ヒューリックリート投資法人(3295)決算速報レポート~資産入替えと賃料成長は進展。それでも金利上昇が利益成長を抑える構図~

作成日:2026年10月20日

データソース

  • ヒューリックリート投資法人 第25期(2026年8月期)決算短信(2026年10月19日)
  • ヒューリックリート投資法人 第25期(2026年8月期)決算説明資料(2026年10月19日)

目次

投資法人の特徴

ヒューリックリート投資法人は、ヒューリック株式会社をスポンサーとする総合型J-REITです。

2014年2月に東証REIT市場へ上場し、東京都心のオフィスや都市型商業施設を中心に、ホテルや有料老人ホームなどにも投資しています。

【証券コード:3295】
【スポンサー:ヒューリック株式会社】
【主な投資対象:オフィス・商業施設・ホテル等】
【保有物件数:62物件】
【取得価格総額:4,497億円】
【オフィス・商業施設比率:68.4%】
【ホテル比率:22.1%】
【東京圏投資比率:97.1%】
【稼働率:99.5%】
【時価LTV:40.4%】
【格付:JCR AA(安定的)】

※保有物件数、取得価格、用途構成、稼働率、時価LTVは2026年9月の資産入替えを反映した第25期決算発表時点の数値です。第25期末(2026年8月末)の保有物件数は63物件、稼働率は99.7%、時価LTVは38.4%です。

同投資法人は従来、安定的な賃貸収入を重視した運用を行ってきました。しかし、近年の金利上昇と不動産価格の変化を受け、現在は資産入替えによるポートフォリオの成長性向上に軸足を移しています。

今回の決算では、この戦略の成果と、同時に抱える課題の両方が明らかになりました。


結論と総評

賃料成長は好調。しかし利益成長には金利上昇という壁がある

第25期(2026年8月期)は、営業収益12,278百万円、営業利益6,733百万円、当期純利益5,754百万円となり、前期比で減収減益となりました。

1口当たり分配金(DPU)は4,000円で、前期4,050円から50円の減配です。

ただし、会社予想との比較では、調整後EPUが当初予想3,355円を100円上回る3,455円となりました。

この上振れには、オフィスの賃料増額やホテル変動賃料の好調、資産入替えの効果などが寄与しています。

実際、オフィスでは賃料増額が加速し、ホテルも変動賃料が予想を上回っています。

また、2026年6月と9月に実施した大型資産入替えによって、より賃料成長を期待できる物件への投資が進みました。

こうした点は評価できるでしょう。

一方、注意すべき点もあります。

第26期・第27期の業績予想では、内部成長によるEPU改善効果が、支払利息・融資関連費用の増加によってほぼ相殺される見通しです。

さらに、第27期のDPU4,000円には、現時点で譲渡が決定していない物件の売却益も織り込まれています。

当ラボでは、ヒューリックリートを「不動産の収益力改善は進む一方、それを投資主利益の成長につなげられるかが問われる段階」にあると評価します。

今回の「行間」の注目ポイント

今回の資料から、特に以下の8点を読み取りました。

  1. 賃料成長が進んでも金利上昇で利益が相殺される構図
  2. 固定金利比率の低下は意図的な財務戦略の可能性
  3. 五反田の火災と保険金収入がNOI評価に与える影響
  4. 第27期DPU4,000円に含まれる未決定の物件売却益
  5. 内部留保の活用による分配金維持と今後の余力
  6. 圧縮記帳後NOI利回りと実際の投資収益率の違い
  7. 含み益を活用した財務レバレッジの限界
  8. 高稼働率の維持と賃料増額の両立

