【高配当研究所 継続チェック】大末建設(1814)1Qで年間受注計画の半分を消化——好決算で株価10%高

今回は、関西発の民間建築中堅「大末建設(1814)」の2027年3月期 第1四半期決算について、継続チェックの観点から確認していきます。

所長ダル
今回は大末建設さんの最新の決算をチェックしていきましょう。車野さん、よろしくお願いします。
車野アナリスト
はい、所長。今回のQ1決算は、これまでの継続チェック項目を中心に確認していきますね。結論から申し上げますと、総合スコアはA-→A-の据え置きとなる内容と考えられます。
所長ダル
据え置きということですね。数字自体はかなり良かったように見えますが。
車野アナリスト
おっしゃる通りで、営業利益は前年同期比+165.7%、粗利率も9.42%→12.20%へ改善しています。決算発表当日には株価が前日比+10.14%と急騰しました。ただスコアの制約要因である「配当の原資」は今回も確認できておらず、そこが据え置きの理由です。順に見ていきましょう。
目次

① 会社概要

項目内容
正式名称大末建設株式会社(DAISUE CONSTRUCTION CO., LTD.)
証券コード1814(東証プライム)
代表者代表取締役社長 村尾 和則
主な事業建設事業(建築中心)並びに付帯業務。単一報告セグメント
事業特性民間建築中堅。関西から首都圏が中心で、マンションが得意分野。ミサワホームと資本業務提携
決算期3月期(第1四半期=4〜6月)
時価総額40,334百万円(’26/8/5時点、みんかぶ様)
発行済株式数10,614,225株(自己株式317,001株を含む)
現在株価3,800円(’26/8/5終値、前日比+350円・+10.14%/みんかぶ様)
中長期計画「Road to 100th anniversary〜飛躍への挑戦〜」(2024〜2030年度)

出典:2027年3月期第1四半期決算短信、2026年3月期決算短信、みんかぶ様、IRBANK様、株探様、かぶたん様

なお、設立年に関する記載は今回の確認資料に含まれていないため、断定を避けています。

所長ダル
時価総額は約403億円ということですね。単一セグメントの建設会社という理解でよいでしょうか。
車野アナリスト
はい。建設事業の単一報告セグメントで、民間建築が中心です。今回の1Qは民間建築が受注の100.0%を占める構成となっており、この点も後ほど触れていきます。

② 主要財務指標

当第1四半期実績(’26年4月1日〜6月30日/百万円)

指標’26年3月期実績当1Q実績前年同期比
売上高105,554(+18.6%)27,787+29.5%
営業利益6,579(+78.0%)2,104+165.7%
営業利益率6.2%7.6%
完成工事総利益率12.20%前年同期9.42%(+2.78pt)
経常利益6,6092,101+161.9%
親会社株主帰属四半期純利益3,800(+84.4%)1,431+188.2%
1株当たり四半期純利益365.60円139.03円+91.49円
受注高(連結)52,365+36.1%
受注高(個別)152,88251,986+37.4%
繰越工事高204,722前年度末比+13.8%

財政状態・指標

項目前期末(’26年3月)当1Q末(’26年6月)
総資産59,649百万円59,749百万円
純資産25,211百万円25,580百万円
自己資本比率42.3%42.8%
現金及び預金10,776百万円6,141百万円
有利子負債約2,750百万円約5,565百万円(短期3,000+1年内349+長期2,216)
完成工事未収入金及び契約資産39,706百万円45,971百万円
工事損失引当金24百万円21百万円
のれん計上なし計上なし
BPS2,448.81円約2,484円(試算)

