はじめに
アスタリスク(6522・東証グロース)は、スマートフォンに取り付けるバーコードリーダーやRFIDリーダー「AsReader」を開発・販売する大阪の企業です。専用のハンディターミナルをスマホに置き換えることを狙い、トヨタ自動車や青山商事などに採用されています。2026年8月期の通期決算が10月15日に発表され、継続チェックの2回目として今回の内容を整理します。
同社は無配です。2026年8月期の配当は0.00円、2027年8月期の予想も0.00円です(決算短信P.1)。高配当銘柄ではないため、本記事では配当を参考値として扱い、成長性・財務・需給の視点で「今仕込むべきか」を分析します。
所長ダル


事業の内容
主力のAsReader事業は売上の約88%を占めます(1,331百万円/1,516百万円、決算短信P.16)。成長戦略の軸はRFIDで、スーパー向けの「全商品RFID化ソリューション」、スマレジとの協業、RFIDスマートカートなどを展開しています(決算説明資料P.51)。会社は2030年に売上高100億円を目標に掲げています(決算説明資料P.59-60)。
なぜ今、アスタリスクが話題なのか
8月中旬、SAM.gov(米国政府調達)への登録IRを受けて株価が急騰しました。その後、8月27日に23.8億円の新株予約権の全量行使が完了し、8月31日に大幅な下方修正が発表されました。10月15日の通期決算では来期も赤字が拡大する計画が示され、株価は前回分析時(1,989円)から半値以下の923円まで下落しています。一方、みんかぶ様の個人投資家予想では「買い」が90%を占めており、逆張りの対象として注目されていると考えられます。
今回の注目点
- 通期の売上・営業利益が当初計画を大幅に下回り、4期連続の営業赤字になった
- 23.8億円の調達でネットキャッシュが約24億円に増え、財務リスクは大きく後退した
- 新株予約権の行使・売却の実態と、信用買い残による需給の重さ
- 赤字の主因が事業ではなく全社費用にある、という決算書の読み方
会社概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 株式会社アスタリスク(Asterisk Inc.) |
| 証券コード | 6522(東証グロース) |
| 設立 | 2006年(2026年8月期が第20期であることからの逆算/決算説明資料P.17) |
| 代表者 | 代表取締役執行役員社長 鈴木規之氏(創業者) |
| 本社 | 大阪市(本社兼研究所「AsTech Osaka Building」/決算短信P.3) |
| 主な事業 | AsReader事業(スマホ装着型バーコード・RFIDリーダー等)、システムインテグレーション(SI)事業、賃貸事業 |
| 時価総額 | 84.9億円(かぶたん様、2026/10/19) |
| 決算期 | 8月 |
事業の解説
主力のAsReader事業:スマートフォンに取り付けるバーコードリーダーやRFIDリーダーを開発・販売しており、専用端末(ハンディターミナル)をスマホに置き換えることを目指しています。
主な採用実績:トヨタ自動車では、iPhoneのUSB Type-C移行に合わせて新モデル「ASR-M30S」が継続採用されました(決算説明資料P.51)。青山商事では、全店舗の約7割にあたる445店舗に新型リーダーが導入されています(決算説明資料P.50)。
市場規模:RFIDソリューションの世界市場は、2024年の1兆6,431億円から2027年には2兆3,379億円へ拡大すると予測されています(決算説明資料P.7、矢野経済研究所調べ)。同社の世界シェアは開示がなく、─(確認不能)です。
主要財務指標
| 指標 | 数値(2026年8月期・連結) | 出典 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,516百万円 | 決算短信P.1 |
| 売上成長率 | △9.0% | 決算短信P.1 |
| 営業利益 | △189百万円 | 決算短信P.1 |
| 営業利益率 | △12.5% | 決算短信P.1 |
| 純利益(親会社株主帰属) | △271百万円 | 決算短信P.1 |
| EPS | △33.91円 | 決算短信P.1 |
| BPS | 416.80円(前期221.69円) | 決算短信P.1 |
| ROE | △9.8% | 決算短信P.1 |
| ROA(総資産経常利益率) | △4.1% | 決算短信P.1 |
| ROA(純利益ベース) | 約△7.1%(当ラボ算出、期首期末平均の総資産) | 決算短信P.1から算出 |
