
ところが、その19か月が「いつだったのか」を確認すると、今回の分析は一気に面白くなります。
NAV倍率0.78倍以下の大半はリーマン・ショック後
代表的な時点を抜き出すと次のようになります。
| 時点 | NAV倍率 | 予想分配金利回り | 東証REIT指数 |
|---|---|---|---|
| 2008年9月 | 0.70倍 | 6.37% | 1,131.67 |
| 2008年10月 | 0.64倍 | 8.13% | 863.21 |
| 2009年2月 | 0.58倍 | 7.97% | 770.18 |
| 2009年6月 | 0.70倍 | 6.08% | 973.14 |
| 2009年12月 | 0.74倍 | 6.76% | 893.19 |
| 2010年1月 | 0.77倍 | 5.74% | 905.38 |
| 2010年6月 | 0.78倍 | 5.88% | 875.31 |
| 2026年9月 | 0.78倍 | 5.47% | 1,707.14 |
現在の0.78倍は確かに低い。
しかし、リーマン・ショック後には0.6倍台が珍しくなく、2009年2月には0.58倍まで低下しています。
ARESの25周年レポートでも、2008年には世界的な信用収縮の中でリファイナンスリスクが顕在化し、ニューシティ・レジデンス投資法人が民事再生手続開始を申し立てたこと、同年10月28日に東証REIT指数が704.46ポイントまで低下したことが振り返られています。
つまり、現在のNAV倍率は、
リーマン・ショック後の危機的なバリュエーションに接近している
と見ることはできます。
ただし、ここで非常に重要な違いがあります。
当時と現在では、金利がまったく違います。
リーマン・ショック後とNAV倍率は似ている。しかし金利は似ていない
2008~2010年当時、日本の10年国債利回りは概ね1%台でした。
例えば2008年9月30日の10年国債利回りは約1.465%、10月31日は約1.473%でした。
2009年2月に募集された10年国債の応募者利回りも1.257%でした。
一方、2026年9月30日の10年国債利回りは約3.057%。
2026年9月募集の10年国債も応募者利回り2.943%となっており、金利環境が当時とは大きく異なることが分かります。
比較するとこうなります。
| 時点 | J-REIT予想利回り | 10年国債利回り | 単純スプレッド | NAV倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 2008年9月末 | 6.37% | 約1.47% | 約4.91% | 0.70倍 |
| 2008年10月末 | 8.13% | 約1.47% | 約6.66% | 0.64倍 |
| 2026年9月末 | 5.47% | 約3.06% | 約2.41% | 0.78倍 |
ここは非常に重要です。
NAV倍率だけを見れば現在はリーマン・ショック後に近づいています。
ところが、
J-REIT利回り-国債利回り
で見ると、まったく同じではありません。
2008年9月末は約4.9%。
10月末には約6.7%。
現在は約2.4%です。
つまり、
資産価値に対しては非常に安く見えるが、安全資産である国債との利回り比較では、それほど極端に安くない
という状態です。
2008年は「REITそのもの」が危険視された
この違いを考えるには、当時何が起きていたのかを整理する必要があります。
リーマン・ショック後のJ-REIT市場では、単に金利が上昇して投資口価格が下がったわけではありません。
むしろ金利水準自体は低下方向にありました。
問題だったのは、
信用収縮
です。
金融機関が不動産向け融資に慎重になり、J-REITが借入金を借り換えられるのか、投資法人債を償還できるのかという不安が市場を覆いました。
つまり、
「高い利回りをもらえるからREITを買おう」
という以前に、
