ホテルリート月次レポート2026年7月 第一弾

目次

万博後の大阪はどこまで戻ったのか――2024年との比較で見えるホテル市況の現在地

2026年7月のホテルリート月次IRについて、第一弾として5銘柄の状況を確認します。

今回取り上げるのは、ジャパン・ホテル・リート投資法人、インヴィンシブル投資法人、いちごホテルリート投資法人、スターアジア不動産投資法人、投資法人みらいです。

前月の6月レポートでは、大阪・関西万博の特需剥落によって大阪のホテルが大きな前年割れとなる一方、ホテル需要全体が崩れているとは言い切れない状況を確認しました。

7月も基本的な構図は続いています。

ただし今回は、万博前の2024年7月まで遡って比較すると、もう一段興味深い姿が見えてきました。

大阪の一部ホテルは2025年の万博特需を失っただけでなく、2024年の水準も下回っています。

その一方、東京、札幌、福岡、名古屋などでは2024年を上回るホテルも少なくありません。

2026年7月のホテル市況は、「全国的な需要悪化」というより、地域差・物件差が拡大している局面として見る方が実態に近そうです。


1.7月月次の全体像

銘柄集計対象稼働率ADRRevPAR前年比
ジャパン・ホテル・リート変動賃料等導入29ホテル83.1%21,806円18,119円+5.1%
インヴィンシブル国内101物件86.3%15,100円13,039円+1.2%
いちごホテル22ホテル・休館除外84.4%9,684円8,175円▲1.6%
スターアジア前年比較可能15ホテル88.0%13,727円12,086円+2.1%
投資法人みらいスマイルホテル5物件86%8,546円7,316円▲1%

6月は4銘柄中3銘柄でRevPARが前年割れとなりましたが、7月はJHR、インヴィンシブル、スターアジアの3銘柄がプラスに戻りました。

一方、いちごホテルと投資法人みらいは小幅な前年割れです。

ただし、集計対象やホテル構成は各投資法人で異なるため、絶対値の順位よりも、中身を見ることが重要です。


2.JHR:大型ホテルリートの強さが目立つ

JHRの変動賃料等導入29ホテルでは、7月のRevPARは18,119円、前年同月比+5.1%となりました。

稼働率は83.1%、ADRは21,806円です。

売上高も7,023百万円で前年同月比+5.3%となり、宿泊部門だけでなく料飲部門も+5.2%でした。

万博前の2024年7月は、変動賃料等導入28ホテルでRevPAR17,515円でした。

2024年7月2026年7月24年比
稼働率84.0%83.1%▲0.9pt
ADR20,853円21,806円+4.6%
RevPAR17,515円18,119円+3.4%

開示対象ホテルが28ホテルから29ホテルへ変化しているため完全な同一条件ではありません。

それでも、稼働率がほぼ同水準の中でADRが上昇し、RevPARは2024年を上回っています。

JHRを見る限り、ホテル市場全体が万博前より弱くなったとは考えにくい数字です。


3.インヴィンシブル:6月の前年割れから反転

インヴィンシブルの国内101ホテルでは、7月のRevPARは13,039円、前年同月比+1.2%でした。

6月は▲4.0%でしたから、単月ではプラスに戻っています。

稼働率は86.3%と前年から+1.9ポイント。一方ADRは15,100円で▲1.0%でした。つまり、単価はまだ前年に届いていませんが、稼働率の上昇によってRevPARをプラスにしています。

2024年7月は国内81ホテルでRevPAR12,774円でした。

対象ホテルが大幅に増えているため単純比較はできませんが、2026年の水準は2024年を約2%上回っています。

さらに関西を見ると、

関西2024年7月2026年7月
稼働率83.9%75.6%
ADR9,778円11,179円
RevPAR8,208円8,449円

となっています。

稼働率は8ポイント以上低い一方、ADRが約14%上昇したことで、RevPARは2024年をわずかに上回っています。

前月6月でも同じ傾向が確認されました。

したがってインヴィンシブルの関西については、需要量は弱いものの、価格面では2024年より高い水準を維持していると見ることができます。


4.いちごホテル:大阪の弱さが鮮明

いちごホテルは、リニューアルによる休館ホテルなどを除いた22ホテルで、7月RevPAR8,175円、前年同月比▲1.6%でした。

全体としては小幅な前年割れですが、個別ホテルを見ると差が非常に大きくなっています。

特に大阪です。

ホテル2024年7月2025年7月2026年7月
ザ・ワンファイブ大阪堺筋6,042円8,393円4,499円
コンフォートホテル大阪心斎橋8,942円11,833円8,003円