| 自己資本比率 | 78.6%(前期62.1%) | 決算短信P.1 |
| 営業CF | △199百万円(前期+184百万円) | 決算短信P.1 |
| 現金及び預金 | 3,104百万円 | 決算短信P.7 |
| 有利子負債 | 700百万円(短期650+1年内返済予定の長期20+長期30) | 決算短信P.8 |
| ネットキャッシュ | 約2,404百万円(1株あたり約261円) | 当ラボ算出 |
| (参考)配当 | 0.00円(無配) | 決算短信P.1 |
補足
売上総利益率は改善:37.3%から40.5%に上がりました(売上総利益は621→614百万円、決算短信P.9)。
販管費は増加:747→803百万円(+7.6%)で、研究開発と人員増が主な要因です(決算短信P.9)。
経常損失が営業損失より小さい理由:経常損失(△156百万円)が営業損失(△189百万円)より小さいのは、為替差益40百万円によるものです(決算短信P.9)。
特別損失:投資有価証券評価損101百万円(CANDY HOUSE JAPAN株式)を計上し、投資有価証券の残高はゼロになりました(決算短信P.7・P.9、決算説明資料P.5)。
業績推移(過去7期+来期予想)
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 営業利益率(%) | EPS(円) | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2019/08 | 1,144 | 65 | 5.75 | 14.06 | |
| 2020/08 | 1,398 | 112 | 8.03 | 13.47 | |
| 2021/08 | 1,792 | 226 | 12.64 | 33.96 | 上場(2021年IPO) |
| 2022/08 | 2,407 | 402 | 16.62 | 46.82 | ★業績ピーク |
| 2023/08 | 1,759 | △192 | △10.91 | △24.01 | ★転換点:赤字転落 |
| 2024/08 | 1,578 | △224 | △14.24 | △54.81 | |
| 2025/08 | 1,666 | △125 | △7.54 | △24.42 | 赤字縮小 |
| 2026/08 | 1,516 | △189 | △12.5 | △33.91 | 4期連続の営業赤字。当初計画(営業利益117百万円)を大幅未達 |
| 2027/08(予) | 1,523 | △334 | △21.9 | △38.25 | 会社予想。5期連続赤字で、赤字幅は拡大する計画 |
出典:IRBANK様(2019〜2025年)、決算短信P.1(2026年実績・2027年予想)









継続チェックメモとの照合(2026年8月期 通期決算)
前回メモ(2026/8/13)の項目を、今回の通期決算で照合します。
毎回チェックする基本項目
| チェック項目 | 基準 | 実績 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 通期2,291百万円(4Qに1,107百万円が必要) | 1,516百万円(計画比△33.8%)。4Q単独は約332百万円 | × |
| 営業利益 | 117百万円(4Qに+158百万円が必要) | △189百万円。4Q単独は△148百万円 | × |
| 営業利益率 | 5%台に近づくか | △12.5% | × |
| 純利益/EPS | 予想EPS 8.38円 | △271百万円/△33.91円 | × |
| 営業CF | プラス転換 | △199百万円(中間期の△156百万円から悪化) | ×(前回の「─」を確定) |
| 年間配当 | 無配継続(修正なし) | 0.00円、来期予想も0.00円 | ○ |
| AsReaderセグメント利益 | 前年同期を上回る | 通期73.7百万円(+16.3%)。ただし4Q単独は△22百万円 | △ |
| SI事業セグメント損益 | ─ | △64.3百万円(前期△14.3百万円)。4Q単独は△52百万円 | × |
| 米国売上 | ─ | 90百万円(計画比△82.4%、前期比△31.6%) | × |
出典:決算短信P.1・P.16・P.18、決算説明資料P.9-11
注意点①:通期業績予想の達成可能性 → 大幅未達
売上・営業利益とも計画を大幅に下回りました。8月31日に、売上1,450百万円・営業利益△185百万円へ下方修正されています(決算説明資料P.5)。7月15日の3Q時点では予想を据え置いており、修正の発表日は期末日当日でした。
