今回は「トヨタ自動車(7203)」を取り上げます。株価がピークから▲30%下落する一方で、欧州メーカーのHEV回帰という新たな追い風も見えてきました。所長と車野アナリストで詳しく見ていきます。
所長ダル


① 会社概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | トヨタ自動車株式会社 |
| 証券コード | 7203(東証プライム) |
| 設立 | 1937年8月 |
| 主な事業 | 自動車の製造・販売(自動車事業、金融事業、その他) |
| 時価総額 | 約43.4兆円(みんかぶ様・2026/6/11時点) |
| 決算期 | 3月末 |
なぜ今話題なのか
2025年2月に株価が約4,000円の高値をつけた後、米国関税問題・中東情勢・円高の三重苦で半年で株価が▲30%超下落しました。2026年3月期は営業利益が前期比▲21.5%の3.77兆円、さらに翌期(2027年3月期)見通しも3.0兆円と2期連続減益予想となっています。
しかし同時に見落とせない「もう一つの文脈」があります。欧州の自動車メーカー6社がEV投資を損切りして計6.7兆円の特別損失を計上し(日経新聞・2026年3月)、VWが今頃ハイブリッド車の開発を始めるという皮肉な状況が生まれつつあります。「EV化に乗り遅れた」と批判され続けたトヨタのHEV戦略が、実は最も正しかったのではないかという「再評価の機運」が個人・機関投資家の間で高まっています。






② 主要財務指標(2026年3月期実績)
| 指標 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 営業収益(売上高) | 50兆6,849億円(前期比+5.5%) | 決算短信p.1 |
| 営業利益 | 3兆7,662億円(前期比▲21.5%) | 決算短信p.1 |
| 営業利益率 | 7.4%(前期10.0%から低下) | 決算短信p.1 |
| 当期純利益(親会社帰属) | 3兆8,480億円(前期比▲19.2%) | 決算短信p.1 |
| EPS(基本的) | 295.25円(前期359.56円) | 決算短信p.1 |
| BPS | 3,062.82円 | 決算短信p.1 |
| ROE(連結・実績) | 10.1%(前期13.6%) | 決算短信p.1 |
| ROA(税引前利益率) | 5.2%(前期7.0%) | 決算短信p.1 |
| 自己資本比率 | 37.8%(親会社所有者帰属持分比率) | 決算短信p.1 |
| 営業CF | 5兆4,729億円(前期3兆6,969億円) | 決算短信p.12 |
| 配当(参考値) | 年間95円・利回り約3.63% | みんかぶ様 |






③ 業績推移(過去6期+今期予想)
| 決算期 | 売上高(億円) | 営業利益(億円) | 営業利益率(%) | EPS(円) | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2021/3 | 272,145 | 19,977 | 7.3 | 179.47 | コロナ禍・販売減少 |
| 2022/3 | 312,614 | 28,985 | 9.3 | 205.23 | 利益回復局面 |
| 2023/3 | 372,543 | 27,250 | 7.3 | 179.47 | 円安効果・販売台数増 |
| 2024/3 | 450,253 | 53,529 | 11.9 | 365.54 | ★過去最高益ピーク |
| 2025/3 | 480,367 | 47,955 | 10.0 | 359.56 | 高水準維持も小幅減益 |
| 2026/3 | 506,849 | 37,662 | 7.4 | 295.25 | 米国関税▲1.38兆円直撃 |
| 2027/3(予想) | 510,000 | 30,000 | 5.9 | 251.25 | 中東影響追加・関税継続 |
※出典:決算短信p.1・決算説明会資料p.6・p.12・IRBANK様
- 2024/3期が明確な業績ピーク。過去最高EPS365円を記録
- 2025〜2026/3期は「関税・資材高騰・諸経費増」のトリプル逆風で2期連続減益
- 2027/3期予想はさらに▲20.3%。中東の地政学リスク(▲0.67兆円)が新たに加わった
- ただし営業CFは5.47兆円と過去最高水準を更新。「利益が落ちてもキャッシュを生む力」は衰えていない点が重要






