J-REIT市場では、6月中旬以降に東証REIT指数が反発し、7月後半にかけても上昇基調が続きました。
では、この上昇局面では、いったい誰がJ-REITを買っていたのでしょうか。
当ラボでは、日本取引所グループ(JPX)が毎月公表している「投資部門別 不動産投資信託証券売買状況」を使い、海外投資家、投資信託、金融機関、個人投資家などの売買動向を月次で確認しています。
前回の記事では、4月・5月に海外投資家が大幅に売り越したあと、6月も売り越しは続いたものの、その規模が縮小したことを取り上げました。
一方、投資信託や銀行、事業法人など国内勢は買い越しとなっており、海外勢の売りを国内勢が受け止められる状態に近づいたことが、6月以降の東証REIT指数反発の一因になった可能性がある、と整理しました。
前回記事はこちらです。
【J-REIT JPX売買状況分析】東証REIT指数はなぜ反発したのか~海外勢の売りを国内勢が受け止めた2026年6月~
そして今回、2026年7月の投資部門別売買状況が公表されました。
結論から先に言えば、7月も海外投資家は売り越しでした。
ただし、その売り越し幅は4月から6月までと比べて大幅に縮小しています。
さらに、6月まで海外勢の売りの受け皿として目立っていた投資信託は7月にはほぼ中立となり、代わって銀行や事業法人など国内法人勢の買いが目立ちました。
7月は、J-REIT市場の需給構造がもう一段変化した可能性を考えるうえで、興味深い月だったように思います。
2026年7月の投資部門別売買状況
まずは7月の主要投資部門の売買差引を確認します。
| 投資部門 | 2026年7月 |
|---|---|
| 海外投資家 | ▲64,888口 |
| 投資信託 | ▲1,836口 |
| 金融機関 | +134,425口 |
| 事業法人 | +72,950口 |
| 個人 | ▲71,185口 |
| 自己取引 | ▲74,424口 |
出典:日本取引所グループ「投資部門別 不動産投資信託証券売買状況」
7月の海外投資家は、売り620万2,838口に対して、買い613万7,950口となり、差引きでは6万4,888口の売り越しでした。
一方、国内法人全体では売り159万3,060口に対し、買い179万2,640口となり、19万9,580口の買い越しです。
数字だけを見ると、7月も海外勢が売り手、国内法人勢が買い手という大きな構図は続いています。
ただし、重要なのは海外投資家の「売り越し額そのもの」よりも、その規模がどのように変化しているかです。
海外投資家は4か月連続売り越し。しかし7月は様子が大きく変わった
海外投資家の2026年4月以降の売買差引は次の通りです。
| 月 | 海外投資家 |
|---|---|
| 4月 | ▲574,102口 |
| 5月 | ▲594,611口 |
| 6月 | ▲430,559口 |
| 7月 | ▲64,888口 |
4月には57万口、5月には59万口、6月にも43万口を超える売り越しが続きました。
ところが7月は6万4,888口まで縮小しています。
もちろん、これだけをもって「海外投資家の売りが終了した」と判断することはできません。
実際、7月まで4か月連続の売り越しです。
ただ、4月・5月のように50万口を超える売り越しが続いていた状態と比べれば、7月は海外勢からの売り圧力がかなり弱まった月だったとは言えそうです。

このグラフでは、2月・3月の買い越しから4月に大幅売り越しへ転じ、その後7月に売り越し幅が急縮小した流れを視覚化すると分かりやすくなります。
6月までの主役だった国内投信は、7月ほぼ中立へ
ここでもう一つ興味深い変化があります。
4月から6月まで、海外勢の売りに対する主要な受け皿になっていたのが国内の投資信託でした。
投資信託の売買差引は、
- 4月:+394,150口
- 5月:+262,620口
- 6月:+315,135口
と、3か月連続の買い越しでした。
ところが7月は、売り90万9,940口に対して買い90万8,104口となり、差引きは▲1,836口。
ほぼ完全な中立です。
つまり7月の東証REIT指数の上昇を、単純に「国内投信がさらに大量に買ったから」と説明することはできません。
6月までとは、買い手の顔ぶれが少し変わっています。
7月に目立ったのは銀行と事業法人
7月に国内勢のなかで目立った買い手となったのが金融機関です。
金融機関全体では、売り61万1,092口に対して買い74万5,517口となり、13万4,425口の買い越しでした。
さらに内訳を見ると、銀行は売り54万5,856口に対して買い71万6,354口。
差引きでは17万498口の買い越しです。
事業法人も7万2,950口の買い越しでした。
事業法人については、2026年に入ってから比較的安定して買い越しが続いています。
金額そのものは海外投資家や投資信託ほど大きくありませんが、市場が不安定な時期にも継続的に買い手となっている点は注目しておきたいところです。

2025年とは売買主体の構図がかなり変わっている
ここで2025年通期と比較すると、2026年の特徴がより分かりやすくなります。
2025年通期では、海外投資家は13万6,977口の買い越しでした。
一方で投資信託は30万2,930口の売り越し、金融機関は106万5,824口もの売り越しとなっています。銀行だけでも43万4,884口の売り越しでした。
ところが2026年に入ると、この関係が大きく変わっています。
1月から7月までを単純合計すると、海外投資家は約137万口の売り越しです。
これに対し、投資信託は約110万口の買い越し、事業法人は約39万口の買い越し、金融機関も約16万口の買い越しとなっています。
2025年には海外勢が買い手で、金融機関や投信が売り手でした。
2026年は、少なくとも7月までを見る限り、その関係がかなり入れ替わっています。
これは「J-REIT市場から資金が一方的に逃げている」というよりも、保有主体が海外勢から一部の国内機関・法人へ移っている可能性を考える材料になります。
ただし、投資部門別売買状況だけでは、各主体がなぜ売買したのかまでは分かりません。
したがって、ここから先はあくまで需給面から考える仮説です。

