情報基準日:2026年7月30日(株価は2026年7月29日終値774.0円)
配当利回り約4.5%、記念配当の「化粧」を落として見えるもの
サービス業(教育サービス) / 東証プライム / 企業研修専業(講師派遣型・公開講座の二本柱)
本レポートの株価(774.0円)は2026年7月29日終値です(前日比+14.0円/+1.84%)。同社は7月21日に上場10周年記念配当5.50円の実施、あわせて自己株式取得(上限300万株・20億円)と400万株の消却を決議しています。決算は2026年9月期第3四半期(1-3Q)までの開示に基づいており、通期決算はまだ確定していません。
はじめに
「高配当研究所」へようこそ。当ラボでは、配当生活・FIRE(経済的自立と早期退職)を目指す方々に向けて、高配当株の銘柄分析を行っています。私(所長)は読者の皆さんと同じ目線から素朴な疑問を投げかける役割を担っています。
本日は、企業研修専業の株式会社インソース(Insource Co., Ltd.、証券コード:6200)について、エキスパート投資アナリストの車野蔵人(くるまの くろうど)さんに解説していただきます。
2026年9月期は上場10周年の記念配当5.50円を含む年間35.00円(前期25.00円)を予想し、配当利回りは約4.52%。ただし記念配当を除いた普通配当29.50円ベースでは3.81%まで下がります。「では来期はどうなるのか」「ROE32%・自己資本比率81%という異例の財務体質をどう評価するか」——そこが最大の論点です。ぜひ最後までお付き合いください。
会社概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 株式会社インソース(Insource Co., Ltd.) |
| 証券コード | 6200(東証プライム) |
| 本社 | 東京都千代田区神田小川町(駿河台本社) |
| 上場 | 2016年7月21日 → 2026年7月21日で上場10周年 |
| 代表者 | 代表取締役執行役員社長 舟橋 孝之(創業者・元SE・自身6.52%保有) |
| 主な事業 | 教育サービス事業(単一セグメント):講師派遣型研修48.1%/公開講座24.3%/ITサービス13.1%/その他14.5% |
| 時価総額 | 659億78百万円(みんかぶ様・IRBANK様) |
| 決算期 | 9月期(連結) |
| 従業員数 | 788名(2026年6月末)/グループ7社・国内28拠点 |
| 特徴 | 研修コンテンツ5,149種類をデータベース化。講師・営業・テキスト開発を分離した仕組み化により営業利益率38%超 |
どんな会社か
社会人向けの企業研修を、講師派遣型(オーダーメイド)と公開講座(1名から参加可)の二本柱で提供する教育会社です。研修コンテンツを5,000種類以上データベース化し、講師・営業・テキスト開発を分離した「仕組み化」によって営業利益率38%超という異例の高収益を実現しています。近年は学習管理SaaS「Leaf」(有料919組織・アクティブユーザー546万人)やAIアプリ群でストック収益化を進め、「AI活用を1億人に」を掲げて研修会社から生産性向上インフラ企業への転換を図っている、と整理できます。
主要財務指標一覧
※数値の出典:2026年9月期3Q決算短信、3Q決算説明資料、配当予想の修正リリース(2026年7月21日)、みんかぶ様・IRBANK様
| 指標 | 26/9期 1-3Q実績 | 26/9期 通期予想 | 前期(25/9期) |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 11,582百万円(+8.9%) | 16,000百万円(+10.3%) | 14,506百万円 |
| 営業利益 | 4,448百万円(+3.7%) | 6,380百万円(+6.7%) | 5,979百万円 |
| 営業利益率 | 38.4%(▲1.9pt) | 39.9% | 41.2% |
| 経常利益 | 4,502百万円(+4.6%) | 6,430百万円(+7.2%) | ― |
| 純利益 | 3,077百万円(+6.2%) | 4,400百万円(+6.5%) | 4,131百万円 |
| EPS(1株当たり純利益) | 36.63円(累計) | 52.39円(予) | 49.20円 |
| BPS(1株当たり純資産) | 160.72円 | ― | ― |
| ROE | ― | 32.58%(予) | 33.07% |
| ROA | ― | 26.5%(予) | 25.57% |
| 自己資本比率 | 81.3% | ― | 77.3% |
| 有利子負債 | 実質ゼロ(固定負債は資産除去債務99百万円のみ) | ― | ― |
| 年間配当(1株当たり) | ― | 35.00円(普通29.50+記念5.50) | 25.00円 |
| 配当性向 | ― | 66.8%(普通配当のみでは56.3%) | 50.8% |
| DOE(株主資本配当率) | ― | 21.8%(普通配当のみ18.4%) | 18.7% |
| 配当利回り(参考) | ― | 約4.52%(774円ベース・みんかぶ様)/普通配当のみでは約3.81% | 2.6% |
| PER(連・予) | ― | 14.78倍(IRBANK様) | ― |
| PBR(連) | ― | 4.82倍(IRBANK様) | ― |
| 現在株価(参考) | ― | 774.0円(2026年7月29日終値) | ― |
| みんかぶ目標株価 | ― | 869円(株価診断:割安/アナリスト:買い/個人予想:売り) | ― |
営業利益の通期進捗率は69.7%で一見遅れて見えますが、前期も1-3Q時点で71.8%(4,291/5,979)でした。4Q(7〜9月)は新人研修の反動後に高採算案件が集中し営業利益率が43%台に跳ねる季節性があるため、進捗は前期並みで概ね軌道上と考えられます。
EPS推移と配当の関係
高配当株の「落とし穴」とEPSの関係
所長ダル








