物件運用は強い。焦点は「金利上昇下で巡航EPUをどこまで伸ばせるか」
作成日:2026年5月21日
データソース:
・グローバル・ワン不動産投資法人 第45期(2026年3月期)決算説明資料
・グローバル・ワン不動産投資法人 2026年3月期 決算短信
・借入金利の決定に関するお知らせ(2026年4月27日)
基本情報
グローバル・ワン不動産投資法人は、物件固有の競争力を重視し、優良オフィスビルへ厳選投資するオフィス系J-REITである。2026年3月末時点では16物件、取得価格総額2,221億円、ポートフォリオ稼働率98.3%、JCR長期発行体格付AA-・安定的を維持している。
当期は、福岡Kスクエア、ルーシッドスクエア新大阪、GRAND CENTRAL CHIBAを取得する一方、アルカセントラルおよび横浜プラザビルの一部譲渡を実施した。期末時点の保有資産はオフィス16物件、取得価格総額222,146百万円、総賃貸可能面積156,236.87㎡となっている。
本投資法人の特徴は、金融系スポンサーを背景とした財務基盤と、都心・地方中核都市を含むオフィスポートフォリオにある。一方で、今回の決算では資産入替と外部成長を積極化した結果、簿価LTVが一時的に50%を超え、金利上昇への感応度も高まっている。ここが本決算の最大の読みどころである。
1. 決算サマリー
主要指標比較
| 指標 | 前期 第44期 2025年9月期 | 当期 第45期 2026年3月期 | 増減 | 一言コメント |
|---|---|---|---|---|
| 営業収益 | 8,088百万円 | 7,544百万円 | △543百万円 | 売却益減少により減収 |
| 営業費用 | 3,029百万円 | 2,948百万円 | △80百万円 | 修繕費・運用報酬減少等 |
| 営業利益 | 5,059百万円 | 4,595百万円 | △463百万円 | 売却益減少が主因 |
| 純利益 | 4,613百万円 | 3,975百万円 | △637百万円 | 前期比では減益 |
| EPU | 4,744円 | 4,088円 | △656円 | 売却益減少の影響 |
| DPU | 4,271円 | 3,681円 | △590円 | ただし予想比では上振れ |
| 巡航EPU | 1,913円 | 2,027円 | +114円 | 本業ベースは改善 |
| 自己資本比率 | 50.6% | 42.0% | △8.6pt | 資産取得・借入増で低下 |
| 有利子負債額 | 87,900百万円 | 126,600百万円 | +38,700百万円 | 外部成長により大幅増 |
| 賃貸NOI | 3,785百万円 | 4,053百万円 | +267百万円 | 資産取得寄与で増加 |
| NOI利回り | 4.1% | 4.1% | 横ばい | 利回り水準は維持 |
| FFO(ラボ計算) | 約2,616百万円 | 約2,745百万円 | +129百万円 | 売却益除外後では改善 |
| 債務平均残存年数 | 2.9年 | 2.8年 | △0.1年 | やや短期化 |
| 平均調達金利 | 0.93% | 1.19% | +0.26pt | 金利上昇が顕在化 |
| 固定債務比率 | 86.8% | 79.0% | △7.8pt | 変動金利活用余地が拡大 |
| 期末稼働率 | 98.3% | 98.3% | 横ばい | 高稼働を維持 |
| 格付 | AA-・安定的 | AA-・安定的 | 変更なし | 信用力は維持 |
営業収益、営業利益、純利益、EPU、DPU、NOI、LTVなどの主要数値は決算説明資料の決算ハイライトおよび前期比較資料に基づく。:
自己資本比率は決算短信記載の財政状態に基づく。2026年3月期は総資産237,885百万円、純資産99,935百万円、自己資本比率42.0%である。
FFOは当ラボ計算。計算式は「当期純利益+減価償却費-不動産等売却益」。前期は4,613+756-2,753=約2,616百万円、当期は3,975+774-2,004=約2,745百万円として算出した。計算に用いた純利益、減価償却費、不動産等売却益は決算資料の前期比較数値に基づく。
決算の総評
表面上は、営業収益・営業利益・純利益・DPUが前期比で減少しており、やや弱く見える決算である。しかし、その主因は横浜・錦糸町等の売却益の減少であり、賃貸事業そのものは改善している。
実際、賃貸事業損益は前期3,028百万円から当期3,271百万円へ増加し、NOIも3,785百万円から4,053百万円へ増加した。
したがって、今回の決算は「表面分配金の低下」だけで判断するより、売却益を除いた巡航収益力が改善しているかを見るべき決算である。
