ホテルREIT各社から、2026年8月のホテル運営実績が出そろい始めました。
今回の第一弾では、先に月次開示が出た
JHR(ジャパン・ホテル・リート)
インヴィンシブル投資法人
いちごホテルリート
スターアジア不動産投資法人
投資法人みらい
の5銘柄を確認します。
8月の数字を横に並べると、まず目につくのは5社すべてでRevPARが前年同月を下回ったことです。
ただし、これをそのまま「ホテル市況が悪化した」と読むのは少し早そうです。
前年の2025年は大阪・関西万博の開催期間中でした。しかも万博は後半に向かうほど盛り上がっていったため、これから9月、10月と前年同月比の比較ハードルはさらに高くなる可能性があります。
そこで今回は、前年だけではなく万博前の2024年8月まで遡って数字を確認してみます。
2026年8月、まず5社を横並び
| 銘柄 | 集計対象 | 稼働率 | ADR | RevPAR | RevPAR前年同月比 |
|---|---|---|---|---|---|
| JHR | 変動賃料等導入29ホテル | 84.1% | 23,337円 | 19,616円 | ▲8.9% |
| インヴィンシブル | 国内ホテル101物件 | 87.3% | 17,887円 | 15,608円 | ▲3.8% |
| いちごホテル | 23ホテル合計 | 84.9% | 10,510円 | 8,925円 | ▲4.3% |
| スターアジア | 前年比較可能15ホテル | 89.1% | 12,686円 | 11,309円 | ▲6.3% |
| 投資法人みらい | スマイルホテル5物件 | 87% | 8,296円 | 7,205円 | 約▲10% |
※各投資法人で集計対象・算定方法が異なるため、絶対値の単純比較には注意が必要です。
JHRでは、大阪エリアの軟調に加え、相次ぐ台風によって沖縄エリアを中心に影響を受け、RevPARは前年同月比▲8.9%となりました。一方、9月以降については前年同月を上回る見通しを示しています。 JHR 2026 年8月度の月次開示に関するお知らせ 2609…
インヴィンシブルもRevPAR▲3.8%でしたが、中身を見るとかなり特徴的です。
関西を除いたホテルではRevPARが**+0.6%**だったのに対し、関西は
- 稼働率 ▲10.2ポイント
- ADR ▲34.0%
- RevPAR ▲41.5%
となっています。 INV ポートフォリオの運用実績(2026 年8月)に関するお…
つまり、少なくともインヴィンシブルでは、全国的なホテル需要の急減というよりも、関西の落ち込みが全体を押し下げた構図が鮮明です。
「8月は悪かった」で終わらせてはいけない
もう一つ重要なのが前月比です。
| 銘柄 | 7月RevPAR | 8月RevPAR | 前月比 |
|---|---|---|---|
| JHR | 18,119円 | 19,616円 | +8.3% |
| インヴィンシブル | 13,039円 | 15,608円 | +19.7% |
| いちごホテル | 8,175円 | 8,925円 | +9.2% |
| スターアジア | 12,086円 | 11,309円 | ▲6.4% |
| 投資法人みらい | 7,316円 | 7,205円 | ▲1.5% |
前年同月比では5社すべてマイナスでしたが、JHR、インヴィンシブル、いちごホテルは7月よりRevPARが上昇しています。
つまり、
「前年比が悪化した」
=
「7月からホテル需要がさらに悪化した」
とは限りません。
2025年8月の比較対象が高かったことも、今回の前年比を考えるうえで無視できません。
大阪の「万博反動」はどこまで大きいのか
今回、当ラボが最も注目したのが大阪です。
前年2025年は大阪・関西万博の開催期間中でした。
そこで、万博前の2024年8月まで遡ってみます。
大阪・関西関連のRevPAR比較
| 物件・地域 | 2024年8月 | 2025年8月 | 2026年8月 | 26年 vs 24年 |
|---|---|---|---|---|
| INV 関西エリア | 8,088円 | 約15,880円 | 9,290円 | +14.9% |
| ザ・ワンファイブ大阪堺筋 | 6,063円 | 8,622円 | 4,552円 | ▲24.9% |
| コンフォートホテル大阪心斎橋 | 9,378円 | 12,146円 | 7,311円 | ▲22.0% |
| KOKO HOTEL大阪なんば | 6,420円 | 約10,866円 | 5,683円 | ▲11.5% |
