2026年6月ホテルREIT月次調査・第二弾

目次

いちごは苦戦、霞ヶ関は好調 7銘柄から見えた「万博後」のホテル市況

2026年6月のホテルREIT月次調査、第二弾です。

第一弾では、ジャパン・ホテル・リート、インヴィンシブル、スターアジア、投資法人みらいの4銘柄を確認しました。

前回の記事はこちらです。

2026年6月ホテルリート月次調査・第一弾 万博特需の反動が表面化

その後、いちごホテルリート投資法人、星野リゾート・リート投資法人、霞ヶ関ホテルリート投資法人の6月月次が公表され、今回予定していた7銘柄のデータがそろいました。

第一弾では、2026年6月の弱さについて、単純なホテル需要の悪化ではなく、2025年の大阪・関西万博特需の反動と、中国からの訪日需要減少、さらにホテルごとの競争力の差が重なっているのではないかと考えました。

今回加わった3銘柄を見ると、この仮説はかなり補強されたように思います。


1.追加3銘柄の6月実績

銘柄集計対象稼働率ADRRevPARRevPAR前年比
いちごホテル閉館ホテル除く24ホテル80.6%8,872円7,147円▲9.6%
星野リゾート・リートポートフォリオ全体74.2%18,478円13,716円▲6.4%
霞ヶ関ホテルリート変動賃料導入11物件65.7%22,367円14,696円+15.5%

かなり対照的な数字です。

いちごホテルと星野リゾート・リートは前年割れとなった一方、霞ヶ関ホテルリートはRevPARが前年同月比+15.5%となりました。

同じ2026年6月、同じ訪日客数減少という環境でも、ここまで差が出ています。


2.いちごホテル:6月は5月以上に厳しい

いちごホテルの6月月次は、今回追加された3銘柄の中では最も厳しい内容でした。

リニューアル工事による全館閉館ホテルを除いた24ホテル合計では、売上高827.2百万円、RevPAR7,147円、客室稼働率80.6%、ADR8,872円でした。

前年同月比では、売上高▲9.3%、RevPAR▲9.6%、稼働率▲3.3ポイント、ADR▲5.9%です。

さらに、変動賃料導入19ホテルに絞ると、RevPARは前年同月比▲11.2%、売上高は▲10.8%となっています。

2月から6月までの期中通算でも、24ホテル合計のRevPARは前年同期比▲4.8%です。単月だけの特殊要因というより、今期を通じてやや苦戦している状況が続いています。

大阪の弱さがかなり大きい

特に目立つのが大阪です。

ホテルRevPAR前年比ADR前年比
ザ・ワンファイブ大阪堺筋3,956円▲55.3%▲50.4%
コンフォートホテル大阪心斎橋7,507円▲39.4%▲34.1%

ザ・ワンファイブ大阪堺筋は、稼働率こそ88.3%ありますが、ADRは4,482円まで低下しました。

前年6月のADR9,038円からほぼ半減です。

コンフォートホテル大阪心斎橋も、ADRは前年14,745円から9,715円へ低下しています。

いちごホテル自身も、大阪では前年の大阪・関西万博開催に伴う需要の反動減に加え、中国における渡航自粛要請の影響を受けたと説明しています。

第一弾で確認したスターアジアの大阪心斎橋と同様、万博開催中の2025年には相当な高単価販売ができていたことがうかがえます。

大阪だけが原因ではない

ただし、いちごホテルの弱さをすべて万博反動で説明することもできません。

岡山のRevPARは▲35.9%、倉敷は▲54.9%となっています。

こちらは不安定な重油供給に伴う宿泊予約制限という特殊要因が続いていました。なお、7月18日以降は制限が解除され、全室販売を再開しています。

一方、ネストホテル博多駅前はRevPAR+12.5%、ネストホテル熊本は+15.6%、ザ・ワンファイブ福岡天神も+5.8%です。

つまり、いちごホテルも全地域が弱いわけではありません。

大阪の万博反動、岡山・倉敷の特殊要因、一部ホテルの単価低下が重なり、ポートフォリオ全体を押し下げたと見るのが妥当でしょう。


3.星野リゾート・リート:全体はマイナスだが中身は複雑

星野リゾート・リートの6月は、ポートフォリオ全体で稼働率74.2%、ADR18,478円、RevPAR13,716円でした。

前年同月比では、稼働率▲2.0ポイント、ADR▲4.0%、RevPAR▲6.4%、売上高▲5.1%となりました。

こちらも運用会社は、関西エリアで大阪・関西万博関連需要の先取りによる反動、中国からの渡航自粛、台風などの悪天候を弱さの要因として挙げています。

第一弾で確認した各銘柄と、ほぼ同じ外部環境が確認された形です。

星野運営物件はADR上昇でも稼働率低下

興味深いのは、星野リゾート運営物件と、それ以外のホテルで弱さの形が違うことです。

稼働率ADRRevPAR前年比
星野リゾート運営物件69.8%42,441円29,623円▲6.9%
星野リゾート以外運営物件75.6%11,854円8,957円▲7.3%

