作成日:2026年8月21日
データソース:
- 日本リート投資法人 第28期(2026年6月期)決算短信
- 日本リート投資法人 第28期(2026年6月期)決算説明資料
- 国内不動産信託受益権の取得に関するお知らせ(WORK VILLA MYJ kanda)
- 資金の借入れに関するお知らせ(2026年8月20日)
投資法人の特徴
日本リート投資法人は、SBIグループをメインスポンサーとし、オフィス・住宅を中心に、ホテルや底地などにも投資する総合型J-REITです。
第28期末時点では107物件を保有し、取得価格合計は2,742億53百万円。内訳はオフィス54物件・1,654億71百万円、住宅44物件・701億35百万円、その他9物件・386億46百万円となっています。ポートフォリオ全体の稼働率は98.7%です。
足元では単純な資産規模拡大よりも、「ポートフォリオ強靭化」を掲げた資産入替に重点を置いています。築年数が進み、将来の修繕費負担や賃料成長余地に課題のある物件を売却し、築浅でインフレ耐性や内部成長余地を持つ物件へ入れ替える戦略です。
第28期実績と第29・30期の予定を合わせると、取得9物件・360億円に対し、譲渡3物件・116億円。取得資産の平均築年数は4.1年、譲渡資産は39.7年であり、2022年12月期末26.8年だった平均築年数は2027年1月時点で22.9年まで若返る見込みです。
一方で、金利上昇局面に入り、平均調達コストは第27期の1.25%から第28期には1.40%へ上昇しています。今後は、賃料増額や資産入替によって生み出す利益成長が、金融費用の増加をどこまで上回れるかが最大のテーマとなります。
結論と総評
第28期決算は、表面的な減収減益だけを見れば弱く見えますが、本業の賃貸事業はむしろ改善しています。
営業収益は116億54百万円から101億90百万円、当期純利益は66億50百万円から50億90百万円へ減少しました。ただし主因は、前期に31億21百万円あった不動産等売却益が当期13億27百万円へ減少したことです。
一方、売却益を除いた会社定義のEPUは、
1,994円 → 2,066円
へ72円、3.6%増加しました。
賃貸NOIも、
64億23百万円 → 68億47百万円
と4億24百万円増えています。
特にオフィスでは賃料増額が加速しており、入替・更新を合わせた月額賃料増加額は1,197万円、賃料増減率は5.1%。第22期から継続保有しているオフィス48物件の契約賃料単価指数は100から105.7まで上昇しました。
したがって、不動産運営そのものについては比較的良好な決算だったと考えられます。
ただし、今後の問題は明確です。
平均調達コストは1.25%から1.40%へ上昇し、第30期にはNOIがさらに増える予想にもかかわらず、巡航EPUは2,070円から2,045円へ低下します。
日本リート自身も「金利コスト増加に打ち勝つEPU成長」を掲げています。裏を返せば、現在の最大の経営課題が金利上昇であることを、かなり明確に示している決算とも読めます。
今回の決算をまとめるなら、
「不動産の本業は強い。ただし、その成長を金利上昇がかなりの勢いで追いかけている」
という内容です。
今回の決算で読むべき「行間」
詳細は後述しますが、今回特に重要と考える論点は以下です。
- 「金利コスト増加に打ち勝つ」という表現そのものが、現在の最大の経営課題を示している
- 変動金利借入の活用は強気策というより、高くなった固定金利を避ける現実的対応
- DPU2,300円の下限目標は、巡航利益だけで自然に出る2,300円ではない
- 約799億円の含み益は、資産入替とDPU安定化の重要なバッファ
- WORK VILLA MYJ kandaは良質資産だが、NOI利回り3.9%の取得価格を今後の賃料成長で正当化できるかが重要
- 資産入替は「規模拡大」から「ポートフォリオの新陳代謝」へ軸足が移っている
- 賃料を上げてもレントギャップが拡大している点は、むしろ将来の内部成長余地を示す
1.決算サマリー
第27期・第28期比較
| 指標 | 前期:2025年12月期 | 当期:2026年6月期 | 増減 | 一言コメント |
|---|---|---|---|---|
| 営業収益 | 11,654百万円 | 10,190百万円 | ▲1,463百万円 | 売却益減少が主因 |