| スマイルホテル大阪天王寺 | 4,647円 | 約7,900円 | 4,429円 | ▲4.7% |
※2025年の一部は2026年資料記載の前年比から逆算した概算値。
これを見ると、実は大阪も一括りにはできません。
インヴィンシブル関西は「万博前よりまだ高い」
インヴィンシブルの関西エリアは2024年8月、
- 稼働率82.2%
- ADR9,834円
- RevPAR8,088円
でした。 INV ポートフォリオの運用実績(2024 年8月)に関するお…
2026年8月は、
- 稼働率78.8%
- ADR11,790円
- RevPAR9,290円
です。 INV ポートフォリオの運用実績(2026 年8月)に関するお…
2025年比では▲41.5%という大幅なマイナスですが、2024年比ではRevPARは約15%高い水準です。
ここだけを見ると、
2024年 → 2025年:万博で大幅上昇
2025年 → 2026年:反動
2024年 → 2026年:それでもプラス
という姿になります。
このケースでは「市場崩壊」というより、万博特需から通常水準へ戻る過程と捉える余地がありそうです。
一方、2024年を下回る大阪ホテルも
ところが、個別物件を見ると少し様子が違います。
いちごホテルのザ・ワンファイブ大阪堺筋は、
6,063円 → 8,622円 → 4,552円
と推移しました。
2024年8月は稼働率97.6%、ADR6,214円。 いちごホテル ホテル運営状況のお知らせ(2024年8月度)
2026年8月も稼働率96.6%と客室自体はほぼ埋まっていますが、ADRは4,712円まで低下しています。 いちごホテル ホテル運営状況のお知らせ(2026年8月度) 2…
ここでは需要量よりも、価格面の調整が目立ちます。
コンフォートホテル大阪心斎橋も、
9,378円 → 12,146円 → 7,311円
となり、2026年は2024年を約22%下回りました。
2024年は稼働率83.3%、ADR11,264円でしたが、2026年は稼働率72.9%、ADR10,026円。数量と価格の双方が2024年を下回っています。 いちごホテル ホテル運営状況のお知らせ(2024年8月度) いちごホテル ホテル運営状況のお知らせ(2026年8月度) 2…
スターアジアのKOKO HOTEL大阪なんばも、2024年RevPAR6,420円に対して2026年は5,683円です。 スターアジア ホテル運営状況に関するお知らせ(2024 年 8… スターアジア ホテル運営状況に関するお知らせ(2026 年 8…
ここまで来ると、「2025年が高すぎただけ」では説明しきれないホテルもあると考えた方がよさそうです。
大阪天王寺は「水準は同じ、でも中身が違う」
投資法人みらいのスマイルホテル大阪天王寺も興味深いケースです。
2024年8月は、
- 稼働率67%
- ADR6,937円
- RevPAR4,647円。 t投資法人みらい 変動賃料物件(ホテル)の運用状況についてのお…
2026年8月は、
- 稼働率79%
- ADR5,610円
- RevPAR4,429円。 投資法人みらい 変動賃料物件(ホテル)の運用状況についてのお知…
RevPARそのものは2024年とほぼ同水準です。
しかし、
2024年:低稼働・比較的高いADR
2026年:高稼働・低いADR
という違いがあります。
ホテルは以前より埋まっているのに、単価を引き上げにくい。
大阪の現状を考えるうえで、こうしたADRの変化は今後も注意して見る必要がありそうです。
大阪以外では強い地域も
一方、全国に視点を広げると「全面的なホテル市況悪化」とは言いにくい数字もあります。
代表例は福岡です。
投資法人みらいのスマイルホテル博多駅前は、
- 稼働率100%
- ADR11,627円
- RevPAR11,570円
- RevPAR前年比116%
でした。投資法人みらいは韓国、台湾、中国からの宿泊客増加が高水準のRevPARに寄与したと説明しています。 投資法人みらい 変動賃料物件(ホテル)の運用状況についてのお知… 投資法人みらい 変動賃料物件(ホテル)の運用状況についてのお知…
いちごホテルでもネストホテル博多駅前がRevPAR+20.2%。 いちごホテル ホテル運営状況のお知らせ(2026年8月度) 2…
スターアジアでもベストウェスタンプラス福岡天神南は+6.3%でした。 スターアジア ホテル運営状況に関するお知らせ(2026 年 8…
札幌や一部地方都市でも、イベント需要や国内レジャー需要を取り込んだホテルが見られます。
8月のホテルREITは、全国一律に弱くなったというより、
