【ホテルリート月次ウォッチ補遺】星野・霞ヶ関の4月IRから見える、ホテル需要の濃淡

J-REIT研究ラボでは、前回の記事で、JHR、インヴィンシブル投資法人、いちごホテルリート、スターアジア不動産投資法人、投資法人みらいの5銘柄について、2026年4月のホテル月次IRを確認しました。

前回記事では、2026年4月のホテルリートについて、単純に「強い」「弱い」と言い切るよりも、中国需要の弱含み、イースター休暇の期ずれ、大阪・関西万博関連需要の反動、地域ごとの濃淡などを分けて見る必要があると整理しました。

今回はその補遺として、星野リゾート・リート投資法人と霞ヶ関ホテルリート投資法人の2026年4月月次IRを追加確認します。

結論からいえば、今回の2銘柄を加えても、前回の見方は大きく変わりません。

むしろ、2026年4月はホテル需要が全面的に崩れた月ではなく、銘柄ごとの物件特性、地域、客層、オペレーターの違いがよりはっきり見えた月だった、という印象が強まりました。


目次

星野リゾート・リート:表面上はやや弱いが、需要崩壊とは言いにくい

まず、星野リゾート・リートの2026年4月実績を確認します。

ポートフォリオ全体では、客室稼働率が79.3%となり、前年同月の80.9%から1.6ポイント低下しました。ADRは21,583円で前年同月比+0.3%、RevPARは17,121円で前年同月比▲1.7%、売上高は5,568百万円で前年同月比▲2.6%となっています。

数字だけを見ると、やや弱い月だったことは否定できません。

ただし、内容を見ると「ホテル需要そのものが崩れた」とまでは言いにくい印象です。

星野リゾート・リートは、4月の運営実績について、大阪・関西万博関連需要の剥落、中国政府による訪日自粛要請等を背景とした関西エリアの需要減少、さらにポートフォリオ全体でゴールデンウィークの日並びの影響を受けたと説明しています。

つまり、4月単月の数字には、前年同月との比較上やや不利に見えやすい要素が重なっていたと考えられます。

特に注目したいのは、ADRが前年同月比でほぼ横ばいを維持している点です。

稼働率は低下しましたが、客室単価を大きく崩してまで稼働を取りにいったというよりも、単価を維持しながら、需要の弱い部分をある程度受け止めた形に見えます。

ホテルリートを見るうえでは、稼働率だけでなくADRの維持力が重要です。稼働率が少し落ちても、ADRを守れていれば、収益力の土台が急速に毀損しているとは限りません。

この点で、星野リゾート・リートの4月は「悪い」というより、「やや調整色が出た月」と見るのが妥当ではないかと考えます。


星野リゾート運営物件は、高単価維持と稼働低下が同時に出た

もう少し内訳を見ると、星野リゾート運営物件と、星野リゾート以外の運営物件で、やや異なる姿が見えてきます。

星野リゾート運営物件では、客室稼働率が75.3%となり、前年同月比で5.2ポイント低下しました。一方、ADRは46,889円で前年同月比+5.4%と上昇しています。RevPARは35,302円で前年同月比▲1.5%でした。

つまり、単価はしっかり取れているものの、稼働率の低下を完全には吸収できなかった形です。

これは、星野リゾート・リートらしい特徴ともいえます。

高価格帯の宿泊施設やリゾート系物件は、需要が強い局面ではADRを引き上げやすい一方、需要がやや弱い局面では稼働率が落ちるとRevPARに響きやすい面もあります。

いわば、高単価戦略の強さと繊細さが同時に見えた月だったといえそうです。

ただし、星野リゾート運営物件の売上高が前年同月比でマイナスとなった主な要因については、「界 松本」および「界 遠州」がリニューアル工事に伴い休館していたためと説明されています。この2物件を除けば、概ね前年同月並みの水準を確保しているとされています。

ここは重要です。

表面上の売上高や稼働率だけを見ると弱く見えますが、一部物件の休館影響を除けば、基調はそこまで悪化していない可能性があります。

当ラボとしては、星野リゾート・リートの4月については、

「表面上はやや弱いが、需要崩壊というより、関西エリアの弱含み、休館、日並びの影響が重なった調整月」

と整理したいところです。

ただし、金利上昇局面では、ホテル収益が少し弱含むだけでも、投資口価格への見方は厳しくなりがちです。ホテル運営の強弱だけでなく、財務コストとの綱引きも、今後はより意識されやすくなるでしょう。


