2026年8月7日、ADEKA(4401)が27/3期第1四半期決算にあわせて通期業績予想と配当予想を同時に上方修正しました。AI関連投資を追い風に半導体材料セグメントが1Qで売上高+47.2%・営業利益+82.9%という突出した伸びを見せたことが背景です。今回は継続チェックとして、前回メモで残していた懸念がどこまで解消されたのか、そして「今仕込む」には遅すぎないかを数字で確認していきます。
ADEKAの配当利回りは約2.90%(みんかぶ様・2026年9月4日時点)で、当メディアが想定する高配当水準(3.5%超)には届きません。以下は「高配当銘柄」としてではなく、成長性・競争力・割安感の視点で今仕込むべきかという観点の分析です。配当は参考値として扱います。
所長ダル


はじめに:ADEKAとはどんな会社か
ADEKAは「化学品」「食品」「ライフサイエンス(農薬)」の3本柱を持つ多角化型の総合化学メーカーです。化学品事業はさらに樹脂添加剤・半導体材料・環境材料の3サブセグメントに分かれます(決算説明資料p.40)。
- 樹脂添加剤:塩ビ用安定剤・可塑剤・酸化防止剤・透明化剤。壁紙、サッシ、パイプ、電線被覆材、食品包装材などに使われます
- 半導体材料:高誘電材料(DRAM用ALD材料)、半導体リソグラフィ材料(先端フォトレジスト向け光酸発生剤=PAG)
- 環境材料:エポキシ樹脂、潤滑油添加剤、反応性乳化剤など
- 食品:マーガリン類、ショートニング、プラントベースフード「デリプランツ」
- ライフサイエンス:連結子会社の日本農薬(4997)が中核。殺虫剤・除草剤
海外売上高比率は1Q時点で55.9%(決算説明資料p.28)と、稼ぎの半分以上を海外で上げる構造です。
今回話題となっている理由は、AI関連投資を背景とした先端DRAM・EUV露光関連の材料需要の急拡大です。半導体材料セグメントが1Qで売上高+47.2%・営業利益+82.9%という突出した伸びを見せ(決算説明資料p.26)、2026年8月7日には通期業績予想と配当予想が同時に上方修正されました。「AI半導体材料の隠れた供給者」というテーマ性と、実際の数字が初めて一致した四半期だったことが、今回注目される背景と考えられます。
会社概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 株式会社ADEKA(ADEKA CORPORATION) |
| 証券コード | 4401(東証プライム) |
| 代表者 | 代表取締役社長兼社長執行役員 城詰 秀尊 |
| 業種 | 化学(化学品/食品/ライフサイエンスの3事業) |
| 時価総額 | 4,502億円(かぶたん様・IRBANK様、2026年9月4日時点) |
| 発行済株式数 | 98,944,242株(自己株式消却後) |
| 決算期 | 3月期 |
| 中期経営計画 | ADX 2026(最終年度:27/3期) |
出典:決算短信p.1・p.2、決算説明資料
主要財務指標(2027年3月期 第1四半期)
| 指標 | 実績・予想 | 出典 |
|---|---|---|
| 売上高(1Q) | 117,043百万円(前年同期比+15.2%) | 決算短信p.1 |
| 営業利益(1Q) | 15,690百万円(同+42.7%) | 決算短信p.1 |
| 営業利益率(1Q) | 13.4% | 決算説明資料p.26 |
| 経常利益(1Q) | 16,620百万円(同+50.2%) | 決算短信p.1 |
| 親会社株主に帰属する四半期純利益 | 10,710百万円(同+47.8%) | 決算短信p.1 |
| EPS(1Q) | 110円10銭 | 決算短信p.1 |
| 通期予想EPS | 329円98銭(従来294.30円から上方修正) | 業績予想修正p.1 |
| BPS | 3,315.42円 | IRBANK様 |
| ROE(今期予想) | 10.0%(IRBANK様は9.95%) | 決算説明資料p.34 |
| ROA(総資産経常利益率・今期予想) | 8.7%(IRBANK様のROA予想は5.55%=当期純利益ベース) | 決算説明資料p.34 |
| 自己資本比率 | 55.8%(前期末56.0%) | 決算短信p.1 |