一方で、注意すべき点も明確である。簿価LTVは44.4%から53.2%へ上昇し、有利子負債額も87,900百万円から126,600百万円へ大きく増加した。さらに平均調達利率は0.93%から1.19%へ上昇しており、金利上昇の影響はすでに数字に表れている。
2. 外部成長戦略
当期および決算後の外部成長は、かなり積極的である。
主な施策は以下のとおり。
- 福岡Kスクエアを取得
- ルーシッドスクエア新大阪を取得
- GRAND CENTRAL CHIBAを取得
- 決算後にICON PLACE SHIBAKOENを取得
- 横浜プラザビルの一部譲渡と明治安田生命大阪梅田ビルの段階取得を通じた相互売買を継続
- アルカセントラルの一部譲渡を実施
- 取得・譲渡を通じて、資産規模拡大とポートフォリオ収益性向上を図る
特に、芝公園は取得価格92億円、鑑定評価額139億円、NOI利回り5.2%、償却後NOI利回り5.1%と、表面上はかなり魅力的な取得条件である。千葉は取得価格175億円、NOI利回り3.7%、償却後NOI利回り2.8%で、築浅・駅近の安定性重視の取得といえる。
一方で、外部成長の代償として、LTV上昇と金利負担増加が発生している。今回の外部成長は「良い物件を買った」で終わる話ではなく、資本コスト上昇局面で、それでも取得利回りと内部成長が見合うかを検証する必要がある。
3. 内部成長戦略
内部成長は、今回の決算で最も評価できる部分である。
第45期のポートフォリオ稼働率は98.3%で前期比横ばい。高稼働を維持している。
賃料改定では、第45期に7期連続の賃料増額を達成した。契約ベースの月額賃料はネットで前期比8.1百万円増加している。
また、レントギャップは前回のマイナス6.0%から、今回マイナス8.9%へ拡大した。これは、現行賃料がマーケット賃料を下回る余地が広がっていることを意味する。資料では、南青山および豊洲以外の全物件で現行賃料がマーケット賃料を下回る状況と説明されている。
ただし、レントギャップは即座に利益化されるものではない。賃料改定期、テナント交渉、退去リスク、フリーレント、入替コストを経て初めて収益化される。したがって、レントギャップは「埋蔵金」ではなく「掘削権」に近い。掘る技術があって初めて収益になる。
豊洲の大口テナント退去については、マーケット賃料比+17%の賃料水準でリーシングが進展している点はポジティブである。一方で、残り2区画・1,102㎡が残っており、完全にリスクが消えたわけではない。
4. 財務戦略
LTVの上昇
今回、最も注意すべき財務指標は簿価LTVである。
第45期末の簿価LTVは53.2%、時価LTVは45.0%である。前期末の簿価LTV44.4%、時価LTV36.5%から大きく上昇した。
J-REIT全体で見ても、簿価LTVが50%を超える水準は保守的とは言いにくい。もっとも、今回の53.2%は、公募増資およびブリッジローン返済前の一時的な膨らみを含む。決算説明資料では、本取組み後の簿価LTVは50.0%、時価LTVは41.9%と示されている。
したがって、現時点で直ちに危険水域と見る必要はないが、財務余力が以前より低下したことは明白である。今後は簿価LTVを50%未満、できれば48%台程度へ戻せるかが重要なチェックポイントになる。
金利上昇の影響
平均調達利率は前期末0.93%から当期末1.19%へ上昇した。平均調達期間は6.5年から5.5年へ短くなり、平均残存期間も2.9年から2.8年へわずかに短期化している
さらに、2026年4月27日付の借入金利決定IRでは、2026年4月30日予定の長期借入12億円について、固定金利2.33124%と公表されている。借入期間は2029年3月30日までで、3年弱の固定借入としては、従来のJ-REITの低金利調達イメージから明確に環境が変化している。
この12億円の借入だけを見れば、分配金への影響は限定的である。しかし、今後リファイナンスのたびに2%台の固定金利が積み上がれば、巡航EPUへの下押し圧力は無視できない。
変動金利活用方針
今回の資料では、従来は変動金利借入の割合をデット総額の10%程度でコントロールしていたが、当面は変動金利借入比率の上限を30%程度とし、長期変動金利借入を柔軟に活用する方針が示されている。
これは、固定化コストの急上昇を避け、巡航EPUの急低下を抑えるための現実的な対応と考えられる。一方で、変動金利比率が上がれば、将来の金利上昇に対する分配金感応度は高まる。
つまり、グローバル・ワンは「固定中心で守る財務」から、「固定と変動を使い分けて金利上昇を平準化する財務」へ少し舵を切っている。