下支え要因もある:北陸、沖縄、福岡の存在

一方で、星野リゾート・リートの4月IRには、下支え要因も明記されています。

北陸エリアでは「界 加賀」「ANAクラウンプラザホテル金沢」「ANAクラウンプラザホテル富山」でエリア全体の需要回復が見られたとされています。また、「星のや沖縄」では継続的なマーケティング施策が奏功し、特別室の3泊優待プランや全館貸し切りイベントなどが業績に貢献したと説明されています。さらに、「グランドハイアット福岡」も国内およびインバウンド需要を着実に取り込み、ポートフォリオ全体の業績を下支えしたとされています。

この点からも、ホテル需要が一様に弱かったわけではないことがわかります。

関西エリアでは中国需要の弱含みや前年の万博関連需要の反動が見られた一方、北陸、沖縄、福岡では一定の需要を取り込めていたわけです。

ホテルリートを分析する際には、どうしても「インバウンド全体」「国内旅行全体」といった大きな言葉で見てしまいがちです。

しかし実際には、地域ごとの観光資源、交通アクセス、客層、ホテルブランド、価格帯によって、需要の出方はかなり異なります。

今回の星野リゾート・リートの月次は、その違いをよく示しているように見えます。


中東情勢の影響は、現時点では限定的

今回の月次では、中東情勢についても言及されています。

星野リゾート・リートは、中東情勢の悪化に伴う宿泊需要への直接的な影響は現時点で限定的としています。一方で、今後のエネルギー価格や物価動向が運営コストに与える影響については不透明な状況が続いており、引き続き注視するとしています。なお、現時点で重油不足等によるホテル運営への影響は確認されておらず、影響が懸念される物件もないとされています。

この記述は、投資家としても確認しておきたいポイントです。

ホテルリートにとって、中東情勢の影響は二段階で考える必要があります。

ひとつは、旅行需要そのものへの影響です。航空便、海外旅行マインド、インバウンド需要などに波及すれば、客室稼働率やADRに影響する可能性があります。

もうひとつは、運営コストへの影響です。エネルギー価格や物価が上昇すれば、ホテル運営の費用負担が重くなり、最終的な収益性に影響する可能性があります。

現時点で大きな影響は確認されていないとしても、ホテルリートは景気、為替、国際情勢、エネルギー価格の影響を比較的受けやすいセクターです。

ここは、楽観も悲観もせず、毎月の数字で確認していくのがよさそうです。


霞ヶ関ホテルリート:小幅成長だが、ADR低下は確認ポイント

次に、霞ヶ関ホテルリートを見ていきます。

霞ヶ関ホテルリートは、変動賃料導入済みの11物件について、2026年4月のホテル運営実績を開示しています。

4月の客室稼働率は74.3%となり、前年同月の70.4%から3.9ポイント上昇しました。一方、ADRは27,871円で、前年同月の29,036円から1,165円低下しました。RevPARは20,710円で前年同月比+262円、売上高は285百万円で前年同月比+7百万円となっています。

こちらは、星野リゾート・リートとは少し違う姿です。

霞ヶ関ホテルリートは、稼働率が上昇したことで、ADRの低下を補い、RevPARを小幅ながら伸ばしました。

つまり、単価で伸ばしたというよりも、客室をしっかり埋めることで前年同月比プラスを確保した形です。

これは悪い数字ではありません。

ただし、ホテルリートの収益の質を見るうえでは、ADRの低下はやはり確認しておきたいポイントです。

稼働率を上げてRevPARを維持・改善できるのは評価できますが、今後もADRが下がる形での稼働率上昇が続くと、収益成長の質については慎重に見たくなります。

特に、霞ヶ関ホテルリートはまだ上場から日が浅く、投資家側も月次データを蓄積している段階です。1か月だけで判断するのではなく、今後数か月の推移を確認する必要があります。


fav飛騨高山・FAV LUX飛騨高山では中東情勢の影響も

霞ヶ関ホテルリートの4月IRでは、特記事項として訪日外客数や中東情勢の影響にも触れられています。

2026年4月の訪日外客数は推計で約369万人となり、前年同月比▲5.5%でした。投資法人は、イースター休暇の期ずれにより、訪日需要が3月と4月上旬に分散した影響があったと説明しています。

