【高配当研究所】矢作建設工業/1870/営業CFが語る”累進配当”の持続可能性──大型工事集中型ゼネコンの光と影

※本レポートの株価(1,819円)は2026年6月30日時点のものです。

目次

はじめに

「高配当株研究所」へようこそ。当ラボでは、配当生活・FIRE(経済的自立と早期退職)を目指す方々に向けて、高配当株の銘柄分析を行っています。

本日は、中部地区地盤の準大手ゼネコン・矢作建設工業株式会社(証券コード:1870)について、エキスパート投資アナリストの車野蔵人(くるまの くろうど)さんに解説していただきます。

2026年3月期は売上高1,693億99百万円(前期比+20.4%)、純利益84億68百万円(前期比+50.0%)と過去最高益を更新し、年間配当は記念配当なしの普通配当のみで100円に到達しました。配当利回りは約5.46%。一見すると魅力的な高配当銘柄ですが、その裏側にある営業キャッシュフローの大きな振れ幅にこそ、この銘柄を理解する鍵があります。ぜひ最後までお付き合いください。

会社概要

項目内容
正式名称矢作建設工業株式会社
証券コード1870(東証プライム・名証プレミア)
主な事業建築事業、土木事業、不動産事業(中部地区中心の準大手ゼネコン)
本社所在地名古屋市東区(中部地区地盤)
決算期3月期
時価総額約817億円(IRBANK様、2026/6/29時点)
株価1,819円(みんかぶ様、2026/6/30時点)

主要財務指標一覧(2026年3月期実績)

項目数値出典
売上高1,693億99百万円(前期比+20.4%)決算短信1ページ
営業利益137億42百万円(前期比+58.8%)決算短信1ページ
親会社株主に帰属する当期純利益84億68百万円(前期比+50.0%)決算短信1ページ
EPS196.72円決算短信1ページ
BPS1,760.04円決算短信1ページ
ROE11.7%決算短信1ページ
自己資本比率51.5%決算短信1ページ
年間配当金100円(中間45円・期末55円)決算短信2ページ
配当性向50.8%決算短信2ページ
DOE(自己資本配当率)6.0%決算説明資料20ページ
配当利回り5.46%みんかぶ様・IRBANK様
営業CF98億49百万円(前期は▲171億91百万円)決算短信13ページ

EPS推移と配当の関係

高配当株の「落とし穴」とEPSの関係

所長ダル
配当利回りが5%超って、すごく魅力的に見えますが、やはりあとは持っているだけでいいというわけにはいかないですよね?
車野アナリスト
おっしゃる通りです。配当はあくまでEPS(1株当たり純利益)の範囲内から支払われるものですし、さらに言えば、その利益を裏付ける営業キャッシュフローが安定しているかどうかも重要な確認ポイントになります。矢作建設の場合、まさにそこに注目すべき特徴があります。それでは実際のデータを見てみましょう。

EPS推移表(過去実績+今期・来期予想)

決算期EPS(円)1株配当(円)配当性向(%)備考
2019年3月期42.982831.66
2020年3月期29.033446.87
2021年3月期26.543440.3
2022年3月期75.063818.6
2023年3月期83.864321.5
2024年3月期107.56020.5
2025年3月期117.418061.0普通配当60円+創立75周年記念配当20円
2026年3月期(実績)196.7210050.8過去最高益更新。記念配当なしで普通配当のみ100円に到達
2027年3月期(会社予想)189.9010052.7大型工事の反動減・分譲マンション事業譲渡により減収減益見込み。累進配当方針により同額維持予想

2025年3月期は記念配当20円の上乗せがありましたが、2026年3月期は記念配当なしで普通配当のみ100円を達成しており、実力ベースでの増配ペースの速さが確認できます。