通期予想・株主還元関連

指標2Q累計予想通期予想1Q進捗率(通期比)
売上高51,500百万円(+9.5%)98,400百万円(▲6.8%)28.2%
営業利益3,110百万円(+27.3%)5,750百万円(▲12.6%)36.6%
経常利益3,070百万円5,650百万円(▲14.5%)37.2%
純利益2,100百万円3,860百万円(+1.6%)37.1%
EPS202.00円371.40円37.4%
項目数値備考
’26年3月期配当183.00円(中間87円・期末96円)配当総額1,929百万円
’26年3月期配当性向50.1%DOE(純資産配当率)7.9%
’27年3月期配当予想186.00円(中間93円・期末93円)配当性向50.1%・修正の有無「無」
配当利回り4.89%(株価3,800円)みんかぶ様(’26/8/5)
PER(予)10.2倍予想EPS371.40円で試算
PBR1.53〜1.59倍みんかぶ様・1Q末BPSでの試算
ROE15.8%(’26年3月期実績)通期予想ベースでは約15.2%
みんかぶ様目標株価2,695円株価診断「割高」・個人予想「売り」

※IRBANK様(’26/8/4時点)では、PER9.2倍・PBR1.41倍・配当利回り5.39%・ROE(連)予15.31%・株主資本比率42.26%となっています。8月5日の株価急騰(+10.14%)前の水準である点にご留意ください。

※当第1四半期は四半期連結キャッシュ・フロー計算書が作成されていません(1Q短信7P)。営業CFの実額確認は第2四半期以降に持ち越しとなります。

車野アナリスト
まず押さえておきたいのは、会社の通期予想が保守的だという点です。通期は売上▲6.8%・営業利益▲12.6%・経常利益▲14.5%と減収減益を見込む計画ですが、1Qの営業利益進捗は36.6%、2Q累計予想に対しては67.7%に達しています。
所長ダル
1四半期で上期計画の3分の2を稼いでしまったということですね。
車野アナリスト
はい。株探様のデータでは1Q経常益の上期計画進捗率は68.4%で、5年平均58.5%を上回ります。前年32.2%・前々年48.9%と比べても突出した水準です。8月5日の株価急騰は、この進捗率へのサプライズ反応と考えられます。

③ 継続チェックメモ項目評価

毎回チェックする基本項目

チェック項目判定基準当1Q実績評価
売上高通期進捗が順調か27,787百万円(+29.5%)/通期進捗28.2%
営業利益計画ペースを確保しているか2,104百万円(+165.7%)/通期進捗36.6%・2Q累計比67.7%
受注高計画値近辺で推移しているか個別51,986百万円(+37.4%)/通期個別予想の47.6%を1四半期で消化×
繰越工事高1,600億円以上204,722百万円(前年度末比+13.8%)
営業CF配当総額を上回る1QはCF計算書未作成。現金▲4,635百万円・短期借入+2,900百万円△(判定保留)
年間配当予想減配・方針変更の予告なし186円据え置き、修正の有無「無」

営業CFについては概算での確認となります。1Q短信からの逆算では、現金減4,635百万円に対し財務面で借入純増約2,812百万円・配当支払約1,011百万円が生じており、営業CFはおおむね▲60億円前後のマイナスであった可能性が高いと考えられます。主因は完成工事未収入金及び契約資産の6,265百万円増(39,706→45,971、1Q短信3P)と、工事未払金・電子記録債務の合計2,537百万円減です。

建設業の1Qは工事代金の回収が薄く支払が先行しやすい季節性があります。’25年3月期も通期営業CFは▲3,059百万円でしたが、’26年3月期には+9,299百万円へ転じています。現時点で「配当の原資が毀損した」とまでは言えないものの、通期で営業CFが配当総額(約19億円)を上回るかは2Q・通期での再確認が必要と考えられます。

総評

売上・営業利益・繰越工事高・配当予想はいずれも良好で、特に営業利益は会社計画を明確に上回るペースです。一方で受注高は通期計画から大きく乖離しており×判定、営業CFは開示がなく判定保留となりました。数字の中身は良好ながら、「確認できていない項目が残る」というのが今回の実態と考えられます。

