ホテルリート月次レポート2026年6月 第一弾

目次

万博後の大阪で何が起きているのか

2026年6月のホテルリート月次IRについて、第一弾として4銘柄の状況を確認します。

今回取り上げるのは、ジャパン・ホテル・リート投資法人、インヴィンシブル投資法人、スターアジア不動産投資法人、投資法人みらいです。

例月であれば、いちごホテルリート投資法人も毎月25日前後に月次実績を公表していましたが、記事作成時点では6月分が確認できていません。そのため今回は4銘柄を先行して整理し、いちごホテル、星野リゾート・リート、霞ヶ関ホテルリートの開示後に第二弾を作成する予定です。

6月月次を一言で表すなら、ホテル需要全体が崩れたというより、大阪・関西万博特需の反動と、各ホテル本来の競争力の差が同時に表れた月だったと考えています。

中国からの訪日客減少や台風の影響も重なり、4銘柄中3銘柄で単月RevPARが前年同月を下回りました。

ただし、2025年6月は大阪・関西万博の開催期間中です。前年同月比だけを見ると、現在のホテル市況を実態以上に弱く評価する可能性があります。

そこで今回は、万博前である2024年6月の数字も確認しながら、万博効果の剥落なのか、それともホテル市況そのものが悪化しているのかを探ります。


1.6月月次の全体像

まずは4銘柄の主要指標を整理します。

銘柄集計対象稼働率ADRRevPARRevPAR前年比
ジャパン・ホテル・リート変動賃料等導入29ホテル81.2%18,509円15,023円+1.7%
インヴィンシブル国内ホテル101物件82.7%12,412円10,264円▲4.0%
スターアジア前年比較可能15ホテル87.3%12,774円11,151円▲2.0%
投資法人みらいスマイルホテル5物件79%7,901円6,207円▲12%

単月だけを見ると、JHRが唯一RevPARを伸ばし、インヴィンシブルとスターアジアは小幅な前年割れ、投資法人みらいは比較的大きな減少となりました。

ただし、集計対象のホテル数やホテルタイプ、地域構成はそれぞれ異なります。特にみらいは5物件のみであるため、大阪天王寺など一部ホテルの変動が平均値に強く表れます。

したがって、順位だけで優劣を決めるよりも、どの地域で、どの指標が、なぜ動いたのかを見る必要があります。


2.ジャパン・ホテル・リート:逆風下でもRevPARはプラス

ジャパン・ホテル・リートの6月実績は、変動賃料等導入29ホテル合計で、客室稼働率81.2%、ADR18,509円、RevPAR15,023円でした。

前年同月比では、稼働率が+0.1ポイント、ADRが+1.6%、RevPARが+1.7%です。ホテル売上高は6,045百万円で、前年同月比▲0.6%でした。

JHRは、中国から日本への渡航自粛に加え、月末に相次いだ台風によって沖縄エリアなどが影響を受けたと説明しています。

それでも宿泊部門のRevPARはプラスを維持しました。4銘柄の中では、最も安定した数字です。

一方、料飲部門の売上高は前年同月比▲7.1%でした。前年6月にヒルトン福岡シーホークで複数の大型宴会を受注していた反動が影響しています。

宿泊部門は成長したものの、料飲部門の反動減によってホテル全体の売上高はわずかに前年割れとなった形です。

ただし、1月から6月までの上半期累計では、RevPARが前年同期比+4.9%、売上高が+4.6%となりました。いずれも期初予想を上回ったと説明されています。

中国需要の減少を、中国以外の外国人需要や国内需要で補えている点は、JHRの地域・客層分散が機能している証拠と考えられます。

万博前の2024年と比べても成長

2024年6月のJHRは、稼働率82.8%、ADR17,338円、RevPAR14,355円でした。

指標2024年6月2026年6月24年比
稼働率82.8%81.2%▲1.6pt
ADR17,338円18,509円+6.8%
RevPAR14,355円15,023円+4.7%

