前回2026年5月15日にお届けしたキオクシアホールディングス(285A)の分析から約2ヶ月半、2027年3月期1Q決算の発表を受けて本日はストップ高となりました。AI・データセンター向け需要を背景としたASP(平均販売単価)の急騰、自社株買い・株式分割の発表など材料が重なった今回の状況を、所長ダルと車野アナリストが継続チェックしていきます。
所長ダル








① 会社概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | キオクシアホールディングス株式会社(Kioxia Holdings Corporation) |
| 証券コード | 285A(東証プライム) |
| 業種 | 電気機器 |
| 主な事業 | NAND型フラッシュメモリ及び関連製品の開発・製造(旧東芝メモリ)。単一セグメント(メモリ事業)で、用途別に「SSD & ストレージ」「スマートデバイス」「その他」に区分 |
| 決算期 | 3月期 |
| 時価総額 | 約25,483億円(みんかぶ様、2026/7/31 15:30時点) |
| 現在株価 | 46,500円(本日S高、前日比+7,000円・+17.72%) |
| 用途別売上構成比(2027年3月期1Q) | SSD & ストレージ66%(1兆1,747億円)、スマートデバイス30%(5,257億円)、その他4%(667億円) |
NAND型フラッシュメモリの世界トップクラスメーカーとして、AI・データセンター向け需要の急拡大による記録的な価格上昇を追い風に業績が急回復しています。ただし株価自体は6月22日高値112,700円から7月30日には36,020円まで一度大きく崩れており、今日の急騰はその戻りの一部という側面もあります。
② 主要財務指標(2027年3月期 第1四半期実績)
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 売上収益 | 17,671億円(QoQ+76.2%、YoY+415.5%) |
| Non-GAAP営業利益 | 13,262億円(マージン75.0%) |
| 営業利益(IFRS) | 12,700億円(マージン72%) |
| Non-GAAP当期純利益 | 8,870億円(マージン50.2%) |
| 親会社所有者帰属四半期利益(IFRS) | 8,422億円 |
| EPS(Non-GAAP、株式分割前) | 1,621.81円 |
| EPS(IFRS基本的、株式分割前) | 1,539.91円 |
| BPS | 約4,387円(1Q末時点、筆者算出)/2,563.73円(IRBANK様、前期末基準とみられる) |
| ROE | 39.64%(IRBANK様、直近通期ベース) |
| 自己資本比率 | 50.8%(前期末37.9%から+12.9pt) |
| 営業CF | 8,663億円(四半期・過去最高) |
| ネットD/Eレシオ | ▲8%(実質無借金化達成) |
| 配当利回り(参考値) | 0%(無配継続) |






本銘柄は無配です。配当への言及は本項までとし、以降は成長性・競争力・バリュエーションの妥当性を軸に評価します。なお、BPSはIRBANK様掲載値と筆者算出値に乖離があり、IRBANK様は前期末(2026年3月末)基準、筆者算出値は今回の1Q末(2026年6月末)基準とみられます。
③ 業績推移
| 決算期 | 売上収益 | Non-GAAP営業利益 | 営業利益率 | EPS(Non-GAAP) | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2025年3月期(通期) | 17,065億円 | 4,530億円 | 26.5% | ― | AI需要拡大の初期段階 |
| 2026年3月期(通期) | 23,376億円(前期比+37.0%) | 8,762億円(同+93.4%) | 37.5% | 1,033.58円 | 通期でも過去最高更新。Q4単体では営業利益率59.7%まで加速 |
| 2027年3月期1Q実績 | 17,671億円(QoQ+76.2%) | 13,262億円(QoQ+121.4%) | 75.0% | 1,621.81円 | ガイダンスを上回る、四半期として過去最高を大幅更新 |
| 2027年3月期2Q(会社ガイダンス) | 23,900億円(QoQ+35.2%) | 19,000億円(QoQ+43.3%) | 79.5% | 2,335.70円(株式分割前) | 会社側は「データセンター向け需要が引き続き旺盛」として増収増益を見込む |






