はじめに
2026年7月10日、朝日新聞に「高金利『仕組み預金』解約で元本割れも 金融庁、十分な説明要請方針」という記事が掲載されました。金融庁が今夏にも銀行への監督指針を見直し、「仕組み預金」と呼ばれる商品についてリスク説明を義務化する方向だという内容です。
「仕組み預金」と聞いて、ピンとくる方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。名前だけ見ると、普通の定期預金の親戚のように感じられるかもしれません。しかし今回の一件は、個人投資家、特にFIRE(経済的自立と早期リタイア)を目指す方にとって、案外見過ごせないテーマを含んでいます。株式やREIT、ETFのような「攻めの資産」はしっかり勉強していても、現金として置いておく「守りの資産」については、意外と無防備なまま銀行の窓口トークに乗ってしまう、ということが起こりうるからです。
今回は、この規制強化のニュースを入り口に、「守りの資産をどこに置くべきか」というテーマまで掘り下げて整理してみたいと思います。
「仕組み預金」とは何か
仕組み預金とは、通常の定期預金にデリバティブ(金融派生商品)を組み込んだ、特殊な預金商品のことです。銀行の店頭やウェブサイトでは「年3%」など、通常の定期預金よりも高い金利をうたう文句で案内されることが多く、見た目にも「お得な定期預金」のように映ります。
しかし中身は、通常の定期預金とは大きく異なる2つの特徴を持っています。
1つ目は、満期を銀行側の判断で延長・繰り上げできる仕組みです。 これは「コーラブル特約」などと呼ばれ、預金者ではなく銀行側に主導権があります。市場金利が上昇していく局面では、本来ならより有利な商品に乗り換えたいところですが、満期が延長されてしまうと、低い金利のまま資金が拘束され続けることになりかねません。
2つ目は、中途解約すると元本割れの可能性があるという点です。 満期を待たずに解約しようとすると、違約金や調整金が差し引かれ、預けた金額よりも少ない金額しか戻ってこないケースがあります。全国銀行協会も、原則として中途解約ができず、例外的に解約できた場合でも受取額が元本を下回る可能性がある商品だと説明しています。
つまり「預金」という名前が与える安心感と、実際の商品性の間に、かなりのギャップがある商品だと理解しておく必要があります。
なぜ今、問題になっているのか
今回の規制強化の背景にあるのは、日本銀行の利上げです。日銀は2024年3月にマイナス金利政策を解除して以降、段階的に利上げを続けており、2026年6月には政策金利がおよそ1.0%程度まで引き上げられました。これに伴い、普通の定期預金の金利も上昇し始めています。
これまで「仕組み預金の方が普通の定期預金より有利」だった状況が、市場金利の上昇によって逆転しつつあるのです。すると、「もっと有利な商品に乗り換えたい」と考えた預金者が解約を申し出て、そこで初めて「実は簡単には解約できない」「解約すると元本が減る」という契約条件に直面する、というトラブルが各地で表面化しています。朝日新聞の記事でも、亡くなった配偶者の預金を相続しようとしたところ、中途解約扱いになり調整金の支払いを求められた、という相談事例が紹介されていました。
こうした苦情の増加を受けて、金融庁は今夏にも監督指針を改正し、解約制限のリスクなどを顧客向けの説明資料に明記するよう銀行に求める方針を固めています。月内にもパブリックコメント(意見公募)を開始し、正式な指針改正を目指す見通しです。指針に違反した銀行は、立入検査の対象になり得るとされています。
なお、こうした商品が銀行にとって重宝されてきた背景には、地方銀行を中心とした収益環境の厳しさもあると指摘されています。人口減少による融資先の減少や、長期にわたる低金利による利ざやの圧縮といった構造的な逆風の中で、仕組み預金はデリバティブ取引のマージンとして比較的安定した収益を得やすい商品だった、という見方です。商品の是非とは別に、銀行側にもこうした商品を積極的に販売する動機があった、という構図は知っておいて損はないと思います。
規制の中身をもう少し詳しく
今回の監督指針改正のポイントを整理すると、次のようになります。
