【高配当研究所】日本製鉄(5401)USスチールが▲56億円から1,800億円へ、国内事業は1Q赤字――「実力ベース事業利益7,000億円」の中身が総入れ替えとなった四半期

2026年8月4日、日本製鉄(5401)は27/3期第1四半期決算にあわせ、通期の事業利益見通しを5,300億円→6,300億円、当期利益を2,200億円→2,900億円へ上方修正しました。牽引役はU. S. Steelで、実力ベース利益見通しが1,000億円以上から1,800億円以上へ+800億円の大幅上振れとなっています。一方で国内事業は▲900億円の下方修正となり、「米国で稼ぎ、国内で削られる」構図が数字としてはっきり表れた四半期でもあります。株価は前回分析時から約26%上昇し、PBRは0.52倍から0.63倍へ切り上がりました。今回は継続チェックとして、好調に見える決算の中身を分解していきます。

はじめにお断り

日本製鉄の配当利回りは3.55%(かぶたん様・2026年8月28日時点)で、当メディアが想定する高配当水準(3.5%超)にぎりぎり届く程度です。前回分析時(2026年6月30日)は4.45%でしたが、株価が538.6円→677.0円へ約26%上昇したことで4%台を割り込みました。以下は「高配当銘柄」としてではなく、成長性・競争力・割安感の視点で今仕込むべきかという観点の分析です。配当は参考値として扱います。

所長ダル
車野さん、通期予想を大幅に上方修正したそうですが、それにしては評価が微妙なのですね。
車野アナリスト
所長、その通りです。合計の数字だけを見ると良く見えますが、中身の主役が国内から米国へ完全に入れ替わっています。順番に分解していきましょう。
目次

はじめに:なぜ今、日本製鉄が話題なのか

日本製鉄は粗鋼生産で世界大手・国内首位に立つ会社で、2025年6月にU. S. Steelの買収を完了しています。1Qの売上収益2兆8,212億円のうち、製鉄事業が2兆6,129億円(92.6%)を占め、システムソリューション938億円、ケミカル&マテリアル738億円、エンジニアリング833億円という構成です(決算についてP1)。ほぼ「鉄一本」の会社と言えます。

ただし同社の資料を読むうえで注意すべきなのは、会社が最重視している指標がセグメント別利益ではなく、在庫評価差(原料価格変動による見かけの損益)を除いた「実力ベース事業利益」を国内・海外に分けた区分だという点です(決算について※1)。この軸で見ると構造がはっきり変わります。

区分2025年度実績2026年度見通し前期差
国内(本体国内製鉄+鉄グループ+非鉄3社)5,276億円3,800億円▲1,476億円
海外(本体海外事業+原料事業)1,228億円3,200億円+1,972億円
うちU. S. Steel▲56億円1,800億円以上+1,856億円
実力ベース連結事業利益6,504億円7,000億円以上+496億円

出典:決算説明会資料P13

国内比率は前期81%から今期54%へ低下し、U. S. Steel単独で実力利益の約26%を稼ぐ計画になっています。会社は「U. S. Steelが当社グループの稼ぎ頭として収益を牽引」と明記しており(決算説明会資料P13)、稼ぎ頭が国内から米国へ移った四半期と読めます。

2026年8月4日の業績予想修正では、通期の事業利益見通しを5,300億円→6,300億円、当期利益を2,200億円→2,900億円へ引き上げました。牽引役はU. S. Steelで、実力利益見通しが+800億円の大幅上振れとなった一方、国内は▲900億円の下方修正です。株価は前回分析時(538.6円)から約26%上昇し、PBRは0.52倍→0.63倍へ切り上がっています。

会社概要

項目内容出典
正式名称日本製鉄株式会社(NIPPON STEEL CORPORATION)決算短信 表紙
証券コード5401(東証プライム・名証・福証・札証)決算短信 表紙
代表者代表取締役社長 兼 COO 今井 正決算短信 表紙
決算期3月期(IFRS適用)決算短信 表紙
時価総額3兆6,380億円かぶたん様(2026/8/28)
発行済株式数5,373,633,760株(うち自己株式147,347,113株=2.7%)決算短信 注記事項(3)
事業セグメント製鉄/システムソリューション/ケミカル&マテリアル/エンジニアリング決算短信P8
連結粗鋼生産量2026年度見通し 5,800万t程度決算について 補足情報3
世界シェア粗鋼生産世界大手・国内首位。2025年USスチール買収かぶたん様 会社情報

主要財務指標(2027年3月期1Q/2026年4-6月)

