作成日:2026年7月23日
データソース:
- 日本ホテル&レジデンシャル投資法人 2026年5月期(第20期)決算短信
- 日本ホテル&レジデンシャル投資法人 2026年5月期(第20期)決算説明資料
投資法人の特徴
日本ホテル&レジデンシャル投資法人は、ホテル等と賃貸住宅等を主な投資対象とする複合型J-REITです。
かつては大江戸温泉物語関連施設への投資比率が高い投資法人でしたが、2023年12月にアパグループがスポンサーとなって以降、アパホテルを含むビジネス・シティホテルと賃貸住宅の取得を進めています。
第20期末時点の保有資産は31物件、取得価格総額は689億円です。用途別の投資比率は、大江戸温泉施設42.4%、ビジネス・シティホテル27.3%、賃貸住宅等30.3%となりました。
前期末には59.3%を占めていた大江戸温泉施設の割合が42.4%まで低下しており、スポンサー交代後の外部成長によって、ポートフォリオの分散が進んでいます。ビジネス・シティホテル7物件のうち6物件はアパホテルで、アパグループの物件供給力を活用した成長戦略が本格化しています。
結論と総評
第20期は、2025年12月に実施した公募増資と8物件取得の効果により、営業収益・営業利益・純利益はいずれも増加しました。
一方、発行済投資口数が約39%増えたことに加え、金利上昇による支払利息の増加が重なり、1口当たり当期純利益とDPUは前期を下回っています。
ただし、前期DPU2,478円には不動産売却益相当485円が含まれていました。これを控除した前期の実質的なDPU水準1,993円と比較すると、第20期DPU2,068円は75円増加しています。
したがって、今回の決算は単純な「減配決算」ではありません。
売却益を除く収益基盤は改善した一方、増資後の1口当たり成長と金利上昇への対応は、まだ検証途上にある決算
と評価するのが妥当です。
ポジティブ材料は、大江戸温泉施設のRevPAR上昇、賃貸住宅の高稼働と増賃、借入スプレッドの低下です。
反対に、ほぼ全額が変動金利とみられる借入構造、短い平均残存年数、ビジネスホテルのADR低下、次期DPUが2,000円を下回る予想は注意点です。
今回の「行間」
- 資産規模は約4割拡大したが、1口当たり利益の成長はまだ証明されていない
- 「DPU2,000円水準」は成長目標というより、当面の防衛ラインに見える
- 借入スプレッドは低下したが、変動金利のため実際の利息負担は増えている
- 大江戸温泉依存の低下は進んだが、高いキャッシュ収益の代替は容易ではない
- アパグループの好業績が、REIT保有ホテルの内部成長にそのまま波及しているわけではない
- ビジネスホテルは高稼働だが、ADRとRevPARは前年同期を下回った
- 大江戸温泉施設の好調は、客数よりもPremium化などによる単価上昇の効果が大きい
- 変動賃料増加の一部は、固定賃料から変動賃料への体系変更によるもの
- 賃料ギャップ約46百万円は成長余地だが、実現には複数期を要する
- 年間200億円の外部成長を続ける場合、将来的な追加増資の条件が重要になる
詳細は本文で解説します。
1.決算サマリー
第19期・第20期比較
| 指標 | 前期:2025年11月期 | 当期:2026年5月期 | 増減 | 一言コメント |
|---|---|---|---|---|
| 営業収益 | 1,877百万円 | 2,299百万円 | +421百万円 | 取得8物件の収益寄与 |
| 営業費用 | 881百万円 | 1,024百万円 | +143百万円 | 物件増加・運用報酬増 |
| 営業利益 | 996百万円 | 1,274百万円 | +278百万円 | 資産規模拡大で増益 |
| 純利益 | 767百万円 | 891百万円 | +123百万円 | 金融費用増が一部相殺 |
| EPU | 2,467円 | 2,064円 | ▲403円 | 増資による投資口数増加 |
| DPU | 2,478円 | 2,068円 | ▲410円 | 前期売却益485円が剥落 |
| 巡航EPU相当 | 約1,983円 | 2,061円 | 約+78円 | 売却益控除後では改善 |