所長×アナリスト対談

テーマ① 営業CFの大きな振れ幅——なぜ同業他社と差がつくのか

所長ダル
2026年3月期の営業CFは98億49百万円とのことですが、前期はマイナスだったんですよね?これはどう見ればいいでしょうか?
車野アナリスト
はい、前期(2025年3月期)の営業CFは▲171億91百万円と大幅なマイナスでした。今期はプラスに転換しましたが、重要なのは、この営業CFの振れ幅が同業他社と比較しても突出して大きい点です。淺沼組(売上1,752億円・営業CF184億円)、大末建設(売上1,055億円・営業CF92億円)と比べると、矢作建設の営業CF対売上高比は5.8%にとどまり、淺沼組10.5%・大末建設8.8%を下回ります。
所長ダル
同じ建設業でも、なぜこんなに差が出るんでしょうか?
車野アナリスト
背景として、繰越工事高(受注残)の売上高比の薄さが挙げられます。矢作建設の次期繰越高は1,740億23百万円で売上高の約1.03倍にとどまる一方、淺沼組は約1.37倍、大末建設は約1.7倍の受注残を抱えています。受注残が薄いほど、現在進行中の大型工事の入出金タイミングがシビアに重なりやすく、CFが平準化されにくい構造にあると考えられます。2027年3月期は上半期の営業利益がわずか11億円の見込みで、通期営業利益90億円の大半を下半期で計上する見込みです。引き続き繁閑差の大きさが意識される決算が続くと見られます。

テーマ② 財務の健全性——財務制限条項とのバランス

所長ダル
財務面はどうでしょうか?借入が多いと不安に感じます。
車野アナリスト
財務自体は健全です。自己資本比率は51.5%と前期47.7%から改善し、D/Eレシオも0.4倍と低水準です。一方で、シンジケート・ローン契約には財務制限条項が付されており、各事業年度の連結純資産額を2023年3月期の純資産額の75%以上に維持することが求められています。現状は余裕を持ってクリアしていますが、こうした条項の存在自体は意識しておくべきポイントです。

テーマ③ 配当の原資——累進配当方針とCF構造の緊張関係

所長ダル
配当総額に対して営業CFはどれくらい余裕があるんでしょうか?
車野アナリスト
2026年3月期の配当総額43億48百万円に対し、営業CFは98億49百万円とカバーはできていますが、カバレッジ倍率は約2.3倍にとどまり、淺沼組(約5.1倍)・大末建設(約4.8倍)の半分以下です。さらに前期(2025年3月期)は営業CFがマイナス171億91百万円だったにもかかわらず配当総額34億72百万円を支払っており、財務活動により得られた資金13,149百万円、つまり借入金調達で実質的に補った実績があります。単年度では本業の稼ぐ力を上回る配当を出した実績がある点は、原資の安定性という観点で明確な弱みです。
所長ダル
それでも累進配当方針を続けるというのは、少し心配にもなりますね。
車野アナリスト
ご指摘の通り、そこには潜在的な緊張関係があります。DOE基準は純資産という緩やかにしか動かない指標を分母にしているため業績変動を一定程度吸収する設計にはなっていますが、「営業CFが配当総額を下回った場合にどう対応するか」という定量的な下限ルールは開示資料に明記されていません。2025年3月期はまさにこの状態が発生しており、累進配当を守るために借入を積み増すサイクルに入るリスクは意識しておくべき論点です。

テーマ④ 経営方針の透明性とガバナンス——アクティビストの存在は?

所長ダル
配当方針を「配当性向30%以上」から「DOE5%以上かつ累進配当」に変更したとのことですが、これは何かきっかけがあったんでしょうか?アクティビストの影響なんでしょうか?
車野アナリスト
配当方針は2026年3月期に変更され、その経緯は説明資料に明記されています。機関投資家面談数も2025年3月期の8件から2026年3月期は42件へと大きく増加しており、IR強化の姿勢は具体的です。大株主の状況(2026年3月31日現在)を確認したところ、筆頭株主の名古屋鉄道(19.02%)をはじめ、取引先持株会・社員持株会・日本生命など伝統的な安定株主が上位を占めており、累進配当方針への転換を主導するような明確なアクティビストの存在は確認できませんでした。
所長ダル
では、何がこの方針転換のきっかけだったんでしょうか?
車野アナリスト
信託銀行名義(日本マスタートラスト信託銀行10.44%、日本カストディ銀行4.26%)の背後に活動的な機関投資家が紛れている可能性は否定できませんが、この方針転換はアクティビストの圧力というより、PBR1倍割れ解消を意識した自主的な企業価値向上策の一環である可能性が高いと考えられます。