EPS推移表(過去実績+今期予想/株式分割調整後)
出典:IRBANK様、2026年9月期3Q決算短信
| 決算期 | EPS(円) | 1株配当(円) | 配当性向(%) | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2019年9月期 | 9.93 | 4.00 | 40.3 | ― |
| 2020年9月期 | 5.31(▲46.5%) | 4.63 | 87.2 | コロナ影響で大幅減益も減配せず増額。方針の粘り強さを示す期 |
| 2021年9月期 | 18.71(+252.4%) | 7.75 | 41.4 | V字回復 |
| 2022年9月期 | 26.53(+41.8%) | 10.75 | 40.5 | ― |
| 2023年9月期 | 31.79(+19.8%) | 13.00 | 40.9 | 株式分割実施(表示は調整後) |
| 2024年9月期 | 39.98(+25.8%) | 20.00 | 50.0 | 配当性向50%方針へ引き上げ |
| 2025年9月期 | 49.20(+23.1%) | 25.00 | 50.8 | DOE18.7% |
| 2026年9月期(予) | 52.38(+6.5%) | 35.00 | 66.8 | 普通29.50+記念5.50(上場10周年)。普通配当のみでは性向56.3%/DOE18.4% |
2019年から2026年でEPSは約5.3倍、配当は8.75倍。増配ペースがEPS成長を上回っているのは、配当性向を40%から50%へ切り上げた「二段ロケット」の効果です。赤字期・無配期は一度もなく、コロナで利益がほぼ半減した2020年9月期にも減配せず増額しています。
一方で2026年9月期はEPS成長が+6.5%へ急減速しています(前期+23.1%)。前期後半の採用増による人件費増が主因で、2026年5月7日に通期予想を売上・利益とも下方修正済みです。
配当性向が方針の50%から66.8%へ乖離している理由は2つです。①記念配当5.50円の上乗せ、②「配当性向50%」と「DOE18%」の二階建て方針のもとで、DOE基準(BPS160.72円×18%=28.9円)が性向基準(52.39円×50%=26.2円)を上回り、DOE側が実質的な下限として効いているためです。
このEPS推移から何が言えるか












所長×アナリスト対談
テーマ① そもそも企業研修は誰が買っているのか——「中小零細ではピンとこない」の正体






| 区分 | 1-3Q売上構成比 |
|---|---|
| MM(中堅企業) | 34.6% |
| EB(大企業) | 24.7% |
| GB(小規模企業) | 20.8% |
| 公共 | 19.8% |





