指標数値前年同期出典
売上収益2兆8,212億円(+40.4%)2兆87億円決算短信P1
事業利益1,455億円(+58.1%)920億円決算短信P1
実力ベース事業利益1,084億円(▲653億円)1,736億円決算についてP1
ROS(事業利益率)5.2%4.6%決算についてP1
営業利益1,455億円▲1,396億円決算短信P1
税引前四半期利益1,139億円▲1,452億円決算短信P1
親会社帰属四半期利益753億円▲1,958億円決算短信P1
EPS(1Q)14.40円▲37.47円決算短信P1
EPS(通期予想)55.00円3.28円(前期実績)決算短信P1、業績修正IR
BPS1,078.42円IRBANK様
ROE(1Q年率換算)5.4%▲15.1%決算についてP1
ROE(通期予想)5.15%(実績0.31%)IRBANK様
ROA(通期予想)1.91%(実績0.12%)IRBANK様
親会社所有者帰属持分比率37.1%(前期末37.7%)決算短信P1
EBITDA(1Q)3,128億円(+1,242億円)1,886億円決算についてP1
営業CF(1Q)四半期CF計算書は非作成決算短信P8
現金及び現金同等物4,897億円4,612億円(前期末)決算短信P3
有利子負債4兆8,007億円(D/Eレシオ0.76倍)4兆6,199億円(0.85倍)決算についてP1
減価償却費及び償却費(1Q)1,672億円(前年966億円)966億円決算短信P8
設備投資(通期・工事ベース)1兆4,300億円程度(前期9,429億円)決算について 補足情報8
減価償却費(通期)7,000億円程度(前期5,739億円)決算について 補足情報8
配当(参考値)年間24円予想(利回り3.55%)・下限配当24円(前期)決算短信P1、説明会資料P9
所長ダル
増収40%、最終赤字から黒字へ、と聞くと劇的な回復に見えますが、素直に喜んでよいのでしょうか。
車野アナリスト
少し慎重に見るべきです。前年同期は事業再編損2,315億円という一過性損失を計上していたため、黒字転換の大半はその損失が消えただけと考えられます。増収40%の中身もUSスチールの連結期間差(9ヶ月→12ヶ月)と円安(145円→160円)が主因で、鋼材出荷量は753万t、前年764万tから▲1.4%とむしろ減少しています。
所長ダル
では、事業利益が58%も伸びている点はどう見ればよいのでしょうか。
車野アナリスト
これも在庫評価差が前年▲620億円から今期+502億円へ1,122億円改善したことが主因です。この評価差を除いた「実力ベース事業利益」で見ると1,084億円で、前年1,736億円から▲38%の減益でした(決算についてP1)。会社自身がこの実力指標を定義して開示している点は評価できますが、見出しの数字をそのまま受け取ると実態を見誤ると考えられます。
この四半期を読むうえで最重要の注意点

注意点1:前年同期が「特殊な赤字」だったため、増減率が実態以上に良く見えます。前年同期(2026年3月期1Q)は事業再編損2,315億円(AM/NS Calvert持分譲渡影響)を計上し、営業利益▲1,396億円・最終赤字1,958億円でした。今期は個別開示項目がゼロなので、「赤字→黒字」の大半は前年の一過性損失が消えたことによります。

注意点2:会社が最重視する「実力ベース事業利益」は減益です。実力ベースでは1,084億円(前年1,736億円、▲653億円)と38%の減益でした。原料価格の上昇で在庫の見かけ上の評価益が出ただけ、という側面が大きいと考えられます。

注意点3:国内は1Qで実質赤字です。実力ベースの国内は471億円(前年1,414億円、▲943億円)まで落ち込み、その中核である本体国内製鉄事業は1Q▲124億円の赤字でした。増収40%という見出しの裏で、国内本業は赤字だったことになります。

業績推移(過去5期+今期予想)

決算期売上収益(億円)実力ベース連結事業利益(億円)実力利益率EPS(円)年間配当備考
2022.3(FY21)68,0886,90010.1%13832円コロナ後の市況急回復・値上げ浸透
2023.3(FY22)79,7557,3409.2%15136円EPSのピーク。紐付き価格の改定が効く
2024.3(FY23)88,6809,35010.5%11932円実力利益のピーク。日鉄物産連結
2025.3(FY24)86,9557,9379.1%7032円中国の過剰輸出で国内市況が悪化開始
2026.3(FY25)100,6326,5046.5%324円USS連結(9ヶ月)。事業再編損2,712億円で最終益171億円
2027.3(予)112,0007,000以上6.3%5524円USSが牽引し反転計画。国内は▲1,476億円
2027.3 1Q実績28,2111,0843.8%14.40増収も実力ベースは▲38%減益

出典:売上収益はIRBANK様、実力ベース連結事業利益・EPS・配当は決算説明会資料P14・P9、2026年度見通しは決算についてP2

2024年3月期(FY23)が明確な山です。実力利益9,350億円・利益率10.5%は、価格改定の浸透と円安が重なった局面でした。そこから実力利益は9,350→7,937→6,504億円と2期連続で減少し、今期は7,000億円以上へ反転計画ですが、売上が6.8兆円→11.2兆円と+64%も伸びているのに実力利益は横ばいという構図です。利益率は10.1%→6.3%へ約4ポイント低下しており、「増収減益(率)の構造」が定着しつつある点が最大の論点と考えられます。

売上の伸びは主にUSスチールの連結(2025年度は7〜3月の9ヶ月、2026年度から12ヶ月フル連結)と円安(150円→160円)によるもので、数量の成長ではありません。1Qの鋼材出荷量は753万t(前年764万t、▲11万t)と減少しています(決算についてP1)。EPSは138円(FY21)→3円(FY25)→55円(FY26予)という激しい変動で、FY25の3円は事業再編損2,712億円という一過性要因によるものです。EPSのトレンドで判断しにくい銘柄と言えます。

今期は連結範囲が新規2社・除外12社と動いており(決算短信 注記事項(1))、さらにUSスチールが前期9ヶ月連結→今期12ヶ月フル連結へ変わったため、単純な前年比較が成立しません。単独粗鋼生産量は851万t(前年827万t、+2.9%)、鋼材出荷量は753万t(前年764万t、▲1.4%)で、国内の実態はほぼ横ばい〜微減です(決算についてP1)。実力ベース利益の長期推移で見ると、FY23の9,350億円がピークで、FY26見通し7,000億円はFY21(6,900億円)とほぼ同水準です。会社は下期を年率9,000億円以上とし、2030中長期経営計画では実力利益1兆円以上(国内5,000億円以上・海外5,000億円以上)を目標としています(決算説明会資料P2・P13)。今期7,000億円との差3,000億円をどう埋めるかが評価軸になります。