注意点①:㈱神島組関連の減損リスク

チェック項目実績評価
新たな減損損失の計上がないか1Q損益計算書に特別損失の計上なし(特別利益は固定資産売却益1百万円のみ、1Q短信5P)。3期連続の減損は回避
神島組の事業計画見直し・業績悪化の言及がないか1Q短信の経営成績概況に記載なし。継続企業の前提に関する注記も「該当事項なし」(7P)
連結純利益が会社予想に対し減損なしで進捗しているか1Q純利益1,431百万円、進捗37.1%
個別と連結の純利益の乖離が明示されているか1Q短信は個別損益を開示しておらず(個別受注実績のみ8P)、確認は2Q以降へ持ち越し-(確認不能)

’25年3月期に14億64百万円、’26年3月期に14億12百万円と2期連続で計上されていた減損損失は、今回の1Qでは計上されていません。’26年3月期は個別純利益1,916百万円に対し連結3,800百万円と個別が連結を大きく下回る状態でしたが、1Qでは減損の計上がなく、この懸念材料は一旦後退したと考えられます。ただし建設業の減損は期末に判定されることが多く、通期決算まで判断は保留すべきと考えられます。

所長ダル
前回A-にとどめた最大の理由が、この神島組さんの減損だったと記憶しています。
車野アナリスト
おっしゃる通りです。2期連続で計上されていましたので、3期連続となれば構造的な問題と受け取らざるを得ない局面でした。今回の1Qでは特別損失がゼロで、継続企業の前提に関する注記も該当なしです。最悪シナリオは回避されたと考えられます。
所長ダル
では、この懸念は解消と考えてよいのでしょうか。
車野アナリスト
そこは慎重に見たいところです。減損の判定は期末に行われることが多く、1Qで出ていないことは通期での安全を保証しません。また個別損益が開示されていないため、個別と連結の乖離が解消したかも確認できていません。「悪材料が消えた」のではなく「まだ確認できていない」という段階と考えられます。
総評

注意点①は今回、大きく改善方向と考えられます。3期連続減損という最悪シナリオは回避され、継続企業の前提に関する注記もありません。ただし減損判定は期末に集中しやすく、個別損益も非開示のため、最終的な判断は通期決算まで保留するのが妥当と考えられます。

継続ウォッチ:受注高の意図的な調整(’27年3月期計画)

チェック項目実績評価
受注高が計画値(1,093億円)近辺で推移しているか1Qだけで51,986百万円(進捗47.6%)。会社は通期予想を据え置き(1Q短信8P)×
施工人員の増員計画は進捗しているか1Qは決算補足説明資料の作成がなく(1P「作成の有無:無」)、人員データの開示なし-(確認不能)
マンション・集合住宅への依存度が極端に高まっていないか受注内訳は官公庁/民間・建築/土木の区分のみ。用途別の開示なし-(確認不能)
一般建築(冷凍冷蔵倉庫・データセンター等)の受注が拡大しているか同上。ただし民間建築が受注の100.0%を占める構成(8P)-(確認不能)

前回メモでは「計画を大幅に上回る場合は施工キャパ超過による工事採算悪化のサイン」としていました。今回はまさにその「大幅超過」に該当します。ただし現時点では採算悪化の兆候は出ていません。完成工事総利益率は前年同期9.42%(2,002/21,251)から12.20%(3,366/27,583)へ2.78pt改善しており(1Q短信5Pより算出)、むしろ選別受注と価格転嫁が進んでいる可能性が読み取れます。

一方、官公庁受注が前年同期の35百万円からゼロになり(8P)、民間比率100%となった点は、需要構造の偏りという意味では留意点と考えられます。

受注高を「×」と判定した理由

この項目の判定基準は「会社の計画通りに推移しているか」であり、業績の良し悪しを測るものではありません。実際、同じ1Qで完成工事総利益率は改善しており、受注の「質」はむしろ良化しています。そのためセクション全体の総合判定は「△(両論あり)」とし、この個別項目のみ×としています。