| 自己資本比率 | 52.9% | 49.8% | ▲3.1pt | 借入増加により低下 |
| 有利子負債額 | 21,144百万円 | 32,956百万円 | +11,811百万円 | 8物件取得資金を調達 |
| 賃貸NOI | 1,507百万円 | 2,022百万円 | +514百万円 | 新規物件の寄与が大きい |
| NOI利回り | 6.2% | 5.7% | ▲0.5pt | 償却前鑑定NOI利回り |
| FFO | 約1,071百万円 | 約1,372百万円 | 約+301百万円 | 売却益控除後で増加 |
| 債務平均残存年数 | 1.3年 | 1.8年 | +0.5年 | 改善したが依然短い |
| 平均調達金利相当 | 約1.4% | 約1.9% | 約+0.5pt | ラボ概算。利息負担上昇 |
| 平均オールインスプレッド | 1.0% | 0.9% | ▲0.1pt | 信用条件は改善 |
| 固定債務比率 | 0%相当 | 0%相当 | 変わらず | 借入金は実質全額変動 |
| 期末稼働率 | 97.0%前後 | 97.6% | 改善 | 賃貸住宅等の期中平均 |
| 格付 | JCR A- | JCR A- | 変わらず | 見通しは安定的 |
営業収益は前期比22.5%増、営業利益は27.9%増、純利益は16.1%増となりました。取得した8物件からの収益寄与が大きく、賃貸事業収入は1,726百万円から2,299百万円へ増加しています。
一方、支払利息は148百万円から258百万円へ110百万円増加し、融資関連費用も82百万円から110百万円へ増加しました。資産規模拡大による利益増加の一部が、金融費用によって相殺されています。
※巡航EPU相当は、前期についてDPU2,478円から不動産売却益相当485円と利益超過分配10円を控除。当期は利益分配金2,061円を採用。
※FFOは「当期純利益+減価償却費-不動産等売却益」によるラボ計算。
※平均調達金利相当は、各期の支払利息を期中平均有利子負債で除し、年率換算した概算値です。実際の適用金利とは一致しない場合があります。
※固定債務比率については、借入金が実質的に全額変動金利であることから0%相当としています。
決算サマリー所見
表面上は増収増益ですが、EPUは低下しています。
これは業績が悪化したというより、純利益の増加率16.1%に対し、発行済投資口数が311,023口から432,307口へ約39%増加したことが主因です。
前期には売却益151百万円があったため、単純なEPU比較では当期を過小評価します。売却益控除後の利益水準で見ると、前期より改善しています。
したがって、第3回公募増資は現時点で完全な失敗とは言えません。ただし、資産規模を492億円から689億円へ約40%拡大した割に、DPUは2,000円前後にとどまっています。
今後、取得資産の内部成長と借換え条件の改善によって、1口当たり利益を継続的に伸ばせるかが重要です。
2.外部成長戦略
第20期は、第3回公募増資で121,284口を発行し、8物件を197億円で取得しました。
取得物件の内訳は、ホテル等4物件と賃貸住宅等4物件です。アパグループからは、次のアパホテル3物件を取得しています。
- アパホテル〈なんば北 心斎橋駅前〉
- アパホテル〈博多駅前4丁目〉
- アパホテル〈松山城西〉
これにホテルビスタ厚木、賃貸住宅4物件を加え、保有物件数は23物件から31物件、取得価格総額は492億円から689億円へ拡大しました。
ポートフォリオの変化
| 用途 | 前期末 | 当期末 | 変化 |
|---|---|---|---|
| ビジネス・シティホテル | 13.5% | 27.3% | +13.8pt |
| 賃貸住宅等 | 27.1% | 30.3% | +3.2pt |
| 大江戸温泉施設 | 59.3% | 42.4% | ▲16.9pt |
大江戸温泉施設への集中度を下げたことは、今回の外部成長における大きな成果です。
スポンサー交代後にアパホテルの比率が高まることは、もともとの戦略に沿ったものです。アパグループへの依存自体を直ちにネガティブと見る必要はありません。
アパグループは、
- 保有・開発ホテルの物件供給
- 第三者物件情報の提供