④ 事業・競争力の評価
【3項目評価】
売上高は過去最高水準(50兆円超)を継続しているものの、営業利益率が10.0%→7.4%→5.9%(予想)と急低下中です。関税・資材コスト・人件費・研究開発費(年1.5兆円超)の上昇が収益を圧迫しています。ただしアジアセグメント(営業利益率9.4%)や金融セグメント(+25%増益)が下支えしており、構造的な崩壊とは言えません。(出典:決算説明会p.8・p.9)
営業CFが5.47兆円、現金及び現金同等物が12.66兆円(前期比+3.7兆円)と強固です(決算短信p.12)。ネット資金量も17.4兆円に拡大しています。金融事業を除いた自動車等セグメントの有利子負債は比較的小さく、財務的な破綻リスクは極めて低いと考えられます。設備投資も年間2.4兆円規模を継続しており、将来への投資余力は十分と考えられます。
「安定的・継続的な増配」を公式方針とし、2026/3期95円→2027/3期100円と業績減益の中でも増配を維持しています(決算説明会p.15)。ROE目標20%(中長期)も明示されています(決算説明会p.23)。バリューチェーン収益の2030年目標(2.1兆円/年)、SDV・ロボティクスへの展開など、中長期の方針が数値で示されています。
市場環境コメント ── 「EV一強時代の終焉」という追い風






米国ではトランプ政権によるEV補助金の見直しと燃費規制の緩和が進んでいます。この環境変化は、HEVを30年かけて磨いてきたトヨタにとって明確な「追い風」です。2026/3期のHEV販売は前年比+4.4%の462万台で、電動車全体に占める比率が圧倒的です。電動化移行のペースが鈍化する局面では、HEVの優位性はさらに際立つ可能性があります。



これらを総合すると、明日から急にトヨタを脅かすと言う構図にはならないと考えられます。






リスク要因
- 米国関税:2026/3期に▲1.38兆円の直撃。2027/3期の見通しにも継続する前提
- 中東情勢:2027/3期に新たに▲0.67兆円の影響を見込む(決算説明会p.13)
- 為替:円高方向で1円/$につき約500〜600億円の利益感応度
- SDV競争:ソフトウェア定義型車両の開発でテスラ・グーグル・アップルに対する遅れのリスク
- 設備投資負担:年間2.4兆円の設備投資+研究開発費1.5兆円で減価償却費が毎年拡大中
- 大株主・アクティビストリスク:豊田自動織機の非公開化(3.66兆円の自己株取得予定)という大型資本異動が発生。今後の株主構成の変化は注目点
総合評価:B+
当初レポートで出したB評価から引き上げとなりました。修正理由は、①欧米のHEV回帰という追い風がトヨタの競争優位を再確認させていること、②BYD脅威論の修正により短中期のリスクが低下していること、③営業CFの強さと増配継続という株主還元の確実性です。ただし2期連続の業績減益という現実と、プラットフォーム転換という「まだ結果が出ていない賭け」を踏まえると、Aには届かない評価となります。