| 営業費用 | 4,183百万円 | 4,158百万円 | ▲24百万円 | 概ね横ばい |
| 営業利益 | 7,471百万円 | 6,032百万円 | ▲1,438百万円 | 売却益減少で減益 |
| 純利益 | 6,650百万円 | 5,090百万円 | ▲1,559百万円 | 前期の大きな売却益が剥落 |
| EPU | 3,760円 | 2,813円 | ▲947円 | 売却益込みの会計上EPU |
| DPU | 2,433円 | 2,516円 | +83円 | 減益ながら増配 |
| 巡航EPU | 1,994円 | 2,066円 | +72円 | 本業ベースでは3.6%成長 |
| 自己資本比率 | 47.5% | 47.6% | +0.1pt | ほぼ横ばい |
| 有利子負債額 | 135,430百万円 | 141,250百万円 | +5,820百万円 | 新規物件取得に伴い増加 |
| 賃貸NOI | 6,423百万円 | 6,847百万円 | +424百万円 | 本業収益は改善 |
| NOI利回り(取得価格ベース) | 5.1% | 5.1% | 横ばい | 高水準を維持 |
| FFO | 4,621百万円 | 4,966百万円 | +345百万円 | 売却益控除後のCFは改善 |
| 債務平均残存年数 | 2.9年 | 2.9年 | 横ばい | やや短め |
| 平均調達金利 | 1.25% | 1.40% | +0.15pt | 金利上昇が明確 |
| 固定債務比率 | 約86.7% | 78.9% | 約▲7.8pt | 変動金利活用を拡大 |
| 期末稼働率 | 98.2% | 98.7% | +0.5pt | 高稼働を維持 |
| 格付 | JCR AA- / R&I A+ | JCR AA- / R&I A+ | 変わらず | ともに安定的 |
※EPUは決算短信の「1口当たり当期純利益」。
※巡航EPUは、決算説明資料で日本リートが「EPU」として示す、不動産売却損益を除いたベース。
※FFOは日本リート開示値。「当期純利益+減価償却費+固定資産除却損+繰延資産償却費-不動産等売却損益」で計算されています。
※固定債務比率の前期値は、前期末の金利スワップ対象額110,570百万円と投資法人債6,800百万円を有利子負債135,430百万円で除したラボ計算。当期78.9%は決算説明資料の開示値。したがって前期値は概算です。
決算サマリー所見
営業収益・営業利益・純利益はいずれも減少していますが、これをそのまま「本業悪化」と見るのは適切ではありません。
前期の不動産等売却益は31億21百万円だったのに対し、当期は13億27百万円へ約17億94百万円減少しました。営業収益の前期比減少14億63百万円を上回る規模です。
一方で、賃貸事業収入は77億86百万円から81億90百万円へ4億4百万円増加し、NOIも64億23百万円から68億47百万円へ増えています。
売却益を除いた巡航EPUも1,994円から2,066円へ増加しました。
したがって第28期は、
「売却益減少による会計上の減益」と「賃貸事業の改善」が同時に起きた決算
と整理するのが適切です。
DPUについても、純利益が大きく減少したにもかかわらず2,433円から2,516円へ83円増加しています。日本リートは売却益の一部を内部留保し、分配金平準化にも活用する運用を行っており、単純な利益連動型DPUではありません。
2.外部成長戦略
日本リートの外部成長戦略は、単なる「物件を増やす」戦略から、かなり明確な資産入替型へ変化しています。
第28期実績および第29・30期予定を合わせると、
- 取得:9物件・360億円
- 譲渡:3物件・116億円
- 取得資産平均築年数:4.1年
- 譲渡資産平均築年数:39.7年
- 取得資産平均NOI利回り:4.5%/4.6%
- 譲渡資産平均NOI利回り:4.1%
となっています。
主な施策は以下の通りです。
- 築古で将来の修繕負担が大きい物件を売却する。
- 立地や物件特性から賃料成長余地が限られる物件を売却候補とする。
- 築浅で当面の修繕費が少ない物件を取得する。
- インフレ局面で賃料増額余地のあるオフィス・住宅を取得する。
- ホテルなど、インフレを比較的賃料に転嫁しやすい資産も組み入れる。