- 解約制限のリスクなどを、顧客向け説明資料に明記するよう銀行に義務付ける
- 説明が不十分な銀行は、金融庁の検査・監督の対象となり得る
- 全国銀行協会も、業界の自主的な指針を見直す方向で足並みをそろえる
ここで注目したいのは、金融庁のアプローチが「商品そのものの禁止」ではなく、「説明の強化」に重きを置いている点です。仕組み預金を売ってはいけない、ということではなく、リスクをきちんと開示させたうえで、理解した人だけが契約する状態を目指す、という考え方です。これは複雑な金融商品に対する金融庁の一貫したスタンスでもあります。
言い換えれば、規制が整うまでの間は、私たち個人投資家の側が「高金利には必ず理由がある」という視点を持って、自分自身で商品性を見極める必要がある、ということでもあります。
視点転換:「守りの資産」に潜む罠
ここまでは仕組み預金そのものについての整理でしたが、少し視点を変えてみたいと思います。
FIREを目指す方、あるいはすでに達成された方の資産配分を考えると、多くの場合、株式・REIT・指数ETFといった「攻めの資産」と、預金や国債などの「守りの資産(現金クッション)」を組み合わせる形になります。株式やREITについては、投資を続ける中で自然と勉強が進み、リスクの理解も深まっていく方が多いのではないでしょうか。
一方で、現金クッションの部分は「とりあえず銀行に置いておけば安心」という感覚のまま、あまり深く考えずに放置されがちです。ところが、金利が上昇局面に入ると、「定期預金より有利ですよ」という営業トークに接する機会が増えます。株式投資に対しては警戒心を持っている方でも、「預金」という言葉には身構えずに話を聞いてしまう、ということが起こり得ます。
実はこうした罠は、仕組み預金に限った話ではありません。以前、本ラボでも取り上げた超長期の国債ETF(残存27〜30年ゾーンに投資し、常にその年限を維持し続ける「ラダー型運用」の商品)も、似た構造を持っています。「国債」という名前が与える安心感とは裏腹に、満期という出口がなく、金利変動リスクを保有期間中ずっとフルに受け続ける設計になっているためです。
つまり、「名前に安心材料(預金・国債)が含まれているのに、中身は複雑な仕組みや価格変動リスクを内包している」という商品は、今回の仕組み預金以外にも存在します。攻めの資産では自覚的にリスクを取っているのに、守りのはずの現金クッションで無自覚にリスクを取ってしまう、という逆転現象には注意が必要です。
守りの資産、何を選ぶか比較する
では、現金クッションとして具体的に何を選べばよいのか。2026年7月時点の情報をもとに、代表的な選択肢を整理してみます(金利水準は変動するため、あくまで目安としてご覧ください)。
| 選択肢 | 利回りの目安(2026年7月時点) | 流動性 | 元本の安全性・特徴 |
|---|---|---|---|
| 普通・定期預金 | キャンペーン次第で年0.1〜2%程度 | 中途解約可(利率は下がる) | 元本保証。預金保険で1金融機関1,000万円まで保護 |
| 仕組み預金 | 表面上は年3%等をうたう商品も | 原則、満期まで解約困難 | 満期延長特約・中途解約調整金により元本割れの恐れ。今回の規制強化の対象 |
| 個人向け国債・固定3年 | 年1.56% | 発行後1年で中途換金可 | 国が元利払いを保証。中途換金時は直近2回分の利子相当額を控除するのみ |
| 個人向け国債・固定5年 | 年1.95% | 同上 | 同上 |
| 個人向け国債・変動10年 | 初回年1.80%(半年ごと見直し) | 同上 | 同上。金利上昇局面で利率が追随しやすい |
| 超長期国債ETF(611A等) | 分配金利回りは相応に見える場合も | 市場でいつでも売買可能 | 満期がなく、常に長期の金利変動リスクを受け続ける設計。中上級者向け |
| MRF・MMF | 相対的に低め | ほぼ即日換金可 | 元本割れリスクは極めて低い(ゼロではない) |
こうして並べてみると、仕組み預金と超長期国債ETFは、利回りの高さの裏に「複雑な仕組み」を抱えているという点で、実は似た構造を持つ商品同士であることが見えてきます。
守りの資産を選ぶ際の判断軸:時間軸で分けて考える
