はじめに ─ 「レアアース株」の顔と「赤字企業」の顔
所長ダル








1.2026年3月期はどんな決算だったのか






| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,780億円 | 1,829億円(△34.2%) |
| 売上総利益 | 260億円 | 64億円 |
| 売上総利益率 | 9.4% | 3.5% |
| 営業損益 | 25億円 | △190億円 |
| 経常損益 | 64億円 | △113億円 |
| 親会社株主帰属純損益 | 20億円 | △149億円 |
| 年間配当 | 25円 | 0円 |
売上が3分の2近くまで減り、営業段階で190億円の損失。純損失は149億円です。そして配当は、前期の25円から無配となりました。








2.ブラジル案件で何が起きたのか



- 契約対価の改訂や工期の見直しについて顧客と協議したが、合意に至らず
- 2025年7月、同社グループが仲裁を申し立て
- 一方、顧客側は工期遅延に関わる予定損害賠償金の適用を主張し、2025年10月以降、既に履行した役務への対価の支払を停止
- 結果として顧客による支払留保額が累積
- 仲裁手続きの長期化や顧客の信用状況を勘案し、契約対価の回収可能性を保守的に評価。工事完成までの費用も再精査し、工事損失を追加計上
つまり、「工事は進めたが代金が入ってこない」という状態が続いており、その回収見込みを保守的に見直した結果が、この赤字幅というわけです。






投資家として押さえておきたいのは、**「戻ってくればプラス材料、戻らなくても既に損失は計上済み」**という非対称な構造になっている点です。もちろん、追加の悪材料が出る可能性はゼロではありませんので、その点は後ほど改めて触れます。






この「自社の弱点を具体的に言語化している」という点は、私は一定の評価をしています。曖昧な反省で終わらせていないぶん、対策も具体化しやすいからです。
3.財務の傷はどの程度なのか








財務指標の変化(2025年3月期 → 2026年3月期)
- 自己資本比率:20.9% → 16.7%
- 純資産:602億円 → 437億円
- 有利子負債:519億円 → 613億円
- デットエクイティレシオ:0.86倍 → 1.41倍
- 1株当たり純資産:1,174.35円 → 742.79円
数字だけ見れば、財務体質は明確に悪化しています。実際、期末時点では借入契約に付された財務制限条項に抵触していました。






もうひとつ、見落とされがちですが重要なのがキャッシュフローです。
キャッシュ・フローの推移(億円)
| 2025/3 | 2026/3 | |
|---|---|---|
| 営業CF | △230 | +93 |
| 投資CF | △197 | +1 |
| フリーCF | △428 | +94 |
| 現金及び現金同等物期末残高 | 725 | 869 |











4.2027年3月期の会社計画 ─ 復配25円の中身






| 項目 | 2026/3実績 | 2027/3会社予想 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,829億円 | 1,900億円(+3.9%) |
| 売上総利益 | 64億円 | 280億円 |
| 売上総利益率 | 3.5% | 14.7% |
| 営業利益 | △190億円 | 30億円 |
| 経常利益 | △113億円 | 75億円 |
| 純利益 | △149億円 | 60億円 |
| 1株当たり純利益 | △255.03円 | 102.39円 |
| 年間配当 | 0円 | 25円(期末) |
| ROE | ─ | 12.9% |
前提為替レートは1米ドル=150円です。配当性向は24.4%となる計算ですね。








決算資料でも、粗利率上昇の理由として「高採算の手持ち非EPC案件の貢献」が挙げられています。EPC(設計・調達・建設)を丸ごと請け負う案件と比べ、設計やライセンス提供などの非EPC領域は利益率が高い傾向にあります。












一方、今期の受注目標は連結2,000億円ですが、持分法を含む受注高の計画も2,000億円と、前期の4,204億円から大きく下がっています。これは説明会で理由が語られていて、FPSO関係については今期はプロポーザルや見積もり、FEED(基本設計)に徹しており、年度内の新規受注には至らないと見ているとのことです。逆に言えば、そうした案件は2028年3月期に見込まれる、という説明でした。






5.新中期経営計画(2026-2030)をどう読むか



- 連結当期純利益:100億円
- ROE:12%以上(各年度)
- ストック型粗利構成比率:10%
- 共創型EP・EPC受注件数比率:50%以上
- 先端素材・ファインケミカル、バイオ医薬、O&M粗利構成比率:30%以上
説明会での補足によれば、2030年度の売上規模は2,000~2,200億円程度、粗利益率は15%程度を想定。純利益100億円の内訳イメージとしては、FPSO事業の合弁会社OFSからの持分法投資利益を保守的に50億円程度、本体と連結子会社で50億円、という説明でした。








その上で、今回の計画で私が注目しているのは、目標の数字よりも、リスク管理体制の作り替えの部分です。2025年1月に社長直下の独立組織として「プロジェクト管理本部」を新設し、拠点独自案件も含めて受注前から遂行中まで審査・モニタリングを行う体制を敷いています。受注の取り止めや契約解除の提言も辞さない牽制機能を持たせている、とも説明されています。
同時に、財務戦略ではキャッシュフローの配分イメージとして、**財務基盤強化50%、成長投資30%、株主還元20%**という優先順位を示しました。中計前半は財務基盤の回復・安定化を優先するという姿勢です。配当性向は25%以上を目安としています。自己資本比率は従来同様25%を目標として継続する方針が示されています。