- SBIグループのネットワークやブリッジファンドを活用する。
- 資産売却で創出したキャッシュを新規取得だけでなく、既存物件のバリューアップにも振り向ける。
WORK VILLA MYJ kanda
2027年1月15日に84億円で取得予定です。
2025年2月竣工の築浅オフィスで、2026年7月末時点の稼働率は100%。年間総賃料収入は4億6百万円、鑑定評価額は91億80百万円です。取得価格は鑑定評価額より約8.5%低い水準です。
一方、鑑定NOI/取得予定価格は**3.9%**です。
物件そのものの質は高いと考えられますが、現在の日本リート全体の取得価格ベースNOI利回り5.1%を下回ります。
したがってこの取得の成否は、取得時利回りよりも、
定期借家契約の再契約時に市場賃料を取り込み、NOIをどこまで育てられるか
にあります。
ナインアワーズ博多駅
2026年7月31日に20億60百万円で取得しています。
鑑定評価額は34億円、NOI利回りは8.9%。博多駅徒歩約3分という立地で、変動賃料体系を採用しています。
ホテル比率は2027年1月時点で8.0%まで高まる見込みであり、インフレ耐性を高める意図が見えます。
3.内部成長戦略
今回の決算で最も評価しやすいのは内部成長です。
オフィス賃料
入替・更新時を合わせた賃料増減は、
| 決算期 | 月額賃料増減額 | 賃料増減率 |
|---|---|---|
| 第22期 | +930千円 | +0.3% |
| 第23期 | +4,064千円 | +1.7% |
| 第24期 | +5,287千円 | +2.6% |
| 第25期 | +6,042千円 | +2.8% |
| 第26期 | +6,581千円 | +2.7% |
| 第27期 | +10,553千円 | +5.9% |
| 第28期 | +11,971千円 | +5.1% |
となりました。
第28期の5.1%は前期5.9%を下回っていますが、増額金額自体は過去最高です。
さらに、第22期から継続保有するオフィス48物件の契約賃料単価指数は、
100 → 100.3 → 101.3 → 102.2 → 102.7 → 104.0 → 105.7
と上昇しています。
特に2025年4月に賃料増額インセンティブ報酬を導入してから上昇ペースが加速しています。
レントギャップ
オフィスのレントギャップは**▲9.7%**まで拡大しました。
一見すると契約賃料が市場に追いついていないことを意味します。
ただし、足元では既存賃料も上昇しています。
それでもレントギャップが拡大しているということは、
既存賃料の上昇速度以上に、マーケット賃料が上がっている
ということです。
短期的には機会損失でもありますが、中期的には追加的な賃料増額余地を残しているとも考えられます。
稼働率
ポートフォリオ全体の期末稼働率は、
98.2% → 98.7%
へ上昇しました。
用途別では、
- オフィス:98.7%
- 住宅:98.1%
- その他:100.0%
です。
第29期・第30期についても全体98.7%、98.9%を想定しており、大きな空室リスクは現時点では見えにくい状況です。
エンジニアリング・マネジメント
日本リートは、築浅資産への入替で、
減価償却費 > CAPEX
となる状態を作り、そのフリーキャッシュを既存物件のバリューアップへ再投資する考えです。
第28期は、
- 減価償却費:1,171百万円
- 資本的支出:1,014百万円
- CAPEX/減価償却費:86.6%
となっています。
単なる修繕ではなく、ROIC10%以上を目安とする戦略的バリューアップ投資も実施する方針であり、資産入替と内部成長を一体化した運用に移行しています。
4.財務戦略
財務面は、今回最も慎重に確認する必要があります。
財務指標
| 指標 | 第27期 | 第28期 | コメント |
|---|---|---|---|
| 有利子負債 | 135,430百万円 | 141,250百万円 | 取得資金調達で増加 |
| 総資産LTV | 48.2% | 48.1% | 増資効果でほぼ横ばい |
| 時価ベースLTV | 38.0% | 37.8% | 低位を維持 |
| 平均残存期間 | 2.9年 | 2.9年 | 横ばい |
| 平均調達年数 | 6.7年 | 6.5年 | 短期化 |