開示対象ホテルの構成が変わっているため完全な同条件比較ではありませんが、RevPARは万博前の2024年を上回っています。

JHR全体の数字を見る限り、日本のホテル市場そのものが万博前より悪化しているとは言いにくいでしょう。


3.インヴィンシブル:稼働率は維持したが、ADRが下落

インヴィンシブルの国内ホテル101物件では、稼働率82.7%、ADR12,412円、RevPAR10,264円となりました。

前年同月比では、稼働率が▲0.1ポイント、ADRが▲3.9%、RevPARが▲4.0%です。

客室は前年並みに埋まっている一方で、販売単価が低下しました。つまり、6月の弱さは需要量よりも価格面に表れています。

運用会社は、大阪・関西万博に伴う需要の剥落、中国からの訪日客減少、相次ぐ台風の影響を要因として挙げています。

地域別では、関西の稼働率が67.5%、ADR10,334円、RevPAR6,978円となり、他地域よりも稼働率の低さが目立ちました。

一方、北海道のRevPARは13,262円、九州は11,847円でした。関西が弱い一方で、他地域がポートフォリオを支えています。

1月から6月までの累計RevPARは前年同期比+1.6%、売上高は+3.0%です。6月単月は弱かったものの、上半期全体が崩れたわけではありません。

また、7月のRevPARについては、前年同月比+1.2%程度を見込んでいます。6月のマイナスがそのまま続く想定ではないようです。

関西RevPARは2024年とほぼ同水準

万博前の2024年6月と比べると、興味深い結果になります。

関西 2024年6月 2026年6月 24年比
稼働率 80.4% 67.5% ▲12.9pt
ADR 8,645円 10,334円 +19.5%
RevPAR 6,946円 6,978円 +0.5%

2024年6月の関西RevPARは6,946円でした。2026年6月は6,978円で、ほぼ同じ水準です。

2026年は稼働率が大幅に低下していますが、ADRの上昇で補っています。

この結果からは、インヴィンシブルの関西ホテルについて、2026年の弱さの多くは市況崩壊ではなく、万博開催中だった2025年から通常水準へ戻った反動と見ることができます。

ただし、稼働率67.5%は決して高くありません。今後も客室数ベースの需要が戻らなければ、現在維持できているADRにも下押し圧力がかかる可能性があります。


4.スターアジア:大阪2物件で異なる反動の姿

スターアジアの前年比較可能15ホテルでは、稼働率87.3%、ADR12,774円、RevPAR11,151円でした。

前年同月比では稼働率が+1.4ポイント上昇した一方、ADRは▲3.5%、RevPARは▲2.0%となっています。

全体では小幅な前年割れですが、ホテル別の差はかなり大きくなりました。

KOKO HOTEL東京西葛西はRevPAR+22.3%、KOKO HOTEL銀座一丁目は+8.9%、ベストウェスタンプラス福岡天神南は+7.3%でした。

一方、大阪の2物件は大幅な前年割れです。

ホテル 稼働率 ADR RevPAR RevPAR前年比
KOKO HOTEL大阪なんば 恵美須町 75.5% 6,463円 4,882円 ▲52.5%
KOKO HOTEL大阪心斎橋 98.9% 9,095円 8,997円 ▲29.8%

大阪心斎橋は稼働率98.9%です。客室はほぼ満室ですが、ADRが前年同月比▲30.7%となりました。

これはホテル需要そのものが消えたというより、2025年の万博期間中に可能だった高単価販売が剥落した形と考えられます。

一方、大阪なんば恵美須町は稼働率とADRの双方が大きく低下しています。こちらは万博反動だけでは説明しにくい数字です。

大阪なんばは2024年も下回る

同物件の2024年6月は、稼働率89.3%、ADR7,085円、RevPAR6,327円でした。

指標 2024年6月 2026年6月 24年比
稼働率 89.3% 75.5% ▲13.8pt
ADR 7,085円 6,463円 ▲8.8%
RevPAR 6,327円 4,882円 ▲22.8%