項目数値
’27年3月期 通期個別受注予想109,300百万円(前期比▲28.5%)
1Q個別受注実績51,986百万円(前年同期比+37.4%)
進捗率47.6%
単純な四半期ペース25.0%

季節性でも説明できません。前年1Qの構成比は24.7%(37,830百万円÷152,882百万円)で四半期ペース25%にほぼ一致しており、この会社の受注に「1Q偏重」の季節性は確認できないためです。

期間受注額四半期平均
’26年3月期 2Q〜4Q(実績)115,052百万円約38,350百万円
’27年3月期 2Q〜4Q(計画達成に必要な水準)57,314百万円約19,105百万円

1Qが+37.4%増だった直後に、残り9カ月で前年比おおむね半減が起きると想定するのは現実的とは考えにくいと思われます。進捗率47.6%は想定レンジ25%前後の約1.9倍であり、境界線上の微妙な数字ではないため、△ではなく×としています。

この×から読み取るべき可能性は3つあると考えられます。可能性A:会社の受注計画が単に保守的すぎた(ポジティブ)。可能性B:需要が想定以上に強く絞りきれなかった(中立〜ポジティブ)。可能性C:施工能力を超えた受注を抱え込んでいる(ネガティブ)。

検証項目前年同期/前期末1Q末評価
完成工事総利益率9.42%12.20%改善(採算悪化なし)
工事損失引当金24百万円21百万円減少(損失工事の増加なし)
完成工事補償引当金453百万円493百万円微増

採算悪化を示す指標はいずれも点灯しておらず、現時点では可能性AまたはBである公算が大きいと考えられます。ただし建設業の採算悪化は受注から工事進行を経て顕在化するまで時間差があります。この×は「今すぐの危険信号」ではなく、「今後1〜2年かけて答えが出る宿題」を示すマークと位置づけるのが適切だと考えられます。

所長ダル
受注が増えているのに×というのは、少し意外に感じました。
車野アナリスト
この項目は「業績が良いか」ではなく「計画通りか」を見るものなのです。会社は今期の受注を▲28.5%に絞ると説明していました。ところが1四半期で通期計画の47.6%を消化してしまいました。計画達成には残り9カ月で前年比ほぼ半減が必要という、論理的に無理のある水準です。
所長ダル
なるほど。ただ、仕事が取れること自体は悪い話ではないように思えますが。
車野アナリスト
はい、幸せな悩みという側面はあります。しかも粗利率が9.42%から12.20%へ改善していますので、安値で数を取ったわけではないことが確認できます。工事損失引当金も24百万円から21百万円へ減っています。ですのでセクション全体の判定は△としています。
所長ダル
懸念があるとすれば、どのあたりでしょうか。
車野アナリスト
繰越工事高が204,722百万円と通期売上予想の約2年分に積み上がっている点です。仕事は「取れている」段階から「こなせるか」の段階へ移っています。人員が追いつかなければ、外注費高騰・工程遅延・工事損失引当金という形で1〜2年後の利益を毀損する可能性があります。
総評

数字上は計画から明確に逸脱していますが、質(採算)は改善している状態です。総合判定は△(両論あり)としています。2Q以降は、①受注ペースが続くか、②工事損失引当金が増えないか、③会社が通期受注予想を上方修正するか、の3点で見極める必要があると考えられます。

引き続き良好なら安心できる項目

項目前回(’26年3月期)当1Q維持ラインの目安評価
自己資本比率42.3%42.8%38%以上○(改善)
有利子負債約27.5億円約55.6億円大幅増加がないか△(約2倍に増加)
ROE15.8%通期予想ベース15.2%程度12%程度以上
PBR1.35倍1.53〜1.59倍1倍を下回らないか○(ただし上振れ方向)
配当性向50.1%50.1%(予想)総還元性向50%以上
配当継続性スコアA-A-A以上への改善/B以下への悪化→(横ばい)

