作成日:2026年8月25日
データソース:
- インヴィンシブル投資法人 2026年6月期(第46期)決算短信
- インヴィンシブル投資法人 2026年6月期 決算説明資料
投資法人の特徴
インヴィンシブル投資法人は、ホテルを中心に住居等にも投資するJ-REITです。
2026年6月末時点の保有資産は156物件で、このうちホテルが114物件、住居が41物件、その他が1物件です。ホテルの取得価格合計は6,433億円、客室数は19,816室に達し、投資法人によればJ-REITの中で最大規模のホテルポートフォリオを形成しています。
国内ホテルの多くでは、ホテル収益の増減を賃料に取り込む変動賃料方式を採用しています。そのため、インバウンドや国内旅行需要が伸びれば収益上昇を直接享受しやすい一方、人件費・光熱費・食材費などホテル運営費用の上昇による影響も受けます。
さらに、英領ケイマン諸島に「ウェスティン・グランドケイマン・セブンマイルビーチ・リゾート&スパ」と「ザ・サンシャイン・ホテル&スイーツ」の2ホテルを保有しており、国内ホテルREITとしては特徴的な海外資産も抱えています。
結論と総評
2026年6月期は、大阪・関西万博の反動や中国人旅行客減少という逆風を受けながらも、前年同期比では増収増益となりました。
営業収益は267億89百万円で前年同期比6.7%増、営業利益は175億64百万円で3.7%増、当期純利益は147億29百万円で2.5%増。DPUは1,930円と前年同期比35円増加し、6月期としては現商号への変更後で過去最高となっています。
ホテル需要そのものが大きく崩れた決算とは言いにくいでしょう。
国内ホテル101物件ではRevPARが前年同期比1.6%増、GOPも0.4%増加。大阪万博反動の影響が大きかった関西を除けば、RevPARは5.3%増、GOPは6.6%増でした。中国・香港以外のインバウンド需要も強く、中国人旅行客減少の穴を国内客や他国からの訪日客が相当程度補っています。
一方、今回最も重要なのはホテルの業績ではなく、金利上昇によりホテルの内部成長がそのまま投資主利益の成長につながりにくくなっていることです。
2026年6月期の支払利息は前年同期比4億85百万円増加。2027年6月期には国内・海外ホテル双方の業績改善によって営業利益4.9%増を見込む一方、支払利息が7億73百万円増えるため、当期純利益は1.0%増にとどまる予想です。
ホテルREITには宿泊料金を日々変更できるという価格転嫁上の強みがあります。しかし現在は、
ADR上昇 → 運営コスト上昇を吸収 → 金利上昇も吸収 → それでもDPUを伸ばす
必要があり、以前よりハードルは明らかに上がっています。
こうした状況を踏まえ、今回INVは2029年までDPUを年平均3%以上成長させ、年間DPU4,500円超を目指す中期目標を新設しました。
ただし、この目標は「EPUを毎年3%伸ばす」という意味ではありません。
内部成長に加え、
- 含み益の顕在化
- 物件入替
- 内部留保
- 外部成長
まで組み合わせてDPUを伸ばす計画です。ここは今回の決算を見るうえで最も重要なポイントです。
今回の「行間」
今回特に注目したい行間は以下です。
- 「DPU年3%成長」は「EPU年3%成長」ではない
- 2026年12月期DPU2,186円はEPU1,960円に内部留保226円を加えて維持
- スポンサー物件はあるが、P/NAV1倍割れで公募増資による外部成長が難しい
- 中国人旅行客減少は大きいが、他国需要がかなり補完している
- ホテルには価格転嫁力があるが、運営費と金利を同時に吸収する段階へ
- ケイマン2物件は復調した一方、新たな競争・CAPEX・行政対応リスクが浮上
- 1,000億円超の長期保有物件含み益を「守り」から「DPU成長の原資」へ転換
- 戦略的CAPEX220億円は成長投資だが、投資額としても小さくない
- 住居41物件は地味ながら非常に素直な内部成長を続けている
詳細は後段で解説します。
1.決算サマリー
前年同期比較
ホテルは季節性が大きいため、2025年12月期との単純比較よりも、投資法人が決算説明資料で採用している2025年6月期との前年同期比較を中心に見る方が実態を把握しやすいと考えます。