- ブリッジ・ウェアハウジング機能
- ホテル運営
- 資金調達面での信用補完
を提供するスポンサーです。
今後は、スポンサーの強みを生かしながら、年間200億円程度の物件取得を目標としています。中期的な資産規模目標は2,000億円です。
外部成長で確認すべき点
問題はアパへの依存ではなく、スポンサー物件の取得が投資主価値につながる条件で行われるかです。
今後は以下を確認する必要があります。
- 取得価格が鑑定評価額に対して妥当か
- 取得NOI利回りが資金調達コストを十分に上回るか
- 取得後にEPU・DPUが増加するか
- 1口当たりNAVが維持・向上するか
- 投資口価格が低い局面で無理な増資を行わないか
第20期末の1口当たりNAVは103,272円で、前期末109,107円から5,835円低下しました。
物件取得によって含み益総額は増えていますが、1口当たりでは薄まっています。今後の外部成長では、資産規模よりも1口当たり価値を重視する必要があります。
3.内部成長戦略
内部成長は、ホテル等と賃貸住宅等に分けて見る必要があります。
ホテル等
大江戸温泉施設
大江戸温泉施設全体の運営実績は好調でした。
| 指標 | 前年同期 | 第20期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 客室稼働率 | 78.0% | 80.3% | +2.3pt |
| ADR | 34,537円 | 39,413円 | +14.1% |
| RevPAR | 26,938円 | 31,667円 | +17.6% |
RevPAR上昇の中心は、稼働率よりもADRです。
大江戸温泉物語Premium鬼怒川観光ホテル、Premiumあたみ、わんわんリゾート西伊豆などで、改装・Premium化・商品構成の見直しが単価上昇につながった可能性があります。
特に鬼怒川観光ホテルでは、稼働率とADRの両方が上昇し、RevPARが前年同期比で大きく改善しています。
これは単なる旅行需要の回復ではなく、
バリューアップ投資によって、値上げを受け入れてもらえる施設へ転換した成果
と評価できます。
ただし、すべての施設が好調ではなく、「あわら」は弱含みました。また第22期には、エネルギーコスト上昇によるGOPの減少を見込み、大江戸温泉施設の変動賃料は減少予想です。
ビジネス・シティホテル
ビジネス・シティホテルの集計対象は、ホテルビスタ厚木を除くアパホテル6物件です。
| 指標 | 前年同期 | 第20期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 客室稼働率 | 90.2% | 90.9% | +0.7pt |
| ADR | 10,291円 | 9,946円 | ▲3.4% |
| RevPAR | 9,286円 | 9,042円 | ▲2.6% |
客室稼働率は90%を超えていますが、ADRが低下したためRevPARも前年を下回りました。
つまり、客室は埋まっているものの、価格面で力強い成長が確認できていません。
浅草橋駅前、博多駅前4丁目、松山城西は比較的好調でしたが、なんば南 大国町駅前、なんば北 心斎橋駅前、岐阜羽島駅前が全体を押し下げています。
アパグループ本体の勢いと、REIT保有ホテルの実績は分けて考える必要があります。アパ本体が好業績であっても、REITが保有する個別物件がアパグループの旗艦物件や最も収益性の高いホテルとは限りません。
スポンサーの成長力は強みですが、今後の取得候補については、個別物件の立地・商品力・ADR・取得利回りを確認する必要があります。
変動賃料
第20期の変動賃料は144百万円で、前期の105百万円から39百万円増加しました。
第21期は179百万円を見込みます。
ただし、第21期の増加には、大江戸温泉物語Premiumあたみの賃料体系変更が含まれます。固定賃料が減少する一方、変動賃料が増加するため、変動賃料34百万円増を純粋な業績成長と見ることはできません。
変動賃料が増えることで上振れ余地は高まりますが、収益の安定性はやや低下します。
賃貸住宅等
賃貸住宅等は安定した内部成長を示しました。
- 期中平均稼働率:97.6%