詳細は第7章で解説します。


1.決算サマリー

第24期・第25期決算比較

指標前期:第24期当期:第25期増減一言コメント
営業収益12,653百万円12,278百万円▲375百万円賃貸収益・譲渡益が減少
営業費用5,644百万円5,545百万円▲99百万円運用報酬等が減少
営業利益7,008百万円6,733百万円▲275百万円減収により減益
純利益6,059百万円5,754百万円▲305百万円金融費用増も影響
EPU4,207円3,996円▲211円売却益等を含む
DPU4,050円4,000円▲50円会社予想どおり
調整後EPU3,647円3,455円▲192円一時益調整後も減少
自己資本比率48.1%48.2%+0.1ptほぼ横ばい
有利子負債額196,896百万円195,096百万円▲1,800百万円期末時点では減少
賃貸NOI約8,982百万円約8,617百万円約▲365百万円物件売却・火災等の影響
平均NOI利回り4.4%4.3%▲0.1pt取得価格ベース
FFO約6,237百万円約5,989百万円約▲248百万円売却益除外後も減少
債務平均残存年数3.3年3.2年▲0.1年短期化傾向
平均調達金利0.90%1.01%+0.11pt金利負担増
固定金利比率79.4%72.5%▲6.9pt変動金利活用を拡大
期末稼働率99.8%99.7%▲0.1pt高稼働維持
格付JCR AAJCR AA変化なし見通しは安定的

※金額は原則として百万円未満切捨ての公表値を使用しています。増減は表示値間の比較です。

※調整後EPUは投資法人の開示指標であり、物件譲渡益・交換差益および関連費用等を調整した数値です。

※賃貸NOIは当ラボ計算値です。計算式は「賃貸事業収益-賃貸事業費用+減価償却費」。火災保険金などの営業外収益は含みません。

※FFOは当ラボ概算値で、「当期純利益+減価償却費-不動産売却益-不動産交換差益」により算出しました。投資法人開示の1口当たりFFOとも概ね整合しています。

※平均残存年数、平均調達金利、固定金利比率は投資法人の開示値で、所定のブリッジローンを除外した計算です。

決算サマリー所見

今回の減収減益の主因は、資産入替えに伴う賃貸事業収益と譲渡益の変化です。

賃貸事業収益は前期11,416百万円から11,107百万円へ308百万円減少しました。

さらに、不動産譲渡益・交換差益の合計は、前期1,237百万円から当期1,170百万円へ減少しています。

営業費用の減少は一定の下支えとなりましたが、金融費用は前期から増加しました。

一方、当期の調整後EPUは前期を下回っているものの、会社予想は上回っています。

つまり、「前期より利益が減った」という事実と、「想定より運用成果が良かった」という事実が併存する決算です。

なお、AFFOについては注意が必要です。

投資法人開示の1口当たりAFFOは、前期3,821円から当期3,170円へ低下しています。

AFFOペイアウトレシオは106.0%から126.2%へ上昇しました。

この指標だけで分配金の持続可能性を判断することはできませんが、資本的支出を考慮した分配余力が相対的に弱まっている点は見逃せません。


2.外部成長戦略

大型資産入替えによるポートフォリオ再構築

今回の決算で、最も目立った施策の一つが資産入替えです。

第25期以降、5物件を合計745億円で取得し、5物件を合計487億円で譲渡しました。

取得物件は銀座、心斎橋などの好立地物件が中心です。

主な取得資産は以下のとおりです。

取得物件取得価格償却前NOI利回り
ヒューリック銀座ビル147億円3.3%
ヒューリック銀座ワールドタウンビル約82億円3.7%
江戸川橋富士ビル約31億円3.9%
QUARTZ SHINSAIBASHI295億円3.9%
イーストネットビルディング191億円4.1%