2024年の数字はそれぞれ6,042円、8,942円でした。

2026年は大阪堺筋が2024年比約▲25%、大阪心斎橋も約▲10%です。

ここは重要です。

2025年が万博特需で非常に高かったため、2026年の前年割れ自体はある程度想定できます。

しかし、万博前だった2024年の水準まで下回っているとなれば、「前年の反動」だけでは説明し切れない可能性があります。

一方で、他地域では状況が異なります。

ネストホテル松山のRevPARは、2024年5,161円から2026年6,963円へ約35%上昇。

ネストホテル博多駅前は2026年7月に前年同月比+46.1%。

THE KNOT SAPPOROも2024年21,975円に対して2026年21,731円と、ほぼ同水準です。

いちごホテルの弱さを「ホテル市況全体の弱さ」と捉えるより、大阪を中心とする一部物件の弱さが平均値に表れていると見る方が自然でしょう。


5.スターアジア:大阪とそれ以外の差がさらに拡大

スターアジアの前年比較可能15ホテルでは、稼働率88.0%、ADR13,727円、RevPAR12,086円。

前年同月比ではRevPAR+2.1%となりました。

しかし大阪の2物件は引き続き厳しい数字です。

KOKO HOTEL大阪なんば恵美須町はRevPAR5,300円、前年同月比▲48.5%。

KOKO HOTEL大阪心斎橋は8,996円、同▲31.4%でした。

一方、

KOKO HOTEL札幌駅前は16,246円で前年同月比+8.3%。

KOKO HOTEL福岡天神は+19.1%。

ベストウェスタンプラス福岡天神南は+30.6%。

東京西葛西も+13.3%です。

2024年と比較すると、KOKO HOTEL札幌駅前は13,022円から16,246円へ約25%上昇。

KOKO HOTEL銀座一丁目も14,206円から17,728円へ約25%上昇しています。

大阪の弱さを、札幌・東京・福岡などが補っている構図です。

なお、スターアジアは大阪について「6月を底に緩やかな回復傾向が見え始めている」としています。

この点は8月以降、本当に回復が続くのか確認したいところです。


6.投資法人みらい:5物件平均は2024年を大きく上回る

投資法人みらいのスマイルホテル5物件は、7月RevPAR7,316円、前年同月比99%でした。

前年割れではありますが、6月の前年同月比88%から大きく改善しています。

そして2024年7月の5物件平均RevPARは6,274円でした。

2026年はそこから約17%高い水準です。

ただし、物件別ではやはり大阪が弱くなっています。

ホテル2024年7月2026年7月24年比
大阪天王寺4,516円3,796円▲15.9%
博多駅前10,465円11,395円+8.9%
名古屋栄5,767円6,266円+8.7%

