日経平均は最高値なのに、なぜ私の持ち株は上がらないのか?~政策保有株売却が引き起こす「見えない需給悪化」~

高配当研究所 2026年6月17日


こんにちは、高配当研究所です。

立ち上げからはや3か月、やっと指標の見方が分かってきたような気がしてきました。

さて、本日6月17日、アルゴグラフィックスと言う銘柄を分析しているときにふと思い至ったことがありました。それは、過去分析した銘柄でも政策保有株ってよく耳にするなあと。そこで車野蔵人氏に聞いてみたわけです。

「私の体感で申し訳ないのですが、銘柄分析を始めてから、レポートにしばしば「政策保有株の売却」と言うキーワードがでてきますけど、昨今の一部のAIやデータセンター関連銘柄が日経平均をあげている中で、それ以外の銘柄がイマイチな原因の一つにこの【政策保有株の売却】があるのではないですか?」と。

突拍子もない半分以上思いつきで「んなわけないよ」って答えが返ってくるのではないかと思いながらの質問でしたが、車野氏の反応は意外にも、ありえると・・・。

そこで、そのメカニズムについて考えてみたわけです。

目次

1.「自分の銘柄だけ」上がらない、という不思議

「日経平均は史上最高値を更新しているのに、なぜ自分のポートフォリオはほとんど動かないのか」――こんな感覚を持っていらっしゃる投資家の方は、決して少なくないのではないでしょうか。

もちろん、銘柄選びに課題がある場合もあるでしょう。しかし、その「冴えなさ」の背景には、もう少し構造的な理由が潜んでいる可能性があります。そのひとつが、「政策保有株の売却ラッシュ」です。

2023年以降、東証の要請を契機として大手金融機関を中心に政策保有株の売却が急加速しています。2025年3月期には全上場企業の売却額が9.2兆円と過去最高を記録したとの報道もあります(日本経済新聞様)。この「見えない売り圧力」の構造を理解することが、高配当株投資家にとって今もっとも重要な視点のひとつになっていると考えられます。

本コラムでは、この仕組みを丁寧に紐解きながら、「なぜ自分の持ち株が上がらないのか」に対するひとつの答えと、高配当株投資家として押さえておきたい3つの視点をお伝えします。


2.政策保有株とは何か――「持ち合い」の歴史と問題点

「政策保有株」とは、取引先との関係維持や友好的な株主構造の構築を目的として保有される株式のことです。いわゆる「持ち合い株」も、これに含まれます。

日本では戦後の高度経済成長期に、メインバンク制度や系列グループを中心として、企業同士が互いの株式を持ち合う慣習が広がりました。製造業企業が主要取引先の商社や金融機関の株を持ち、その商社や金融機関も製造業の株を持つ、という構図です。

この仕組みには「安定株主の確保」という経営上のメリットがありましたが、やがて次の2点が問題視されるようになりました。

第一に、資本効率の悪化です。 本来であれば事業投資や研究開発に充てられるべき資金が、「政策的な理由での株式保有」という形で固定化されてしまいます。ROE(自己資本利益率)が低迷する一因として、長年にわたって指摘されてきた問題です。

第二に、コーポレートガバナンスの形骸化です。 政策保有株を持つ株主は、株主総会において経営陣に対する批判的な議決権行使を控える傾向があります。こうした「物言わぬ株主」の存在が、経営の緊張感を損ない、ガバナンスを機能不全に陥らせるリスクがあることは、かねてより指摘されてきました。

こうした問題意識の積み重ねの末、東京証券取引所(東証)は2023年3月31日、プライム市場・スタンダード市場の全上場企業に対して「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請しました(東証様公表資料より)。いわゆる「PBR1倍割れ改善要請」として広く知られるようになった施策です。


3.なぜ今、売却ラッシュなのか

この東証要請を境に、政策保有株の売却は一気に加速しました。なかでも特に大きな転機となったのが、大手損害保険会社による企業向け保険料の事前調整問題(いわゆるカルテル問題)です。政策保有株を通じた取引先との関係が公正な競争を歪めた一因と指摘され、金融庁が大手損保各社に政策保有株の全件売却を求めました。

これを受け、東京海上ホールディングス様は2030年3月末まで、MS&ADインシュアランスグループHD様・SOMPOホールディングス様はそれぞれ2030・2031年3月末までに政策保有株をゼロにする方針を表明しました(各社様公表資料より)。

その売却規模は極めて大きなものです。大手損保3社だけで見ると、2025年3月期に合計2兆円超を売却し、2026年3月期も計1兆3,000億円超の売却が計画されており、2年間の累計では約3兆4,000億円に達する見込みです(ブルームバーグ様報道より)。

メガバンク各社も同様の姿勢を示しています。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)様は2024〜2026年度の3年間で3,500億円(取得原価ベース)の売却目標を掲げており、三井住友フィナンシャルグループ様は5年間で6,000億円(簿価)の削減を計画しています(各社様公表資料より)。

日本経済新聞様による2000社超の有価証券報告書集計では、2025年3月期の全上場企業の政策保有株売却額が9.2兆円と過去最高を記録し、前期比53%増となりました。2024年以降、大手金融機関・事業会社という「構造的な売り手」が継続的に存在している状態が続いています。


4.「持たれている側」と「持っている側」の二極化

ここで投資家として注目すべき重要な視点があります。政策保有株の解消によって恩恵を受ける企業と、逆に売り圧力にさらされる企業の「二極化」です。

■ 持たれている側:静かに続く売り圧力

損保やメガバンクが政策保有株を売る相手は、特定の企業の株式です。つまり「持たれている側」の企業の株が、継続的に市場で売られ続けることを意味します。

この影響を受けやすいのは、特に中型・小型株の中で、事業会社や金融機関による政策保有比率が高い銘柄です。発行済株式数に対する売却量の比率が相対的に大きくなりやすく、需給悪化の影響が出やすい傾向があると考えられます。親子上場の関係にある銘柄や、グループ間で株式を持ち合ってきた銘柄なども同様の状況に置かれやすい可能性があります。