「そもそもこのREITは資金繰りを維持できるのか」
という信用リスクが意識されていた。
だから国債利回りが1%台でも、J-REITには6%、7%、8%という非常に高い利回りが要求された。
言い換えれば、
リーマン・ショック後の巨大なイールドスプレッドは、信用リスクへの対価でもあった
と考えることができます。
2026年は「国債そのものが高利回り」
現在は事情が異なります。
少なくとも現段階では、J-REIT市場全体で2008年型のリファイナンス危機が起きているわけではありません。
むしろ問題は、
比較対象である国債の利回りが上がりすぎた
ことです。
2026年9月末の10年国債利回りは約3.06%。
J-REIT平均予想分配金利回りは5.47%。
差は約2.41%です。
投資家の立場から考えると、
信用リスクをほぼ負わない日本国債で3%前後取れる環境
で、
不動産価格変動リスク、信用リスク、流動性リスク、借換えリスクなどを負うJ-REITを保有するなら、
「あと何%欲しいか」
という話になります。
その結果、
REIT自体の業績が崩れていなくても投資口価格を下げなければ、国債との相対的な魅力を維持できない
という状態が起きます。
ここが2008年とは決定的に違います。
「NAV0.78倍=リーマン後並みの割安」とは言い切れない
この比較をすると、NAV倍率だけでの判断が危険である理由が分かります。
仮に現在とリーマン後で、
NAV倍率0.78倍
という同じ数字が出ていたとしても、市場が要求しているリスクプレミアムは同じではありません。
2008~2009年は、
低い国債利回り+非常に高いREIT利回り
でした。
現在は、
高い国債利回り+高いREIT利回り
です。
この二つは全く意味が違います。
したがって、
「NAV倍率がリーマン後と同じだから、当時と同じくらい割安」
という結論には注意が必要です。
より正確には、
NAVという資産価値基準ではリーマン後に近いディスカウント圏だが、国債との相対価値ではリーマン後ほど極端な割安状態ではない
という評価になるでしょう。
予想分配金利回り5.47%は歴史的には高い
では、現在の5.47%そのものはどうでしょうか。
ARES Databookでは2001年9月から2026年9月まで301か月の予想分配金利回りが確認できます。
当ラボで集計すると、
| 予想分配金利回り | 水準 |
|---|---|
| 平均 | 約4.38% |
| 中央値 | 約4.10% |
| 75%点 | 約4.97% |
| 90%点 | 約5.70% |
| 最大 | 8.13% |
| 2026年9月 | 5.47% |
現在以上だった月は45か月。
つまり、
高い方から約15%のゾーン
にあります。
したがって絶対利回りだけを見れば、現在はかなり高い。
ただし、先ほどの議論から分かる通り、
絶対利回りが高いことと、相対的に割安であることは別問題
です。
3%の国債が存在する世界の5.47%と、
1%の国債しかない世界の5.47%では意味が違います。
「NAV0.8倍以下+利回り5%以上」はどれくらい珍しいのか
次に、二つの条件を組み合わせてみます。
今回は、
平均NAV倍率0.80倍以下
かつ、
平均予想分配金利回り5.0%以上
という条件を設定しました。
2026年9月までのデータで、この条件に該当したのは26か月です。
NAV倍率が取得できる296か月に対して約8.8%。
かなり珍しいゾーンに見えます。
ところが、その26か月を詳しく見ると注意が必要です。
大半が、
2008年8月~2010年2月
に集中しています。
つまり「26回の独立した割安機会」が存在したわけではありません。
同じ金融危機の中で19か月連続して条件を満たしていたにすぎない。
いわゆるイベント・クラスタリングです。
連続した期間を同じ局面としてまとめると、おおむね、
| 時期 | 主な局面 |
|---|---|
| 2008年8月~2010年2月 | 世界金融危機 |