同じ5物件の中でも、大阪天王寺だけが2024年を明確に下回っています。

ここでも「ホテル全体が弱い」のではなく、「大阪が弱い」という構図が確認できます。


7.2024年との比較で見えたこと

今回2024年まで遡ったことで、2026年7月のホテル市況を3つに分けて考えられそうです。

① 万博特需が剥落しただけのホテル

前年2025年からは大きく下落していても、2024年並みあるいはそれ以上の水準を維持しているケースです。

インヴィンシブルの関西などはこの分類に近いと考えられます。

② 2024年を上回っているホテル

札幌、東京、福岡、名古屋などでは、このタイプが多く見られます。

ホテル需要そのものが全国的に弱体化しているのであれば、こうした数字は説明しにくいでしょう。

③ 万博前の2024年まで下回るホテル

今回最も注意したいのがこのタイプです。

いちごホテルの大阪堺筋、大阪心斎橋、投資法人みらいの大阪天王寺などが該当します。

これらについては万博反動だけでなく、中国人客の減少、ホテル供給、価格競争、立地、客層、商品力など、個別の要因も考える必要があります。


8.ホテル市況は「全国一律」から「選別」へ

2025年の万博開催中は、大阪の多くのホテルが強い需要という共通の追い風を受けました。

客室がほぼ満室になり、そのうえでADRを引き上げることができたホテルも多かったと考えられます。

しかし特需がなくなると、ホテル本来の競争力が数字に表れやすくなります。

札幌や福岡では夏季旅行やインバウンド需要を取り込み、東京でも高水準を維持するホテルがあります。

一方、大阪では2024年まで下回るホテルもあります。

したがって、2026年のホテルリートを見る際には、

「インバウンドが増えたか」

だけではなく、

「どの地域の、どの客層を、どの価格で取り込めているか」

まで見る必要がありそうです。


9.8月は一度弱くなる可能性

7月は6月から改善しましたが、8月については楽観し過ぎない方がよさそうです。

JHRは、大阪エリアの軟調な推移に加えて、8月上旬の台風によって沖縄エリアを中心に影響を受けたため、8月RevPARは前年同月を下回る見込みとしています。

ただし、9月以降については前年同月を上回る見通しです。

インヴィンシブルも8月の国内101ホテルRevPARを前年同月比▲2.9%程度と予想しています。

したがって、

6月に弱含み → 7月に改善 → 8月は台風などで再び弱含む可能性 → 9月以降を再確認

という流れになりそうです。

8月だけを切り取って再びホテル市況悪化と判断するのではなく、9月以降まで見た方がよいでしょう。


10.7月第一弾の暫定評価

ジャパン・ホテル・リート:安定

RevPAR+5.1%。

2024年水準も上回っており、地域・客層の分散が引き続き機能していると考えられます。

インヴィンシブル:改善

6月▲4.0%から7月+1.2%へ反転。

関西は稼働率の弱さが残るものの、ADR上昇によって2024年並み以上のRevPARを維持しています。

いちごホテル:物件差を要確認

全体は▲1.6%。

大阪の一部ホテルは2024年も下回っており、単なる万博反動だけでは説明しにくい状態です。

一方、松山、福岡、札幌などには堅調なホテルがあります。

スターアジア:地域分散が機能

全体RevPARは+2.1%。

大阪2物件は厳しいものの、札幌、東京、福岡などが補っています。

大阪が6月を底に本当に回復へ向かうかが次の焦点です。

投資法人みらい:改善だが大阪は継続確認

5物件平均は▲1%まで改善し、2024年比では約17%高い水準です。

ただし大阪天王寺は2024年も下回っています。


まとめ――大阪の弱さとホテル市況全体を分けて考える

2026年7月のホテルリート月次IRを見ると、6月より改善した銘柄が増えました。

そして2024年まで遡ると、さらに重要なことが見えてきます。

ホテル需要全体は万博前より悪化しているとは言いにくい。

JHRは2024年を上回り、インヴィンシブルも高い水準を維持しています。

札幌、福岡、東京、名古屋などでは2024年を上回るホテルもあります。

その一方、大阪の一部ホテルは2024年の水準まで下回っています。

したがって現在のホテル市況は、

「万博特需がなくなってホテル全体が弱くなった」

というより、

「万博という共通の追い風がなくなり、地域やホテルごとの競争力の差が見えやすくなった」

と考える方が数字には整合的です。

8月は台風などによる一時的な弱さも予想されています。

その先の9月以降、大阪がどこまで通常水準を取り戻すのか。

そして2024年を下回っているホテルが回復するのか。

ここが、次の月次レポートで確認すべきポイントになりそうです。

次回、9月上旬ごろに、星野リゾート・リート投資法人と霞が関ホテルリート投資法人の月次報告を踏まえたレポート第2弾につづきます。

免責事項

本記事は、各投資法人が公表した月次運営実績等をもとに、J-REIT研究ラボが独自に分析・考察したものです。内容にはAIによる文章作成支援を含みますが、最終的な構成・判断は当ラボの確認に基づいています。

本記事は特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。将来のホテル需要、客室単価、分配金、投資口価格等を保証するものでもありません。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。

各投資法人では対象ホテル数、ホテル構成、算出方法等が異なり、単純比較できない場合があります。また、月次数値は監査等を経ていない速報値を含みます。掲載情報の正確性には注意していますが、数値の転記ミスや解釈の誤りが含まれる可能性がありますので、投資にあたっては各投資法人の公式IR資料等をご確認ください。

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