| 営業CF(1Q) | ─(確認不能)※四半期連結CF計算書は未作成 | 決算短信p.10 |
| 減価償却費(1Q) | 4,804百万円(前年同期4,490百万円) | 決算短信p.10 |
| 有利子負債 | 636億円(依存度11.0%、前期末651億円・11.6%) | 決算説明資料p.38 |
| 配当(参考値) | 年間132円予想(前期112円)、配当性向40.0%、利回り2.90% | 業績予想修正p.2、みんかぶ様 |
通期予想に対する進捗率
| 項目 | 1Q実績 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,170億円 | 4,620億円 | 25.3% |
| 営業利益 | 156億円 | 500億円 | 31.4% |
| 経常利益 | 166億円 | 500億円 | 33.2% |
| 純利益 | 107億円 | 320億円 | 33.5% |
売上は季節性を考慮すればほぼオンペース、利益は上方修正後の予想に対してさらに前倒しの進捗という状態です。
業績推移(過去6期+今期予想)
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 営業利益率 | EPS(円) | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022/03 | 361,200 | 34,000 | 9.42% | 223.65 | コロナ後の需要回復局面 |
| 2023/03 | 403,300 | 32,300 | 8.03% | 163.30 | 利益率の谷。原材料高騰・中国減速 |
| 2024/03 | 399,700 | 35,400 | 8.86% | 224.86 | 減収増益。採算改善に転換 |
| 2025/03 | 407,100 | 41,000 | 10.07% | 245.55 | 営業利益率10%台回復 |
| 2026/03 | 416,563 | 41,614 | 9.99% | 277.95 | 3期連続最高益。ただし増益主因はライフサイエンス |
| 2027/03予 | 462,000 | 50,000 | 10.82% | 329.98 | 8月上方修正。半導体材料主導へ転換 |
出典:IRBANK様、業績予想修正p.1






継続チェックメモとの照合(27/3期1Q)
毎回チェックする基本項目
| チェック項目 | 判定基準 | 今回実績 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 前期比プラス成長維持(▲5%超減収で要注意) | 1Q +15.2%、通期予想+10.9% | ◎ |
| 営業利益 | 400億円台維持(380億割れ△、350億割れ×) | 通期予想500億円(従来468億円) | ◎ |
| 営業利益率 | 9.0%台以上維持(8.5%割れ×) | 1Q 13.4%、通期予想10.8% | ◎ |
| 純利益/EPS | EPS250円以上維持 | 通期予想329.98円 | ◎ |
| 営業CF | 配当総額の3倍超 | 四半期CF計算書は未作成 | ─(構造的) |
| 年間配当予想 | 減配なし(据え置き△) | 120円→132円へ増配修正 | ◎ |
| 半導体材料 営業利益率 | 20%以上維持(15%割れ△) | 26億円/108億円=24.8% | ◎ |









注意点①:半導体材料セグメントの「先行投資と収益化のバランス」
| チェック項目 | 判定 | 解説 |
|---|---|---|
| 売上高と営業利益の両方を確認したか | ○ | 売上108億円(+47.2%)/営業利益26億円(+82.9%)。利益の伸びが売上を上回る |
| 営業利益率20%水準の維持 | ◎ | 24.8%。FY2025通期の20.6%から大幅改善。増減分析では数量+17億円が牽引、固定費△6億円を吸収 |
| HBM向け高誘電材料の量産進捗コメント | △ | 「先端DRAMの生産拡大により高誘電材料の主力製品、新製品ともに販売が好調」(決算短信p.3)との記載はあるが、HBM向けと明示した開示はなし。かぶたん様のテーマ欄には「HBM」が掲載されているが、会社の一次資料では確認できず |