4Qの売上の内訳は、セグメント別でAsReader 293百万円/SI 35百万円/賃貸 3百万円、地域別で日本 306百万円/米国 17百万円/その他 7百万円です(決算説明資料P.9-10)。新サービス別の売上は開示がなく、構造的に確認できません(─)。
前回のウォッチポイントで挙げた「営業利益は未達だが、経常利益は為替差益で見かけ上改善する」パターンは、通期でも再現しました(為替差益40百万円、決算短信P.9)。









なお、来期計画の為替前提は1ドル160円です(決算短信P.4)。
注意点②:継続企業の前提・財務の質 → 重要事象等の記載は継続、ただし財務は大幅改善
継続企業の前提に関する「重要事象等」の記載は継続しています(決算短信P.4-6)。ただし会社は「重要な不確実性は認められない」と判断しており、「注記」への格上げはありません(決算短信P.14「該当事項なし」)。
一方、米国子会社の大型案件608百万円は売上計上時期が次期以降にずれ込み、受注・出荷に至らない状態が続いています(決算短信P.5、決算説明資料P.5)。単体決算では米国子会社への貸付金に対する貸倒引当金が追加計上されています(決算説明資料P.17)。計上額は今回の資料では確認できませんが、単体の営業損失△55百万円に対して経常損失が△227百万円と大きく、この差の主因と考えられます(個別業績差異のお知らせ)。
自己資本比率は66.2%から78.6%に上昇しました。ただし利益によるものではなく、増資による改善です。当座貸越枠・金融機関との協議状況の記載はなく(─)、短期借入金650百万円は据え置きです。
注意点③:新サービスの収益化進捗 → 受注の証拠はまだ薄い
| 項目 | 状況 | 判定 |
|---|---|---|
| 全商品RFID化ソリューション | 「引き合いが受注につながる」との記載はあるが、導入社名・金額は未開示(決算説明資料P.10) | △ |
| AsReader HAKOBU(リニア搬送システム) | 2026年8月5日に実店舗での実証運用を開始。受注の開示はなし(決算説明資料P.53) | △ |
| Salasee(POSレジ) | 販売開始の告知のみで、販売実績は確認できない(決算説明資料P.52) | ─ |
| AsReader GoMA(顔認証) | 西鉄ストアの全拠点導入に加え、ICT企業との業務提携が進む(決算短信P.2)。新たな導入社名は未開示 | △ |
| 特許ライセンス収益 | 開示なし。中長期の収益源として言及されるにとどまる(決算説明資料P.60) | ─ |
| 顔認証レジ実証店舗 | 連結子会社「自動レジ研究所」の事業廃止が示されており(決算説明資料P.5・P.7)、撤退した可能性が高い。ただし決算短信P.2には「実証店舗運営に関する費用は継続して発生」との文言が残り、表現が整合していない | △ |
安心確認項目
| 項目 | 現状 | 維持ライン | 判定 | 前回比 |
|---|---|---|---|---|
| 自己資本比率 | 78.6% | 60%以上 | ◎ | 改善(66.2%→78.6%) |
| ネットキャッシュ | 約2,404百万円 | プラス圏 | ◎ | 大幅改善(約373百万円→約2,404百万円) |
| AsReaderセグメント利益 | 73.7百万円(+16.3%) | 前年超え | ○ | 通期は改善、4Qは赤字 |
| 大手顧客の継続採用 | トヨタ継続、青山商事445店舗、西鉄ストア | 解除・切替なし | △ | ソフトバンク向けが361.9→173.7百万円(△52%、決算短信P.17-18) |
| 特許ポートフォリオ | 国内外で取得・権利化、韓国の技術者チームを獲得(決算説明資料P.17) | 追加取得・訴訟の有無 | ○ | 強化 |
| 創業者の保有 | トリプルウィン社+鈴木氏で3,362,000株(2022年から不変) | 1/3超を維持 | ○ | 維持(希薄化後で約36.6%) |






新株予約権(希薄化)ウォッチ:EVO FUNDの行使・売却の実態
EVO FUNDの変更報告書(2026年9月1日提出/報告義務発生日8月25日)から、行使と売却の実態が確認できました。
| 区分 | 株数 |
|---|---|
| 新株予約権の行使(7/14〜8/25) | 818,000株(第9回 575,000株+第10回 243,000株) |
| 市場内・PTSでの売却 | 891,400株 |