また、fav飛騨高山およびFAV LUX飛騨高山の2物件では、中東情勢悪化によるキャンセルが発生し、客室稼働率が低下、RevPARが前年を下回ったとされています。その結果、変動賃料導入済み11物件全体でのRevPAR成長は前年同月比+1.3%にとどまりました。

この記述は、星野リゾート・リートの説明と少し対照的です。

星野リゾート・リートでは、中東情勢による宿泊需要への直接的な影響は現時点で限定的とされていました。一方、霞ヶ関ホテルリートでは、特定物件でキャンセルが発生したと説明されています。

もちろん、これだけで中東情勢の影響が広範囲に出ていると判断するのは早計です。

ただ、ホテルリートの月次を見る際には、国際情勢がどの地域、どの客層、どの物件に影響するのかを、かなり細かく見る必要があることを示しています。

飛騨高山はインバウンド観光地としての性格も強いため、海外旅行者の動向に影響を受けやすい面があるのかもしれません。

ここは、今後の月次で再確認したいところです。


霞ヶ関ホテルリートは5月に堅調なRevPAR成長を見込む

もっとも、霞ヶ関ホテルリート側は、今回の影響を現時点では単月での一時的な影響と認識しています。

資料では、2026年5月について、前年同月比で堅調なRevPAR成長を見込んでいるとされています。

この点は、次回月次を見るうえで非常に重要です。

4月のADR低下が一時的なものなのか、それとも価格競争や需要変化の兆しなのか。

中東情勢によるキャンセルが一過性なのか、それとも今後も特定エリアで影響が残るのか。

5月以降のRevPAR成長が実際に確認できれば、4月の数字は一時的なノイズとして整理しやすくなります。

逆に、5月以降もADR低下や特定物件の弱さが続くようであれば、霞ヶ関ホテルリートについては、物件ごとの需要耐性をもう一段深く見る必要が出てきます。


7銘柄で見る2026年4月:全面失速ではなく「銘柄差の月」

ここまでで、前回確認した5銘柄に、星野リゾート・リートと霞ヶ関ホテルリートを加えた形になります。

ざっくり整理すると、2026年4月のホテルリートは次のように見えます。

銘柄4月の印象主な見方
JHR比較的強いADR主導でRevPAR成長
インヴィンシブルやや弱含み稼働率は維持するもADRが低下
いちごホテル弱含み工事・地域要因・大阪反動の仕分けが必要
スターアジア底堅い高稼働、地方・団体需要が支え
投資法人みらい底堅い那覇・博多が牽引
星野リゾート・リートやや弱含み関西・休館・日並び要因。ただしADRは維持
霞ヶ関ホテルリート小幅成長稼働率上昇でADR低下を補う

こうして見ると、4月は「ホテルリート全体が失速した月」とは言いにくいです。

むしろ、ホテル需要の質が分かれた月だったように見えます。

ADRを維持・上昇させてRevPARを伸ばした銘柄もあれば、稼働率で補った銘柄もあります。一方で、関西エリア、中国需要、工事休館、日並び、中東情勢などの影響を受けた銘柄もあります。