| 指標 | 2025年6月期 | 2026年6月期 | 増減 | 一言コメント |
|---|---|---|---|---|
| 営業収益 | 25,107百万円 | 26,789百万円 | +1,681百万円 | 取得物件・ケイマンが寄与 |
| 営業費用 | 8,172百万円 | 9,225百万円 | +1,052百万円 | 減価償却費等が増加 |
| 営業利益 | 16,935百万円 | 17,564百万円 | +628百万円 | 増収効果で増益 |
| 純利益 | 14,366百万円 | 14,729百万円 | +363百万円 | 金利負担増で伸びは限定的 |
| EPU | 約1,878円 | 1,926円 | 約+48円 | 利益成長を反映 |
| DPU | 1,895円 | 1,930円 | +35円 | 6月期として過去最高 |
| 巡航EPU | 明示なし | 明示なし | ― | 参考EPUは1,926円 |
| 自己資本比率 | 52.0% | 49.8% | ▲2.2pt | 2025年8月取得影響等 |
| 有利子負債額 | 318,454百万円 | 348,654百万円 | +30,200百万円 | 取得資金調達で増加 |
| NOI | 22,916百万円 | 24,378百万円 | +1,461百万円 | +6.4% |
| NOI利回り | 7.1% | 6.9% | ▲0.2pt | 資産増加等を反映 |
| FFO | 19,538百万円 | 20,622百万円 | +1,084百万円 | 本業キャッシュ創出力は増加 |
| 債務平均残存年数 | 約3.4年 | 2.7年 | 約▲0.7年 | 短期化 |
| 平均借入利率 | 約1.19% | 1.46% | 約+0.27pt | 金利上昇が鮮明 |
| 固定金利比率 | 62.4%前後 | 59.8% | 低下 | 約6割を維持 |
| 期末稼働率 | ― | ― | ― | 単一の全体稼働率は非開示 |
| 国内ホテル客室稼働率 | 83.9% | 84.6% | +0.8pt | 稼働率上昇 |
| 住居期末稼働率 | ― | 97.6% | ― | 高稼働 |
| 格付 | JCR A+ | JCR AA- | 1ノッチ向上 | 安定的 |
※EPUは当期純利益÷期末発行済投資口数を参考計算。2026年6月期については決算短信記載の1口当たり当期純利益1,926円を使用。
※NOI、NOI利回り、FFOは決算説明資料の「財務指標データ」を使用。NOIは投資法人定義による数値です。
※巡航EPUは今回の資料で明示的な定義・数値が示されていないため、無理に算出していません。
※固定金利比率、平均残存年数は決算説明資料34ページのグラフによります。
※ホテルと住居では稼働率の意味が異なるため、全ポートフォリオを一つの「期末稼働率」で表す数値は採用していません。
2026年6月期のNOIは243億78百万円で前年同期比6.4%増、FFOも206億22百万円へ増加しています。したがって、キャッシュ創出力という意味では決して悪い決算ではありません。
一方で、営業利益が3.7%伸びたのに対し、純利益は2.5%増にとどまりました。
最大の理由の一つが金融費用です。
支払利息は前年同期比4億85百万円増加しており、ホテル内部成長が投資主利益へ到達する途中で金融費用に吸収されています。
2.外部成長戦略
当期中の物件取得・売却はありません。
2026年6月末時点で156物件、取得価格総額は6,841億65百万円。ホテル114物件、住居41物件、その他1物件です。
今後については、スポンサーであるフォートレス・グループを通じた物件取得余地が残っています。
潜在的なスポンサーパイプラインは、主としてアイコニア・ホスピタリティが運営する約60ホテル・約7,000室です。
しかし、今回の説明資料は外部成長についてかなり率直です。
P/NAV1倍割れの状況では、増資による外部成長は容易ではない
との認識を示しています。
つまり、
「買いたい物件がない」のではなく、「物件はあるが現在の投資口価格ではエクイティ調達しにくい」
という状態です。