5. 次期・次々期業績予想
| 指標 | 当期 第45期 2026年3月期 | 次期予想 第46期 2026年9月期 | 次々期予想 第47期 2027年3月期 | 一言コメント |
|---|---|---|---|---|
| 営業収益 | 7,544百万円 | 8,014百万円 | 7,964百万円 | 第46期は取得物件寄与で増収 |
| 営業利益 | 4,595百万円 | 4,461百万円 | 4,499百万円 | 売却益剥落・費用増が重い |
| 純利益 | 3,975百万円 | 3,527百万円 | 3,460百万円 | 減益予想 |
| 巡航EPU | 2,027円 | 2,084円 | 2,015円 | 横ばい圏。大きな伸びはまだ見えにくい |
| DPU | 3,681円 | 3,200円 | 3,200円 | 売却益還元込みで3,200円維持予想 |
第46期は営業収益8,014百万円、営業利益4,461百万円、当期純利益3,527百万円、DPU3,200円の予想である。第47期は営業収益7,964百万円、営業利益4,499百万円、当期純利益3,460百万円、DPU3,200円の予想となっている。
注意すべきは、第46期・第47期のDPU3,200円には、横浜プラザビルの分割譲渡による売却益還元分が含まれている点である。完全な巡航分配金として3,200円を見てしまうと、実力を過大評価する可能性がある。
6. その他注目すべき点
1. ポジティブ:巡航EPUは前期比で改善
第45期の巡航EPUは2,027円で、前期比+114円、+6.0%となった。
売却益に左右されない本業ベースの収益力が改善している点は、今回の決算で最も素直に評価できる。
2. ポジティブ:オフィス賃料の上昇局面を取り込めている
賃料改定、テナント入替、レントギャップの拡大を見る限り、内部成長の方向性は悪くない。特に、現行賃料がマーケット賃料を下回る物件が多く、今後の賃料増額余地は残っている。
3. ネガティブ:DPUは売却益込みであり、巡航EPUとは距離がある
第45期DPUは3,681円、第46期・第47期予想DPUは3,200円である。一方、巡航EPUは第45期2,027円、第46期2,084円、第47期2,015円である。{index=19}
つまり、DPUと巡航EPUの間にはまだ距離がある。分配金の安定性を見るうえでは、売却益還元分と巡航EPUを分けて見る必要がある。
4. ネガティブ:簿価LTV50%超は軽視できない
第45期末の簿価LTV53.2%は、一時的要因を含むとしても高い。今後50%未満へ戻せるかが重要である。含み益を加味した時価LTVは45.0%であり、即座に危険と見る必要はないが、財務の余裕は明らかに薄くなっている。
5. ネガティブ:金利上昇はこれから本格的に効いてくる可能性
平均調達利率はすでに1.19%まで上昇している。さらに直近の固定借入では2.33124%という水準が示された。
今後のリファイナンスで高金利借入が増えれば、巡航EPUの伸びを抑える要因となる。
7. 専門家による「行間」の読解
行間1:DPU3,200円は「通常運転の分配金」ではない
第46期・第47期のDPU3,200円は、横浜プラザビルの分割譲渡による売却益還元を含む。したがって、3,200円という数字だけで安定分配と見るのは早い。
本当に見るべきは、巡航EPUが3,200円にどれだけ近づくかである。現状では第46期予想の巡航EPUが2,084円、第47期予想が2,015円であり、DPUとの差は大きい。
当ラボの見解としては、グローバル・ワンの分配金を見る際には、
DPU、売却益還元分、圧縮積立金、巡航EPU
を必ず分解して見る必要がある。
行間2:外部成長は成功しているが、資本コストとの競争が始まっている
芝公園、千葉、福岡、新大阪、梅田の取得は、ポートフォリオの質を高める施策として合理性がある。特に芝公園のように取得価格対比で鑑定評価額が大きく上回る物件は、投資主価値向上に寄与する可能性がある。
しかし、取得には借入と公募増資を伴っている。発行済投資口数は第46期以降1,094,537口前提となり、希薄化も発生している。
つまり、今後は「良い物件を取得したか」だけでなく、
取得利回りが、金利コストと希薄化を上回るか
が問われる。
行間3:簿価LTV53.2%は一時的でも、財務余力の低下は事実
第45期末の簿価LTV53.2%は、公募増資・借入返済後には50.0%まで低下する見込みである。とはいえ、50%という水準自体も決して低くはない。
ここで重要なのは、グローバル・ワンが今後も外部成長を続ける場合、追加取得の余地が以前より狭まっていることである。財務レバレッジを使った成長は可能だが、金利上昇局面ではその分リスクも増す。