④ 事業・競争力の評価
| 評価項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| 本業の稼ぐ力 | ◎ | 旧東芝メモリを母体とする世界トップクラスのNANDメーカーで、サムスン・SKハイニックス・マイクロンと並ぶ寡占構造の一角。営業利益率は1年前の13%から75.0%へ劇的に改善しましたが、典型的なコモディティ市況型の収益構造であり、同社固有の技術力というよりは業界全体の需給逼迫に負う部分が大きい点には留意が必要です |
| 財務の健全性 | ◎ | ネットD/Eレシオが前期末39%から今期末▲8%へ転換し、実質無借金化を達成。シニアローン4,075億円も全額返済済みです。一方で半導体メモリ事業は今後も工場新設・世代移行に伴う巨額の設備投資が継続する事業であり、現在の「キャッシュリッチ」な状態が今後の投資サイクルでどこまで維持されるかは要観察と考えられます |
| 経営方針の透明性 | ○ | 自社株買い(上限8,000億円・3,000万株)、株式分割(1→3、10/1効力発生)という株主還元・投資家層拡大策が具体的な数字とともに発表されました。一方で「まず配当を優先」という方針は示されているものの、配当開始の時期・金額は依然として未定のままです |
NAND市場は、Agentic AI向けアプリケーションを主要な成長ドライバーとして、データセンター・エンタープライズ向け需要が牽引する構造です。会社側はCY26のビット伸長率を10%台後半、CY27には需要が供給を上回る状況になると見込んでおり、少なくとも当面はAI投資サイクルが追い風になる可能性が高いと考えられます。一方でスマートフォン・PC向け需要はCY25比で横ばい〜微減にとどまっており、成長ドライバーはデータセンター向けにほぼ一本化されている点は認識しておく必要があります。
・メモリ市況特有の反転リスク:本銘柄の最大のリスクは、好業績の主因が「出荷量」ではなく「ASP(単価)」の急騰にある点です。ASPは需給が緩めば速やかに反落する性質があり、過去の2期連続赤字はこうした市況反転局面で生じたと考えられます。
・競合の増産・値下げ:サムスン・SKハイニックス・マイクロンといった競合各社の増産・値下げ動向次第では、現在の価格上昇局面が想定より早く終わる可能性があります。
・米中貿易摩擦・関税政策:米中貿易摩擦・米国の関税政策を含む経済状況の変化がリスク要因として明示されています。
・大株主のオーバーハング:旧東芝・ベインキャピタル系等のIPO時株主の持分売却動向は、株価急騰局面ではむしろ売り圧力として顕在化しやすい点に留意が必要です。
・配当方針の不透明さ:「配当を優先」との方針は示されているものの、時期・金額とも未定のままであり、株主還元をあてにした投資判断には向きません。
・株価変動リスク:直近高値112,700円(6月22日)から直近安値36,020円(7月30日)まで約68%下落した後、本日ストップ高。値動きの荒さは好材料時にも変わらず表れています。






⑤ 適正株価試算
EPS×PERアプローチ(4シナリオ)
| シナリオ | 想定EPS(通期換算・分割前) | 想定PER | 適正株価 | 現株価比 | 備考・前提条件 |
|---|---|---|---|---|---|
| 強気 | 約9,500円 | 10倍 | 約95,000円 | +104% | Q1実績を上回るペースでQ3・Q4もASP上昇・出荷量増加が続き、AI投資サイクルが年度末まで加速するケース。みんかぶ様目標株価92,521円とほぼ整合 |
| 中立 | 約8,600円 | 7倍 | 約60,200円 | +29% | Q2ガイダンスの水準(マージン79.5%)がQ3・Q4も維持されるケース |
| 保守的 | 約6,500円 | 6倍 | 約39,000円 | ▲16% | ASP上昇ペースが年度後半にかけて鈍化し、Q1並みの水準へ戻るケース |
| 弱気 | ―(EPSがマイナス転化) | ―(評価不能) | BPSアプローチで代替評価 | ― | 競合の増産・値下げ、AI投資サイクルの反転、米中貿易摩擦の激化等が重なるケース。過去に2020年3月期の記録的赤字(EPS▲61,051円)、2023年3月期・2024年3月期の2期連続赤字という前例があり、この銘柄では「絵空事」ではないシナリオと考えられます |
半導体メモリのような設備集約型のコモディティ産業では、業績のピーク局面ほど市場はPERを低く見積もる傾向があります。上記シナリオのPER倍率が現在の実績PER(38〜45倍)よりかなり低いのはこのためで、「業績のピークアウトをどの程度織り込むか」がシナリオ間の差を生んでいます。
BPS×適正PBR(2点セット確認)
| PBR倍率 | 適正株価 | 前提 |
|---|---|---|
| 10.60倍(現状水準、かぶたん様基準) | 約46,500円 | 現在のPBR評価がそのまま継続するケース(現株価とほぼ一致) |
| 5.0倍(半導体製造業の業種平均的目安) | 約21,900円 | AI・データセンター向けのテーマ性が剥落し、業種平均的なPBR水準まで収縮するケース |
(参考)BPS:約4,387円(親会社所有者帰属持分2兆4,043億円÷期末発行済株式数548,015千株、筆者算出、2026年6月末時点)