そのため、今後は公募増資一辺倒ではなく、
- 既存物件の売却
- 売却資金による物件入替
- 含み益の顕在化
- 内部留保活用
- 投資口価格回復後の外部成長
を組み合わせる方針です。
保有10年超物件のうち、買換特例の潜在的対象となる89物件の含み益は合計約1,024億円。
内訳は、
- ホテル48物件:約866億円
- 住居・商業41物件:約157億円
です。
この含み益は今後、単なる財務バッファではなく、物件入替やDPU成長に利用する「戦略資産」へ変わっていく可能性があります。
3.内部成長戦略
国内ホテル
2026年6月期のICN101物件は、
| 指標 | 2026年6月期 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 客室稼働率 | 84.6% | +0.8pt |
| ADR | 13,849円 | +0.7% |
| RevPAR | 11,722円 | +1.6% |
| 売上高 | 53,559百万円 | +3.0% |
| 客室売上 | 35,503百万円 | +1.7% |
| 非客室売上 | 18,056百万円 | +5.6% |
| GOP | 18,016百万円 | +0.4% |
となりました。
大阪万博需要の反動や中国人旅行客減少がありながら、RevPARは前年同期を上回っています。
特に重要なのは地域差です。
万博反動の影響が大きかった関西を除くと、
- RevPAR:+5.3%
- GOP:+6.6%
でした。
また、中国・香港以外からのインバウンド客室売上は前年同期比15.7%増。国内客も2.6%増となっており、中国市場の落ち込みを他市場が相当程度補っています。
したがって今回の決算から、
「中国人旅行客減少でホテル需要全体が弱くなった」
と評価するのはやや行き過ぎでしょう。
むしろ、
万博反動と中国需要減が関西を中心に重なったものの、日本の宿泊需要全体は依然として底堅い
と見る方が資料に整合的です。
ホテル料金の価格転嫁
ICNは中期的にADRを年率3~5%程度引き上げる方針です。
ホテルは住宅やオフィスと異なり、宿泊料金を日々変更できます。そのためインフレに対する価格転嫁力はJ-REITの中でも比較的高いと考えられます。
ただし、今回の決算では売上高が3.0%増えているのにGOPは0.4%増にとどまりました。
人件費、光熱費、食材費などの運営コスト上昇が利益を圧迫しています。
ICNは、
- 集中購買
- 電力契約切替
- ダイナミックプライシング
- 自社予約比率向上
- OTA手数料削減
- 法人需要獲得
- 宴会・会議需要拡大
などで対応しています。
今後は単純な「ADRが上がったか」だけではなく、
ADR上昇率 > 運営コスト上昇率
を維持できるかを見る必要があります。
戦略的CAPEX
2027~2029年には、戦略的CAPEXとして累計約220億円を投入する計画です。
想定償却後NOI利回りは7.0%、すべての効果が発現した場合のDPU押上げ効果は年間約200円と試算されています。
2026年の具体例では、
JRクレメントイン高松兵庫町
- 投資額:4億98百万円
- 年間賃料増加額:2億20百万円
- 予想ROI:44.2%
ホテルマイステイズ名古屋栄
- 投資額:7億79百万円
- 年間GOP増加額:92百万円
- 予想ROI:11.8%
と高いリターンを想定しています。
ただし、高松のROIにはオペレーター変更に伴う賃料形態変更効果も含まれています。
また、今後3年間で220億円という投資額自体は小さくありません。工事費上振れや休館・売止めによる機会損失についても継続確認が必要です。
住居
住居41物件は、ホテルほど目立ちませんが非常に素直な内部成長を続けています。
2026年6月期は、
- 期中平均稼働率:97.3%
- 期末稼働率:97.6%
- 新規契約賃料:従前比+3.5%
- 更新契約賃料:従前比+1.8%
- 新規・更新合計:+2.3%
- NOI:11億66百万円、前年同期比+1.8%
でした。
ネットリーシングコストも0.18か月まで低下しています。
ホテルのような大幅なアップサイドは期待しにくい一方、INVの利益変動を緩和する安定資産として一定の役割を果たしていると見られます。