「地域差・物件差がさらに大きくなった月」
と見る方が実態に近そうです。
9月・10月はさらに前年比が悪く見える可能性
ここから先が今回の重要なポイントです。
2025年の大阪・関西万博は、開催後半に向かって盛り上がりを強めました。
したがって2026年9月、10月は、前年同月比の比較対象そのものがさらに高くなる可能性があります。
そのため大阪ホテルでは、今後
2026年の実額では横ばい、あるいは改善しているのに、前年同月比では大幅マイナス
という現象が起きても不思議ではありません。
今後は「前年比▲何%」だけではなく、
2024年 → 2025年 → 2026年
の3年間で見ることが一段と重要になります。
当ラボでは今後、
2025年比=万博特需の反動を見る指標
2024年比=現在のホテル市場の実力を見る一つの参考指標
として併用していきたいと考えています。
9月予想には回復の兆しも
先行きを考えるうえでは、すでに9月について前向きな見通しを示している投資法人もあります。
JHRは、9月以降について現時点では前年同月を上回ると見込んでいます。 JHR 2026 年8月度の月次開示に関するお知らせ 2609…
インヴィンシブルはさらに具体的で、9月の国内101ホテルRevPARを前年同月比**+7.5%程度**と予想しています。
ただし、関西を除くホテルでは**+18.0%程度**との予想です。 INV ポートフォリオの運用実績(2026 年8月)に関するお…
この差を見る限り、やはり今後も
「全国ホテル市場」
と
「大阪・関西」
を分けて見る必要がありそうです。
当ラボの現時点での整理
2026年8月は、今回確認した5社すべてでRevPARが前年同月を下回りました。
しかし、そこから単純にホテル市場全体の悪化を結論づけることはできません。
前月比では改善している投資法人もあり、大阪以外では福岡をはじめ堅調な地域も確認できます。
大阪についても、インヴィンシブルの関西エリアのように2024年水準を上回っているケースがある一方、個別ホテルでは2024年を下回る物件も出ています。
したがって現時点では、
「万博特需剥落による反動が中心ではあるものの、一部ホテルでは通常水準への回帰だけでは説明しきれない価格・需要の弱さも見え始めている」
という整理が妥当ではないでしょうか。
特に今後はADRに注目です。
稼働率を維持できていても、価格を下げなければ客室を埋められない状態が続くのであれば、ホテル収益への影響は無視できません。
一方、9月・10月は前年の万博が終盤に向けて盛り上がった時期です。
そのため、前年同月比だけを見れば今後さらに厳しい数字が出る可能性もあります。
むしろ本当に注目したいのは、
2024年の水準を維持できるのか。
そして万博効果が比較対象から消える11月以降、大阪のホテル市場がどの水準に落ち着くのか。
このあたりになりそうです。
第二弾では星野リゾート・リートと霞ヶ関ホテルリートを確認
今回は先に月次開示が出た5社を確認しました。
第二弾では、星野リゾート・リート投資法人と霞ヶ関ホテルリート投資法人の2026年8月運営実績が出そろった段階で、今回の5社と合わせて7銘柄全体を比較する予定です。
特に確認したいのは、
星野リゾート・リートのOMO7大阪など大阪関連ホテルが、今回確認した5社と同じ傾向を示すのか。
そして、
霞ヶ関ホテルリートの高ADR型ホテルが、8月も前年を上回ることができるのか。
という点です。
大阪の万博反動がREITをまたいで共通する現象なのか、それともホテルの価格帯や顧客層によって差が出るのか。
第二弾では、この点まで踏み込んで確認していきます。
免責事項
本記事は、各投資法人が公表した月次開示資料等をもとに、J-REIT研究ラボが独自に分析・考察したものです。内容にはAIによる文章作成支援を含みますが、最終的な構成・判断は当ラボの確認に基づいています。
本記事は特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。将来のホテル需要、客室単価、分配金、投資口価格等を保証するものでもありません。投資判断は、必ずご自身の責任と判断で行ってください。
掲載情報の正確性には注意していますが、月次数値は監査を受けていない速報値を含み、集計対象ホテルや算出方法が投資法人ごと、年度ごとに異なる場合があります。数値の転記ミスや解釈の誤りが含まれる可能性もあるため、投資にあたっては各投資法人の公式IR資料、決算短信、有価証券報告書等をご確認ください。


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