有利子負債について、短期借入金が100→3,000百万円へ増加していますが、これは運転資本(完成工事未収入金の6,265百万円増)を賄うための一時的な調達である可能性が高いと考えられます。M&A目的やのれん計上を伴うものではなく、貸借対照表上ものれんは計上されていません(1Q短信3〜4P)。現金預金6,141百万円に対し有利子負債5,565百万円で、辛うじてネットキャッシュを維持している状態です。前期末のネットキャッシュ約80億円からは大きく減少しており、2Q以降の回復を確認したい項目です。

株主構成ウォッチ

チェック項目実績評価
ミサワホームの保有比率に変動がないか今回の確認資料に大量保有報告書・株主名簿の情報は含まれていません-(確認不能)
fundnoteまたは新たな大量保有者の動きがないか同上-(確認不能)
自己株式取得の動き自己株式318,938→317,001株とわずかに減少(1Q短信1P)。BIP信託・ESOP信託からの交付によるものと考えられ、新規取得は確認できず

’26年3月期に総還元性向50%以上を掲げている以上、期中の自己株式取得決議の有無は2Q以降で確認したい点です。

即座に見直しが必要なシグナル(該当チェック)

シグナル判定
減配予告・方針変更(DOE4%・総還元性向50%の撤廃)該当なし(186円据え置き、修正の有無「無」)
営業CFが再びマイナスに転落判定保留(1QはCF計算書非開示。概算ではマイナスの可能性が高いが季節要因と考えられる)
受注高が前年比▲20%超で2期連続減少該当なし(+37.4%増)
自己資本比率が35%を下回る該当なし(42.8%へ改善)
神島組関連で3期連続の減損該当なし(1Q時点で特別損失ゼロ)
大型のれん発生・有利子負債の急増一部該当(軽度)。のれんなし。有利子負債は約2倍だが運転資金性と考えられる
ミサワホームによる大量売却確認不能(情報なし)
総評

即座の見直しを要するシグナルは点灯していないと考えられます。有利子負債の約2倍増は形式的には該当項目に触れますが、運転資本性でのれん発生を伴わないこと、ネットキャッシュを維持していることから、軽度と判断しています。営業CFと株主構成については情報がなく、2Q以降の確認事項として残ります。

④ 配当継続性スコア(5項目評価)

評価項目評価前回→今回解説
配当の中身○→○’27年3月期予想186円はすべて普通配当(中間93円+期末93円)。記念・特別配当の要素なし。「DOE4%以上・総還元性向50%以上」という定量方針に裏付けられ、’26年3月期実績DOE7.9%と方針を大幅に上回る水準
本業の稼ぐ力○→○1Q営業利益+165.7%、完成工事総利益率9.42%→12.20%。受注高+37.4%、繰越工事高2,047億円で約2年分の手持ち工事。通期減益予想に対し進捗36.6%と上振れ余地
財務の健全性○→○自己資本比率42.3%→42.8%へ改善。純資産25,580百万円。のれん・大型偶発債務なし。有利子負債55.6億円は総資産比9.3%にとどまり、現金6,141百万円でネットキャッシュを維持
配当の原資△→△1QはCF計算書非開示。現金46億円減・短期借入29億円増から営業CFはマイナスであった可能性。’26年3月期の営業CF9,299百万円は配当総額1,929百万円を大きく上回ったが、’25年3月期は▲3,059百万円と振れ幅が大きい
経営方針の透明性○→○業績予想・配当予想ともに「修正の有無:無」と明記。1Qの好進捗にも楽観的な上方修正に走らず、5月公表の計画を維持する保守的な姿勢
総合スコア

A-→A-(据え置き)

業績・財務の観点だけを見れば、今回の1Qはスコアを引き上げてよい内容と考えられます。特に前回A-の主因であった「神島組関連の減損リスク」は、3期連続計上が回避されたことで後退しました。