当ラボとしては、今後のチェックポイントを以下と見る。
- 簿価LTVを50%未満へ戻せるか
- 時価LTV40%台前半を維持できるか
- 含み益を維持できるか
- 格付AA-・安定的を維持できるか
- 追加取得時に再びLTVが上振れしないか
行間4:金利上昇は、今後の巡航EPUに対する最大の逆風
今回の決算では、支払利息の増加がすでに顕在化している。前期比較では支払利息が374百万円から570百万円へ増加しており、増加率は大きい。
さらに、直近の長期固定借入は2.33124%である。これは、かつての0%台・1%前後の調達環境とは明らかに異なる。
オフィス賃料の上昇は追い風である。しかし、調達コストの上昇は向かい風である。今後のグローバル・ワンは、
賃料増額が金利上昇をどこまで吸収できるか
が最大の焦点になる。
行間5:変動金利活用は合理的だが、投資家目線では警戒も必要
変動金利比率の上限を30%程度まで許容する方針は、固定化コストが高くなりすぎる局面では合理的である。固定金利で2%台後半、3%台が見えてくる環境では、全てを固定化することが必ずしも最適とは限らない。
一方で、変動金利の活用は、将来の金利上昇を受けやすくなるということでもある。
したがって、この方針は「危険」と一言で片付けるものではないが、投資家としては、今後の金利感応度をより丁寧に見る必要がある。
行間6:新規取得物件の固都税費用化は後から効いてくる
決算短信では、梅田、GRAND CENTRAL CHIBA、ICON PLACE SHIBAKOENに係る固定資産税・都市計画税の精算分は取得原価に算入され、2026年9月期および2027年3月期の営業費用にはならない一方、2027年9月期以降は営業費用化されると説明されている。
これは非常に重要である。
取得直後の予想期間では収益寄与がきれいに見えやすいが、後年度には固都税費用化が乗ってくる。
したがって、今回の取得物件の本当の実力は、2027年9月期以降の巡航EPUを確認してから判断すべきである。
行間7:豊洲のリーシングは前進。ただし、完全に片付いたわけではない
豊洲の大口テナント退去に対するリーシングは、マーケット賃料比+17%の水準で成約しており、これはかなりポジティブである。
ただし、残り2区画・1,102㎡が残っている。グローバル・ワンの内部成長ストーリーにおいて、豊洲の埋戻しは小さくない論点である。
資料上は前向きに表現されているが、投資家としては「好条件でどこまで埋め切れるか」を継続確認したい。
8. 総合評価
今回のグローバル・ワン不動産投資法人の第45期決算は、単純に良い・悪いで切るべき決算ではない。
ポジティブ面では、内部成長は明確に強い。賃料改定、レントギャップ、稼働率、資産入替の方向性を見る限り、オフィス市況の回復を取り込めている。巡航EPUも前期比で改善しており、物件運用の実力は高まっている。
一方で、ネガティブ面もはっきりしている。簿価LTVは一時的に53.2%まで上昇し、平均調達利率も1.19%へ上昇した。直近の固定借入金利は2.33124%であり、金利上昇は今後さらに巡航EPUを圧迫する可能性がある。
また、第46期・第47期のDPU3,200円は売却益還元込みであり、巡航EPUとはまだ距離がある。したがって、分配金の見た目だけで安心するのではなく、売却益を除いた稼ぐ力を見極める必要がある。
当ラボの結論は以下である。
グローバル・ワンは、内部成長力と物件入替の巧さを持つ一方で、金利上昇とLTV上昇という新しい制約に直面している。今後の焦点は、オフィス賃料の上昇によって、調達コスト上昇をどこまで吸収できるかである。
次回以降の決算では、以下を重点確認したい。
- 巡航EPUが2,000円台前半からどこまで伸びるか
- DPU3,200円と巡航EPUの差が縮まるか
- 簿価LTVを50%未満へ戻せるか
- 変動金利比率をどの程度に抑えるか
- リファイナンス金利がどの水準で決まるか
- 豊洲の残区画を好条件で埋め切れるか
- 2027年9月期以降の固都税費用化後も収益性を維持できるか
9. 免責事項
本記事は公開資料に基づく情報提供を目的としており、特定銘柄の推奨を目的としたものや投資勧誘、助言を行うものではありません。
情報の正確性について:作成にあたっては生成AIを活用しており、情報の正確性・完全性を保証するものではありません。投資検討の際は、必ず投資法人が発行する一次資料(決算短信等)をご確認ください。
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