4.財務戦略
財務指標
| 指標 | 2025年12月期 | 2026年6月期 | コメント |
|---|---|---|---|
| 有利子負債残高 | 348,654百万円 | 348,654百万円 | 横ばい |
| 総資産有利子負債比率 | 49.2% | 49.2% | 横ばい |
| 鑑定LTV | 42.4% | 41.9% | 含み益拡大で改善 |
| 平均借入利率 | 1.30% | 1.46% | 金利上昇 |
| 固定金利比率 | 62.4% | 59.8% | 約6割を維持 |
| 平均残存年数 | 3.0年 | 2.7年 | 短期化 |
| 格付 | JCR A+ | JCR AA- | 格上げ |
有利子負債は3,486億54百万円と大きいものの、鑑定評価額ベースのLTVは41.9%です。
2026年6月末の鑑定評価額は8,482億95百万円、含み益は2,204億21百万円、含み益率35.1%に達しており、資産価値面で一定の財務余力があります。
また、2026年5月にはJCRの格付がA+から**AA-(安定的)**へ引き上げられました。
格上げ後の借換えではスプレッドが格付変更前比で5bp低下しており、金利上昇の一部を信用力向上によって吸収しています。
一方、平均借入利率は1.30%から1.46%へ上昇しました。
決算説明資料では今後、
- 2026年12月期:1.74%
- 2027年6月期:1.86%
程度まで上昇する想定が示されています。
金利固定比率は約6割を維持していますが、借換えが進むたびに従来より高い金利水準へ置き換わるため、固定比率が高いだけで金利上昇を完全には防げません。
これは今回の決算の最大の構造的リスクです。
5.次期・次々期業績予想
| 指標 | 当期:2026年6月期 | 次期:2026年12月期予想 | 次々期:2027年6月期予想 | 一言コメント |
|---|---|---|---|---|
| 営業収益 | 26,789百万円 | 28,045百万円 | 27,935百万円 | 季節性が大きいため単純比較注意 |
| 営業費用 | 9,225百万円 | 9,663百万円 | 9,517百万円 | 減価償却等が増加 |
| 営業利益 | 17,564百万円 | 18,382百万円 | 18,417百万円 | 2027年6月は前年比+4.9% |
| 純利益 | 14,729百万円 | 14,988百万円 | 14,873百万円 | 金利上昇で利益成長は限定的 |
| 巡航EPU | 明示なし | 明示なし | 明示なし | 参考予想EPUは下記 |
| 参考EPU | 1,926円 | 1,960円 | 1,945円 | 売却益予想なし |
| DPU | 1,930円 | 2,186円 | 1,949円 | 12月期は内部留保を活用 |
業績予想は決算短信に基づきます。
2026年12月期は前年同期比では、
- 営業収益:▲1.9%
- 営業利益:▲4.8%
- 純利益:▲10.2%
となる予想です。
主な要因は、
- 万博需要剥落
- 中国人旅行客減少
- ケイマン運営委託収益減少
- シェラトン受取配当金減少
- 支払利息増加
です。
特に支払利息は前年同期比8億95百万円増加する想定です。
一方、DPUは前年同期と同じ2,186円を維持します。
ただし、予想EPUは1,960円です。
差額の226円を利益剰余金から取り崩して分配します。
したがって、2,186円というDPUを「本業利益だけで維持した」と見ることはできません。
2027年6月期はホテル業績改善により営業利益4.9%増を見込む一方、支払利息が前年同期比7億73百万円増えるため、純利益は1.0%増にとどまります。
ここにホテルREITが現在直面している状況がよく表れています。
6.その他注目すべき点
1.【ポジティブ】中国依存度低下が進んでいる
中国人旅行客の減少は無視できません。
投資法人試算では、中国人客減少によるDPU影響は約▲119円です。
ただし、この数字は中国人客室売上減少額に推定限界利益率を掛けた試算であり、「実際にDPUが119円下落した」という意味ではありません。