| EUV向けリソグラフィ材料(PAG・MOR)の開発・量産状況 | ◎ | 千葉工場の光酸発生剤製造ラインを約10億円で従来比約2倍へ増強、「想定を上回る需要拡大を受け、能力増強を約2年前倒し」と明記(決算説明資料p.22-23)。MOR用金属化合物の新プラントは2028年4月稼働予定 |
| 先端ロジック向けALD材料の評価進捗 | ○ | 「先端ロジック向けALD材料やEUV世代向けレジスト材料の開発加速」(決算説明資料p.15)。定量的な進捗開示はなし |
前回メモで「①に格上げを検討」としていた懸念は、明確に後退したと考えられます。特に光酸発生剤の増強2年前倒しは、需要が会社想定を上回っていることの客観的な証拠と読めます。
注意点②:業績の稼ぎ頭がセグメント間でズレている構造リスク
| チェック項目 | 判定 | 解説 |
|---|---|---|
| 全社増益の主因セグメント | ◎ | 全社営業利益+46億円のうち、化学品事業が+38億円(82%)。前回(FY2025)のライフサイエンス主導から、狙い通り化学品主導へ切り替わった |
| ライフサイエンスの1Q評価 | ○ | 売上310億円(+14.6%)/営業利益44億円(+36.9%)。農薬は4Q偏重だが、1Q単体でも好調。北米の殺虫剤、東欧のばれいしょ向け除草剤が牽引 |
| 樹脂添加剤の市況回復 | ○ | 売上287億円(+14.5%)/営業利益38億円(+49.0%)。四半期営業利益は25→24→20→25→38億円と明確に切り上がり。ただし会社は「中国石化市場の低迷や供給過剰により、市況回復は緩やか」と慎重(決算説明資料p.13) |
| 食品事業:中国市場の影響 | △ | 売上214億円(+4.2%)/営業利益8億円(△21.6%)。増収減益。原料価格高騰への対応で採算重視の販売とし、一部製品で数量減。通期予想も上期売上を10億円下方修正(決算説明資料p.11) |
| 海外子会社の為替影響 | ○ | 海外売上高比率55.9%(前年同期54.6%)。営業利益の増減分析では為替が+16億円寄与(決算説明資料p.5)。増益46億円の約35%が為替要因である点は割り引いて見る必要があります |
「稼ぎ頭のズレ」という懸念は解消方向ですが、代わりに食品事業が単独で足を引っ張る構図が出ています。営業利益率4.0%(1Q)は全社13.4%と比べて明らかに低く、通期予想でも5.6%です。ここは注意点として残ります。
注意点③:中東情勢・原材料・為替の複合リスク
| チェック項目 | 判定 | 解説 |
|---|---|---|
| 中東情勢による業績影響の開示・更新 | ○ | 決算短信p.2に「中東情勢の緊迫化に伴う資源価格の上昇や物流への影響」と明記。一方で樹脂添加剤では「中東情勢を背景とした需要増加」でプラス寄与(決算説明資料p.12)という側面も。リスクと機会の両面が出ている |
| 為替前提と実勢 | ○ | FY2026想定は153.00円/ドル・178.00円/ユーロ(FY2025実績150.77円・174.79円)。1円円高で営業利益△1.1億円(ドル)・△0.6億円(ユーロ)(決算説明資料p.7) |
| ナフサ価格の動向コメント | ─ | 今回の開示資料ではナフサ価格の前提・実勢に関する具体的な記載を確認できませんでした。次回への持ち越し(偶発的─) |
| 価格転嫁の進捗 | △ | 営業利益の増減分析で価格バランスは△1億円(ライフサイエンス△6億円、樹脂添加剤+4億円)。全社では価格要因がわずかにマイナス。数量と為替で押し切った四半期であり、価格支配力が強まったとは言い難い |
| サプライチェーン強靭化 | ○ | 「中東領域での生産再開および新しい輸送ルート確立」(決算説明資料p.13)と具体的な対応を開示 |
中東情勢は同社にとって単純なマイナス要因ではなくなっている点が今回の発見です。ただしライフサイエンス事業の価格△6億円は、農薬の競争環境を示す可能性があり、次回以降の確認事項と考えられます。
引き続き良好なら安心できる項目