| 2010年5~6月 | 金融危機後の調整 |
| 2011年11月~2012年1月 | 欧州債務危機等 |
| 2024年12月 | 金利正常化局面 |
| 2026年9月 | 現在の金利上昇局面 |
程度しかありません。
統計的には、決して豊富なサンプルではありません。
割安条件に入った後、J-REITはどうなったのか
参考として、先ほどの
NAV倍率0.80倍以下+予想分配金利回り5%以上
となった月から、その後の東証REIT指数を計算しました。
2026年9月を除く25か月については、
| 期間 | 平均騰落率 | 中央値 | 上昇した割合 |
|---|---|---|---|
| 3か月後 | 約+1.5% | 約+2.3% | 60% |
| 6か月後 | 約+3.1% | 約+7.0% | 60% |
| 12か月後 | 約+10.1% | 約+12.2% | 68% |
数字だけなら悪くありません。
特に12か月後は平均+10%程度となっています。
しかし、この数字をそのまま
「NAV0.8倍なら買い」
という売買ルールにしてはいけません。
なぜなら、先ほど説明した通り、サンプルの多くが同一の金融危機に集中しているからです。
そしてもう一つ重要なのが、
「割安圏へ入ってからさらに大きく下落した例」
があることです。
2008年8月にこの条件へ入った時点から見ると、
3か月後は約▲31.9%、
6か月後は約▲38.9%、
12か月後でも約▲20.1%。
つまり、
歴史的な割安圏に入った後、さらに4割近く下落した
ことになります。
これは非常に重要な教訓でしょう。
割安は、底値を意味しない。
安くなったものが、さらに安くなることは普通にあります。
2024年12月にも同じ条件が出ていた
一方、最近の例では2024年12月があります。
この時、
NAV倍率0.80倍
予想分配金利回り5.16%
東証REIT指数1,652.94
でした。
かなり現在に近い水準です。
そこから、
3か月後 約+2.3%
6か月後 約+7.6%
12か月後 約+21.8%
まで回復しました。
一見すると、
「やはりNAV0.8倍は買い場だった」
となりそうです。
ところが2026年9月には再びNAV0.78倍まで戻ってきました。
2024年末の割安状態は一度解消されたものの、その後さらに金利環境が変化し、再びディスカウントが拡大したわけです。
この事実は、
バリュエーションの適正水準自体が固定されたものではない
ことを示唆しています。
過去25年平均のNAV倍率1.11倍を基準にしていいのか
今回、かなり気になるのがここです。
過去296か月の平均NAV倍率は約1.11倍。
中央値でも1.06倍です。
この数字を見ると、
「いずれNAV1倍くらいには戻るのではないか」
と考えたくなります。
しかし、過去25年の多くの期間、日本は低金利あるいは超低金利でした。
そして一時期はマイナス金利です。
現在は10年国債利回りが3%前後。
金融環境そのものが大きく変わっています。
この状況で、
低金利時代に形成された平均NAV倍率を、そのまま「正常値」として扱ってよいのか
という疑問が出てきます。
例えば市場が、
「10年国債が3%あるなら、J-REITには少なくとも2.5~3%程度の追加利回りが必要」
と考えるようになれば、要求されるJ-REIT利回りは5.5~6%近辺になります。
DPUが変わらないなら、その利回りを実現するためには投資口価格が下がらなければなりません。
結果としてNAV倍率も下がります。
つまり、
0.8倍が異常に安いのではなく、金利3%時代の新しい適正水準になっている可能性
も否定できません。
これはかなり重要な論点です。
「平均回帰」ではなく「平均そのものの変化」を疑う
金融市場では、平均から大きく乖離したものはいずれ平均へ戻るという「平均回帰」の考え方がよく使われます。
NAV倍率0.78倍も、過去平均1.11倍から大きく下方乖離しています。
しかし、