※取得利回りは圧縮記帳後の取得価格を用いた投資法人開示値です。取得した準共有持分等に対応する価格です。

売却側では、賃料成長余地が限られると判断したオフィスや有料老人ホームなどが対象となりました。

入替えによる収益改善

投資法人の試算では、今回の入替えにより巡航NOIが年換算484百万円、約5.4%改善する見込みです。

また、取得5物件と譲渡5物件を比較すると、

  • 平均築年数:24.6年から12.5年へ
  • 平均賃料ギャップ:▲5.7%から▲13.6%へ
  • 平均償却後NOI利回り:2.9%から3.4%へ

という変化があります。

賃料ギャップが大きいということは、現在の賃料がマーケット賃料を下回っていることを意味します。

したがって、契約更新やテナント入替えの際に賃料増額を実現できれば、将来的なNOI成長につながる可能性があります。

心斎橋への投資は新しい方向性

今回の象徴的な取得物件が、2026年9月30日に取得した「QUARTZ SHINSAIBASHI」です。

心斎橋駅直結という優れた立地にあり、商業・オフィス・ホテルの複合施設となっています。

商業施設の投資対象エリアを、東京圏に準ずる経済圏を有する地域まで拡大したことも注目されます。

これまで東京圏への集中度が高かった同投資法人にとって、大阪の一等地への投資は新たな成長機会を探る動きとも考えられます。

ただし、取得時の償却後NOI利回りは3.2%であり、現時点の収益性が非常に高い物件というわけではありません。

将来の賃料増額とテナント売上の成長が、取得の成否を左右することになるでしょう。

今後も500億円程度の資産入替えを目指す

経営陣は、追加的に500億円程度の資産入替えを目指す方針を示しています。

今後の外部成長は、単純な保有資産規模の拡大よりも、ポートフォリオの収益性と成長余地の改善を重視したものになると考えられます。


3.内部成長戦略

オフィスの賃料増額が加速

内部成長は今回の決算における重要な好材料です。

第25期のオフィスでは、9,000㎡を超える区画で賃料増額改定が実施されました。

原契約の規定に基づく自動改定を除いた賃料増額率は+6.6%となり、前期の+5.4%を上回っています。

さらに、賃料ギャップは前期▲5.1%から当期▲8.3%へ拡大しました。

これは既存賃料の引き上げが進んでいるにもかかわらず、マーケット賃料の上昇がそれ以上に進んでいることを示唆しています。

今後も一定の増賃余地が残っていると考えられます。

ただし、賃料ギャップが存在することと、実際に同じ割合の賃料増額を実現できることは別です。

契約条件、テナントの業績、移転コストなどによって、交渉結果は異なります。

商業施設では大幅な増賃を見込む

商業施設についても賃料増額が進んでいます。

第27期には約1,500㎡の区画で+23.6%の賃料増額を見込んでいます。

銀座や心斎橋などの都市型商業施設では、立地の希少性に加え、訪日外国人需要や高級ブランドの出店意欲が賃料上昇を支える可能性があります。

ただし、店舗売上の成長が鈍化すれば賃料負担が重くなるため、テナントの売上動向を継続して確認する必要があります。

ホテル変動賃料も好調

ホテル部門では、第25期の受入変動賃料が616百万円となりました。

これは予想比50百万円、8.9%の上振れです。

主な要因としては、浅草ビューホテルやグランドニッコー東京ベイ舞浜などの好調が挙げられます。

浅草ビューホテルでは、リニューアル済みエグゼクティブルームのRevPARが、リニューアル前の2024年同期比で約152%上昇しました。

ただし、対象は特定フロアであり、ホテル全体のRevPARが同じ割合で上昇したわけではありません。

リニューアル効果の定着には、ホテル全体のGOPや変動賃料を継続して見る必要があります。

高稼働率の維持

第25期末のポートフォリオ稼働率は99.7%でした。

第26期・第27期の期中平均稼働率は、いずれも99.4%を想定しています。

高稼働を維持しながら賃料増額を進めている点は評価できます。

ただし、五反田山手通ビルの火災により一部テナントの退去が見込まれているため、オフィス稼働率については若干の低下を想定しています。


4.財務戦略

期末LTVは46.6%、資産入替え後は49.2%へ

第25期末の財務状況は以下のとおりです。

指標第25期末
有利子負債総額195,096百万円
簿価LTV46.6%
時価LTV38.4%
平均調達金利1.01%
固定金利比率72.5%
平均残存期間3.2年
格付JCR AA(安定的)