| 8/25時点の残高 | 株式21,200株(借株)+第10回新株予約権332,000株(保有割合3.84%) |
主な行使・売却日は、7/15(3Q決算発表日)が行使129,000株・売却146,800株、8/13(SAM.gov登録IRによる急騰の翌日)が行使289,000株・売却255,500株、8/25が行使98,000株・売却109,600株です。
残りの33.2万株は8月26〜27日に行使され、全量行使が完了しました。保有割合が5%を下回ったため、その後の売却は報告対象外で追跡できません。借株はBNPパリバ・ロンドン支店とステート・ストリートからのもので、筆頭株主(トリプルウィン社)からの借株ではありません。調達総額は第4・6・7・9・10回の合計で23億8,166万円(決算短信P.5)、発行済株式数は7,796,800株から9,196,800株へ+18.0%増えました(決算短信P.2)。
チェック結果です。資金使途は既存事業の成長、新規事業機会、成長投資(M&A 3〜5社を想定)と開示されており(決算説明資料P.4・P.57)、判定は○です。実際の資金の投下はこれから確認します。新株予約権による需給の重しは、全量行使の完了で概ね解消したと考えられ、今後の監視対象は信用買い残に移ります。
時系列は事実のみを記載しています。株価が行使価額を上回る局面で行使・売却が進むのは、このスキームの仕組みどおりの動きです。EVO FUNDが業績修正の情報を事前に得ていたことを示す資料はありません。






信用需給
| 日付 | 売り残 | 買い残 | 信用倍率 |
|---|---|---|---|
| 2026/8/7 | 130.8千株 | 917.3千株 | 7.01倍 |
| 2026/9/18 | 124.8千株 | 1,303.6千株 | 10.45倍 |
| 2026/9/25 | 124.7千株 | 1,381.3千株 | 11.08倍 |
| 2026/10/2 | 124.8千株 | 1,282.1千株 | 10.27倍 |
| 2026/10/9 | 123.4千株 | 1,198.9千株 | 9.72倍 |
出典:かぶたん様
信用倍率は7.01倍から9.72倍に上昇し、直近は低下し始めていますが水準はまだ高い状態です。買い残の規模は発行済株式数の約13.0%にあたり、9月25日時点では約15.0%に達していました。買い残は10月19日の出来高の約2.5倍、5日平均出来高(約56万株、IRBANK様)の約2.1倍あります。
買い残は急騰後ではなく、下落局面で増えました。EVO FUNDによる売却を、個人投資家の信用買いが吸収した構図の可能性があります(仮説)。



株価・バリュエーション(定点観測)
| 項目 | 前回(2026/8/13) | 今回(2026/10/19) | 変化のポイント |
|---|---|---|---|
| 株価 | 1,989円 | 923円 | △53.6% |
| PER(会社予想) | 約237倍 | 赤字のため算出不能 | 黒字予想が消えた |
| PBR | 9.24倍 | 2.21倍 | 株価の下落に加え、増資でBPSがほぼ倍増 |
| PSR | 約9.58倍 | 5.57倍 | |
| みんかぶ様目標株価 | 3,570円 | 1,355円 | △62%。アナリスト予想は「対象外」で個人予想ベース |
| 初回シナリオとの比較 | 強気3,240/中立1,600/保守838/弱気519 | 923円 | 保守シナリオに接近 |
BPS×PBR法の参照点(1,133円)は、株価が下回りました(×)。
銘柄固有の注目ポイント
SAM.gov関連の具体的な受注ニュースは確認できません(─)。M&Aも具体的な発表はなく、方針は継続しています(決算説明資料P.57)。9月の展示会での商談進捗は資料に記載がありません(─)。新材料として、RFIDスマートカートを2027年1月の米国「NRF」と3月の「RetailTech JAPAN」に出展し、2027年中の実用化を目指すとしています(決算短信P.4)。
即座に見直しが必要なシグナル
| シグナル | 判定 |
|---|---|
| 通期営業利益の大幅未達・4期連続営業赤字 | 発生 |
| 業績予想の下方修正 | 発生(8/31) |
| 継続企業の前提が「注記」へ格上げ | 発生せず |
| 自己資本比率が60%を割り込む | 発生せず(78.6%) |
| 米国子会社の閉鎖・撤退 | 発生せず(継続方針) |
| 営業CFが通期マイナスかつ悪化傾向 | 発生(+184→△199百万円) |
| 主要顧客の打ち切り | 打ち切りの開示はなし。ただしソフトバンク向けが半減(△) |