2026年は、万博前の2024年と比べてもRevPARが約23%低くなっています。

さらに、2026年RevPAR4,882円が前年同月比▲52.5%であることから逆算すると、2025年6月は概算で約10,300円でした。

おおよその推移は、2024年約6,300円、2025年約10,300円、2026年約4,900円となります。

2025年の万博特需が非常に大きかった一方、2026年は通常水準まで戻るだけでなく、2024年も下回りました。

中国人宿泊客の減少、大阪市内の供給増加、価格競争、立地やホテル商品力など、個別要因も検討する必要がありそうです。

スターアジア全体では、第21期累計RevPARが前年比+3.1%であり、累計では予算を上回っています。したがって、投資法人全体が悪化しているわけではありません。

ただし、万博という共通の追い風がなくなったことで、ホテルごとの競争力の差が数字に表れ始めています。


5.投資法人みらい:大阪天王寺が平均を押し下げる

投資法人みらいの開示対象は、スマイルホテル5物件です。

5物件合計では、稼働率79%、ADR7,901円、RevPAR6,207円、売上高142百万円でした。

前年同月を100とすると、稼働率89、ADR99、RevPAR88、売上高87です。

4銘柄の中では最も弱い平均値ですが、物件別に見ると状況は一様ではありません。

ホテル RevPAR 前年同月比
スマイルホテル大阪天王寺 3,343円 ▲56%
スマイルホテル京都烏丸五条 5,327円 ▲9%
スマイルホテル那覇シティリゾート 5,423円 ▲15%
スマイルホテル博多駅前 11,692円 +11%
スマイルホテル名古屋栄 6,071円 +8%