実際のICN101物件ではRevPARは+1.6%、関西以外では+5.3%。中国・香港以外のインバウンド客室売上は+15.7%でした。
中国市場が戻らなければ成長できない構造ではなくなりつつある点は、一定のポジティブ材料と考えます。
2.【ポジティブ】含み益2,204億円
2026年6月末の含み益は2,204億21百万円、含み益率35.1%。
1口当たりNAVは71,940円まで上昇しています。
これは金利上昇局面における財務バッファとして大きな強みです。
3.【ポジティブ】JCR格付AA-へ向上
格付向上によって借換えスプレッドが5bp低下しています。
金利そのものの上昇は防げませんが、信用力改善によって資金調達コスト上昇を少しでも抑える効果があります。
4.【ネガティブ】ホテルの値上げだけでは利益成長が追いつかなくなりつつある
ホテルはインフレに比較的強いアセットです。
しかし現在は、
- 人件費
- 光熱費
- 食材費
- 保険料
- 修繕費
- CAPEX
- 金利
が同時に上昇しています。
2026年6月期は売上+3.0%に対しGOP+0.4%。
ホテルの価格転嫁能力そのものは残っていますが、「転嫁しなければならないコスト」が増えています。
5.【中立~ネガティブ】ケイマン2ホテル
2026年6月期のケイマン2ホテルは非常に好調でした。
- RevPAR:+15.5%
- GOP:+18.8%
- 米ドルベース運営委託収益:+18.1%
です。
したがって、現時点で不採算資産とは言えません。
ただし、
- 競合ホテル新規開業
- 航空便供給
- 北米需要
- 為替
- 現地規制
- メンテナンスCAPEX
- ウェスティン増築計画
- 増築計画への異議申立て
など、国内ホテルにはない変数を多数抱えています。
収益分散効果はある一方、その代償として分析・運用上の複雑性も高い資産です。
7.専門家による「行間」の読解
1.「DPU年3%成長」と「EPU年3%成長」は別物
今回最も注意したい点です。
INVは2026年を起点として、2029年まで年間DPUを年平均3%以上成長させ、4,500円超を目指します。
しかし、DPU成長ドライバーとして、
- 内部成長
- 含み益の顕在化
- 内部留保
- 外部成長
を挙げています。
つまり、
「ホテル・住居の利益だけで4,500円を稼ぐ」目標ではありません。
物件売却益や内部留保も含めてDPUを伸ばす資本政策です。
DPU目標そのものは投資主還元策として評価できますが、本業の実力を見る場合は今後もEPUやNOIと切り分ける必要があります。
2.DPU2,186円維持は226円の内部留保補填
2026年12月期の予想EPUは1,960円。
DPUは2,186円。
差額226円は内部留保を利用します。
2026年6月末時点の内部留保は84億円、1口当たり1,102円ありますから、直ちに余力がなくなるわけではありません。
ただし、
「安定分配できる」と「利益だけで安定分配できる」は違います。
ここは2029年DPU目標を見る際にも確認しておきたい点です。
3.スポンサー物件は豊富なのに外部成長できない理由
スポンサー・パイプラインは約60ホテル、7,000室あります。
それでも外部成長はDPU成長ドライバーの4番目です。
理由は明確です。
P/NAV1倍割れだからです。
現在の投資口価格で公募増資を行えば、既存投資主1口当たり価値を希薄化させる可能性があります。
つまり、
物件不足ではなくエクイティ価格が成長の制約になっています。
今後INVがどのタイミングで外部成長を再開するかを見る際には、スポンサー・パイプラインよりも投資口価格とNAV倍率を見る方が重要になるでしょう。
4.中国人旅行客減少を過度に悲観する必要はない
会社試算では中国人客減少によるDPU影響は▲119円です。
一見すると非常に大きく見えます。
しかし実際のICN101物件は、
- 客室売上+1.7%
- RevPAR+1.6%
- 国内客売上+2.6%
- 中国・香港以外のインバウンド+15.7%
でした。
つまり、
中国人が減ったことは事実だが、その穴を他の旅行者がかなり埋めている
というのが実態に近いと考えます。