| 信用買い残が発行済株式数の15%超 | 9/25時点で約15.0%に到達(現在は13.0%) |
4項目が発生したため、投資判断を再検討しました。結論は後述の総合評価のとおりです。
事業・競争力の評価
本業の稼ぐ力:×
売上△9.0%、営業利益率△12.5%、ROE△9.8%で、来期も赤字拡大の計画です。一方、売上総利益率は40.5%に改善し、ソフトバンク向けを除いた売上は+3.0%増えています(1,304→1,343百万円)。
財務の健全性:○
現預金3,104百万円、ネットキャッシュ約24億円、自己資本比率78.6%です。来期の赤字計画が続いても、単純計算で9年程度の資金余力があります(前回は約2年分)。ただし営業CFはマイナスで、継続企業の前提に関する重要事象等の記載も残っています。
経営方針の透明性:△
2030年100億円目標、5事業部の方針、M&A方針など、資料自体は丁寧です。一方で、3Q時点で達成が算術的に困難だった計画を据え置き、期末日に修正しました。また新サービスの受注金額は開示されていません。
事業構造の特徴:赤字の正体はどこにあるのか















顧客基盤:ソフトバンク向け半減を分解する
ソフトバンク向けの売上は361.9百万円から173.7百万円に減りました(決算短信P.17-18)。この減少額(△188百万円)は全体の減収額(△150百万円)を上回ります。ソフトバンク向けを除くと、売上は+3.0%増えています。トヨタの継続採用、青山商事445店舗、西鉄ストアの全拠点導入など、顧客の広がりは着実に進んでいます。決算の数字は分解して読むと、別の景色が見えてきます。
市場環境
追い風:RFID市場は人手不足・省人化を背景に拡大が見込まれ、欧州のDPP(デジタル製品パスポート)対応も追い風です(決算説明資料P.7)。
競合:ハンディターミナル市場はキーエンスなど大手が強く、同社は「スマホへの置き換え」という切り口で挑む立場です(決算説明資料P.56)。
リスク要因
- 大型案件依存:米国608百万円・国内231百万円のように、大型案件の売上計上時期に業績が左右されやすい構造(決算説明資料P.5)
- 主要顧客:ソフトバンク向けが売上の11.5%。前期の21.7%から依存度は下がったが、売上額も半減(決算短信P.17-18)
- 在庫の積み上がり:棚卸資産が445→544百万円(+22%)と、売上が減るなかで増加。回転日数は約156日から約220日に悪化(当ラボ算出)
- 為替:米国売上の比率は約6%で営業面への影響は限定的だが、営業外損益は為替差益(40百万円)に左右されている
- 研究開発費:金額が開示されておらず、回収見込みは確認不能(─)。設備投資は23百万円、減価償却費は54百万円で、償却負担が膨らむ構造ではない
大株主・アクティビストリスク
筆頭株主は創業者の資産管理会社:筆頭株主のトリプルウィン株式会社は、代表取締役・鈴木規之氏の資産管理会社です(大量保有報告書、2022年5月20日提出)。鈴木氏個人分と合わせて3,362,000株を2022年から維持しており、希薄化後の試算では約36.6%となります。特別決議を単独で否決できる1/3を上回り、保有目的は「安定株主として長期保有」です。
その他の上位株主:2位・3位はSBI証券・楽天証券の名義で、個人投資家の信用取引に伴う保有が中心とみられます。ファンドや機関投資家は見当たりません(半期報告書、2026年2月28日現在)。アクティビストリスクは低いと考えられます。
トリプルウィン社は2022年5月時点で、保有株の87.5%(280万株)をSMBC日興証券と野村信託銀行に担保として差し入れています。現在の担保状況は確認できていません。一般論として、株価が大きく下落した局面では、担保株の処分による需給悪化リスクが潜在的に存在します。






総合評価:C-(据え置き)
業績面では、計画の大幅未達、来期の赤字拡大計画、米国案件の未計上により、前回より悪化しています。業績面だけで見ればD相当と考えられます。一方、財務・バリュエーション面では、23.8億円の調達で財務リスクは大きく後退し、PBRも9倍台から2倍台へ正常化しました。両者を相殺してC-を据え置きます。
「成長株として今仕込む価値」という観点では、収益化の証拠が出るまでは見送りが妥当と考えられます。
①米国608百万円案件の売上計上、②四半期営業黒字の2四半期連続達成、③信用買い残の100万株割れ。このいずれかが確認できれば、評価の見直しを検討できると考えられます。
適正株価試算