大阪天王寺は、稼働率60%、ADR5,590円、RevPAR3,343円となり、RevPARと売上高はいずれも前年の44%まで低下しました。

運用会社は、中国人宿泊客の減少と、大阪・関西万博需要の剥落が重なったと説明しています。

那覇は改修工事に伴う営業停止の影響を受けましたが、ADRは前年の113%を確保しています。博多駅前と名古屋栄は稼働率・ADRともに堅調でした。

したがって、みらいの5物件平均の弱さは、ホテル全体が一様に悪化したというより、大阪天王寺と那覇の個別要因が平均値を押し下げた面が大きいと考えられます。

ただし、2026年10月期累計でもRevPARは前年同期の94%、売上高は93%です。単月だけの特殊要因ではなく、期を通じてもやや遅れが生じています。


6.万博はホテル収益をどのように押し上げたのか

今回の比較からは、大阪・関西万博のホテル収益への効果が、単なる稼働率上昇だけではなかったことが見えてきます。

ホテルの稼働率には100%という上限があります。需要が集中して満室に近づいた後は、ホテル側が収益をさらに伸ばすためには、客室単価を引き上げる必要があります。

スターアジアの大阪心斎橋では、2026年も稼働率98.9%とほぼ満室でした。

それでもRevPARが前年同月比▲29.8%となったのは、ADRが▲30.7%となったためです。

2025年は、客室が埋まっただけでなく、通常よりかなり高い価格で販売できていたと考えられます。

つまり、万博の主な効果は、稼働率を引き上げることよりも、満室に近い状態でADRを押し上げたことにあった可能性があります。

2026年の前年割れが大きく見えるのは、前年の比較対象が非常に高かったためです。

ただし、大阪なんば恵美須町や大阪天王寺のように、稼働率とADRの双方が弱いホテルもあります。

この場合は、万博特需の剥落だけでなく、ホテル間の競争や客層の変化、個別物件の競争力まで検討する必要があります。


7.6月のもう一つの共通要因:中国需要と台風

今回の4銘柄では、万博反動以外にも、中国からの訪日客減少が共通して言及されています。

また、6月末に相次いだ台風によって、沖縄を中心に航空便や宿泊需要への影響も出ました。

ただし、中国を除くインバウンド需要が全面的に弱かったわけではありません。

台湾、韓国、米国、インドなどでは、6月として過去最高の訪日客数を記録した市場もあります。

福岡、名古屋、北海道、東京の一部ホテルでは、こうした需要を取り込み、前年を上回りました。

今後のホテルリートでは、訪日客の総数だけでなく、どの国・地域からの宿泊客を取り込めているかが重要になります。

中国人比率が高いホテルと、国内客・ビジネス客・欧米豪客などに分散できているホテルでは、同じ外部環境でも数字に差が出ます。


8.6月月次の暫定評価

安定:ジャパン・ホテル・リート

単月RevPARは+1.7%、上半期累計は+4.9%でした。

中国需要減少や台風の影響を受けながらも、国内需要や他国からの訪日需要で補えています。地域・客層・ホテルタイプの分散効果が表れました。

中立:インヴィンシブル

国内101物件のRevPARは▲4.0%でしたが、上半期累計は+1.6%です。

関西RevPARも2024年とほぼ同水準であり、現段階では万博特需剥落による正常化の範囲と考えられます。ただし、関西の稼働率低下は今後も確認が必要です。

物件差が拡大:スターアジア

15ホテル平均のRevPARは▲2.0%ですが、期累計では+3.1%です。

東京・福岡には好調物件がある一方、大阪2物件は大幅減となりました。特に大阪なんば恵美須町は2024年も下回っており、継続確認が必要です。

要確認:投資法人みらい

5物件平均のRevPARは▲12%、期累計でも▲6%です。

大阪天王寺と那覇の影響が大きく、博多・名古屋は堅調です。ホテル専業リートではないため、ホテル月次だけで投資法人全体を判断するべきではありませんが、ホテル部分の回復力は確認したいところです。


9.投資家目線で見るべきポイント

今回の6月月次から、投資家が確認すべきポイントは3つあります。

1つ目:前年同月比だけで判断しない

2025年6月は万博開催中でした。

2026年の前年割れは、現在の市況が弱いからではなく、前年の特需が剥落したために発生している場合があります。

インヴィンシブルの関西RevPARが2024年並みであることは、その典型です。

2つ目:大阪を一括りにしない

大阪心斎橋のように、客室は埋まっているものの万博時の高単価が剥落したホテルがあります。

一方、大阪なんば恵美須町や大阪天王寺のように、稼働率とADRの双方が落ちているホテルもあります。

同じ大阪でも、立地、ホテルブランド、価格帯、客層によって状況は異なります。

3つ目:稼働率よりADRとRevPARを確認する

客室がほぼ満室でも、前年より安く販売していればRevPARは下がります。

ホテルリートの月次では、まずRevPAR、次にADR、そのうえで稼働率を見る必要があります。

部屋が埋まっているかだけでなく、いくらで売れているかが収益を左右します。


10.まとめ:万博後はホテル本来の競争力が問われる

2026年6月のホテルリート月次は、4銘柄中3銘柄で単月RevPARが前年割れとなりました。

しかし、その数字だけを見てホテル市況全体が悪化したと判断するのは早計です。

JHRは万博前の2024年を上回り、上半期累計でも成長を維持しています。

インヴィンシブルの関西RevPARも2024年とほぼ同水準であり、2026年の前年割れには万博特需の反動が大きく含まれていると考えられます。

一方、スターアジアの大阪なんば恵美須町や、みらいの大阪天王寺では、稼働率とADRの双方に弱さが出ました。

これは万博後に通常水準へ戻っただけではなく、ホテル間の競争や客層の変化、個別物件の競争力も影響している可能性があります。

万博という強い共通要因があった2025年は、大阪のホテルをまとめて押し上げました。

その追い風がなくなった2026年は、地域や銘柄だけでなく、ホテル一棟ごとの実力差が見えやすくなっています。

今後のホテルリート分析では、「インバウンドが増えたか」「大阪が強いか」だけでは不十分です。

どのホテルが、どの客層を、どの価格で取り込めているか。

ホテルリートは、セクター全体の成長を見る段階から、銘柄・物件ごとの選別を見る段階へ移りつつあるのかもしれません。

いちごホテル、星野リゾート・リート、霞ヶ関ホテルリートの6月月次が公表された後、第二弾として7銘柄の比較を行います。


免責事項

本記事は、各投資法人が公表した月次開示資料等をもとに、J-REIT研究ラボが独自に分析・考察したものです。内容にはAIによる文章作成支援を含みますが、最終的な構成・判断は当ラボの確認に基づいています。

本記事は特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。将来のホテル需要、客室単価、分配金、投資口価格等を保証するものでもありません。投資判断は、必ずご自身の責任と判断で行ってください。

掲載情報の正確性には注意していますが、月次数値は監査を受けていない速報値を含み、集計対象ホテルや算出方法が投資法人ごと、年度ごとに異なる場合があります。数値の転記ミスや解釈の誤りが含まれる可能性もあるため、投資にあたっては各投資法人の公式IR資料、決算短信、有価証券報告書等をご確認ください。

 

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