⑤ 適正株価試算
前提:現在株価 2,747.5円(2026/6/11・みんかぶ様)、BPS 3,062.82円
■ EPS×PER法(4シナリオ)
| シナリオ | 想定EPS(円) | 想定PER(倍) | 適正株価(円) | 現株価比 | 備考・前提条件 |
|---|---|---|---|---|---|
| 強気 | 340 | 13.0 | 4,420 | +60.9% | 関税緩和・HEV好調でEPS反転。プレミアムPER評価 |
| 中立 | 251 | 10.7 | 2,686 | ▲2.2% | 会社予想EPS(2027/3期)×現状PER水準。ほぼ織り込み済み |
| 保守的 | 230 | 9.0 | 2,070 | ▲24.6% | 増益一服・業種平均PERへの収縮 |
| 弱気 | 160 | 7.5 | 1,200 | ▲56.3% | 関税恒久化+円高急騰+中国販売急落の三重苦 |
米国が25%以上の対日自動車関税を恒久化し、かつ円が130円/$以下に急騰し、かつアジア販売が年▲20%以上急落するという複合シナリオが同時発生した場合です。いずれか単体では弱気シナリオに至らない可能性が高いと考えられます。
■ BPS×適正PBR(2点セット)
| PBR倍率 | 適正株価(円) | 根拠・コメント |
|---|---|---|
| 1.5倍 | 4,594 | 過去ピーク水準(2024年3月1.49倍・IRBANK様) |
| 1.0倍 | 3,063 | 歴史的なPBR中央値付近。財務価値に沿った水準 |
| 0.9倍 | 2,757 | 現在のPBR実績値(みんかぶ様1.08倍に近い水準) |
| 0.7倍 | 2,144 | 過去最低を下回るストレスシナリオ |
■ みんかぶ様目標株価との比較コメント
みんかぶ様のアナリスト目標株価は3,198円(2026/6/11時点)です。現株価2,747.5円に対して+16.4%のアップサイドとなります。これは上記「中立〜強気シナリオの中間」に位置しており、関税問題が完全解決せずとも、業績が底打ちすれば3,000〜3,200円レンジへの回復は現実的なシナリオと考えられます。EPS×PER法の中立シナリオ(2,686円)もほぼ現水準で一致しており、「下値はある程度限られているが、大きな上昇には触媒が必要」という評価が市場コンセンサスと言えそうです。






まとめ
- 2025年2月の高値から▲30%超下落。背景は米国関税・中東情勢・円高の三重苦
- 2026/3期は2期連続減益だが、営業CF5.47兆円は過去最高水準を更新
- 欧州メーカーのEV損切り・HEV回帰により「トヨタのHEV戦略が正しかった」という再評価が進行中
- BYD脅威論は短中期的には修正の余地あり。ただし中長期の競合としては継続注視
- 増配方針(2026/3期95円→2027/3期100円予想)を業績減益下でも維持
- みんかぶ様目標株価3,198円は現株価比+16.4%。中立シナリオとほぼ一致
- 総合評価はB+(前回Bから引き上げ)。最大のリスクは米国関税の恒久化
コラム 【関税1.38兆円は「誰が」払っているのか?】
「関税」と聞くと、「それって結局アメリカの消費者が払うのでは?」という疑問が浮かぶのは自然です。
制度上、関税は輸入者であるトヨタの米国法人が米国政府に支払います。ただ問題は、その負担を最終的に誰が引き受けるかという「税の転嫁」の話です。
選択肢は3つあります。
- メーカーが価格を上げずに自社で吸収する
- 販売価格に上乗せして消費者が負担する
- 両者で分担する
自動車市場は競合が多く、価格に敏感な消費者が多い市場です。価格に全額を上乗せすれば販売台数が落ち、フォードやGMのような米国内生産メーカー(関税の影響が小さい)に対して競争力を失います。そのため実務的には「一部を価格転嫁し、一部を自社で吸収する」という対応になりやすいと考えられます。
ここで重要なのは、決算で開示される「1.38兆円の減益」という数字の意味です。これは「関税コストのうち、価格転嫁できずトヨタが自社で吸収した金額」と理解するのが正確です。もし全額を消費者に転嫁できていれば、トヨタの利益は減らず、この数字自体が決算に出てこないはずだからです。つまり1.38兆円は「転嫁できなかった残り」であり、転嫁できた部分は米国の消費者が新車価格の上昇という形で負担しています。
結論として、関税の負担は
- 米国消費者(新車価格の上昇)
- トヨタ(利益減少1.38兆円)
- フォード・GMなど米国内生産メーカー(相対的なシェア拡大の可能性)
という3者に分散していると考えられます。「関税=アメリカ国民が払う」というのは一面的で、「関税=輸入車メーカーの収益力の問題でもある」という側面もあるといえます。
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情報基準日:20260611
本記事に登場する「車野蔵人(くるまの くろうど)」は、AIが生成した架空のキャラクターです。実在する人物・アナリストとは一切関係ありません。
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