2026年9月の資産入替えに伴い、212億円の借入れを実施しました。

その結果、決算発表時点の有利子負債総額は216,296百万円となり、簿価LTVは49.2%、時価LTVは40.4%まで上昇する試算です。

投資法人は時価LTV40%台前半でのコントロールを目指すとしています。

固定金利比率は意図的に引き下げ

今回の財務戦略で注目すべきなのは、固定金利比率の低下です。

決算期末固定金利比率平均調達金利
第22期88.8%0.75%
第23期85.4%0.79%
第24期79.4%0.90%
第25期72.5%1.01%

金利上昇局面で固定金利比率を引き下げることは、一見すると防御力を弱める判断に見えます。

しかし、経営陣は長短金利差の拡大を理由として、変動金利の柔軟な活用によって調達コストを抑制する方針を明示しています。

つまり、固定金利による長期的な安定性を確保するよりも、足元の調達コストを抑えることを重視した戦略と解釈できます。

金利上昇の前提

投資法人は、2026年12月に政策金利がさらに0.25%引き上げられ、1.50%程度になることを業績予想の前提としています。

この前提では、平均調達金利は第26期末に1.2%程度、第27期末に1.4%程度へ上昇する見通しです。

金利上昇を織り込んだ予想である点は評価できますが、それ以上の利上げが行われた場合には追加の負担が発生する可能性があります。

一方、長期固定金利が高止まりする環境では、変動金利の活用がコスト抑制につながる可能性もあります。

この戦略の評価は、単純な固定金利比率の高低だけでは判断できません。


5.次期・次々期業績予想

第25期実績・第26期予想・第27期予想

指標第25期実績第26期予想第27期予想一言コメント
営業収益12,278百万円12,228百万円12,655百万円売却益等の影響
営業費用5,545百万円5,738百万円6,448百万円修繕費等が増加
営業利益6,733百万円6,489百万円6,206百万円減益予想
純利益5,754百万円5,278百万円5,256百万円金融費用増も影響
調整後EPU3,455円3,622円3,304円第27期は低下
DPU4,000円4,000円4,000円維持を予想