テーマ② 需要の「形」——大口契約ではなく、薄く広く






| 年間取引額 | 顧客数(組織・1-3Q) |
|---|---|
| 1,000万円以上 | 124 |
| 500〜1,000万円 | 271 |
| 100〜500万円 | 2,034 |
| 10〜100万円 | 5,960 |









テーマ③ 営業利益率38%の本当の理由——「設備が軽い」だけではない





















テーマ④ 利回り4.52%の「0.71ポイント」は来期消える——記念配当の読み方












テーマ⑤ なぜ配当性向が66.8%なのか——「性向50%」と「DOE18%」の二階建て構造












「配当性向50%」と「DOE18%」は、高い方が実際の配当を決めます。現在はDOE基準が上回っており、これが配当のフロア(下限)として機能しています。一方で自己株式取得によって純資産が減ると、DOE基準の配当額そのものが目減りするというジレンマも同時に抱えています。株主還元の総額は増えても、1株配当の伸びは思ったほどでない可能性がある点は留意が必要と考えられます。
テーマ⑥ 生成AIは研修会社の敵か味方か——「AI代替不可能」という賭け















テーマ⑦ コンテンツに「当たりハズレ」はないのか——資料にはっきり写っている






| サービス | 3Q前年同期比 |
|---|---|
| 映像制作ソリューション | +71.5% |
| 動画レンタル | +10.9% |
| 動画販売 | ▲9.2% |
| クラウド型eラーニングSTUDIO | ▲10.2% |
| オンラインセミナー代行 | ▲16.9%(1-3Q) |
| Webマーケティング | ▲75.6%(45→11百万円) |









| 項目 | 25/9期3Q | 26/9期3Q | 増減 |
|---|---|---|---|
| 実施回数 | 3,683回 | 4,490回 | +21.9% |
| 受講者人数 | 42,541人 | 42,878人 | +0.8% |
| 1開催当たり受講者数 | 11.6人 | 9.5人 | ▲17.3% |
| 売上総利益率 | 75.0% | 71.7% | ▲3.4pt |












テーマ⑧ 「満足度96.2%」はどこまで信じられるか












| 指標 | 数値 | なぜ信頼できるか |
|---|---|---|
| Leaf解約率 | 約2%(25/9期年平均) | 払っているお金を止めるかどうかの判断。アンケートより誠実 |
| 講師派遣型の値上げ耐性 | 平均単価+5.1%かつ実施回数+6.8%(3Q) | 値上げして客が減らないのは満足度の実質的証明に近い |
| リピート状況 | 52,118組織中16,488組織が直近1年利用(約32%) | ただし裏返せば3分の2は戻っていない |
テーマ⑨ 人件費との綱引き——従業員45名減の予想修正をどう評価するか


















テーマ⑩ PBR4.82倍で20億円の自社株買い——高評価での買い戻しは株主に得か















テーマ⑪ 大株主構成とアクティビストリスク






| 株主名 | 持株数(千株) | 比率 |
|---|---|---|
| 株式会社ルプラス | 25,359 | 30.19% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 5,597 | 6.66% |
| 舟橋 孝之(社長) | 5,480 | 6.52% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 3,309 | 3.94% |
| 川端 久美子 | 3,012 | 3.58% |
| 上位10名合計 | 53,065 | 63.18% |