| 項目 | 維持ラインの目安 | 前回 | 今回 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 自己資本比率 | 50%以上(45%割れ△) | 56.0% | 55.8% | ○(▲0.2pt) |
| 有利子負債依存度 | 15%以内(20%超△) | 11.6% | 11.0% | ◎(▲0.6pt改善) |
| 配当性向 | 40〜50%(35%割れ・55%超で△) | 40.3% | 40.0%予想 | ○(ほぼ横ばい) |
| ROE | 8.0%以上(中計目標11.0%) | 9.1% | 10.0%予想 | ◎(+0.9pt) |
| ROIC | 9.0%以上(中計目標10.5%) | 9.1% | ─(四半期非開示) | ─(通期決算で確認) |
追加トピック:自己株式取得・消却の完了
2025年8月8日決議の自己株式取得(4,823,900株・180億円)が2026年5月31日に完了し、2026年6月16日に消却されました(決算説明資料p.24)。発行済株式数は103,768,142株→98,944,242株(▲4.6%)に減少しています(決算短信p.2)。EPSの押し上げ要因として今期予想に効いていると考えられます。
株価・バリュエーション
| チェック項目 | 前回(2026/6/19) | 今回(2026/9/4) | 変化のポイント |
|---|---|---|---|
| 株価 | 4,141円 | 4,551円 | +9.9% |
| PER(実績) | 14.07倍 | 15.84倍(IRBANK様) | 上昇 |
| PER(予想) | 12.99倍 | 13.79倍(IRBANK様)/13.8倍(かぶたん様) | 上昇 |
| PBR | 1.29〜1.30倍 | 1.37倍 | 上昇 |
| 配当利回り | 2.89% | 2.90% | ほぼ変わらず(増配が株価上昇を相殺) |
| みんかぶ様目標株価 | 4,080円 | 4,136円(現株価との差△415円) | 更新あり(+56円)。依然として現株価を下回る |
| 適正株価試算との乖離 | 中立3,822円(現株価比▲7.7%) | 中立シナリオを上回る位置へ | 強気シナリオ方向へ移動 |
- PER・PBRは初回分析時のレンジ内か→△。PER予想13.79倍はレンジ内(10〜15倍)だが、PBR1.37倍は初回レンジ(0.9〜1.3倍)を上抜け。2010年以降のPBRレンジは0.41〜1.59倍(IRBANK様)なので、その中では上位圏
- みんかぶ様目標株価の更新→○。4,080円→4,136円へ更新。ただし現株価4,551円を415円下回る状態が継続
- シナリオのどれに近いか→中立(3,822円)を明確に上回り、強気(5,120円)との中間地点
- 保守的シナリオ(2,970円)付近まで下落したか→該当なし。評価ランク引き上げの株価条件は満たしていません
なお、みんかぶ様の内訳では証券アナリスト予想4,731円(買い、強気3名・買い1名・中立2名)に対し、個人投資家予想は2,644円(売り)と大きく割れています。プロと個人で見方が真っ二つに分かれている銘柄である点は、後段の補論で深掘りします。
信用需給ウォッチ
| 日付 | 売り残(千株) | 買い残(千株) | 信用倍率 |
|---|---|---|---|
| 2026/07/31 | 14.3 | 361.2 | 25.26倍 |
| 2026/08/07 | 39.2 | 352.5 | 8.99倍 |
| 2026/08/14 | 30.1 | 221.0 | 7.34倍 |
| 2026/08/21 | 18.2 | 186.1 | 10.23倍 |
| 2026/08/28 | 17.1 | 188.5 | 11.02倍 |
出典:かぶたん様
- 信用倍率が低下しているか→○。7/31の25.26倍から8/28は11.02倍へ低下。決算発表(8/7)後に買い残が361千株→188千株へ約48%整理されました
- 買い残が発行済株式数の2%超か→○。188.5千株÷98,944千株=0.19%。警戒ラインを大きく下回ります
- 買い残が直近の出来高を上回るか→○。買い残188.5千株に対し9/4の出来高は343,300株。出来高が買い残を上回っており、需給の重さは限定的