一方で、「配当の原資」に△が残るため、当ラボの判定ルールに従いA以上は付けていません。理由は、1Q時点で四半期CF計算書が作成されておらず営業CFが定量確認できないこと、逆算ベースでは営業CFがマイナスであった可能性が高いこと、過去2期の営業CFが▲30.6億円→+93.0億円と極端に振れており「毎期安定して配当総額を上回る」という確信を持つには実績が不足していることの3点です。

なお、△が1項目のみで他4項目がすべて○であること、また△の内容が「悪化」ではなく「開示がなく確認不能」に近い性質であることを踏まえると、A-の中でも上寄りの評価と考えられます。第2四半期決算で営業CFがプラス転換し配当総額を上回ることが確認できれば、Aへの引き上げを検討する余地があると考えられます。

評価ランクの凡例
クリックして評価ランクの説明を見る

S:非常に優れている/A:優れている/A-:Aの要件を満たすがBに近い注意点がある/B+:Bの要件を満たしAに近い水準にある/B:良好/B-:Bの要件を満たすがCに近い注意点がある/C+:Cの要件を満たしBに近い水準にある/C:やや懸念がある/C-:Cの要件を満たすがDに近い注意点がある/D:懸念が大きい/E:重大な懸念がある

※評価体系をS/A/A-/B+/B/B-/C+/C/C-/D/Eの11段階に変更しました。旧5段階(S/A/B/C/D)のA・B・C・Dの間にそれぞれ「+(プラス)-(マイナス)」ランクを新設しています。これは、同一ランク内でも「条件が揃えば上のランクに相当する」銘柄と「下のランクに近い懸念がある」銘柄を区別するためです。たとえばB-は「Bの要件は満たすが、Cに近い注意点を抱えている」状態を示します。

所長ダル
決算が良くて株価も上がったのに、スコアは据え置きなのですね。
車野アナリスト
はい。株価上昇は「本業の稼ぐ力」を裏付けるものですが、スコアの制約要因である「配当の原資」は解消していません。むしろ利回りが5.39%から4.89%へ低下したことで、高配当株としての投資妙味は減退しています。株価が上がることと配当継続性が高まることは、別の事象と考えられます。

⑤ 適正株価試算(普通配当逆算法)

前提となる配当方針は「DOE(純資産配当率)4%以上、かつ総還元性向50%以上」です。’27年3月期の会社予想配当は186円(配当性向50.1%)。BPS2,448.81円(’26年3月期末)を基準にすると、DOE4%のフロア配当は約98円と計算できます。

シナリオ別試算

シナリオ想定配当額想定利回り適正株価(計算式)適正株価現株価比
強気210円(EPS420円程度への上振れ・配当性向50%維持)4.5%210÷0.045約4,667円+22.8%
中立186円(会社予想の配当そのまま)5.0%186÷0.050約3,720円▲2.1%
保守的183円(増配なし・前期実績配当の据え置き)5.4%183÷0.054約3,389円▲10.8%
弱気100円(DOE4%フロア約98円とEPS200円×配当性向50%の高い方)6.0%100÷0.060約1,667円▲56.1%

弱気シナリオ:「方針を曲げざるを得ない前提条件」

以下が複合的に発生した場合、186円の維持が難しくなる可能性があると考えられます。

  • 1Qで通期計画の47.6%を消化した受注が施工能力を超え、下請確保のための外注費高騰・工程遅延から工事採算が悪化する
  • 資材価格・労務費の上昇分を、すでに受注済みの2,047億円の繰越工事に転嫁できず、工事損失引当金の大幅計上に至る
  • 民間建築100%・マンション比率の高い受注構成のもと、金利上昇等でデベロッパーの着工計画が後ろ倒しとなる
  • 神島組関連で3期目の減損が発生し、純利益が押し下げられる