個人投資家は7月も買い向かっていない
個人投資家の7月は、売り83万4,246口、買い76万3,061口で、差引き7万1,185口の売り越しでした。
2026年1月は5万964口の買い越しでしたが、その後は2月に8万5,272口の売り越し、4月・5月・6月も売り越しが続いています。
J-REITは分配金利回りの高さから個人投資家との相性が良い商品という印象があります。
それでも、2026年前半から7月にかけてのJPX統計を見る限り、個人投資家が大きく買い向かっている姿は確認できません。
価格が下がれば個人投資家が一斉に押し目買いに動く、という単純な構図ではなかったようです。
東証REIT指数の反発と7月の需給は整合的に見える
東証REIT指数の日足チャートを見ると、6月上旬に1,750ポイント近辺まで下落したあと、6月中旬から反発へ転じました。

7月に入ってからも上昇基調が続き、7月末には1,900ポイント近辺まで上昇する場面もありました。
その後8月に入って調整し、8月13日の終値は1,803.78ポイントとなっています。
この値動きを投資部門別売買状況と重ねると、4月・5月には海外投資家の大幅な売り越しが続き、6月になると売り越し幅が縮小。
さらに7月には海外投資家の売り越し幅が6万口台まで急減しました。
一方、国内では銀行や事業法人が買い越しています。
そのため当ラボでは、7月の東証REIT指数上昇について、
「海外勢が積極的な買い手へ転じた」というよりも、「海外勢からの売り圧力が大きく弱まり、国内勢の買いが価格形成に反映されやすくなった」
という見方の方が、今回の統計とは整合的ではないかと考えています。
もちろん、月次の投資部門別統計だけで指数の日々の上下を説明することはできません。
金利、為替、株式市場、不動産市況、J-REIT各社の分配金見通しなど、価格を動かす要因は数多くあります。
したがって、今回の分析も「海外投資家の売りが減ったから指数が上がった」と断定するものではありません。
あくまで、需給面で下押し圧力が弱くなった可能性を示す一つの材料として見ています。

日経平均との比較から見えるもの
今回、日経平均株価のチャートも併せて確認しました。
日経平均は3月末を底に大きく上昇し、6月下旬には7万円台まで上昇。
7月後半にはいったん6万円台前半まで調整した後、8月に再び反発しています。
東証REIT指数も6月以降は反発しているため、単純に「株が売られ、その資金がREITへ移った」と説明できる状況ではありません。
むしろ株式とREITが同時期に買われる局面もあり、市場全体のリスク選好や金利見通しなど複数要因が重なっていた可能性があります。
前回記事では、株式市場に比べて出遅れていたJ-REITへの相対的な見直し買いの可能性にも触れました。
7月の投資部門別売買状況を見ると、この仮説を完全に否定する材料はありませんが、直接的な資金移動を確認できる統計でもありません。
そのため、今後も日経平均との相対比較は行いつつ、「株からREITへ資金が移った」といった断定は避けて観察していきたいと思います。
7月は「海外売り終了」ではなく「海外売りの重しが大きく軽くなった月」
2026年7月の投資部門別売買状況をまとめると、ポイントは次のようになります。
- 海外投資家は4か月連続の売り越し
- ただし7月の売り越しは6万4,888口まで大幅縮小
- 4~6月に買い手だった投資信託は7月ほぼ中立
- 金融機関は13万4,425口の買い越し
- 銀行は17万498口の買い越し
- 事業法人も7万2,950口の買い越し
- 個人投資家は7万1,185口の売り越し
前回の6月分析では、
「海外勢の売りが弱まり、国内勢がそれを受け止められるようになった」
という可能性を考えました。
7月は、その流れがもう一段進んだようにも見えます。
海外投資家はまだ買い越しへ転じていませんが、4月・5月の大幅売り越しと比較すれば売り圧力は大きく後退しました。
さらに国内側では、投資信託だけではなく銀行や事業法人など複数の主体が買い手になっています。
したがって7月は、
「海外売りが終わった月」ではなく、「海外売りという大きな重しがかなり軽くなり、国内法人勢の買いが市場に反映されやすくなった月」
と見るのが、現時点では比較的無理のない整理ではないでしょうか。
次に確認したいのは8月です。
海外投資家がついに買い越しへ転じるのか。
銀行や事業法人が引き続き買い手となるのか。
そして、7月にほぼ中立となった投資信託が再び買い越しへ戻るのか。
東証REIT指数は7月末の高値から8月に入って調整しています。
そのため8月の投資部門別売買状況は、今回の反発が一時的な需給改善だったのか、それとも市場参加者のスタンスが本格的に変わり始めているのかを考えるうえで、また重要な材料になりそうです。
免責事項
本記事は、日本取引所グループ(JPX)が公表する「投資部門別 不動産投資信託証券売買状況」などの公開資料をもとに、J-REIT市場の動向について当ラボ独自の視点で整理・考察したものです。
本記事は特定の金融商品、J-REIT、株式等の売買を推奨するものではなく、投資助言を目的としたものでもありません。投資判断は、ご自身の責任において行ってください。
投資部門別売買状況と市場価格の関係については、因果関係を断定できるものではありません。本記事では、公開された統計と市場価格の動きを比較し、需給面から考えられる可能性を示しています。
また、本記事の作成には生成AIを利用しています。公開前に内容の確認を行っていますが、数値の転記ミス、解釈の誤り、情報の更新等が生じる可能性があります。最終的な数値や情報については、日本取引所グループをはじめとする各公式資料をご確認ください。


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