配当継続性スコア

評価ランクの凡例

S ○5つ:全項目良好。配当継続性について特段の懸念なし

A ○4つ△1つ:ほぼ良好。軽微な注意点あり

B ○3つ△2つ:概ね良好だが注意点あり。モニタリングが必要

C ○2つ以下または×あり:注意点が多い。投資前の慎重な検討が必要

D ×2つ以上:要注意。配当リスクが高い

※2026年5月より評価体系をS/A/A-/B/B-/C/C-/D/Eの9段階に変更しました。旧5段階(S/A/B/C/D)のA・B・C・Dの間にそれぞれ「-(マイナス)」ランクを新設しています。これは、同一ランク内でも「条件が揃えば上のランクに相当する」銘柄と「下のランクに近い懸念がある」銘柄を区別するためです。たとえばB-は「Bの要件は満たすが、Cに近い注意点を抱えている」状態を示します。

評価項目評価コメント
配当の中身(普通配当か・継続性・記念配当の有無)2026年3月期は記念配当なしで普通配当のみ100円を達成しており、2027年3月期も同額維持を予想しています。記念配当に頼らない実力ベースでの増配トレンドが確認できます。
本業の稼ぐ力営業CFは98億49百万円とプラス転換しましたが、前期は▲171億91百万円と大幅マイナス。営業CF対売上高比5.8%は淺沼組10.5%・大末建設8.8%を下回り、繰越工事高の薄さ(売上高比約1.03倍)が振れ幅の背景にあります。
財務の健全性自己資本比率51.5%(前期47.7%から改善)、D/Eレシオ0.4倍と財務は健全。財務制限条項(純資産75%維持等)も現状余裕を持ってクリア。
配当の原資(営業CFと配当総額の比較)配当総額43億48百万円に対し営業CFカバレッジは約2.3倍と、淺沼組(約5.1倍)・大末建設(約4.8倍)の半分以下。前期は営業CFマイナスでも配当維持し、借入金調達で実質的に補った実績あり。
経営方針の透明性「DOE5%以上、かつ累進配当」と明確に開示し、方針変更の経緯も説明資料に明記。機関投資家面談数を8件から42件に増加させるなどIR強化の姿勢も具体的。ただし営業CF下振れ時の定量的な下限ルールは未開示。
総合スコアB+5項目中2項目(本業の稼ぐ力、配当の原資)が△評価のため「A以上にはしない」を適用。大型工事への案件集中度が高く受注残も相対的に薄いため、淺沼組・大末建設と比較して営業CFの安定性に明確な見劣りがあります。不安定なCF構造の上に「累進配当」という強いコミットメントを重ねている点は、配当の持続可能性という観点でやや楽観的な設計とも言えます。一方で記念配当なしでの実質増配達成、財務健全性の改善、明確な株主還元方針の開示、アクティビストリスクの低さといった前向き材料も多く、CやC-まで下げる水準ではないと判断しB+としています。2027年3月期上半期決算(営業利益11億円見込み)で赤字転落や配当方針修正のシグナルが出ないかが、次回確認時の最重要ポイントです。

ラボ独自考察:適正株価を考えてみた

⚠️ ご注意

以下はAIによる試算であり、投資推奨ではありません。あくまで参考情報としてご覧ください。

現在株価:1,819円(2026年6月30日、みんかぶ様) BPS:1,760.04円(決算短信1ページ)

普通配当逆算法(4シナリオ)