配当継続性スコア
クリックして評価ランクの説明を見る
S:非常に優れている/A:優れている/A-:Aの要件を満たすがBに近い注意点がある/B+:Bの要件を満たしAに近い水準にある/B:良好/B-:Bの要件を満たすがCに近い注意点がある/C+:Cの要件を満たしBに近い水準にある/C:やや懸念がある/C-:Cの要件を満たすがDに近い注意点がある/D:懸念が大きい/E:重大な懸念がある
※評価体系をS/A/A-/B+/B/B-/C+/C/C-/D/Eの11段階に変更しました。旧5段階(S/A/B/C/D)のA・B・C・Dの間にそれぞれ「+(プラス)-(マイナス)」ランクを新設しています。これは、同一ランク内でも「条件が揃えば上のランクに相当する」銘柄と「下のランクに近い懸念がある」銘柄を区別するためです。たとえばB-は「Bの要件は満たすが、Cに近い注意点を抱えている」状態を示します。
| 評価項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| 配当の中身(普通配当か・継続性) | △ | 35.00円のうち5.50円は上場10周年記念配当(一過性)。ただし普通配当自体も25.00円→29.50円へ+18.0%増配しており、記念配当を除いても実質増配。翌期は普通配当ベースへ戻るため、35円を恒常配当と誤読するリスクがあります。 |
| 本業の稼ぐ力 | ○ | 売上+8.9%、営業利益+3.7%。営業利益率38.4%は同業比で突出。営業利益の前年同期比は1Q▲58百万円→2Q+66百万円→3Q+148百万円と四半期ごとに回復基調。価格改定(講師派遣+14.4千円、公開講座+1.7千円)が浸透しています。 |
| 財務の健全性 | ○ | 自己資本比率81.3%(前期末77.3%から改善)、実質無借金、現預金8,218百万円。ROE32.58%・ROA26.5%は極めて高水準です。 |
| 配当の原資 | ○ | 通期配当総額は約28〜29億円(35円×約81〜84百万株)に対し純利益予想44億円。1H営業CF1,372百万円は同期の配当支払2,099百万円を下回りますが、年1回配当(期末)の支払と法人税支払11.1億円が上期に集中する期ズレによるもので、前期は現預金が57億円から82億円へ25億円積み上がっており本業CFで賄えていると考えられます。※3Q短信はCF計算書が未作成のため通期短信での確認が必要です。 |
| 経営方針の透明性 | ○ | 配当性向50%・DOE18%を数値で明示。記念配当の内訳(普通29.50/記念5.50)を短信注記で開示。自己株式取得20億円(上限300万株)と400万株の消却(発行済の4.7%)も同日決議。中期経営計画「Road to Next 2028」も開示(ただし2026年11月に見直し予定と明記)。 |
| 総合スコア | A- | A-(○4つ・△1つ) 「配当の中身」に△が1つあるためA以上とはしていません。ただし△の内容は「記念配当という一過性要素が含まれる」という開示の明確さゆえに検出された△であり、隠れた減配リスクではありません。普通配当だけでも+18%増配、DOE18%という下限方針が明示され、財務は自己資本比率81%・実質無借金・ROE32%という極めて強固な状態です。 |
①EPS成長率が+23.1%から+6.5%へ急減速し、2026年5月に通期下方修正を出したばかりであること。
②前受金(人財育成スマートパックの未使用分=先行指標)の伸びが1Q+19.2%→1H+10.2%→3Q+4.2%と明確に鈍化しており、先行需要の減速サインと読める可能性があること。
③PBR4.82倍・PER14.78倍という評価は高ROEで正当化される面がある一方、成長鈍化が続けばバリュエーション調整を通じた株価下落リスクが利回りメリットを上回りかねないこと。
ラボ独自考察:適正株価を考えてみた
※AIによる試算であり投資推奨ではありません。あくまで参考情報としてご覧ください。
評価手法:普通配当逆算法
計算式:想定配当(円)÷ 想定利回り(%)= 適正株価
普通配当:2026年9月期予想29.50円(別途、上場10周年記念配当5.50円あり)。2027年9月期の会社予想配当は未公表で、方針から逆算すると30円前後が中心線と考えられます。