| 平均調達コスト | 1.25% | 1.40% | 金利上昇が続く |
| 固定金利比率 | 約86.7% | 78.9% | 変動金利利用を増加 |
| 格付 | JCR AA- / R&I A+ | JCR AA- / R&I A+ | 安定的 |
日本リートは当面、
- 時価LTV40%前半を上限
- 固定金利比率70%程度を下限
とする方針です。
つまり、固定金利比率をこれまでより引き下げる余地を意図的に残しています。
「長期固定」から少し距離を置く財務運営
一般的な金利上昇対策なら、借入期間を長期化し、固定金利比率を高めたくなります。
しかし現在は、長期固定金利そのものが高くなっています。
そこで日本リートは、
- 借入期間の短期化
- 変動金利借入の活用
- シンジケートローンから相対借入へのシフト
- 地方銀行など新規レンダーの開拓
- アレンジメントフィー削減
などを組み合わせています。
これは金利上昇リスクを完全に消す戦略ではなく、
一定の金利変動リスクを残す代わりに、現在の調達コストを抑える戦略
です。
WORK VILLA MYJ kanda取得の借入
同物件取得に関連して2027年1月15日に25億50百万円を借り入れる予定です。
すべて変動金利で、
- 10億円:1か月TIBOR+0.2840%
- 15億50百万円:1か月TIBOR+0.3460%
となっています。
スプレッドは比較的抑えられていますが、基準金利上昇の影響は直接受けます。
5.次期・次々期業績予想
業績予想比較
| 指標 | 当期:2026年6月期 | 次期:2026年12月期予想 | 次々期:2027年6月期予想 | 一言コメント |
|---|---|---|---|---|
| 営業収益 | 10,190百万円 | 9,600百万円 | 9,377百万円 | 売却益減少で低下 |
| 営業費用 | 4,158百万円 | 4,399百万円 | 4,400百万円 | 賃貸費用増等を反映 |
| 営業利益 | 6,032百万円 | 5,201百万円 | 4,977百万円 | 売却益減少で低下 |
| 純利益 | 5,090百万円 | 4,135百万円 | 3,743百万円 | 金融費用増も影響 |
| 巡航EPU | 2,066円 | 2,070円 | 2,045円 | 第30期は金利影響で減少 |
| DPU | 2,516円 | 2,300円 | 2,300円 | DPU下限目標を維持 |
※営業費用予想は営業収益-営業利益によるラボ計算。
※決算説明資料の第30期当期純利益は3,745百万円、決算短信は3,743百万円となっています。本レポートでは法定開示資料である決算短信の3,743百万円を採用しています。
賃貸事業は成長する
注目すべきは、利益全体ではありません。
賃貸NOIは、
- 第28期:6,847百万円
- 第29期:7,080百万円
- 第30期:7,192百万円
と増加する予想です。
一方、巡航EPUは、
2,066円 → 2,070円 → 2,045円
です。
つまり第30期では、
不動産側の利益が増えているのに、1口当たり利益は減少する
という状態になります。
会社自身も、第30期について「金利上昇に伴う利息増加の影響もあり、EPUは減少」と説明しています。
ここが今後の最大のチェックポイントです。
DPU2,300円について
第29期・第30期ともDPUは2,300円を予想しています。
ただし第30期予想では、
- 圧縮積立金取崩額:452百万円
- 買換特例圧縮積立金取崩額:14百万円
を分配に充当する前提です。
巡航EPU2,045円に対してDPU2,300円ですから、現時点ではDPU下限目標2,300円を巡航利益だけでカバーできているわけではありません。
6.その他注目すべき点
1.【ポジティブ】巡航EPUは増加
会計上の1口当たり当期純利益は3,760円から2,813円へ大きく減りました。
しかしこれは売却益の差が大きく影響しています。
売却損益を除いた巡航EPUは、
1,994円 → 2,066円
へ72円増加しました。
今回はこちらの方が実態を見るうえで重要です。
2.【ポジティブ】NOI成長が明確
賃貸NOIは64億23百万円から68億47百万円へ約6.6%増加しました。
継続保有物件のNOI成長に加え、新規取得物件が寄与しています。