- 賃料単価:6,566円/坪
- 前期比賃料単価:+0.9%
- 新規契約時の増額件数割合:82.5%
- 契約更新時の増額件数割合:32.1%
高い稼働率を維持しながら、入替時を中心に賃料を引き上げています。
運用会社は、現行賃料と市場賃料の差を6か月分換算した「賃料ギャップ」を約46百万円と試算しています。
もっとも、すべての住戸が同時に退去・更新を迎えるわけではないため、この金額が短期間で利益に反映されるわけではありません。
実現には複数期を要すると見られますが、金利上昇を吸収する内部成長源として重要です。
4.財務戦略
財務指標
| 指標 | 第20期末 | コメント |
|---|---|---|
| 有利子負債残高 | 32,956百万円 | 取得資金で大幅増加 |
| 総資産LTV | 46.8% | やや高め |
| 鑑定ベースLTV | 41.2% | 含み益による余力あり |
| 想定巡航LTV | 45%程度 | 鑑定ベース |
| 平均調達期間 | 2.9年 | J-REITとして短め |
| 平均残存年数 | 1.8年 | 借換え頻度が高い |
| 平均オールインスプレッド | 0.9% | 信用条件は改善 |
| 固定金利比率 | 0%相当 | 実質全額変動金利 |
| 格付 | JCR A- | 見通し安定的 |
財務面では、信用力の改善と金利感応度の高さが同時に存在しています。
2025年12月の新規借入れでは、前回の1か月円TIBOR+0.80%から、1か月円TIBOR+0.60%へスプレッドが0.20ポイント低下しました。
2026年5月の借換えでも、保証付きのTIBOR+0.70%から、無保証のTIBOR+0.60%へ改善しています。
アパホールディングスによる債務保証も終了し、借入金は全額無担保・無保証となりました。金融機関から見た信用力が改善したことは明確なポジティブ材料です。
変動金利リスク
一方、借入金は実質的に全額が変動金利です。
支払利息は、
- 第19期:148百万円
- 第20期:258百万円
- 第21期予想:299百万円
と増加します。
第20期から第21期にかけて、支払利息の増加だけでDPUを約95円押し下げる見込みです。
スプレッドが低下しても、基準金利であるTIBORが上昇すれば、総支払金利は上がります。
したがって、
調達条件は改善しているが、利息負担は改善していない
という点が重要です。
短い平均残存年数
平均残存年数は1.8年です。
借換えによるスプレッド低減を早期に享受できる半面、市場金利が上昇する局面では、金利上昇が比較的早く全体の借入コストに反映されます。
固定金利比率の高いJ-REITと比較すると、金利上昇耐性は弱い部類に入る可能性があります。
信用不安や借換え困難を直ちに懸念する状況ではありませんが、EPU・DPUへの金利感応度は高いと考えられます。
5.次期・次々期業績予想
業績予想比較
| 指標 | 当期:2026年5月期 | 次期:2026年11月期予想 | 次々期:2027年5月期予想 | 一言コメント |
|---|---|---|---|---|
| 営業収益 | 2,299百万円 | 2,307百万円 | 2,302百万円 | ほぼ横ばい |
| 営業費用 | 1,024百万円 | 1,051百万円 | 1,063百万円 | 固都税・償却費増 |
| 営業利益 | 1,274百万円 | 1,255百万円 | 1,239百万円 | 2期連続減益予想 |
| 純利益 | 891百万円 | 856百万円 | 861百万円 | 第22期に小幅回復 |
| 巡航EPU相当 | 2,061円 | 1,982円 | 1,993円 | 2,000円前後 |
| DPU | 2,068円 | 1,989円 | 2,000円 | 2,000円水準を維持 |
第21期は営業収益が増加する一方、営業利益と純利益は減少します。
主な要因は、
- 新規取得物件の固定資産税等の通期計上
- 減価償却費の増加
- 資産運用報酬・鑑定費用の増加
- 基準金利上昇による支払利息40百万円増加
です。
一方、投資口交付費の剥落と融資関連費用の減少が一部を補います。