計算式:想定配当(円)÷ 想定利回り(%)= 適正株価

シナリオ想定配当想定利回り試算 適正株価現株価比備考・前提条件
強気(増配ペース継続を想定)110円4.5%約2,444円+34%過去の増配ペース(80円→100円)が続くシナリオ。次期は減益予想のため確度はやや低め
中立(会社の次期予想をそのまま使用)100円5.0%2,000円+10%会社予想通りに着地するケース
保守的(増配なし・現状維持)100円5.46%(現在の利回り水準)1,832円±0%現在の市場評価が概ね妥当な水準であることを示唆
弱気(業績悪化・EPS急落想定)約53円(配当性向50%維持を仮定し、2027年3月期予想EPS189.90円×50%で逆算)5.0%約1,060円▲42%「方針を曲げざるを得ない前提条件」:累進配当方針を撤回し、業績悪化に応じて配当性向基準に回帰するケース。営業CFが2期連続でマイナスに転じ、財務制限条項への抵触懸念が高まった場合に現実味を帯びる

BPS×適正PBR(2点セット)

PBR倍率適正株価
1.0倍(実質的な解散価値の目安)1,760円
1.2倍(2026年3月期実績PBR)2,112円
1.5倍(ROE11.7%の収益力を評価した水準)2,640円

全シナリオが崩れる条件(銘柄固有リスク)

⚠️ 注意すべき銘柄固有リスク

国土強靭化対策や防災・減災関連の公共投資縮小、技能労働者不足の深刻化による工事原価急騰、大型M&A(株式会社海昌の子会社化など)の失敗によるのれん減損、財務制限条項への抵触(経常損失2期連続、純資産大幅毀損)、そして営業CFが2期連続でマイナスに転じることで累進配当方針の維持と財務健全性がトレードオフになる事態が発生した場合は、配当方針自体の見直しに繋がりうる点に注意が必要です。

まとめ

  • 2026年3月期は売上高+20.4%・営業利益+58.8%・純利益+50.0%と過去最高益を更新。配当は記念配当なしの普通配当のみで100円に到達し、2027年3月期も同額維持を予想しています。
  • 自己資本比率51.5%・D/Eレシオ0.4倍と財務は健全。「DOE5%以上・累進配当」を明確にコミットし、機関投資家面談数も大幅増加させるなどIR強化姿勢も具体的です。
  • 一方で営業CFの振れ幅は同業他社(淺沼組・大末建設)と比べて突出して大きく、受注残の薄さが背景にあります。前期は営業CFマイナスでも配当を維持し、借入金で実質的に補った実績がある点は配当原資の安定性という観点で明確な弱みです。
  • 累進配当方針と不安定なCF構造の間には潜在的な緊張関係があり、2027年3月期上半期決算(営業利益11億円見込み)で業績悪化や方針修正のシグナルが出ないか、継続的なモニタリングが不可欠です。

免責事項

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本記事はAI(Claude/Anthropic社)を活用して作成したコンテンツです。情報の正確性・完全性を保証するものではなく、記載内容に誤りが含まれる可能性があります。

本記事は特定の有価証券への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。株式投資には価格変動リスクがあり、元本が保証されるものではありません。

本記事に記載されている将来予測・試算・適正株価に関する記述は、あくまで参考情報であり、実際の将来の業績・株価・配当を保証するものではありません。

本記事で参照しているみんかぶ様・IRBANK様などの第三者提供データについて、当ラボはその正確性・完全性について責任を負いません。最新情報は各社の公式サイトおよび企業のIR情報をご確認ください。

本記事は税務・法務上のアドバイスを提供するものではありません。税金・法律に関するご判断は、税理士・弁護士などの専門家にご相談ください。

本記事に登場する「車野蔵人(くるまの くろうど)」は、AIが生成した架空のキャラクターです。実在する人物・アナリストとは一切関係ありません。

© 高配当株研究所 ※本記事はAIによる分析を含みます。投資推奨ではありません。

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