継続チェックメモとの照合(27/3期1Q)

毎回チェックする基本項目

チェック項目判定基準(前回メモ)今回(2027/3期1Q・通期見通し)評価
売上高USS連結効果除きで前年並みを維持1Q 2兆8,212億円(+40.4%)/通期11兆2,000億円へ上方修正。ただし鋼材出荷量は▲1.4%
実力ベース事業利益通期7,000億円以上を下回らないか通期7,000億円以上を据え置き。ただし1Q実績1,084億円は前年比▲38%
事業利益率(実力ベース)6%台を維持しているか通期6.3%(7,000/112,000)。1Q単体は3.8%で基準割れ
親会社帰属利益/EPS一過性損失除きで黒字水準を維持1Q 753億円/14.40円。通期2,900億円/55.00円へ上方修正
営業CF6,000億円以上を維持1Qは四半期CF計算書が非作成のため判別不可。EBITDA 3,128億円(+1,242億円)
年間配当予想下限配当24円を下回らないか24円据え置き・修正なし(中間12円・期末12円)
U. S. Steel実力利益2025年度▲56億円から黒字転換したか1Q 322億円で黒字転換。通期1,800億円以上(前回1,000億円以上→+800億円)
所長ダル
実力ベース事業利益は通期7,000億円以上で据え置きなのですね。前回と変わらないと考えてよいでしょうか。
車野アナリスト
合計は同じでも、中身は完全に入れ替わっています。国内は4,700億円から3,800億円へ▲900億円、海外は2,300億円から3,200億円へ+900億円、うちU. S. Steelは1,000億円以上から1,800億円以上へ+800億円です(決算説明会資料P5)。国内の内訳はさらに厳しく、本体国内製鉄事業は1Q▲124億円の赤字で、通期見通し1,200億円も前回公表の1,900億円から▲700億円、FY2021以降で最低水準となっています(同P13・P17)。
所長ダル
一方で明るい材料もあるとうかがいましたが。
車野アナリスト
はい。非鉄3社(システムソリューション・ケミカル&マテリアル・エンジニアリング)は合計1,000億円へ上方修正され、3社そろって過去最高益を狙う水準です(同P19)。AIサーバー向け基板材料樹脂は販売数量+50%、半導体ボンディングワイヤは+15%と、鉄の会社の中でAI関連事業が伸びている点は意外性のある材料と言えます。合計だけを見て安心せず、内訳の入れ替えこそが構造変化だと捉えるべきと考えられます。

営業CFを[ – ]としたのは、四半期連結キャッシュ・フロー計算書が作成されていないためです(決算短信P8)。判別不可であり、悪化を意味しません。ただし後述の通り、通期設備投資1兆4,300億円がEBITDA見通し1兆3,300億円を上回る計画であるため、FCFの水準は次回以降の最重要確認事項になります。事業利益率を△としたのは、1Q単体の実力利益率が3.8%と、前回メモの「6%台維持」ラインを大きく割り込んだためです。会社計画では下期に4,500億円を稼ぐ前提で通期6.3%を確保する形になっており、期初〜上期の実績だけで見れば基準未達という状態にあります。

注意点①:中東情勢の長期化・定量化不能リスク

チェック項目評価内容
中東情勢が第2四半期以降も継続・拡大しているか継続。「中東情勢によるさらなる経済減速も懸念される」と認識を維持(決算についてP3)
会社が中東影響を定量化し見通しに反映したか1Q実績▲250億円、2026年度通期▲600億円程度と初めて定量化・織り込み(決算説明会資料P5)
原燃料コスト上昇幅が想定▲500億円規模を超えていないか中東影響単体は通期▲600億円程度で想定の範囲内。ただし環境変化全体では▲1,000億円
中東向け直接輸出の減少が加速していないか影響が顕在化との記載はあるが数量開示なし。鋼材輸出比率は1Q 40%で前年同期と同水準
所長ダル
前回、中東情勢の影響が数字にできていない点を心配していましたね。
車野アナリスト
今回、明確に答えが出ました。1Q実績は▲250億円、2026年度通期では▲600億円程度と定量化され、見通しに織り込まれています(決算説明会資料P5)。前回想定していた「1Qだけで▲500億円」の半分にとどまっており、想定より軽微だったと言えます。
所長ダル
それでは、この項目はもう心配しなくてよいのでしょうか。
車野アナリスト
リスクが消えたわけではありません。中東影響を含む「環境変化」全体では前回公表比▲1,000億円で、物流費・エネルギーコスト上昇、スクラップ・原料炭・市況原料価格上昇が含まれています。輸入物価指数は2026年に入って明確に上昇基調です(同P15)。中東という震源の直接影響より、そこから波及したコスト上昇のほうが重いという構図で、不確実性は消えるのではなく測れるようになった段階と考えるのが適切です。前回メモの本注意点は、優先順位を下げてよい段階に入ったと考えられます。