「財務状況は安定しており、業績も堅調なのに株価が上がらない」という感覚の銘柄の中には、こうした需給上の逆風を受けている可能性があると考えられます。

さらに「日経平均は上がっているのに個別株は冴えない」という現象を説明するもうひとつの要因として、資金の偏在も挙げられます。近年の相場では、AI・半導体関連などの特定セクターへの資金集中が顕著であり、インデックス型投資信託・ETFへの資金流入も時価総額の大きい大型株に多くの資金を配分する構造となっています。こうした複合的な要因が、中型・小型の優良高配当株から資金を遠ざけている可能性があると考えられます。

■ 持っている側:売却益が株主還元の好循環を生む

一方、「持っている側」の企業は、この流れを逆手に取った好循環の恩恵を受けています。政策保有株の売却益が特別利益として計上され、その資金が自己株買いや特別配当という形で株主に還元されるケースが見られます。

わかりやすい実例が、アルゴグラフィックス(7595)様です。同社は2026年3月期において、投資有価証券の売却益を約160億円計上しました(決算短信より)。これを原資として約186億円規模の自己株買いを実施したほか、特別配当を実施し、年間の配当水準を大幅に引き上げました。5年間で株式分割調整後の配当が5倍超に増加した同社の軌跡は、「政策保有株縮減 → 売却益計上 → 株主還元強化」という好循環の典型例と言えます(各種公開資料より)。

また、大手損保各社や大手銀行も、政策株の売却益を株主還元の原資に充てています。東京海上HD様をはじめ各社が相次いで自己株買いや増配を発表しており、「持っている側」の企業の株価が市場で評価されてきた背景のひとつと考えられます。


5.高配当株投資家として、どう向き合うか

こうした構造を理解した上で、高配当株投資家はどのような視点を持つことができるでしょうか。以下に3つの視点を整理します。あくまで一つの考え方であり、投資判断はご自身でご確認ください。

視点① 大株主構成をチェックする

四季報や企業のIR資料(有価証券報告書の「大株主の状況」)で、大株主に事業会社や金融機関が複数並んでいる場合は、今後も政策保有株の売却対象となる可能性があると考えられます。発行済株式数に対してその持株比率が高い場合は、継続的な売り圧力が及ぶ可能性があるという点は念頭に置く価値があるかもしれません。

ただし、これがただちに「避けるべき銘柄」を意味するわけではありません。売り圧力によって株価が実態より割安に放置されているとすれば、中長期で少しずつ拾っていく好機となる可能性もあります。高い配当利回りを享受しながら待つという戦略と組み合わせる発想も、一つの選択肢として考えられます。

視点② 「持っている側」の銘柄に注目する

含み益のある政策保有株を多く抱える企業を探してみることも、ひとつの視点です。有価証券報告書や統合報告書に掲載されている「政策保有株式の状況」を確認することで、保有実態の一端がつかめます。

金融機関系の持株会社や、長年にわたり事業法人株式を積み上げてきた企業の中に、今後の売却益が株主還元に回る余地が残っているケースがあるかもしれません。もちろん保有株の評価損リスクや企業の財務状況など多角的な検証が必要ですが、「なぜ還元が増えているのか」の背景を理解した上で保有することは、銘柄の継続観察においても重要と考えられます。

視点③ 売り圧力は永遠ではない

最後に、中長期の視点を一つご紹介します。大手損保3社のゼロ化目標の期限は、おおむね2030〜2031年度です。メガバンク各社も計画的な削減を進めており、2027〜2028年頃には売却のピークが一巡するという見方もあります(市場関係者の一部の見立てであり、断定ではありません)。

これが事実であれば、現在まさに政策保有株の売却によって需給悪化の影響を受けている優良な高配当銘柄の一部は、売り圧力が落ち着いた後に需給が反転する局面を迎える可能性があると考えられます。

「今は配当をもらいながら待つ」という高配当株投資のスタンスが、こうした需給の構造変化ともっとも相性のよい戦略の一つかもしれません。


6.まとめ――「冴えない持ち株」を構造で読み解く

本コラムの要点を整理します。

① 東証の2023年3月要請を契機に、大手損保・メガバンクを中心とした政策保有株の売却が急加速。2025年3月期には全上場企業で9.2兆円(過去最高)が売却された(日本経済新聞様)。

② 「持たれている側」の中型・小型株には需給悪化の逆風が及びやすく、「なぜ上がらないのか」の構造的な説明がつく。

③ 「持っている側」の企業には売却益→株主還元という好循環が生まれており、アルゴグラフィックス(7595)様のような事例が見られる。

④ 売り圧力はおおむね2030年前後に一巡するという見方もあり、今は「配当をもらいながら待つ」というスタンスと相性がよい局面の可能性がある。

「株価が上がらない理由は自分の銘柄選びが悪いから」と自己批判する必要はないかもしれません。構造的な需給変化という「見えない力」が動いていることを知った上で、焦らず配当を受け取りながら待つ。それが高配当株投資の本質のひとつではないかと、筆者は考えます。

本コラムが、皆さんの投資判断を考える上でのひとつの参考になれば幸いです。


▶ 関連レポート アルゴグラフィックス(7595)銘柄分析レポート


免責事項

本記事はAI(Claude/Anthropic社)を活用して作成した参考資料です。記載内容は公開情報をもとにした私見・分析であり、特定銘柄への投資を推奨するものではありません。将来の株価・配当等を保証するものではなく、投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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