特に弱かったのは関西であり、大阪万博反動と中国客減少が重なった地域要因が大きいと見られます。
5.ホテルはインフレに強い。しかし「無敵」ではない
ホテルREITは宿泊料金を日々変えられるため、住宅・オフィスなどより価格転嫁が速いアセットです。
その強みは今回も失われていません。
しかし、価格転嫁の対象が増えています。
ADRを上げても、
- 人件費
- 食材費
- 光熱費
を吸収しなければならず、さらにREIT段階で金利上昇まで吸収しなければなりません。
2027年6月期では営業利益+4.9%に対し純利益+1.0%。
ホテル運営は成長しているのに、投資主利益はほとんど増えない。
今回の決算は、ホテルREITの金利耐性にも限界があることを示す一例と考えます。
6.復活したケイマン、しかし再び問われる「海外資産を持つ意味」
ケイマン2ホテルは一時の弱さから大きく回復しました。
その意味では、保有判断が間違っていたと断じる材料はありません。
しかし今回、再び複数の問題が出ています。
2026年12月期は団体需要の取り込み不足でGOP減少を予想。
さらに競合ホテル開業の影響、現地当局指摘への対応による厨房・ランドリー等の設備更新、ウェスティン増築計画についても不確定要素があります。
海外分散効果はありますが、国内ホテルよりも明らかに変数が多い資産です。
しかも、ウェスティンの増築まで進める場合には追加資本を投入してケイマンへのコミットメントを強めることになります。
今後INVが物件入替を積極化するのであれば、
ケイマンについても「保有継続ありき」ではなく、国内ホテルへの再投資と比較した資本効率を検証してほしい
というのが当ラボの見方です。
7.戦略的CAPEX220億円は「成長投資」と同時に新たな投資リスク
2027~29年の戦略的CAPEXは220億円。
想定償却後NOI利回り7%、年間DPU+200円という計画は魅力的です。
ただし220億円という金額は決して小さくありません。
建設・改修費が高騰する環境では、
- 工事費超過
- 工期延長
- 一時休館
- 売止め
- 想定ADRに届かない
といったリスクがあります。
CAPEXを実行したから価値が増えるのではなく、投下資本以上にGOP・NOIを伸ばせたかを案件ごとに確認する必要があります。
8.2,204億円の含み益は「安全余力」から「使う資産」へ
これまで含み益は、主に財務余力として見ることが多い指標でした。
今回の中期計画ではその位置付けが変わりました。
保有10年超の89物件に含まれる約1,024億円の含み益について、物件入替によって一部を顕在化しDPU成長に利用する方針です。
これは合理的な資本政策になり得ます。
一方、物件を売れば、その物件から将来得られたNOIも失います。
したがって今後は、
売却益がいくら出たか
だけではなく、
売却によって失ったNOIを新規取得やCAPEXで取り戻せたか
まで追う必要があります。
9.住居41物件はINVの「安定装置」
ホテル中心のINVでは、住居は脇役に見えます。
しかし、
- 期末稼働率97.6%
- 新規賃料+3.5%
- 更新賃料+1.8%
- NOI+1.8%
と、非常にきれいな成長をしています。
ホテルやケイマンのような大きな変動がなく、金利・海外旅行需要・イベントなどの影響も相対的に小さい。
規模はホテルに及びませんが、ポートフォリオ全体の利益変動を抑える役割は小さくないと考えます。
8.免責事項
本記事は公開資料に基づく情報提供を目的としており、特定銘柄の推奨を目的としたものや投資勧誘、助言を行うものではありません。
情報の正確性について:作成にあたっては生成AIを活用しており、情報の正確性・完全性を保証するものではありません。投資検討の際は、必ず投資法人が発行する一次資料(決算短信等)をご確認ください。
自己責任の原則:投資に関する最終決定は、読者ご自身の判断と責任において行ってください。本記事の利用により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いかねます。


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