シナリオ別 適正株価試算
| シナリオ | 想定配当 | 想定利回り | 試算 適正株価 | 現株価比 | 前提条件・備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 強気(成長回復・増配想定) | 33.0円 | 3.6% | 約917円 | +18.5% | 27/9期純利益5,300百万円(+20%)を想定。中計線(28/9期純利益6,820百万円)に沿った成長回復に400万株消却による1株利益の押し上げ。配当性向50%適用。成長期待の回復で許容利回りが3.6%へ低下 |
| 中立(会社予想をそのまま使用) | 35.0円 | 4.5% | 約778円 | +0.5% | 会社の当期予想配当35円をそのまま使用(記念5.5円含む)。現在の市場が要求している利回り水準4.5%を適用。現株価はほぼ理論値どおり。※許容利回り4.0%まで低下すれば875円 |
| 保守的(記念配当消滅・増配なし) | 29.5円 | 4.3% | 約686円 | ▲11.4% | 記念配当は当期限りで消滅、27/9期は普通配当29.5円据え置き(増配なし)。DOE18%が下限として機能し減配は回避される前提 |
| 弱気(業績悪化・方針変更想定) | 22.0円 | 5.2% | 約423円 | ▲45.3% | 下記「方針を曲げざるを得ない条件」を参照 |
①生成AIによる社内研修の内製化が本格化し、公開講座・eラーニングの単価下落が始まる、②人件費増を価格改定で吸収しきれず営業利益率が30%割れ、③EPSが44円程度(▲16%)へ低下、④その状況下で会社が「DOE18%」より「配当性向50%」を優先して28.9円から22円へ引き下げる、⑤市場が成長株プレミアムを剥がし要求利回り5.2%へ——これら複数要因が重なるケースを想定しています。
インソースは「配当性向50%」と「DOE18%」の両方を目標に掲げています。DOE基準(BPS×18%)は利益が落ちても純資産が残っていれば維持されるため、業績悪化局面でDOE側を優先すれば配当は28〜29円が下限となり、この場合の適正株価は約556円(28.9円÷5.2%)となります。「弱気423円」と「DOE維持556円」のどちらになるかが、下値の分水嶺と考えられます。
合理的レンジの根拠(2点セット確認)
BPS=160.72円(IRBANK様)
| PBR倍率 | 適正株価 | 現株価比 | 考え方 |
|---|---|---|---|
| 3.5倍 | 563円 | ▲27.3% | ROEが20%台へ低下した場合の水準 |
| 4.0倍 | 643円 | ▲16.9% | 成長鈍化がバリュエーションに織り込まれた場合 |
| 4.82倍(現状) | 775円 | ±0% | 現在の市場評価 |
| 5.5倍 | 884円 | +14.2% | ROE32%が維持され成長が再加速した場合 |
配当逆算法の中立778円とPBR現状評価775円がほぼ完全に一致します。現株価774円は「会社予想配当35円・PBR4.8倍」という現状前提のもとでは理論値ぴったりであり、割安でも割高でもない水準と考えられます。
ただし配当逆算法の下値(保守686円/弱気423〜556円)と、PBR法の下値(3.5〜4.0倍で563〜643円)はいずれも現株価を下回っており、上振れ余地(+15〜18%)よりも下振れ余地(▲11〜45%)の方が大きい非対称なリスク構造になっている点は留意が必要と考えられます。
全シナリオが崩れる条件(銘柄固有リスク)
①生成AIによる研修の内製化が本格化するケース 「AI代替不可能」という前提が崩れ、公開講座・eラーニングの単価と受講者数が同時に低下。現時点で公開講座のオンライン受講者は3Q単独で前年同期比▲11.2%、オンライン比率も52.7%から46.5%へ低下しており、対面回帰と読むか代替開始と読むかで解釈が分かれます。
②前受金の減少転落 人財育成スマートパックの未使用残(前受金)の伸びが1Q+19.2%→1H+10.2%→3Q+4.2%と鈍化中。マイナス転落なら先行需要の実質的な後退サインです。
③DOE18%方針の撤廃または引き下げ 本試算の全シナリオが依拠する配当の下限が消滅します。