今期・来期ともEPSが赤字のため、会社予想EPS×PERは適用できません。強気・中立は「黒字化が実現した場合の2029年8月期の想定EPS」で、保守・弱気は「BPS×PBR」で代替します。株数9,196,800株、税率30%と仮定しています。
| シナリオ | 想定EPS(想定BPS) | 想定PER(PBR) | 適正株価 | 現株価比 |
|---|---|---|---|---|
| 強気 | FY29に売上40億円・営業利益率15% → 約46円 | PER 50倍 | 約2,280円 | +147% |
| 中立 | FY29に売上25億円(遅延案件を取り込んだ水準)・営業利益率8% → 約15円 | PER 60倍 | 約910円 | △1% |
| 保守的 | 黒字化がFY29以降へずれ込む → FY27末BPS 約379円 | PBR 1.5倍 | 約570円 | △38% |
| 弱気 | FY27の純損失が約5.5億円(EPS約△60円)→ BPS 約357円 | PBR 1.0倍 | 約360円 | △61% |
- 米国608百万円案件の失注または再延期
- SI事業の赤字拡大
- 追加の評価損・減損
- 継続企業の前提の「注記」への格上げ
- 再度のエクイティファイナンス
BPS×PBRでの確認
会社予想どおりに推移した場合、FY27末のBPSは約379円です。これに現状のPBR2.2倍をかけると約833円(△10%)になります。赤字が続く限り、BPSが目減りする分だけ株価に下押し圧力がかかる構造です。1株あたりネットキャッシュ約261円が、ひとつの下値の目安と考えられます。
みんかぶ様目標株価との比較
みんかぶ様の目標株価1,355円(現株価比+47%、個人予想ベースでアナリストは対象外)は、中立と強気の間に位置します。黒字化への期待をある程度先取りした水準と考えられます。前回の3,570円からは大きく引き下げられています。
「今仕込む」判断の目安となる株価水準・条件
| 水準・条件 | 位置づけ |
|---|---|
| 360円前後(弱気シナリオ)/261円(1株ネットキャッシュ) | 下値の目安。ここまで下がる場面は、失注や追加の財務悪化などが重なった局面と考えられます |
| 570円前後(保守シナリオ) | 株価面での仕込みの目安。BPS×PBR1.5倍の水準です |
| 900円台(現在水準) | 中立シナリオ910円とほぼ一致。黒字化の実現を相当程度織り込んでおり、割安感は乏しいと考えられます |
| 1,355円(みんかぶ様目標株価)超え | 外部評価を上回る水準で、新規の仕込みには慎重さが求められます |
新規購入は見送りと考えられます。株価水準よりも、次のいずれかの確認を待つのが妥当です。①米国608百万円案件の売上計上、②四半期営業黒字の2四半期連続達成、③信用買い残の100万株割れ。財務リスクは後退したものの、収益化の証拠はまだ出ておらず、上値には信用買い残という物理的な重石があります。
全シナリオが崩れる条件
- 継続企業の前提に関する「注記」への格上げ:財務の安心材料が一転して崩れます
- 米国子会社の閉鎖・撤退、または米国案件の失注:成長ストーリーの柱が失われます
- 再度の大型エクイティファイナンス:希薄化により1株あたり価値が目減りします
- 主要顧客(トヨタ・青山商事など)の採用打ち切り:AsReader事業の黒字基盤が揺らぎます
- 創業者の担保株の処分:安定株主構成が崩れ、需給に構造的な影響が出ます(現在の担保状況は有価証券報告書での確認が必要です)
まとめ
- 2026年8月期は売上1,516百万円(計画比△33.8%)、営業利益△189百万円で4期連続の営業赤字。来期も赤字拡大の計画
- 23.8億円の調達でネットキャッシュ約24億円、自己資本比率78.6%となり、財務リスクは大きく後退
- EVO FUNDは7〜8月に81.8万株を行使し、市場等で89.1万株を売却。前回メモの「修正条項付き」は行使価額固定型に訂正
- 赤字の主因はセグメント外の全社費用△200.2百万円。3セグメントの利益合計は+10.6百万円で、改善余地は見えやすい構造
- 信用買い残は1,199千株(発行済株式数の13%、信用倍率9.72倍)で、需給の重しが残る
- 総合評価はC-据え置き。新規購入は見送りと考えられ、確認条件は「米国案件の売上計上」「四半期黒字の2期連続」「買い残100万株割れ」






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情報基準日:作成日20261019
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