第26期は、9月に実施した資産入替えの寄与によって、調整後EPUが3,622円へ改善する見通しです。

一方、第27期は3,304円へ低下する予想となっています。

ただし、第27期には五反田の火災関連費用やホテルの季節要因などが含まれるため、単純に本業の収益力が低下すると断定することはできません。

DPU4,000円の維持について

今回の予想で重要なのは、DPU4,000円がどのような要素によって構成されているかです。

第26期はEPU3,665円に対してDPU4,000円、第27期はEPU3,650円に対してDPU4,000円を見込んでいます。

その差額は内部留保の取崩しによって補完する計画です。

さらに第27期のEPUには、現時点で譲渡が決定していない物件の売却益が含まれています。

したがって、DPU4,000円の維持は、内部成長だけでなく、資産入替えや内部留保活用を組み合わせた分配政策に支えられているといえます。


6.その他注目すべき点

① ポジティブ:資産入替えによる将来の賃料成長余地

今回取得した5物件の平均賃料ギャップは▲13.6%です。

これは現在の賃料とマーケット賃料の間に一定の開きがあることを示しています。

今後の更新や入替え時に賃料増額を実現できれば、中長期的な利益成長につながる可能性があります。

もっとも、想定どおりの増賃を実現できるかは、契約条件や賃貸市場の動向に左右されます。

② ポジティブ:厚い含み益と高い資産価値

第25期末の含み益は900億円となり、前期末の846億円から増加しました。

1口当たりNAVも194,863円から198,588円へ上昇しています。

こうした含み益は、資産入替えや資金調達において経営上の柔軟性を高める要因となります。

ただし、含み益は確定した現金ではなく、不動産鑑定評価に基づくものです。

将来の金利上昇や不動産市況の変化によって増減する可能性があります。

③ ネガティブ:金融費用の増加

支払利息・融資関連費用は、第25期の約1,116百万円から、第27期には1,701百万円へ増加する予想です。

その一方で、内部成長によるEPU改善効果は、金融費用の増加とほぼ拮抗しています。

この状況が続く場合、賃料成長が進んでも調整後EPUが十分に増えない可能性があります。

④ ネガティブ:五反田の火災による運用上の不確実性

ヒューリック五反田山手通ビルでは、2026年2月に発生した火災の影響が続いています。

建物の一部に構造上の影響が確認されており、2027年4月の復旧を目指しています。

復旧工事費については保険金による補填を見込んでいますが、工期や保険金の受領額、復旧後のリーシング状況には不確実性があります。

特に、復旧工事の完了と賃料収入の回復は必ずしも同時ではありません。

⑤ 中立:ホテル比率の上昇

決算発表時点のホテル比率は22.1%です。

ホテルは景気や訪日外国人需要に左右されやすい面がありますが、インフレ局面では宿泊料金の改定を通じて収益を伸ばしやすい特徴もあります。

ホテルの変動賃料が成長すれば、オフィスの金利負担増を補う一助となる可能性があります。

一方、国内外の旅行需要が鈍化した場合には、業績の変動要因となるため注意が必要です。


7.専門家による「行間」の読解

ここからは、公開資料に基づく事実に加え、当ラボ独自の推論と見解を示します。

行間① 賃料成長が金利負担を上回れるかが最大の課題

今回の決算説明資料11ページには、重要な比較が掲載されています。

第26期と第27期の内部成長によるEPU改善効果は、合計+247円。

一方、同期間の支払利息・融資関連費用によるEPU押し下げ効果は、合計▲242円です。

差し引きすると、わずか+5円となります。

これは、オフィスや商業施設の賃料増額が進んでも、金利上昇によって利益成長が吸収される可能性を示しています。

もちろん、内部成長以外にも資産入替えの効果があり、両者だけで将来の業績が決まるわけではありません。

しかし、当ラボではこの比較を、今後の投資主価値を考えるうえで最重要の論点と位置付けます。

賃料成長率が金利コストの上昇を継続的に上回れるか。

ここが、今後のヒューリックリートの評価を左右する重要な条件になるでしょう。

行間② 変動金利の積極活用はリスクか、それとも合理的な選択か

固定金利比率は第22期末の88.8%から第25期末の72.5%へ低下しました。

一般に金利上昇局面では固定金利比率の高さが評価されます。

しかし、現在のように長期金利が大きく上昇した局面では、長期固定金利での資金調達そのものが高コストになる可能性があります。

決算説明資料58ページでは、固定金利と変動金利のシミュレーションが示されています。

10億円を5年間借り入れる場合、固定金利3.1%では支払利息総額155百万円となる一方、変動金利では金利上昇シナリオによって100.7百万円、140.6百万円と試算されています。