④2026年11月発表予定の新中期経営計画での大幅下方修正 現中計「Road to Next 2028」は28/9期売上23,400百万円(CAGR17.3%)という高い目標ですが、会社自身が見直し予定と明記済みです。強気シナリオの根拠が失われます。
⑤主力顧客層の予算縮小 製造業21.4%・官公庁関連18.0%が売上の約4割。景気後退や公共予算縮減の直撃を受ける構造です。
⑥EBセグメント(大企業向け)の低迷長期化 1-3Q売上は▲0.4%、顧客当たり平均売上高は▲6.6%と唯一の減収セグメント。3Qは+0.3%で下げ止まったものの回復が本物か未確認です。
⑦人員抑制の反作用 45名減の人員計画が研修実施キャパシティ制約になり、増収機会を逃すケースです。
結論ボックス
みんかぶ様の目標株価は869円で、現株価774円に対し+12.3%の上昇余地です。本試算の強気917円と保守的686円のちょうど中間より上に位置し、「成長がある程度回復する」ことを前提とした水準と読めます。みんかぶ様の株価診断は「割安」、アナリスト評価は「買い」ですが、個人予想は「売り」で見方が真っ二つに割れている点が示唆的です。本レポートの試算では中立778円が現株価とほぼ一致するため、869円は中立と強気の間の楽観寄りの想定と考えられます。
配当逆算法(中立778円)とBPS×PBR法(現状775円)が揃って現株価774円と一致しており、現水準はフェアバリューと考えられます。PER14.78倍は高収益・高成長企業としては特に高くなく、PBR4.82倍もROE32.58%を前提にすれば理論的には正当化されます(PBR=ROE×PER)。
ただし、①配当利回り4.52%のうち0.71ポイントは記念配当という一過性要素、②EPS成長が+6.5%へ減速、という2点を織り込むと、「利回りだけを見て割安」と判断するのは危険です。下値の厚みが薄い(PBR4.0倍で643円、▲16.9%)ことが最大の実務的リスクと考えられます。
この銘柄の本質は「高配当株」ではなく「高ROEの成長株が配当性向を切り上げた結果、たまたま利回りが4%台に見えている銘柄」と整理するのが正確と考えられます。長期保有の論点は3つあります。
第一に、DOE18%という下限方針は減益局面でも配当を支える強力な仕組みですが、自社株買いで純資産が減ればDOE基準の配当額そのものが目減りするというジレンマがあります。
第二に、7年でEPS5.3倍・配当8.75倍という実績は、コロナで利益が半減した2020年9月期にも減配しなかった(むしろ増額した)実績とセットで評価すべきで、この期の対応が経営の配当姿勢を最もよく物語っています。
第三に、生成AIとの関係は「脅威」と「事業機会」の両面を持ちます。現状の数字(生成AI関連研修3Q売上2.7倍、DXサービス+24.0%)は機会側に振れていますが、AI関連3サービスの売上計画(FY26 0.6億円→FY28 11.5億円)は初年度がほぼゼロベースで、まだ実証されていません。この計画の進捗を四半期ごとに追えるかどうかが、長期保有の可否を決めると考えられます。
配当受取だけを目的にするなら、27年9月期の普通配当(記念配当消滅後)が29.5円を維持できるかを確認してからでも遅くない、という判断もあり得ます。
1. 四半期ごとの利益改善カーブ 営業利益の前年同期比は1Q▲58百万円→2Q+66百万円→3Q+148百万円と明確に改善。3Q単独の営業利益率は37.4%で前年同期を+0.1pt上回り、総人件費の伸びも1H+16.2%→3Q+4.8%へ急減速しています。
2. 価格改定の浸透 講師派遣型研修の平均単価は前年同期比+14.4千円(+5.1%)、公開講座+1.7千円(+7.3%)、買い切り動画+14千円。値上げが受注減を招いていない(実施回数+6.8%、受講者数+0.8%)ことが重要です。
3. 提案金額が前年同期比69%増 AI-Plants活用で営業活動量が増加し、1-3Q累計27,091百万円。成約は提案から遅れて出るため、これは先行指標です。
4. ストック収益の積み上がり Leaf有料利用組織919組織(+10.2%)、アクティブユーザー546万人(+19.3%)、Leafリカーリング売上1,043百万円(+13.5%)。解約率は年平均約2%と低位、LTVは6,690千円です。