この場合でも「総還元性向50%以上」「DOE4%以上」という方針自体は維持されるため、配当がゼロや大幅減配になるというより、EPS減少に連動して配当が半減する形になると考えられます。方針そのものの撤回に至るのは、営業CFが2期連続でマイナスとなり自己資本比率が35%を割る局面と考えられます。

BPS×適正PBR倍率(2点セット確認)

BPS:2,448.81円(’26年3月期末)/1Q末実質BPS 約2,484円(自己資本25,580百万円÷自己株控除後10,297,224株)

PBR倍率適正株価(計算式)位置づけ
1.00倍2,448.81×1.00 = 2,449円解散価値。理論的下限
1.20倍2,448.81×1.20 = 2,939円みんかぶ様目標株価2,695円に近い水準
1.35倍2,448.81×1.35 = 3,306円初回分析時(2026年5月)の実績水準
1.50倍2,448.81×1.50 = 3,673円8/5急騰前後の水準
1.59倍2,448.81×1.59 = 3,893円現在の表示水準(みんかぶ様)

配当逆算法の中立シナリオ3,720円は、PBR1.5倍相当の3,673円とほぼ一致します。両手法が同水準を示していることから、現在の3,800円は「中立シナリオをやや先取りした水準」と考えられます。強気シナリオ4,667円はPBR1.9倍相当であり、ROE15%超が持続することを前提とした評価であるため、実現には2Q以降の上方修正が条件になると考えられます。

8月5日の株価急騰について

8月5日の後場15時に1Q決算が発表され、終値は3,800円(前日比+350円、+10.14%)。高値3,855円(15:05)、始値3,460円、安値3,425円、出来高256,800株で、実質30分間での急騰でした。寄り付き時点では織り込みの形跡がなく、決算サプライズ反応と考えられます。

指標8/4(IRBANK様)8/5終値
株価3,450円3,800円
PER9.2倍10.1倍
PBR1.41倍1.53倍
配当利回り5.39%4.89%(▲0.50pt)
時価総額366億円403億円

需給面には留意が必要です。かぶたん様のデータでは7月31日時点の信用買い残278.4千株に対し売り残はわずか2.8千株、信用倍率99.43倍。買い残は発行済株式数10,614千株の約2.6%にあたり、8月5日の出来高256.8千株すら上回る規模です。上値では信用買いの利益確定売りが出やすく、売り残がほぼゼロのため踏み上げ期待も乏しい状況と考えられます。

所長ダル
わずか30分で+10%というのは、かなりの動きですね。何が効いたのでしょうか。
車野アナリスト
効いたのは「進捗率」というたった一つの指標だと考えられます。上期計画の経常利益30.7億円に対し1Qで21億円、進捗68.4%。過去2年は48.9%、32.2%でしたから、比較になりません。会社計画の保守性が露呈した形です。
所長ダル
決算のどこを最初に見るか、という話にもつながりそうですね。
車野アナリスト
はい。売上でも利益額でもなく、まず「計画に対してどこまで来ているか」を見るのが実践的です。会社の予想は年度初めに立てたもので、四半期ごとに答え合わせが進みます。進捗が平年を大きく上回れば上方修正の可能性が高まり、市場はそれを先回りするという構造です。
所長ダル
ただ、高配当株として買おうとしていた方には、悩ましい動きでもありますね。
車野アナリスト
おっしゃる通りです。この急騰で配当利回りは5.39%から4.89%へ低下しました。良いニュースが必ずしも良い買いタイミングを意味しない、という典型例と考えられます。
所長ダル
需給面はいかがでしょうか。
車野アナリスト
信用倍率99.43倍と偏りが大きい状態です。信用買いには返済期限がありますので、いずれ必ず売りに転じます。含み損を抱えていた買い残が急騰で含み益に変われば、利益確定売りが出やすくなります。好材料は本物ですが、需給面はむしろ逆風寄りと考えられます。
所長ダル
外部の目標株価はどうなっているのでしょうか。
車野アナリスト
みんかぶ様の目標株価は2,695円で、8月5日終値3,800円を41%下回ります。株価診断も「割高」、個人予想は「売り」です。ただしこの評価は8/5の急騰と1Q好決算を織り込む前の水準を反映している可能性があり、更新の有無を次回確認したいところです。
所長ダル
割安・割高の判断としてはいかがでしょうか。
車野アナリスト
PER10.2倍は市場平均比では依然として低位です。一方でPBRは1.53〜1.59倍と初回分析時の1.35倍から明確に切り上がっており、バリュエーション面での妙味は薄れています。「業績が良くなった分だけ株価が先に動いた」局面で、割安さで買う段階は一巡した可能性があると考えられます。