6.レアアース・重要鉱物は、どう位置づけられているか






同社の資料には、レアアース関連の過去実績も整理されています。2010年のベトナム案件(FS・FEED)に始まり、インド、マレーシア(Lynas向けEPC)といった製錬分野の実績、そして2018~2022年には日本政府向けに海底採鉱・揚泥(Subsea Mining & Lifting)のFS、FEED、EP+SVを、2023~2025年にもFS・FEED・長納期品調達を手がけたと記載されています。
説明会では、内閣府のSIPプログラムについて「2025年度は海底6,000mからのレアアース泥回収技術開発に参画」と述べられており、今後の詳細は内閣府やJAMSTECへ、という案内でした。






同じ説明会で、経営陣は「次世代型地熱や重要鉱物はだいぶ先に置いており、今回の中期経営計画の中では、収益を上げるまでの事業には届かないとみている」と明言しています。つまり会社自身が、2030年度までの利益貢献は見込んでいないと言っているわけです。
さらに2030年度断面でも、フロー型(従来の受注型)とストック型の比率は9対1程度を見込むとされ、収益の柱はあくまで肥料、石油化学、FPSO、GXだと説明されています。






- 技術的な関与:実績があり、本物と考えてよい
- 短中期の利益貢献:会社自身が「今回の中計期間では届かない」と説明
- 株価の反応:ニュースフローに対して非常に敏感
この三つが揃うと、株価は材料が出た瞬間に大きく動き、材料が一巡すると業績の実態へ収れんしていく、という展開になりやすいものです。実際、2月に6,900円をつけた後、戻り高値を切り下げながら現在の水準まで調整してきた経緯は、この構図と整合的に見えます。
もちろん、政策の進展次第で再び材料視される可能性はありますし、それを否定するものではありません。ただ、「テーマで買って、業績で持ち続ける」ことができるかどうかは、投資前に一度ご自身に問うておかれるとよいでしょう。


7.8月7日ごろの第1四半期決算 ─ 何を見るべきか






① 売上総利益率が14.7%に向かっているか
今期計画の生命線はここです。前期は3.5%でした。ただし注意点として、同社はEPCという受注産業であり、案件の進捗に応じて収益を認識する会計処理を採っています。四半期ごとに利益が均等に出るビジネスではないため、単純に「4分の1に届いたか」で判断するのは適切ではありません。会社側のコメントや、通期計画の据え置き・修正の有無とあわせて読むのが実務的です。
② ブラジル案件に追加の動きがないか
仲裁の進捗、追加の工事損失引当、そして関連する開示です。前期の損失計上で保守的に見積もったとされていますが、想定外の追加損失が出ないかは最大の下振れリスクでしょう。なお、2026年2月にサブコンから提訴された件についても、会社は説明会での回答を差し控えており、続報の有無は確認しておきたいところです。
③ 持分法による投資利益(OFSの貢献)
前期は83.9億円と、営業赤字を経常赤字レベルまで押し戻す大きな役割を果たしました。今期の営業外損益計画は45億円と前期比で減る想定ですが、会社は「水準感は維持方向の見立てだが、若干堅めに数字を見込んでいる」と説明しています。ここが計画を上回れば、利益の下支えになります。
④ 受注の状況
連結受注目標は2,000億円。FPSO関連の新規受注は今期織り込んでいないという前提が維持されるのか、あるいは前倒しの動きが出るのか。肥料分野についてはインドやアフリカで案件が出てくると会社は見ています。
⑤ 財務指標の回復ペース
自己資本比率16.7%からの回復、有利子負債の推移、営業キャッシュフローの継続的なプラス。中計の目標は25%です。ここが着実に改善していれば、期末25円の配当予想の確度も相応に高まると考えられます。








**高配当研究所という看板を掲げる立場から率直に申し上げれば、現時点の利回り水準は「高配当銘柄」と呼べるものではありません。**この銘柄を見るとしたら、「今の利回りを取りに行く」のではなく、「復配が定着し、中計が進捗した先の姿を待てるか」という、時間を要する視点になるかと思います。
なお、市場の見方も一枚岩ではなく、情報サイトによってはアナリストの評価が中立、個人投資家の予想が弱気、目標株価が現値をやや下回る水準といった状況も見られます。強気・弱気の双方の見方が併存している局面だと理解しておくのが妥当でしょう。






まとめ
- 2026年3月期はブラジル向けガス火力発電案件の収支悪化により、純損失149億円・無配となった
- 一方で営業キャッシュフローはプラスに転換し、手元資金は増加。財務制限条項の抵触も決算発表までに解消済み
- 2027年3月期は純利益60億円・期末25円の復配を計画。粗利率14.7%への回復は「手持ち案件の反映」と説明されている
- 新中計(2026-2030)は2030年度純利益100億円・ROE12%以上を掲げ、中計前半は財務基盤の回復を優先する方針
- レアアース・重要鉱物は成長ドライバーに位置づけられるが、会社自身が今回の中計期間中の収益貢献は見込まないと説明している
- 8月7日ごろの第1四半期決算では、粗利率の進捗、ブラジル案件の続報、持分法投資利益、受注、財務指標の5点が確認ポイントとなる
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