5. DXサービスの高成長 ドメイン別でDXサービスが1-3Q+24.0%(3Q単独+27.2%)と最速成長。生成AI関連研修の3Q売上は前年同期比2.7倍です。
6. 株数の恒久的減少 400万株(発行済の4.7%)の消却が2026年9月30日予定。DOE18%方針下では株数減が1株配当の押し上げに直結します。
7. 公共・官公庁の伸び 官公庁関連は1-3Q+15.7%、顧客当たり平均売上高+15.2%。予算執行が読みやすく収益の安定材料です。
まとめ
- 2026年9月期は年間配当35.00円(普通29.50+上場10周年記念5.50)を予想し、利回りは約4.52%。記念配当を除いた普通配当ベースでも25.00円→29.50円の+18.0%増配で、一過性要素を抜いても実質増配です。
- 配当方針は「配当性向50%」と「DOE18%」の二階建て。現在はDOE基準(BPS160.72円×18%=28.9円)が上回り、これが実質的な配当のフロアとして機能しています。自己資本比率81.3%・実質無借金・ROE32.58%と財務基盤は極めて強固です。
- 営業利益率38%超の源泉は「設備の軽さ」ではなく、コンテンツの固定費化・講師と営業と開発の分離・前受金による運転資金の内部調達・データベース化による高速カスタマイズという4つの仕組みです。売上総利益率76.3%はソフトウェア企業に近い水準です。
EPS成長率が+23.1%から+6.5%へ急減速し、2026年5月に通期下方修正を出しています。先行指標である前受金の伸びも1Q+19.2%→1H+10.2%→3Q+4.2%と明確に鈍化しており、需要の減速サインと読める可能性があります。
個別サービス単位では当たりハズレが明確に存在します。映像制作+71.5%に対しWebマーケティング▲75.6%、DXサービス+24.0%に対しコミュニケーション▲5.1%。公開講座は開催回数+21.9%に対し受講者+0.8%で1開催当たり▲17.3%、売上総利益率も▲3.4ptと空振りコストが現れ始めています。
現株価774円は配当逆算法の中立778円・PBR現状評価775円と一致するフェアバリュー水準ですが、上振れ余地(+15〜18%)より下振れ余地(▲11〜45%)が大きい非対称なリスク構造です。2026年11月に新中期経営計画の発表が予定されており、ここで配当方針と成長目標がどう示されるかが重要な確認ポイントになります。
「無借金・自己資本比率81%×ROE32%×DOE18%の下限方針」は極めて魅力的なセットです。ただし本銘柄は高配当株というより「成長株が配当性向を切り上げた結果、利回りが4%台に見えている銘柄」です。27年9月期の普通配当が29.5円を維持できるか、前受金の伸びが下支えされるか、AI関連サービスの計画が実績として現れてくるか——この3点を四半期ごとに確認しながら保有判断することが重要と考えられます。
出典・参照資料一覧
| No. | 資料名 | 備考 |
|---|---|---|
| 1 | 2026年9月期 第3四半期 決算短信〔日本基準〕(連結) | 株式会社インソース 2026年公表 |
| 2 | 2026年9月期 第3四半期 決算説明資料 | 株式会社インソース 2026年公表 |
| 3 | 配当予想の修正(記念配当)・自己株式の取得および消却に関するお知らせ | 株式会社インソース 2026年7月21日公表 |
| 4 | 半期報告書(大株主の状況) | 2026年3月31日現在 |
| 5 | 株価情報・目標株価(みんかぶ様) | 6200 インソース 株価情報(2026年7月29日終値ベース) |
| 6 | 株式指標・配当情報・配当履歴・EPS推移(IRBANK様) | 6200 インソース 各種財務・配当データ(2026年7月時点) |
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情報基準日:2026年7月30日(株価は2026年7月29日終値)
本記事に登場する「車野蔵人(くるまの くろうど)」は、AIが生成した架空のキャラクターです。実在する人物・アナリストとは一切関係ありません。
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