これは、一定の金利上昇を織り込んでも変動金利が有利になるケースがあることを示しています。

経営陣はこの金利差を利用して、調達コスト上昇を抑えようとしていると考えられます。

ただし、シミュレーションは特定の条件に基づくものです。

実際の政策金利やTIBORが想定以上に上昇すれば、結果は変わります。

したがって当ラボでは、固定金利比率の低下を一律に弱点とは評価しませんが、今後の金融環境に対する感応度は高まっていると考えます。

行間③ 五反田の火災による保険金収入を、通常の賃貸収益と混同してはいけない

決算説明資料5ページには、NOI成長に関する重要な注記があります。

投資法人は、2026年8月期以降のNOIについて、五反田山手通ビルの火災に関連した保険金収入を加算した「調整後NOI」を用いて成長率を比較しています。

保険金収入の対象額は、第25期98百万円、第26期222百万円、第27期734百万円です。

この調整は資料中に明記されており、投資法人が意図的に隠しているものではありません。

しかし、投資家が通常の賃貸NOIと同じ意味で受け取ってしまうと、収益力の評価を誤る可能性があります。

火災保険金は、賃料収入と性質が異なる一時的な収入だからです。

当ラボでは、保険金込みのNOI成長率を評価する場合、必ず通常の賃貸NOIの推移も併せて確認すべきと考えます。

なお、第25期の決算短信に計上された保険金収入は116百万円であり、説明資料の調整後NOIに加算された98百万円とは異なります。両者はそのまま同一視できません。

今後の焦点は、2027年4月の復旧後に、通常の賃料収入がどれだけ回復するかです。

行間④ 第27期のDPU4,000円は、未決定の物件売却も前提にしている

第27期の業績予想では、営業収益12,655百万円、当期純利益5,256百万円、DPU4,000円が見込まれています。

しかし、決算短信7ページには、現時点で譲渡を決定していない保有物件の売却を想定していると記載されています。

つまり、第27期予想には、まだ実施が決まっていない取引による譲渡益が含まれています。

投資法人は、資産入替えを継続する方針を示しているため、実際に売却が行われる可能性は十分にあります。

ただし、想定価格での譲渡が成立するか、予定した時期に実行できるかは確定していません。

DPU4,000円を評価する際には、この前提を理解しておく必要があります。

当ラボとしては、物件譲渡が実施されない場合に、どの程度のDPUを確保できるのかも確認したいところです。

行間⑤ 内部留保による分配金維持には限界がある

第25期末の利益留保額は1,171百万円、1口当たり813円相当です。

これに対し、第27期末には1口当たり129円相当まで減少する想定となっています。

内部留保は、利益変動を吸収して分配金を安定させるための有効な手段です。

そのため、内部留保の取崩し自体を否定的に評価する必要はありません。

ただし、内部留保の残高が減少すれば、将来の予期せぬ収益悪化に対応できる余地も小さくなります。

第27期以降については、巡航利益の成長や新たな譲渡益の創出が、DPU維持の重要な要素になる可能性があります。

今後、内部留保を積み増せる局面が訪れるかどうかも注目されます。

行間⑥ 取得物件のNOI利回りは、圧縮記帳後の数字に注意

今回の資産入替えでは、取得物件の償却前NOI利回り3.8%、譲渡物件3.2%という比較が示されています。

一見すると、より収益性の高い物件への入替えが進んでいるように見えます。

ただし、取得物件のNOI利回りは圧縮記帳後の想定取得価格を用いて計算されています。

一方、譲渡物件は譲渡価格を分母としているため、両者は完全に同じ条件で比較した利回りではありません。

圧縮記帳は税務上認められた処理ですが、物件取得に要する経済的な資金負担そのものが減少するわけではありません。

したがって、取得物件の利回り改善を評価する際には、実際の取得価格と圧縮記帳後の価格を区別する必要があります。

もっとも、取得物件は平均築年数が若く、賃料ギャップも大きいため、将来の成長余地という観点では評価できる要素があります。

今後は、取得時の想定利回りではなく、実際に実現したNOIや必要な資本的支出を確認することが重要でしょう。

行間⑦ 含み益を活用した成長には、財務上の限界もある

第25期末の含み益は900億円となり、前期から増加しました。

含み益が大きいことは、資産入替えや借入余力を考えるうえで有利に働きます。

実際、投資法人は時価LTV45%までの取得余力を約450億円と試算しています。

一方、2026年9月の資産入替え後の簿価LTVは49.2%まで上昇する見通しです。

今後さらに借入れを増やして資産取得を進める場合、金利負担も増える可能性があります。

また、不動産鑑定評価額が下落すれば含み益が縮小し、時価LTVも上昇することになります。

したがって、含み益の厚さは大きな強みである一方、それをどの程度まで成長投資に活用するかについては慎重な判断が求められます。

当ラボでは、今後の資産取得について、単なる資産規模の拡大ではなく、金利負担を差し引いた1口当たり利益への寄与を重視したいと考えます。

行間⑧ 高稼働率は強みだが、賃料増額との両立が課題になる

第25期末のオフィス契約稼働率は99.4%です。

しかし、第26期末には98.6%、第27期末には98.5%への低下を想定しています。

五反田山手通ビルの火災も影響しているため、稼働率の低下をそのまま賃料増額交渉の失敗と解釈することは適切ではありません。

それでも、賃料ギャップが大きい物件ほど、今後の増額交渉が重要になります。

テナント側が増額に応じなければ、退去や空室期間の発生につながる場合もあります。

反対に、稼働率維持を優先しすぎれば、マーケット賃料の上昇を十分に取り込めない可能性があります。

今後は単なる稼働率だけでなく、賃料増額率、フリーレント期間、リーシングコスト、賃料稼働率を組み合わせて評価する必要があります。


8.免責事項

本記事は、公開資料に基づく情報提供を目的としており、特定銘柄の推奨を目的としたものや、投資勧誘、助言を行うものではありません。

情報の正確性について:
本記事の作成には生成AIを活用しています。生成AIは、資料の読み取り、要約、比較、計算補助、文章作成等に利用していますが、内容に誤認、計算ミス、資料の読み違い、文脈の取り違え、情報の欠落等が含まれる可能性があります。また、生成AIの出力は必ずしも最新情報を反映しているとは限らず、公開資料の記載内容を完全に再現するものでもありません。投資検討の際は、本記事のみを根拠とせず、必ず投資法人が発行する決算短信、決算説明資料、適時開示、有価証券報告書等の一次資料をご確認ください。

推論・見解について:
本記事には、公開資料に基づく事実に加えて、当ラボによる推論、解釈、仮説、簡易計算等が含まれる場合があります。これらは将来の業績、分配金、投資口価格、不動産価格等を保証するものではありません。

自己責任の原則:
投資に関する最終決定は、読者ご自身の判断と責任において行ってください。本記事の利用により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いかねます。

J-REIT研究ラボ/高配当研究所

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