注意点②:U. S. Steel収益改善の進捗

チェック項目評価内容
USS実力利益が▲56億円から黒字転換しているか1Q 322億円。通期1,800億円以上(対前回公表+800億円)
Big River 2の生産量が計画通り伸びているか2026年6月に月次生産新記録204Kst。2025年度1.4Mst→2026計画2.5Mst(同P24)
操業シナジー効果の進捗が開示されているか3億ドル/年へ拡大。中期目標5億ドルに対し進捗率60%と明示(同P23-24)
Gary第14高炉改修・Granite City #B高炉再稼働#B高炉は3月下旬に2年半ぶり再稼働し順調に操業中。第14高炉改修(100日)はオンラインで進捗中(同P24)
戦略的投資の成案化累計約37億ドルを成案化(2030計画110億ドルの約34%)。DRIプラント18.8億ドル等(同P25)
所長ダル
買収したU. S. Steelは、実際のところどの程度うまくいっているのでしょうか。
車野アナリスト
2025年度は実力利益▲56億円の赤字でしたが、1Q単独で322億円、通期見通しは1,800億円以上、対前回公表で+800億円の上振れです。上振れの内訳は、米国鋼材市況上昇下での需要捕捉が+600億円、シナジー進展や高炉再稼働効果のフル発揮など収益改善努力が+200億円となっています(決算説明会資料P7)。シナジーは2026年度3億ドル/年へ拡大し、中期目標5億ドルに対し進捗率60%です(同P23-24)。現場では日本製鉄から100名規模の技術者が派遣され、260項目の改善施策が進んでいます。
所長ダル
それは順調と言ってよさそうですね。
車野アナリスト
現場の努力は評価できます。ただし上振れの3分の2は市況要因である点は割り引いて見る必要があります。米国のホットコイル市況は現在1,200ドル/tを超える高値圏にあり、2025年には米国粗鋼生産81.9百万tが日本の80.7百万tを44年ぶりに逆転しました(同P8)。大型M&Aの成否は数年かけて見るべきで、1年目としては上出来ですが、市況の追い風を差し引く目線も必要と考えられます。本注意点も優先順位を下げてよい段階です。

注意点③:中国の過剰輸出継続と国内市況の劣化

チェック項目評価内容
国内ホットコイル主原料マージンがさらに圧縮していないか2026年に入って下げ止まったものの、その他の外部調達コスト増が収益を圧迫(同P15)
値上げがどこまで浸透しているか下期に紐付分野への価格反映・国内市況分野の値上げ浸透で+1,000億円を計画(同P6)。実績ではなく計画段階
中国の鋼材輸出量・粗鋼生産量に減少の兆しがあるか×中国の過剰生産能力に伴う安価な鋼材輸出の高位継続や新興国での能力拡大により、需給ギャップは拡大する見通し(決算についてP3)
日本国内の輸入通商対策の進展添付資料の範囲では日本国内の措置に関する記載なし。EU(無税枠▲47%・超過関税50%)、インド等の措置は開示(同P26、P28)
本体国内製鉄事業の利益×1Q▲124億円の赤字。通期1,200億円は前回公表1,900億円から▲700億円
国内事業の悪化が今回最大のマイナス材料

前回メモの注意点③は「中国の過剰輸出」でしたが、今回の決算で表面化したのはそれを含む国内事業全体の収益力低下です。本体国内製鉄事業の1,200億円という水準は、FY2021以降で最低です(FY21 2,440/FY22 2,220/FY23 3,659/FY24 2,602/FY25 2,465億円、決算説明会資料P17)。国内鋼材需要も2025年49.0百万t→2026年48.5百万tと縮小が続き、完成車生産は835万台と2013年の991万台から16%減っています(同P15)。中国の過剰輸出は「変化」ではなく「常態」になりつつあると読むのが妥当と考えられます。

一方で明るい要素もあります。非鉄3社は合計1,000億円へ上方修正され、3社ともに過去最高益を狙うとされています(同P19)。AIサーバー向けリジッド回路基板材料用樹脂(販売数量+50%)、半導体実装用ボンディングワイヤ(+15%)、データセンター建築の標準化など、AI・半導体関連が成長分野です(同P20)。規模は小さいものの、鉄以外の柱が育ちつつある点は評価できます。また名古屋次世代熱延設備(年産600万t)が2026年8月に商業生産開始予定で(同P16)、下期のコスト改善に寄与する計画です。本注意点は、前回メモの「中国の過剰輸出」から「国内事業の構造的な収益力低下」へ格上げして継続監視すべきと考えられます。

引き続き良好なら安心できる項目

項目維持ラインの目安今回評価
調整後D/Eレシオ0.7程度を大きく超過しないか0.76倍(前年同期0.85倍、前期末0.71倍)
自己資本比率(親会社所有者帰属持分比率)30%台を維持37.1%(前期末37.7%)
粗鋼トンあたり利益(世界比較)主要海外メーカーの中位以上今回の添付資料に比較データなし
資産圧縮の進捗継続的な資産圧縮でFCF改善に寄与2026年度1,000億円以上を実行する方針。外数でNSユナイテッド海運株一部譲渡360億円程度(同P10)
有利子負債4兆8,007億円(前年同期4兆6,199億円、+1,808億円)

D/Eレシオ0.76倍は前年同期0.85倍からは改善していますが、前期末0.71倍からは上昇しています。2030中長期経営計画の目標「0.7程度」に対しては超過している状態です。ただし劣後ローン・劣後債の資本性調整7,150億円(前年4,650億円)を反映した後の数値であり、危険水域ではないと考えられます。政策保有株式は2013年以降で実質8割以上を縮減しており、連結残高は1兆円規模→5,700億円規模まで減っています(同P10)。この点は評価できます。