経済構造が変化した場合、平均自体が変わります。
超低金利時代のJ-REITと、
10年国債が3%を超える時代のJ-REIT。
同じ評価軸を使ってよいのか。
今回の下落局面では、
「NAV倍率がいつ1倍へ戻るか」
より、
「現在の金利環境で市場が許容するNAV倍率はいったい何倍なのか」
を考える方が重要ではないかと思います。
NAV倍率0.78倍は外部成長にも影響する
NAV倍率が低い問題は、単に市場価格が安いというだけではありません。
J-REITの経営戦略にも影響します。
投資口価格がNAVを大きく下回っている状態で公募増資を行えば、既存投資主価値の希薄化が問題になります。
そのため、
POによる資金調達
↓
物件取得
↓
資産規模拡大
↓
DPU成長
というJ-REITの典型的な外部成長モデルが使いにくくなります。
ARESも2021年9月から2026年8月までの局面について、投資口価格がNAVを下回る状態が長期化する中、増資による外部成長が制約され、資産入替、売却資金の活用、自己投資口取得などの動きが広がったと整理しています。 ares_monthly_report_202609
NAV倍率0.78倍を、
「22%安い」
だけで見るのではなく、
「外部成長戦略が使いにくくなるほど市場評価が低い」
と読む必要があります。
一方、J-REITの中身そのものが崩壊しているわけではない
ここも現在と2008年を分けるポイントです。
ARESによれば、2026年8月末時点のJ-REIT市場は、
上場58銘柄、
時価総額15.6兆円、
資産規模24.6兆円、
保有物件4,970件
となっています。 ares_monthly_report_202609
さらに2021年9月~2026年8月の5年間を見ると、
長期金利は0.03%から2.94%へ上昇。
東証REIT指数は16.8%下落しました。
一方で配当込み指数は3.8%上昇し、分配金総額も3.3兆円に達しています。 ares_monthly_report_202609
つまり、
投資口価格は下落しているが、J-REITの不動産収益そのものが同じ勢いで崩れているわけではない
ということです。
価格と実物不動産の収益力との間に乖離が生じています。
ではこの乖離は、
投資口価格が上昇して解消するのか。
それとも、
鑑定価格が下落し、NAVの方が投資口価格へ近づくのか。
ここが今後非常に重要になります。
今見るべきなのは「NAV倍率」だけではなく三つの軸
以上を踏まえると、当ラボでは今後、少なくとも三つを同時に見ていきたいと考えています。
① NAV倍率
資産価値との比較。
現在の0.78倍は歴史的にはかなり低い。
ただし、NAV自体が今後下落する可能性も考える必要があります。
② 予想分配金利回り
収益との比較。
5.47%は過去25年でも比較的高い水準です。
ただし、売却益や利益超過分配を含む銘柄もあるため、「巡航DPU利回り」と完全に同じではありません。
③ 国債とのイールドスプレッド
そして現在、最も重要になってきたのがこれです。
2026年9月末では、
J-REIT 5.47%-10年国債約3.06%=約2.41%
です。
NAV倍率だけならリーマン後に近い。
しかしスプレッドは当時よりかなり狭い。
この二つを同時に見ることで、
「安いのは確かだが、金利を考えればその安さには理由がある」
という現在の状況が見えてきます。
では現在のJ-REITは本当に割安なのか
ここまで分析すると、「割安」という言葉を一つで使うこと自体が少し危険に思えてきます。
何に対して割安なのかによって答えが変わるからです。
NAVに対しては?
かなり割安。
0.78倍は過去約296か月のうち低い方から約6%です。
過去のJ-REIT自身と比較しては?
かなり割安。
予想分配金利回りも歴史的には高い部類です。
国債と比較しては?
極端な割安とは言いにくい。
リーマン後には4~6%台のスプレッドが存在したのに対し、現在は約2.4%です。
底値か?