全シナリオが崩れる条件

  • 通期営業CFが2期ぶりにマイナスへ転落し、配当総額(約19億円)を賄えなくなる場合
  • 受注急増が施工キャパを超え、工事損失引当金の大幅計上により通期純利益が会社予想3,860百万円を大きく下回る場合
  • ㈱神島組関連で3期目の減損が計上され、かつグルーピング方法そのものへの疑義が生じる場合
  • DOE4%以上・総還元性向50%以上の方針が撤回・後退する場合
  • 自己資本比率が35%を下回る、または短期借入の増加が運転資本性でなく恒常的な資金不足を示す性質に変わる場合
  • ミサワホームによる大量売却など、資本業務提携の解消が生じる場合

まとめ

所長ダル
今回の大末建設さんのQ1決算、まとめると総合スコアはA-の据え置き、ということでしたね。
車野アナリスト
はい。配当の中身・本業の稼ぐ力・財務の健全性・経営方針の透明性の4項目は○で、前回A-の主因だった神島組関連の減損も3期連続を回避しました。それでもA以上に上げなかったのは、「配当の原資」に△が残るためです。
所長ダル
1Qの営業CFが分からない、という点でしたね。
車野アナリスト
そうです。1Q短信ではCF計算書が作成されておらず、逆算ではマイナスの可能性が高い状況です。ただ現金が46億円減った主因は完成工事未収入金の6,265百万円増で、これは「工事は進んだが、まだ入金されていない売上」です。建設業の1Qは資金が出ていきやすい構造ですので、この一点で悲観する必要はないと考えられます。
所長ダル
長期で配当を目的に持つ場合、どう捉えるとよいでしょうか。
車野アナリスト
DOE4%以上・総還元性向50%以上という定量方針は、業績が振れても配当のフロア(BPS2,448.81円×4%=約98円)が計算できる点で、長期保有者にとって大きな安心材料と考えられます。繰越工事高2,047億円は通期売上予想の約2年分にあたり、向こう2年の売上見通しは相応に立っています。
所長ダル
買い増しのタイミングについてはいかがでしょうか。
車野アナリスト
中立シナリオ3,720円・PBR1.5倍3,673円に対し、現在株価3,800円はすでにやや上回る位置にあります。さらなる上値は通期上方修正が条件と考えられますので、株価が中立シナリオや初回分析時のPBR1.35倍水準(3,306円)まで調整する局面を待つという選択肢も考えられます。
所長ダル
今回も丁寧に見ていただき、ありがとうございました。次回の第2四半期決算では、営業CFの実額も確認できそうですね。
車野アナリスト
はい。営業CFがプラス転換し配当総額を上回るか、会社が通期受注予想109,300百万円を上方修正するか、完成工事総利益率が12%台を維持できるか——この3点が次回の最重要チェックポイントになると考えられます。加えて工事損失引当金の増加有無、決算説明資料での施工人員の増員進捗(2025年度605名→2030年度687名)の開示も確認したいところです。

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情報基準日:2026年8月5日

本記事に登場する「車野蔵人(くるまの くろうど)」は、AIが生成した架空のキャラクターです。実在する人物・アナリストとは一切関係ありません。

© 高配当株研究所 ※本記事はAIによる分析を含みます。投資推奨ではありません。

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