週明けの値動きについて(テクニカル面の読みにくさ)
正直なところ、週明けの寄り付きがどちらに振れるかは読み切れません。以下、判断材料になりそうな点を整理します。
本日はストップ高で値幅制限に張り付いたまま引けているため、買い注文の一部が約定しきれていない可能性があります。週明けに特別買い気配からさらに買われるパターンと、材料出尽くしで利益確定売りに押されるパターンの両方が想定され、方向感は五分五分に近いと考えられます。
自社株買い(8月3日開始)・株式分割(10月1日効力発生)という需給材料が控えている点も、短期的な思惑を呼び込みやすい要因です。
一方で、直近1ヶ月の値動きだけでも高値112,700円→安値36,020円→本日46,500円と非常に荒く、テクニカルな節目(25日移動平均線67,558円・75日移動平均線62,842円、いずれも本日終値を上回る水準)を大きく下回った位置での戻りであることから、戻り待ちの売り圧力が意識される水準に近づいてきている可能性もあります。
結論としては、「決算内容自体はポジティブサプライズだが、株価はすでにその期待をかなりの部分織り込んで急騰した」という状態にあり、短期的な値動きを当てにいくよりは、Q2決算(11月頃)でのASP・出荷量の実績確認を待つ方が、判断材料としては手堅いと考えられます。
全シナリオが崩れる条件
- 競合(サムスン・SKハイニックス・マイクロン)の急激な増産・値下げによる価格競争激化
- AI投資サイクルの反転(データセンター向け設備投資の急減速)
- 米中貿易摩擦・米国の関税政策の悪化による輸出規制の直撃
- 大株主(旧東芝・ベインキャピタル系等)による大量売却(オーバーハング)の顕在化
- 自社株買い・株式分割発表後の失望売り(実際の需給改善効果が限定的だった場合)
- 為替の急激な円高進行(米ドル建て取引が中心のため業績への影響大)
まとめ
- 2027年3月期1Qは営業利益率75.0%まで急上昇、ASP(QoQ約70%上昇)主導の記録的増益を確認
- ネットD/Eレシオ▲8%で実質無借金化を達成、自社株買い(上限8,000億円)・株式分割(1→3)を発表し本日ストップ高
- 総合評価はA-(世界的地位・記録的収益力・財務体質の劇的改善は高評価だが、市況反転時の振れ幅の大きさとバリュエーションの高さを踏まえA評価には届かず)
- みんかぶ様目標株価92,521円は強気シナリオ(約95,000円)とほぼ整合、現株価は中立・保守的シナリオの中間に位置
- 好業績の主因はASP(価格)主導であり、過去に2期連続赤字を経験した実績があるほど反転が速い市況循環リスクに留意
- 配当利回りは0%(無配)のため、インカムゲイン目的の銘柄ではない点に注意






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本記事は税務・法務上のアドバイスを提供するものではありません。税金・法律に関するご判断は、税理士・弁護士などの専門家にご相談ください。
情報基準日:作成日20260731
本記事に登場する「車野蔵人(くるまの くろうど)」は、AIが生成した架空のキャラクターです。実在する人物・アナリストとは一切関係ありません。
© 高配当株研究所 ※本記事はAIによる分析を含みます。投資推奨ではありません。




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