全く分からない。
2008年には「歴史的に安い」水準からさらに大幅下落しています。
現在起きているのは「J-REITの適正価格の再設定」ではないか
今回の分析を通して、当ラボが最も気になったのはここです。
現在のJ-REIT市場は、
単に売られすぎている
だけではなく、
金利上昇を前提とした新しい適正バリュエーションを探している途中
なのではないでしょうか。
超低金利時代ならNAV1倍でも十分魅力的だった。
10年国債利回りが3%ある現在では、NAV0.8倍でもまだ十分でないかもしれない。
一方で、賃料上昇によってDPUが伸び、NAVも維持され、長期金利の上昇が止まれば、現在の0.78倍は「明らかな売られすぎだった」と後から評価される可能性もあります。
現時点では、どちらとも断定できません。
だからこそ、
価格だけではなく、金利・DPU・NAVの三つがどこで均衡するのか
を見る必要があります。
まとめ――NAVではリーマン後級、しかしスプレッドはリーマン後ではない
ARES J-REIT Databookを使って長期データを確認した結果、2026年9月末の平均NAV倍率0.78倍は、歴史的に見ても非常に低い水準でした。
296か月のうち、これ以下だったのは19か月。
約6%です。
予想分配金利回り5.47%も、301か月の中で高い方から約15%に入ります。
ここまでなら、
「J-REITは歴史的な割安圏」
という結論で終わります。
しかし、今回はそこに10年国債利回りを加えました。
すると違う姿が見えてきました。
リーマン・ショック後は、J-REIT利回りが6~8%まで上昇する一方、10年国債利回りは1%台。
巨大なイールドスプレッドが存在していました。
現在はJ-REIT利回り5.47%に対して、10年国債利回りは約3.06%。
スプレッドは約2.41%です。
つまり、
NAV倍率だけならリーマン・ショック後に近い。
しかし、国債との相対的な割安度はリーマン後とはかなり違う。
これが今回の分析で最も重要なポイントだと考えています。
現在のJ-REITは、
資産価値対比では安い。
しかし、
金利対比では、それほど単純に安いとは言えない。
そして、
安いことと底値であることは別問題です。
今後の焦点は、NAV倍率が過去平均へ戻るかどうかではありません。
むしろ、
10年国債3%前後という世界で、J-REITの適正利回り・適正NAV倍率はどこなのか。
こちらでしょう。
もし長期金利が落ち着き、DPU成長が続くなら現在のディスカウントは魅力的に見えてくる。
逆に長期金利がさらに上昇するなら、NAV倍率0.78倍でも市場が十分とは判断しない可能性があります。
当ラボでは今後、ARES J-REIT Databookを使い、
東証REIT指数
平均予想分配金利回り
平均NAV倍率
10年国債利回り
イールドスプレッド
を毎月定点観測していく予定です。
半年、1年と数字を積み上げていけば、
「現在の下落は一時的な割安なのか、それともJ-REITの評価基準そのものが変わったのか」
が少しずつ見えてくるのではないでしょうか。
今回のところ、当ラボの答えはこうです。
J-REITはNAVから見れば歴史的に安い。
しかし国債まで含めれば、「リーマン後並みに安い」とまでは言えない。
現在は、金利上昇時代の新しい適正価格を市場が探している局面なのかもしれない。
主な参考資料・データ
- 一般社団法人不動産証券化協会「ARES J-REIT Databook 2026年9月30日版」
- 一般社団法人不動産証券化協会「ARESマンスリーレポート 2026年9月」
- 財務省「国債金利情報」
- 財務省「10年利付国債」各種発行条件
- 東証REIT指数についてはARES J-REIT Databook収録値を使用
なお、ARES自身も、2021年9月~2026年8月を「金利上昇」局面として整理し、長期金利が0.03%から2.94%へ上昇する中、東証REIT指数が16.8%下落したとしています。 ares_monthly_report_202609
免責事項
本記事は、公開情報および各種資料をもとに、J-REIT市場について独自の分析・考察を行ったものであり、特定の金融商品や投資法人への投資、売買等を推奨するものではありません。また、将来の市場動向、投資口価格、分配金、運用成果等を保証するものでもありません。
本記事の作成にあたっては、情報整理、集計、分析、文章作成等の一部にAI(人工知能)の支援を利用しています。可能な限り一次資料や公表データとの照合、内容確認に努めていますが、AIによる処理・生成に起因する誤認、計算間違い、解釈の誤り、記載漏れ等が含まれる可能性があります。掲載内容については、必ず各投資法人、証券取引所、関係機関等が公表する最新の一次情報もあわせてご確認ください。
また、本記事中に登場する「上級研究員ジーピ」(当ラボで「上席研究員ジーピ」と表記する場合を含みます)は、記事上の説明・分析を行うためにAIが演じている架空の人物・キャラクターであり、実在する人物、団体、専門家その他の第三者とは一切関係ありません。
本記事に記載された見解、推論、評価等は、作成時点の公開情報に基づくものであり、その後の情報更新や市場環境の変化等により内容が変わる可能性があります。
投資判断にあたっては、各投資法人が開示する最新の資料等をご確認のうえ、ご自身の判断と責任でお願いいたします。


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