星野リゾート運営物件は、ADRが前年同月比+7.2%と上昇しています。

ところが、稼働率は80.3%から69.8%へ▲10.5ポイント低下したため、RevPARは▲6.9%となりました。

高単価を維持できている点は強みですが、需要量の落ち込みを単価だけでは補えなかった形です。

関西以外には強い物件も多い

一方、個別施設を見ると必ずしも弱いわけではありません。

星のや沖縄ではマーケティング施策や連泊優待プランが奏功し、RevPARが前年を大幅に上回りました。

界 遠州では新たな体験コンテンツ、界 ポロトではインバウンド比率の上昇が業績を支えています。

星野リゾート以外の運営物件では、グランドハイアット福岡が米国を中心とした旺盛なインバウンド需要と婚礼部門の好調により、6月として取得以来最高のRevPARを更新しました。

ANAクラウンプラザホテル金沢、富山もインバウンド団体需要などで大幅に伸長しています。

したがって、星野リゾート・リートについても「ホテル需要が全面的に弱い」というより、関西や一部物件の弱さを、沖縄・北海道・北陸・福岡などの強さで補い切れなかったという見方が近そうです。


4.霞ヶ関ホテルリート:6月でもRevPAR+15.5%

今回、最も強い数字を出したのが霞ヶ関ホテルリートです。

変動賃料導入済み11物件では、客室稼働率65.7%、ADR22,367円、RevPAR14,696円、売上高202百万円でした。

前年同月は稼働率55.1%、ADR23,099円、RevPAR12,721円でした。

ADRは約3%低下していますが、稼働率が+10.6ポイント上昇したことで、RevPARは+15.5%、売上高も約15%増加しています。

なぜ霞ヶ関ホテルリートだけ強いのか

今回の7銘柄比較では、かなり異質な動きです。

霞ヶ関ホテルリートが保有するfav・FAV LUXシリーズは、グループ旅行やファミリー需要を想定した比較的大人数向けの客室を特徴としています。

運用会社によると、fav熊本では台湾からの直行便増加により台湾人利用客の割合が過去最高となり、RevPARは前年同期比+32.5%となりました。

fav東京西日暮里では訪日客利用率が90%を超えています。

6月の訪日外客数全体は前年同月比▲6.8%でしたが、韓国、台湾、ベトナム、インド、豪州、米国など15市場では6月として過去最高を記録しました。

霞ヶ関ホテルリートは、中国需要への依存度が相対的に低く、それ以外のインバウンド成長をうまく取り込めた可能性があります。

また、前年の稼働率が55.1%と低かったため、比較対象のハードルが低い点には注意が必要です。

それでも、ADRをほぼ維持したまま稼働率を10ポイント以上引き上げた内容は評価できます。

7銘柄の中でも、ホテル商品と客層の違いが結果に表れた事例と言えそうです。


5.7銘柄を並べると6月の全体像が見える

ここで第一弾の4銘柄と今回の3銘柄を合わせてみます。

銘柄6月RevPAR前年同月比当ラボの見方
霞ヶ関ホテルリート14,696円+15.5%インバウンド需要を取り込み好調
JHR15,023円+1.7%分散効果で安定
スターアジア11,151円▲2.0%大阪以外は健闘
インヴィンシブル10,264円▲4.0%万博反動の正常化色が強い
星野リゾート・リート13,716円▲6.4%関西・稼働率低下が重し
いちごホテル7,147円▲9.6%大阪・岡山倉敷など複数要因
投資法人みらい6,207円▲12%大阪天王寺の影響大