銘柄固有の注目ポイント(継続ウォッチ)

チェック項目評価内容
2030中長期計画(実力利益1兆円)への進捗率2026年度7,000億円=目標の70%。ただし下期年率換算では9,000億円以上=90%相当と会社は説明(同P2、P14)
インド南部ラジャヤペタ新製鉄所の具体化2026年3月に環境承認取得・土地造成工事に着手。第Ⅰ期粗鋼700万t/年。投資方案は継続検討中(同P27、P28)
欧州拠点の直接保有化NSSK(旧USSK・粗鋼450万t/年)が2026年10月1日、Ovakoが2027年4月1日に直接出資体制へ移行予定(同P26)
国内グループ再編山陽特殊製鋼を2027年4月1日に統合予定(決算についてP3)
設備投資と減価償却のバランス×設備投資1兆4,300億円(前期9,429億円、+52%)に対し減価償却費7,000億円。EBITDA見通し1兆3,300億円をも上回る
所長ダル
今回、新しく気になる点が出てきたとうかがいました。
車野アナリスト
設備投資です。2026年度の設備投資は1兆4,300億円程度で、前期9,429億円から+52%の急増となっています(決算について 補足情報8)。これに対し通期EBITDA見通しは1兆3,300億円で、営業活動で生み出すキャッシュを設備投資が上回る計画です。減価償却費も5,739億円から7,000億円程度へ+22%、1Qの減価償却費及び償却費は既に1,672億円と前年966億円から+73%に増えています(決算短信P8)。
新規の懸念:設備投資がEBITDAを上回る

投資の中身は成長投資が中心で、赤字補填ではありません。U. S. SteelのDRIプラント18.8億ドル(工事完了2029年)、Fairfield熱処理設備4.75億ドル、インドのハジラ鉄源一貫能力拡張(FY2027稼働予定・粗鋼+600万t/年)、南部ラジャヤペタ新製鉄所(第Ⅰ期700万t/年)、国内は名古屋次世代熱延設備(年産600万t、2026年8月商業生産開始予定)が中心です。資産圧縮は2026年度1,000億円以上+NSユナイテッド海運株一部譲渡360億円程度で一部を相殺します。回収時期は2028〜2030年以降が中心で、当面3〜4年は償却負担が先行する構図になると考えられます。なお四半期のキャッシュ・フロー計算書は作成されないため、FCFの確認は2Q・通期決算まで待つ必要があります(決算短信P8)。

株価・バリュエーション(継続ウォッチ欄)

チェック項目前回時点(2026/6/30)今回時点(2026/8/28)変化のポイント
株価538.6円677.0円(+25.7%)決算後に上昇
PER(実績)164.20倍206.21倍(IRBANK様)前期最終益171億円のため参考値としての意味は薄い
PER(予想)12.9倍12.2倍予想EPSが42円→55円へ切り上がったためPERは低下
PBR0.52倍0.63倍過去レンジ0.27〜1.62倍の下半分
配当利回り4.45%3.55%株価上昇により4%台を割り込み
みんかぶ様目標株価667円(中立)670円(総合判断:売り)目標株価はほぼ据え置き。現在株価が目標株価に到達
初回試算との乖離中立シナリオ546円と整合中立シナリオを上回る水準へ強気シナリオ側へ一歩進んだ

みんかぶ様の内訳は、個人投資家予想599円(売り・8/26)、証券アナリスト予想698円(買い・8/29)と割れています。アナリストの内訳は強買3・買い3・中立2・売り0・売却1です(みんかぶ様)。

信用需給ウォッチ

日付売り残買い残信用倍率
2026/7/242,798.5千株42,979.3千株15.36倍
2026/7/313,395.1千株35,359.3千株10.41倍
2026/8/073,870.4千株34,316.7千株8.87倍
2026/8/143,890.4千株35,439.8千株9.11倍
2026/8/213,164.2千株36,993.3千株11.69倍

出典:かぶたん様、2026/8/28時点。信用倍率は7月下旬の15.36倍から低下したものの、直近は11.69倍へ再上昇しており改善が止まっています。買い残36,993千株は発行済株式数53億7,363万株の0.69%で、要注意目安の2%は下回っています。ただし買い残は8月28日の出来高2,475万株を大きく上回る規模で、株価上昇局面で買い残が増えている(8/7の3,431万株→8/21の3,699万株)点は、上値では戻り売り圧力になりやすいと考えられます。

即座に見直しが必要なシグナル:該当なし

実力ベース事業利益は通期7,000億円以上を維持(基準6,000億円を上回る)、自己資本比率37.1%(基準30%を上回る)、下限配当24円は維持、調整後D/Eレシオ0.76倍(基準1.0倍を下回る)、U. S. Steelの重大なネガティブニュースなし(むしろ上方修正)。営業CFのみ判別不可ですが、EBITDAが+1,242億円改善しているため、マイナス転落の懸念は低いと考えられます。