金利負担がなければ、かなり分かりやすい成長決算だったと考えられます。
3.【ポジティブ】オフィス賃料にはまだ上昇余地がある
オフィスのレントギャップは▲9.7%です。
すでに賃料増額が進んでいるにもかかわらず、市場賃料の上昇速度がさらに速いため、レントギャップはむしろ拡大しています。
今後の更新・入替に伴う増額余地が相応に残っている可能性があります。
4.【ネガティブ】金利上昇が巡航EPUを抑える
平均調達コストは、
1.08% → 1.12% → 1.16% → 1.25% → 1.40%
と継続して上昇しています。

第28期だけでも借入利息増加は前期比84百万円でした。
賃料成長と新規取得効果による利益増加が、金融費用増加で相殺され始めています。
5.【中立】ホテル比率を高める方向
ホテルリソルステイ秋葉原、THE BASEMENT HOTEL Osaka Honmachi、ナインアワーズ博多駅などの取得により、ホテル比率は2027年1月時点で8.0%となる見込みです。
ホテルはインフレ局面で賃料転嫁しやすい特徴がある一方、観光需要や訪日外国人動向の影響を受けます。
大阪では万博効果の反動や中国人観光客減少について説明資料でも言及されており、オフィス・住宅とは異なる収益変動要因が加わる点には注意が必要です。
6.【ポジティブ】資産入替に使える含み益が大きい
第28期末のポートフォリオ含み益は約799億円です。
今後も売却可能な資産を持ち、継続的な譲渡益創出を計画しています。
売却益はDPU支援だけでなく、新規取得や戦略的バリューアップ投資にも活用されます。
7.専門家による「行間」の読解
1.「金利コスト増加に打ち勝つ」と書くこと自体が、現在の最大の経営課題を示している
今回の資料では、
「金利上昇局面を見据えた財務戦略」
「資金調達コスト増加に打ち勝つEPU成長」
「金利コスト上昇に打ち勝つ持続的成長」
といった表現が繰り返されています。
これは単なるスローガンではなく、経営陣が現在最も警戒しているのが金融費用であることを示していると考えられます。
稼働率98.7%、オフィス賃料増減率5.1%、レントギャップ▲9.7%と、不動産側にはまだ成長余地があります。
にもかかわらず、第30期EPUは減少予想です。
したがって今後は、
「賃料上昇率」と「資金調達コスト上昇率」の競争
として見る必要があります。
2.変動金利借入は積極策というより、高い固定金利を避ける現実的対応
日本リートは固定金利比率について「70%程度を下限」としています。
これは従来より変動金利を利用する余地を広げた方針と読めます。
WORK VILLA MYJ kanda取得資金の25億50百万円も全額変動金利です。
金利上昇局面で変動金利を増やすのは、一見すると逆方向にも見えます。
しかし固定金利の調達条件が大きく上昇しているため、
将来の金利リスクを一部残してでも、足元のAll-inコストを抑える
という選択だと考えられます。
合理性はありますが、政策金利が予想以上に上がった場合はこの判断が逆風になる可能性があります。
3.DPU下限2,300円は「利益の下限」ではない
日本リートはDPU下限目標を2,300円としています。
これは投資家にとって安心材料になり得ます。
ただし第30期の巡航EPUは2,045円です。
その差255円は内部留保の取崩し等によって補完されます。
したがって、
2,300円は「現在の賃貸利益だけで毎期自然に稼げる金額」ではなく、「売却益や内部留保も含めて維持を目指す政策的DPU」
と理解する必要があります。
もちろん日本リートには相応の内部留保がありますので、直ちに分配維持が難しいという意味ではありません。
重要なのは、その猶予期間中に巡航EPUを2,300円へ近づけられるかです。
4.約799億円の含み益は「資産価値」だけでなくDPU安定化装置でもある
日本リートは長期保有してきた物件に相応の含み益があります。
これを資産入替によって顕在化すれば、
- DPUへの還元
- 内部留保
- 新規取得
- バリューアップ投資
- 財務改善
など複数の用途に使えます。
したがって含み益約799億円は単なる参考指標ではなく、現在の資産回転型戦略を成立させる重要な原資です。
ただし、売却すれば当然その物件のNOIも失います。
資産売却を評価する際には、