なお、各投資法人で対象ホテル数、価格帯、ホテルタイプ、集計方法が異なります。

RevPARの絶対額をそのままランキングとして評価するのではなく、前年からどのように変化したかを見るための参考比較です。


6.7銘柄から見えてきた「万博後」の大阪

今回の6月月次で最も特徴的だったのは、やはり大阪です。

インヴィンシブル、スターアジア、みらい、いちごホテル、星野リゾート・リートと、複数の投資法人が万博需要の反動に言及しました。

しかし、すべての大阪ホテルが同じ状態にあるわけではありません。

スターアジアの大阪心斎橋は稼働率が約99%あります。客室需要は残っていますが、万博時の高いADRが維持できなくなりました。

一方、スターアジアの大阪なんば恵美須町、みらいの大阪天王寺、いちごホテルの大阪堺筋などでは、稼働率にも弱さがあります。

つまり万博後の大阪には、少なくとも2種類のホテルが存在します。

  • 需要はあるが、万博時の高単価だけが剥落したホテル
  • 単価だけでなく稼働率も落ち、通常時の競争力が問われているホテル

後者については、「万博の反動だから仕方がない」で済ませず、その後の回復を確認する必要があります。


7.中国人訪日客減少の影響も一律ではない

6月の訪日外客数は前年同月比▲6.8%となりました。

各投資法人の説明を見ると、中国からの訪日需要減少は確かにホテル業績へ影響しています。

ただし、中国以外では多くの市場が伸びています。

霞ヶ関ホテルリートでは台湾需要、星野リゾート・リートでは米国、韓国などの需要が業績を押し上げています。

いちごホテルでも福岡・熊本などは前年を上回っています。

つまり、「中国人観光客が減った=ホテルリートが弱い」という単純な関係にはなっていません。

どの国の宿泊客を取り込んでいるのか、国内需要を持っているのか、客層がどこまで分散しているのか。

こうした違いが、銘柄間の数字に表れています。


8.6月は「ホテルREIT全体の失速」とは見ていない

7銘柄のうち5銘柄でRevPARが前年同月を下回りました。

数字だけを見れば、ホテル市況が悪化したようにも見えます。

しかし、当ラボでは現段階で、ホテル需要全体が失速局面に入ったとは見ていません。

理由は3つあります。

  • 2025年6月は大阪・関西万博開催中で比較対象が高い
  • JHRや霞ヶ関ホテルリートなど、現在も前年を上回る銘柄がある
  • 前年割れ銘柄でも、地域・ホテル別では前年を大きく上回る物件が複数ある

第一弾で確認したインヴィンシブルの関西RevPARも、万博前の2024年6月とほぼ同水準でした。

現在起きているのは、ホテル需要の一律な縮小というより、2025年の特殊な高水準からの正常化と、その過程で生じるホテル間の選別と考える方が自然です。


9.まとめ:追い風がなくなり、ホテルの実力差が見えてきた

2026年6月のホテルREIT月次が7銘柄そろいました。

最も強かったのは霞ヶ関ホテルリートで、RevPARは前年同月比+15.5%。JHRも+1.7%を維持しました。

一方、スターアジア、インヴィンシブル、星野リゾート・リート、いちごホテル、みらいは前年割れです。

ただし、その理由は同じではありません。

万博時の高単価が剥落したホテル、中国人宿泊客減少の影響を強く受けたホテル、台風や工事・予約制限などの特殊要因があったホテル、そもそも稼働率まで低下しているホテルがあります。

反対に、福岡、熊本、北海道、北陸、東京などには強いホテルも多数あります。

2025年は、万博とインバウンド回復という大きな追い風によって、ホテルセクター全体が比較的分かりやすく成長しました。

しかし、その追い風が弱くなった2026年は状況が変わっています。

ホテルだから強いのではなく、どこにあるホテルを、誰に、いくらで売れるのか。

地域構成、客層、ホテルの商品力、オペレーターの販売力による差が、月次数字に表れ始めています。

ホテルREITを見るうえでも、セクター全体を一括りに評価する段階から、銘柄・物件単位で選別する段階へ入ってきたのかもしれません。

7月以降は、万博反動がどこまで続くのか、大阪の稼働率が戻るのか、夏休み需要でADRを再び引き上げられるのかを確認していきたいと思います。


免責事項

本記事は、各投資法人が公表した月次運営実績等をもとに、J-REIT研究ラボが独自に分析・考察したものです。内容にはAIによる文章作成支援を含みますが、最終的な構成・判断は当ラボの確認に基づいています。

本記事は特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。将来のホテル需要、客室単価、分配金、投資口価格等を保証するものでもありません。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。

各投資法人では対象ホテル数、ホテル構成、算出方法等が異なり、単純比較できない場合があります。また、月次数値は監査等を経ていない速報値を含みます。掲載情報の正確性には注意していますが、数値の転記ミスや解釈の誤りが含まれる可能性がありますので、投資にあたっては各投資法人の公式IR資料等をご確認ください。

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