現金クッションと一口に言っても、実際には性質の異なる複数のお金が混ざっていることが多いはずです。例えば、生活フロー用の資金、緊急対応用の資金、そして「数年は使わない可能性が高いが、絶対に不要とも言い切れない」余裕資金、といった具合です。
この最後の「使うかどうか微妙な資金」こそが、仕組み預金や超長期国債ETFのような商品に手を伸ばしてしまいやすい部分だと思います。ここで有効なのが、満期の異なる商品に資金を分散して配分する「ラダー型」の考え方です。

- 数カ月〜1年以内に使う可能性がある資金 → 普通預金・ネット銀行の定期預金・MRF
- 1〜3年程度は使わない見込みの資金 → 個人向け国債・固定3年
- 3〜5年、あるいはそれ以上使わない見込みの資金 → 個人向け国債・固定5年、変動10年
このように資金の性質を時間軸で仕分けたうえで、それぞれに合った「地味だが仕組みが単純な」商品を割り当てていくことで、「もう少し利回りが欲しい」という気持ちに漬け込んでくる複雑な商品に手を出すリスクを、構造的に減らすことができます。
また、複数の銀行に分けて預金を保有している場合、その理由が預金保険制度(ペイオフ)による1金融機関あたり1,000万円までの保護を意識したリスク分散であれば、それ自体は理にかなった判断だと言えます。
加えて、個人向け国債については「変動10年」と「固定5年・3年」のどちらを選ぶかも、判断材料の一つになります。変動10年は半年ごとに適用利率が見直される仕組みのため、今後さらに金利が上昇していく局面では、その動きを自動的に取り込める点がメリットです。実際、2026年に入ってからは、日銀の追加利上げを受けて固定5年から変動10年へ資金がシフトする動きも観測されています。一方、固定5年・固定3年は、購入時点の利率がそのまま満期まで確定するため、将来の受取額を見通しやすいという安心感があります。今後の金利がさらに上がると考えるか、それともこのあたりが一つの目安になると考えるかによって、選び方は変わってきます。どちらか一方に決め打ちするのではなく、資金の一部ずつを両方のタイプに振り分けておく、という組み合わせ方も一般的によく使われる考え方です。
まとめ:現金クッションは「退屈さ」こそが正解
今回の仕組み預金をめぐる規制強化のニュースは、一見すると銀行業界内の話に見えるかもしれません。しかし、その本質は「守りのはずの資産で、無自覚にリスクを取っていないか」という、資産形成に取り組むすべての人に関わるテーマだと感じます。
FIREを目指す過程では、株式やREITといった攻めの資産の勉強に目が向きがちですが、現金クッションの置き場所についても、一度立ち止まって仕組みを確認してみる価値は十分にあると思います。個人向け国債やネット銀行の定期預金は、地味で目立たない分、「仕組みを理解しないまま契約してしまうリスク」がほぼありません。守りの資産においては、この「退屈さ」こそが、実は最大の安心材料なのではないでしょうか。
新しい金融商品や規制のニュースに触れるたびに、「これは自分の資産のどの部分に関係する話か」を考える習慣を持っておくと、いざという時に慌てずに判断できるはずです。
免責事項
本記事は、公開されている報道・資料等をもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の金融商品の購入・売却・保有等を推奨するものではありません。
金融商品への投資は元本割れを含むリスクを伴います。
投資判断は、必ずご自身の責任と判断において行っていただき、具体的な取引や契約に際しては、各金融機関が交付する契約締結前交付書面・目論見書等を必ずご確認のうえ、必要に応じて金融機関や税理士・ファイナンシャルプランナー等の専門家にご相談ください。
本記事の内容は作成時点の情報に基づくものであり、金利水準や制度、商品性等は今後変更される可能性があります。
本記事は生成AIを活用して作成しています。内容の正確性には注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。
最新かつ正確な情報については、金融庁・財務省・各金融機関等の一次情報を必ずご確認ください。


コメント