「いくら売却益が出たか」だけでなく、「失ったNOIを何期で取り戻したか」
を見る必要があります。
5.WORK VILLA MYJ kandaは、将来の賃料成長を先に買っている
同物件は、
- 千代田区
- 2025年築
- 稼働率100%
- 鑑定評価額91.8億円に対し取得価格84億円
- 全テナント定期借家
- ハーフセットアップ仕様
という魅力があります。
ただし取得時NOI利回りは3.9%です。
現在の日本リート全体のNOI利回り5.1%より低いため、取得直後の利回りだけならポートフォリオを押し下げます。
したがってこの84億円の投資は、
「今の利回り」を買ったというより、「今後の賃料成長余地」を買った
と考えるべきでしょう。
定期借家契約満了時に市場賃料を取り込めることが戦略の前提です。
そのため、今後の再契約賃料を追う必要があります。
6.資産入替の目的は「AUM拡大」より「新陳代謝」
取得資産の平均築年数4.1年に対して、売却資産は39.7年です。
これは偶然ではありません。
日本リート自身、
- 築古
- 将来支出が大きい
- 費用対効果が低い
- 賃料成長余地が少ない
資産を売却候補とすると説明しています。
一方で取得するのは、
- 築浅
- 当面のCAPEXが少ない
- 減価償却費とCAPEXの差からフリーキャッシュを生みやすい
- インフレ耐性がある
- 内部成長余地がある
資産です。
つまり現在の日本リートは、
「既存物件をできるだけ長く持つREIT」から、「保有資産を継続的に入れ替えて利益成長力を維持するREIT」へ変化している
と見ることができます。
7.レントギャップ▲9.7%は弱点であると同時に、かなり大きな将来余力
契約賃料が市場賃料より約1割低いことだけを見ると、収益機会を十分取り込めていないとも言えます。
しかし重要なのは、契約賃料自体がすでに上昇していることです。
継続保有48物件の契約賃料単価指数は直近1年間で、
102.7 → 104.0 → 105.7
と加速しています。
それでもレントギャップが拡大しています。
つまり市場賃料はそれ以上の速度で上がっています。
この環境が続けば、更新時の賃料増額余地は今後も相応に残ります。
逆に言えば、
これほど内部成長余地がある環境でも第30期EPUが減少する
という事実は、金利上昇の影響の大きさを示しています。
8.増資自体は成長投資だが、EPU希薄化との競争になる
第28期には59,000口の公募増資と2,950口の第三者割当増資を実施し、合計約55億円を調達しました。
取得物件のNOI寄与はEPUに+290円の効果がありましたが、
- 増資希薄化:▲73円
- 増資コスト:▲19円
も発生しています。
今回は取得物件NOIの方が大きかったため、結果として巡航EPUは成長しました。
ただし今後、取得利回りがさらに低下すれば、
「新規取得で利益は増えるが、投資口数増加で1口利益は増えない」
という問題が起き得ます。
今後の外部成長では、資産規模よりEPUへの寄与度を見るべきです。
9.ホテル組入れはインフレ耐性向上策だが、収益変動性も増す
ホテルリソルステイ秋葉原、THE BASEMENT HOTEL Osaka Honmachi、ナインアワーズ博多駅の取得により、ホテルの存在感が増しています。
特にナインアワーズ博多駅は変動賃料で、ホテル業績改善を取り込みやすい構造です。
一方、ホテルはオフィス・住宅に比べ、
- 訪日外国人数
- 為替
- 航空便
- 景気
- 災害
- 地政学
- 国籍別旅行需要
などの影響を受けやすくなります。
インフレ耐性を得る代わりに、一定のボラティリティをポートフォリオへ持ち込むことになります。
総合型REITとしては合理的な分散ですが、今後ホテル比率がさらに高まる場合には、ホテル部門の運営実績も独立して追う必要があります。
8.免責事項
本記事は公開資料に基づく情報提供を目的としており、特定銘柄の推奨を目的としたものや投資勧誘、助言を行うものではありません。
情報の正確性について:作成にあたっては生成AIを活用しており、情報の正確性・完全性を保証するものではありません。投資検討の際は、必ず投資法人が発行する一次資料(決算短信等)をご確認ください。
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