事業・競争力の評価

本業の稼ぐ力:△

売上収益は+40.4%と大きく伸びましたが、その中身はUSスチールのフル連結と円安(145円→160円)であり、鋼材出荷量は▲1.4%と数量は減っています。会社が実力を表すとする実力ベース事業利益は1Q▲38%の減益で、実力利益率は通期6.3%とFY2023の10.5%から大きく低下しています。ROEも予想5.15%(IRBANK様)と資本コストを明確に上回る水準とは言えません。一方で明確な改善もあります。U. S. Steelの実力利益が▲56億円→1,800億円以上へ転じ、シナジーは中期目標5億ドルに対し進捗率60%。非鉄3社はAI・半導体関連で3社とも過去最高益を狙う水準です。「国内で減り、米国と非鉄で増やす」ポートフォリオ転換が実際に動き始めた点は評価できます。ただし、本体国内製鉄事業が1Q赤字(▲124億円)で通期見通しも1,200億円と過去最低水準にある事実は重く、稼ぐ力の総合判定は△が妥当と考えられます。

財務の健全性:○

親会社所有者帰属持分比率37.1%、調整後D/Eレシオ0.76倍。USスチール買収で有利子負債4兆8,007億円という重い財務ですが、劣後調達を含めた資本性の手当てがなされており、危険水域ではないと考えられます。EBITDA 1兆3,300億円に対し有利子負債は約3.6倍で、重厚長大産業としては許容範囲でしょう。政策保有株式を2013年以降で実質8割以上縮減し、2026年度も1,000億円以上の資産圧縮を実行する方針を掲げている点は、財務規律として評価できます。留保が必要なのは設備投資1兆4,300億円がEBITDA 1兆3,300億円を上回る点で、当面のFCFは楽観できない構図です。○としつつ、次回以降の営業CF開示(2Q・通期)で確認すべき項目と位置づけます。

経営方針の透明性:○

2030中長期経営計画で実力利益1兆円以上(国内5,000億円以上・海外5,000億円以上)という明確な数値目標を掲げ、毎回の決算で進捗を同じ形式のグラフで開示しています(決算説明会資料P14)。在庫評価差を除いた「実力ベース事業利益」という自社基準を定義し、一貫して使用。市況で膨らむ見かけの利益を自ら除外して開示する姿勢は評価できます。前回公表からの変動を+800億円・▲900億円と要因別に分解して示しており、上方修正の中身が検証可能です(同P5〜P7)。下限配当24円/株を2026〜2030年度に導入し、配当性向30%程度目安と併用(同P9)。業績変動の大きい市況企業として、下限を約束する方針は株主にとって分かりやすい設計です。中東影響という定量化困難だった項目を、四半期をまたいで▲250億円/▲600億円と数値化した点も評価できます。残る懸念は、①四半期のキャッシュ・フロー計算書が作成されないため営業CF・FCFを四半期で追跡できない、②ROE目標が明示されていない、の2点です。①は制度上認められた開示であり、後退ではありません。

市場環境コメント

世界の鉄鋼市場は、地域によって環境が真逆に分かれる「分断」の局面にあります。会社自身が「通商措置や経済ブロック化が進展し、その影響の程度に応じて市況の地域間格差が一層拡大する」と整理しています(決算についてP3)。米国はホットコイル市況が1,200ドル/t超へ続伸。輸入鋼材が減少し米国粗鋼生産は増加基調で、2025年の米国粗鋼生産81.9百万tが日本80.7百万tを44年ぶりに逆転しました(決算説明会資料P8)。欧州はEUが無税輸入枠を18.3百万tへ▲47%削減、超過関税を25%→50%へ引き上げ、域内ミル材へのシフトが進みます(同P26)。日本・アジアは中国の安価な鋼材輸出が高位で継続し、需給ギャップは拡大見通し。国内鋼材需要は48.5百万tへ縮小と、構造的な逆風が続きます。インドは鋼材需要が2026年1.7億t→2027年1.9億tと成長しますが、直近は欧州の新セーフガードでインドの輸出枠が減り、国内需給が緩和・市況調整の兆しがあると会社は注視姿勢です(同P28)。「米国・欧州で勝ち、日本で削られる」という構図が鮮明で、同社の投資が北米・欧州に集中してきたのは結果的に正しい判断だったと言えます。ただし裏返せば、米国市況が反落した瞬間に全体の絵が崩れる依存構造でもあります。

リスク要因

押さえておきたい7つのリスク
  1. 米国鋼材市況の反落:実力利益の26%をUSSが担い、上振れ+800億円のうち+600億円は市況要因。HC市況は現在1,200ドル/t超と高値圏で、下落余地は小さくない。最大の単一リスク
  2. 国内事業の構造的な収益力低下:本体国内製鉄事業は1Q赤字、通期1,200億円と過去最低水準。国内需要は縮小トレンド、中国の過剰輸出は常態化
  3. 極端な下期偏重:上期2,500億円・下期4,500億円という計画で、下期に上期の1.8倍を稼ぐ前提。値上げ浸透(+1,000億円)等の積み上げは示されているが、実績ではなく計画
  4. 為替:前提160円/ドル(前回155円)。海外事業利益3,200億円の大半が外貨建てで、円高は直接の減益要因。感応度の明示開示はなし
  5. 設備投資の先行負担:1兆4,300億円がEBITDA 1兆3,300億円を上回り、減価償却費は7,000億円へ+22%。回収は2028〜2030年以降が中心
  6. 原燃料コスト・地政学:中東影響▲600億円は定量化されたが、それが誘発した物流費・エネルギー・原料炭価格の上昇を含む「環境変化」全体は▲1,000億円。輸入物価指数は上昇基調
  7. 株主構成/アクティビストリスク:大株主一覧が未添付のため断定できない。ただし時価総額3兆6,380億円という規模と、自己株式が2.7%にとどまる資本構成を踏まえると、外部からの圧力が短期で有効に機能する可能性は限定的と考えられる