第22期は、大阪エリアでの万博効果剥落と、大江戸温泉施設のエネルギーコスト上昇により、変動賃料が減少する予想です。
なお、大阪・関西万博は2025年10月に終了しているため、第20期の運用期間には万博開催期間は含まれていません。第22期予想における「万博効果の剥落」は、変動賃料が過去のホテル運営実績を時間差で反映する契約構造によるものです。
DPU2,000円の意味
第21期DPUは1,989円、第22期は2,000円です。
資料では「不動産等売却益剥落後も、分配金は2,000円水準を見込む」と説明しています。
しかし、現時点では2,000円を大きく上回る成長軌道ではありません。
このため当ラボでは、
DPU2,000円は成長目標というより、増資後の収益基盤を定着させるための当面の防衛ライン
と見ています。
6.その他注目すべき点
1.ポジティブ:売却益を除くDPU水準は改善
前期DPU2,478円から当期2,068円へ減少しましたが、前期には売却益相当485円が含まれていました。
売却益控除後の前期DPUは1,993円です。当期DPU2,068円はこれを75円上回っています。
見た目は減配ですが、収益基盤は一定程度改善しています。
2.ポジティブ:大江戸温泉施設の集中リスクが低下
大江戸温泉施設比率は59.3%から42.4%へ低下しました。
ビジネスホテルと賃貸住宅の比率が上昇し、用途分散が進みました。スポンサー交代後の戦略が実際のポートフォリオに反映されています。
3.ポジティブ:大江戸温泉施設の単価上昇
大江戸温泉施設のRevPARは前年同期比17.6%増加しました。
稼働率上昇だけでなく、Premium化やリニューアルによるADR上昇が寄与しており、比較的質の良い内部成長です。
4.ネガティブ:変動金利比率が極めて高い
借入金は実質全額変動金利です。
スプレッドは低下していますが、TIBOR上昇が直接的に支払利息を押し上げます。平均残存年数も1.8年と短く、金利上昇の影響が早く表れやすい財務構造です。
5.ネガティブ:ビジネスホテルのADRが前年割れ
アパホテル6物件の稼働率は90.9%と高水準ですが、ADRは前年同期比3.4%減、RevPARは2.6%減でした。
アパグループ本体の勢いを、そのままREIT保有ホテルの成長期待に置き換えることはできません。
6.中立:1口当たりNAVは低下
1口当たりNAVは109,107円から103,272円へ低下しました。
資産規模と含み益総額は増えていますが、投資口数の増加によって1口当たりでは薄まりました。
今後の増資では、資産規模ではなく1口当たりNAV・EPUの成長を確認する必要があります。
7.専門家による「行間」の読解
1.資産規模拡大と1口当たり成長は別物
第3回公募増資によって、資産規模は492億円から689億円へ約40%拡大しました。
しかし、発行済投資口数も約39%増加しています。
純利益は16.1%増にとどまったため、EPUは低下しました。
前期売却益の影響を除けば実質的な利益水準は改善していますが、増資後の1口当たり成長が十分に証明されたとは言えません。
今後は、取得した8物件の通期寄与に加え、賃料増額やホテル単価上昇によって、EPUが2,000円台前半からさらに伸びるかを確認する必要があります。
2.「2,000円水準」は投資家へのメッセージでもある
資料は繰り返しDPU2,000円水準を強調しています。
しかし、第21期予想は1,989円、第22期は2,000円です。
この数字の置き方からは、経営側が2,000円を現時点の実力値、あるいは心理的な下限として強く意識している可能性があります。
増配を目指す段階というより、まず2,000円前後を安定させる段階です。
3.借入条件改善の説明には二つの側面がある
TIBORへの上乗せスプレッドは低下し、無保証化も実現しました。
信用力の改善という点では明確な成果です。
一方、基準金利自体が上昇しているため、支払利息は大きく増えています。
「スプレッド低下」と「実際の調達金利低下」は同義ではありません。
財務説明を読む際には、
- 信用スプレッド
- 基準金利
- 融資手数料
- 平均残存年数
を分けて見る必要があります。
4.ほぼ全額変動金利は、成長戦略と相性が難しい