ホテルリートは、どうしても「インバウンド関連」「観光需要関連」と一括りにされがちです。

しかし、実際の月次データを見ると、かなり細かい差が出ています。

高級リゾート型、宿泊特化型、地方観光地型、都市型ホテル、団体需要を取り込むホテル、国内客に強いホテル、インバウンド比率が高いホテル。

同じホテルリートでも、収益の出方はかなり違います。


4月のキーワードは「ADRを守れるか」

今回の7銘柄横断で、当ラボが特に注目したいのはADRです。

ホテルの月次指標では、稼働率、ADR、RevPARの3つがよく見られます。

稼働率は「どれだけ部屋が埋まったか」を示します。

ADRは「売れた部屋の平均単価」を示します。

RevPARは「販売可能な部屋1室あたり、どれだけ売上を生んだか」を示します。

この3つのうち、金利上昇局面で特に重要性が増しているのは、ADRではないかと考えます。

なぜなら、インフレや人件費上昇、エネルギーコスト上昇が続く環境では、単価を上げられないホテルは、稼働率を上げても利益率が圧迫されやすくなるからです。

部屋を埋めるだけなら、価格を下げればある程度は可能です。

しかし、それでは運営コスト上昇を吸収しにくくなります。

ホテルリートにとって理想的なのは、稼働率を大きく崩さず、ADRも維持・上昇させ、RevPARを伸ばす形です。

今回の4月は、銘柄によってこの形にかなり差が出ました。

JHRのようにADR主導で強さを見せた銘柄もあれば、霞ヶ関ホテルリートのように稼働率でADR低下を補った銘柄もあります。星野リゾート・リートはADRを維持したものの、稼働率低下や休館影響でRevPARはやや弱含みました。

この差は、今後のホテルリート選別において重要なポイントになりそうです。


5月以降に確認したいポイント

今回の4月月次を踏まえると、5月以降に確認したいポイントは大きく4つあります。

第一に、中国需要の弱含みが一時的なものかどうかです。

4月は中国政府による訪日自粛要請等の影響が複数銘柄で言及されました。これが特定月の要因にとどまるのか、それとも関西エリアや一部観光地に継続的な影響を与えるのかは、今後の月次で確認する必要があります。

第二に、大阪・関西万博関連需要の反動がどこまで続くかです。

前年に特需があったエリアでは、前年比較で弱く見えやすくなります。これは実需の悪化というより、比較対象の問題もあります。そのため、単月の前年比だけで判断するのは危険です。

第三に、ADRの維持力です。

ホテルリートにとって、インフレ局面では客室単価を守れるかが重要です。稼働率だけでなく、ADRを維持できているか、RevPAR成長がADR主導なのか稼働率主導なのかを分けて見る必要があります。

第四に、中東情勢やエネルギー価格の影響です。

現時点で広範な影響が出ているとは言いにくいものの、霞ヶ関ホテルリートでは一部物件でキャンセルが発生したとされ、星野リゾート・リートでは今後のエネルギー価格や物価動向を注視するとされています。ホテルリートにとって、国際情勢は需要面とコスト面の両方で影響し得るため、引き続き確認が必要です。


まとめ:ホテルリートは「セクター一括り」から「銘柄選別」へ

2026年4月のホテルリート月次を7銘柄で確認すると、ホテル需要は決して一枚岩ではないことがよくわかります。

ホテルリート全体として、インバウンド需要や国内旅行需要の恩恵を受けやすい環境は続いていると考えられます。

しかし、4月の数字を見る限り、「ホテルなら何でも強い」というほど単純ではありません。

地域によって差があり、物件タイプによって差があり、オペレーターによって差があります。

さらに、金利上昇局面では、ホテルの運営実績が多少良くても、投資口価格が素直に反応するとは限りません。市場はホテル収益だけでなく、借入コスト、分配金の持続性、NAV倍率、将来の成長余地も見ています。

今回の星野リゾート・リートと霞ヶ関ホテルリートの4月IRは、その意味で非常に示唆的でした。

星野リゾート・リートは、表面上はやや弱いものの、ADR維持や一部休館影響を考慮すれば、需要崩壊と見るのは早そうです。

霞ヶ関ホテルリートは、小幅ながらRevPARを伸ばしましたが、ADR低下と一部物件への中東情勢影響は、今後確認すべきポイントです。

2026年4月のホテルリートは、失速の月というより、銘柄差が見えた月。

当ラボとしては、今後も月次IRを追いながら、ホテルリートを「セクター全体」ではなく、「個別銘柄の収益構造」として見ていきたいと思います。


免責事項

本記事は、公開情報をもとにJ-REIT研究ラボが独自に整理・考察したものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。

記載内容には正確性を期していますが、数値や解釈に誤りが含まれる可能性があります。投資判断は、必ず各投資法人の公式IR資料、目論見書、有価証券報告書、決算説明資料等をご確認のうえ、ご自身の責任で行ってください。

また、本記事に含まれる将来見通しや考察は、執筆時点の情報に基づく推論であり、将来の運用実績、分配金、投資口価格を保証するものではありません。

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