総合評価:B(前回Bを据え置き)

事業の中身は前回より明確に前進しました。U. S. Steelが▲56億円→1,800億円以上へ。前回メモ最大の焦点だった「買収は本当に効くのか」に対し、シナジー進捗率60%という定量的な答えが出ました。中東影響が「定量化不能」から▲600億円へ。前回メモが試金石とした開示が実行され、しかも想定より軽微でした。通期を事業利益5,300→6,300億円、当期利益2,200→2,900億円へ上方修正。EPSは42円→55円。非鉄3社が3社そろって過去最高益を狙う水準へ。

一方で、格上げに踏み切れない理由も明確です。国内本業が1Q赤字(本体国内製鉄事業▲124億円)。実力ベースでは1Q▲38%の減益。下期4,500億円という計画への依存度が高く、上期実績だけでは6%台の利益率を維持できていません。設備投資1兆4,300億円がEBITDA 1兆3,300億円を上回り、FCFは当面楽観できません。株価が26%上昇しPBR0.52倍→0.63倍、配当利回り4.45%→3.55%へと、事業の改善を株価が先に織り込みました。「成長株として今仕込む価値があるか」という問いに対しては、事業の方向性は前回より明らかに良くなったが、その分が株価に反映済みで、現在値はみんかぶ様目標株価670円に到達しており、今から買い上がる局面ではないというのが現時点の見方です。

買い増しを検討できる条件(2Q以降の確認事項)

①2Qで上期実力利益2,500億円が達成され、下期4,500億円の前提が維持される

②本体国内製鉄事業が2Q以降黒字化し、通期1,200億円の達成確度が上がる

③中間期の営業CFが開示され、設備投資1兆4,300億円を賄えるキャッシュ創出力が確認できる

④USS実力利益が上期900億円計画を上回るペースで進捗する

⑤国内の値上げ浸透が「計画」から「実績」として開示される。

この5点が確認できることが条件と考えられます。逆に、米国HC市況が1,000ドル/tを割り込んで定着した場合、ドル円が140円を割り込んだ場合、または通期見通しが下方修正された場合は、見送るべきシグナルと考えられます。

適正株価試算

EPS×PER法(4シナリオ)

現在株価677.0円(2026年8月28日終値・かぶたん様)、通期予想EPS 55.00円(決算短信)を基準としています。

シナリオ想定EPS想定PER適正株価現株価比前提条件
強気75円13.0倍975円+44.0%下期年率9,000億円が実現し2027年度が実力利益8,000〜9,000億円へ。米国HC市況が高値維持、USS 1,800億円超、国内の値上げが計画通り浸透
中立55円12.2倍671円▲0.9%会社予想EPSをそのまま採用。PERは現状水準を維持
保守的42円11.0倍462円▲31.8%下期の国内+1,800億円が半分しか実現せず、5月公表時の会社予想水準(EPS42円)へ逆戻り
弱気25円12.0倍300円▲55.7%下記条件が重なった場合

(参考)2030中長期計画達成シナリオ:実力利益1兆円が実現した場合、事業利益は9,000億円前後、当期利益4,500億円程度、EPSは約86円と試算できます。PER12倍で株価1,030円相当です。今期7,000億円との差は3,000億円で、海外5,000億円(今期3,200億円)・国内5,000億円(今期3,800億円)の両輪が必要であり、特に国内の+1,200億円は現在の環境では容易ではないと考えられます。

弱気シナリオが現実になる条件(複数の同時発生)
  1. 米国ホットコイル市況が900ドル/t台まで下落し、USS実力利益が1,000億円を大きく割り込む(前提の1,800億円から半減以上)
  2. 下期の国内値上げ(+1,000億円計画)が浸透せず、本体国内製鉄事業が通期でも赤字圏に沈む
  3. ドル円が130円台まで急伸し、海外事業利益3,200億円の円換算額が大きく目減りする
  4. 中東情勢の再燃で、定量化した▲600億円を大幅に超える物流・エネルギーコストの上昇が発生
  5. 大型設備トラブル・労使紛争等でU. S. Steelの高炉が長期停止する

BPS×適正PBR(2点セット)

BPS 1,078.42円(IRBANK様)を基準としています。

PBR倍率適正株価位置づけ
0.27倍291円過去レンジ下限(IRBANK様:2010年以降0.27〜1.62倍)
0.40倍431円悲観局面の目安
0.52倍561円前回分析時(2026/6/30)の水準
0.63倍679円現在水準
0.80倍863円下期4,500億円の実現が確認された場合
1.00倍1,078円解散価値。心理的な「壁」
1.62倍1,747円過去レンジ上限(2021年の市況ピーク局面)

EPS×PER法の中立シナリオ(671円)とBPS×PBR法の現在水準(679円)がほぼ一致しており、現在の株価は「会社予想をそのまま織り込んだ妥当な水準」にあると考えられます。前回分析時は中立試算546円に対し株価538.6円とやや下回っていましたが、今回は差がなくなりました。割安さは解消されたという読み方になります。弱気シナリオの300円は、PBRに直すと0.28倍で過去レンジ下限0.27倍とほぼ一致します。試算の整合性という点では、この水準が構造的な下値と考えられます。