年間200億円の外部成長を進める場合、借入残高も増える可能性があります。
変動金利による借入残高が拡大すると、資産を取得して賃料収入が増えても、基準金利上昇によって利益が削られます。
ホテル変動賃料と住宅増賃による内部成長が、金利上昇をどこまで吸収できるかが中期的な最大の課題です。
5.大江戸温泉の比率低下は、収益性とのトレードオフ
大江戸温泉施設の償却前鑑定NOI利回りは7.1%です。
これに対し、
- ビジネス・シティホテル:4.7%
- 賃貸住宅等:4.7%
となっています。
償却後では差は縮まりますが、大江戸温泉施設が高いキャッシュ収益を生んでいることは確かです。
大江戸温泉依存を下げることはリスク分散になりますが、低い利回りの物件へ置き換えれば、DPU成長が鈍る可能性があります。
したがって、単純に比率を下げればよいのではなく、高い収益力を維持しながら分散する必要があります。
6.アパスポンサー戦略は妥当だが、物件選別が重要
アパホテル比率の上昇は、スポンサー交代の目的に沿ったものです。
アパ依存が高まること自体は問題ではありません。
ただし、スポンサーが好調であることと、REITが取得する物件の投資採算が優れていることは別です。
今回のアパホテル6物件では、稼働率は高い一方、ADR・RevPARは前年同期を下回りました。
今後はアパブランドという看板だけでなく、
- 物件ごとの取得利回り
- 周辺競合
- ADRの上昇余地
- 建物の商品力
- REIT取得後の変動賃料
- スポンサー取引価格の妥当性
を確認する必要があります。
7.大江戸温泉の好調は比較的質が高い
大江戸温泉施設の好調は、稼働率だけでなくADR上昇によるものです。
鬼怒川、あたみ、西伊豆などでは、Premium化・改装・テーマ特化が単価上昇につながっています。
単に値下げで客室を埋めたのではなく、商品力を高めて単価を引き上げた可能性が高いため、内部成長としては評価できます。
ただし、変動賃料はGOPを基礎としており、人件費・光熱費・食材費の上昇が利益を圧迫します。売上高やRevPARだけでなく、運営利益が維持されるかを見る必要があります。
8.変動賃料の増加を額面どおりには評価できない
第21期の変動賃料は34百万円増加します。
ただし、その一部は「あたみ」の賃料体系を固定賃料から変動賃料へ変更する影響です。
収益総額が同じでも、固定部分が減って変動部分が増えれば、上振れ余地と同時に下振れリスクも高まります。
変動賃料増加という見出しだけでなく、固定賃料との合計を確認する必要があります。
9.賃料ギャップ約46百万円は即効薬ではない
住宅部門には約46百万円の賃料ギャップがあるとされています。
しかし、この金額は現行賃料と市場賃料の差を、全体について6か月分換算した試算です。
実際の顕在化には退去・更新が必要であり、複数期を要します。
住宅増賃は重要な成長源ですが、次期の金利上昇を即座にすべて吸収するほどの即効性はありません。
10.2,000億円目標には追加増資が必要になる可能性
現在の資産規模は689億円です。
中期目標2,000億円との差は1,300億円以上あります。
年間200億円程度の取得を続ける場合、借入だけで賄うことは難しく、今後も公募増資が必要になる可能性があります。
投資口価格がNAVを大きく下回る局面で増資を行えば、1口当たりNAVやEPUの希薄化が再び起こり得ます。
中期目標の達成速度よりも、増資のタイミングと取得資産の利回りを重視すべきです。
8.免責事項
本記事は公開資料に基づく情報提供を目的としており、特定銘柄の推奨を目的としたものや投資勧誘、助言を行うものではありません。
情報の正確性について:作成にあたっては生成AIを活用しており、情報の正確性・完全性を保証するものではありません。投資検討の際は、必ず投資法人が発行する一次資料(決算短信等)をご確認ください。
自己責任の原則:投資に関する最終決定は、読者ご自身の判断と責任において行ってください。本記事の利用により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いかねます。


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