みんかぶ様目標株価との比較

みんかぶ様の目標株価は670円で、8月28日終値677円をわずかに下回ります。前回分析時(2026/6/30)の667円からほぼ据え置きで、業績が上方修正されたにもかかわらず目標株価が動いていない点が注目されます。総合判断は「売り」で、内訳は個人投資家予想599円(売り)、証券アナリスト予想698円(買い)と真っ二つに割れています(みんかぶ様、2026年8月26日・29日)。アナリストの投資判断内訳は強買3・買い3・中立2・売り0・売却1です。目標株価670円はBPS 1,078.42円に対しPBR 0.62倍、予想EPS 55円に対しPER 12.2倍で、当ラボの中立シナリオ(671円)とほぼ完全に一致します。つまり市場は会社予想をそのまま評価しているだけで、2030年の実力利益1兆円という中長期計画は株価にまったく織り込まれていないことになります。裏を返せば、下期4,500億円が実現し1兆円への道筋が見えてくれば、上値余地は残されているとも読めます。

全シナリオが崩れる条件

前提そのものが成立しなくなるケース
  1. 米国の通商政策が転換し、鋼材関税が大幅に緩和される:現在の米国HC市況1,200ドル/t超は輸入減による需給引き締まりが支えており、この前提が消えるとUSS 1,800億円の根拠が崩れます
  2. 中国が過剰生産能力の削減に本格着手し、鋼材輸出が急減する(同社にとっては追い風だが、市況構造の前提が変わり試算のやり直しが必要)
  3. USスチール買収に関連する米国内の政治・規制環境が悪化し、経営の自由度が制約される
  4. 世界的な景気後退で、米国・欧州・インドの3市場が同時に悪化する

「今仕込む」判断の目安となる株価水準

株価水準位置づけ
593円前後(PBR0.55倍水準)下値余地は限定的と考えられる水準。ここまでの調整があれば、シクリカル底からの回復局面としては魅力度が上がると考えられます
647円前後(PBR0.60倍水準)押し目の第一目安
677円前後(現在水準)みんかぶ様目標株価670円・中立シナリオ671円とほぼ一致。「妥当価格で買う」水準であり、大きな割安感はありません
863円(PBR0.80倍水準)下期4,500億円の実現が確認された場合の次の節目
スタンスの整理

打診買い・分割投入が現実的と考えられます。1Qは合計値こそ据え置きですが、中身は国内から米国へ総入れ替えとなっており、国内本業は赤字です。まずは2Q決算で、

①上期実力利益2,500億円の達成、

②本体国内製鉄事業の黒字化、

③中間期営業CFの確認、

④USS実力利益の上期進捗、

⑤国内値上げの実績化

以上を確認してからの本格判断が無難です。株価は26%上昇し割安感が薄れつつある一方、信用倍率11.69倍という需給の重さも残っています。急いで全額を投じる局面ではないが、PBR0.55〜0.60倍(約593〜647円)への押し目を待ちつつ、時間分散で拾う価値はある、という整理になります。

まとめ

  • 通期の事業利益見通しを5,300億円→6,300億円、当期利益を2,200億円→2,900億円へ上方修正。牽引役はU. S. Steel(実力利益+800億円)
  • 実力ベース事業利益は通期7,000億円以上で据え置きだが、中身は国内▲900億円・海外+900億円と総入れ替え。1Qの実力ベースは前年比▲38%の減益
  • 本体国内製鉄事業は1Q▲124億円の赤字。通期見通し1,200億円もFY2021以降で最低水準
  • U. S. Steelは▲56億円から1,800億円以上へ黒字転換。シナジー進捗率は中期目標に対し60%だが、上振れの3分の2は市況要因
  • 中東影響は▲250億円(1Q)・▲600億円(通期)と定量化され、想定より軽微。一方で環境変化全体では▲1,000億円
  • 設備投資1兆4,300億円がEBITDA見通し1兆3,300億円を上回る計画で、FCFは当面楽観できない
  • 総合評価はB据え置き。株価は26%上昇しみんかぶ様目標株価670円に到達済みで、割安さは解消。PBR0.55〜0.60倍(約593〜647円)への押し目を待つのが妥当と考えられます
所長ダル
車野さん、今日もありがとうございました。合計だけを見ていては分からない変化がよく分かりました。
車野アナリスト
はい。米国で稼ぎ国内で削られるという構図は、これから数年続く可能性があります。次回は2Q決算で、国内本業の黒字化と設備投資に見合うキャッシュ創出力の2点を確認していきましょう。

免責事項

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AI(Claude/Anthropic社)を活用して作成したコンテンツです。情報の正確性・完全性を保証するものではなく、記載内容に誤りが含まれる可能性があります。

本記事は特定の有価証券への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。株式投資には価格変動リスクがあり、元本が保証されるものではありません。

本記事に記載されている将来予測・試算・適正株価に関する記述は、あくまで参考情報であり、実際の将来の業績・株価・配当を保証するものではありません。

本記事で参照しているみんかぶ様・IRBANK様・かぶたん様などの第三者提供データについて、当ラボはその正確性・完全性について責任を負いません。最新情報は各社の公式サイトおよび企業のIR情報をご確認ください。

本記事は税務・法務上のアドバイスを提供するものではありません。税金・法律に関するご判断は、税理士・弁護士などの専門家にご相談ください。

情報基準日:作成日20260830

本記事に登場する「車野蔵人(くるまの くろうど)」は、AIが生成した架空のキャラクターです。実在する人物・アナリストとは一切関係ありません。

© 高配当株研究所 ※本記事はAIによる分析を含みます。投資推奨ではありません。

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