- 株価急騰後に買い残が急増していないか→○。むしろ減少
好決算後に買い残が整理され、需給面での上値の重さは軽減されたと考えられます。ただし信用倍率11倍は依然として買い方に偏った水準です。
即座に見直しが必要なシグナル
前回設定した9つのシグナルはいずれも点灯していません。むしろ「業績予想の下方修正」の逆である上方修正、「減配」の逆である増配が発表されており、シグナル面では前回より状況が改善しています。
事業・競争力の評価
本業の稼ぐ力:○
1Q売上+15.2%・営業利益+42.7%・営業利益率13.4%。ROEは予想10.0%と中計目標11.0%に接近しています。5期かけて営業利益率を8.03%→10.8%(予想)へ改善させた実行力は評価できます。ただし増益46億円のうち為替が+16億円と約35%を占め、実力ベースの伸びは割り引いて見る必要があります。
財務の健全性:○
自己資本比率55.8%、有利子負債依存度11.0%と改善傾向にあります。現預金986億円に対し有利子負債636億円で実質ネットキャッシュの状態です。180億円の自己株買いを完遂しても財務指標が悪化していない点は、投資余力の証左と考えられます。
経営方針の透明性:○
中計『ADX 2026』でROE・ROIC・営業利益・環境貢献製品売上高・GHG排出量・女性管理職比率まで数値目標を開示(決算説明資料p.31)。セグメント別の増減分析(数量・為替・価格・固定費)を四半期ごとに定量開示する姿勢は同業比でも丁寧です。一方で、中計最終年度目標(売上5,000億円・営業利益530億円)に対し上方修正後の予想でも4,620億円・500億円と未達見込みであり、その差分についての説明は今回資料では確認できませんでした。
市場環境
半導体材料の追い風は構造的なものと考えられます。会社はロジックICのノード移行(N2→A14→A10)を明示し、High-NA EUVとMOR(金属酸化物レジスト)が2029年以降に立ち上がるロードマップを示しています(決算説明資料p.23)。同社は現行のCAR(化学増幅型レジスト)向け光酸発生剤で既にポジションを持ち、次世代のMOR用金属化合物にも投資を先行させており、世代交代のたびに脱落するリスクを能動的に潰しにいっている構図です。
競合としては、半導体材料で信越化学工業、東京応化工業、JSR、樹脂添加剤で堺化学工業、環境材料でDIC等と領域が重なりますが、同社の特徴は単一分野への依存が低いことです。半導体材料は全社売上の9%(FY2026 1Q)に過ぎず、AI半導体の純粋なプレーヤーではありません。この点は「テーマ株として買うと期待外れ」「ディフェンシブとして持つなら安心」という両面性を持ちます。
一方、食品事業(売上構成比18%)は中国市場の消費低迷が続き、営業利益率4.0%と収益性が低い状態です。ライフサイエンス(日本農薬)は上場子会社であり、親子上場の解消圧力が将来的なテーマになる可能性があります。
リスク要因
- 為替感応度:海外売上高比率55.9%。1円円高で営業利益△1.1億円(ドル)・△0.6億円(ユーロ)。今期の増益の3分の1が為替寄与である点は、円高転換時の反動リスクを意味します
- 半導体サイクル:AI関連需要は現在拡大局面ですが、メモリは歴史的に振れ幅の大きい市場です。同社は2028年稼働の設備投資(韓国65億円・千葉10億円)を進めており、稼働時期に需要が調整していれば減価償却負担が先行します
- 食品事業の採算悪化:原料価格高騰への対応で数量を落とす選択をしており、シェア低下と収益低下の板挟みになる可能性があります
- 中期経営計画の未達:中計『ADX 2026』最終年度目標(営業利益530億円)に対し予想500億円。ROE11.0%目標に対し予想10.0%
- 中東情勢と物流:需要面ではプラスに働いている面もありますが、原材料・物流コストの変動要因として残ります
- 顧客集中度:半導体材料の主要顧客に関する開示は今回資料では確認できず、依存度は─(確認不能)です
設備投資はFY2025 216億円→FY2026予想240億円、減価償却費は188億円→208億円へ増加します(決算説明資料p.37)。中計では3カ年で750億円の投資枠を設定しています。減価償却費の増加ペース(+20億円)に対し営業利益の増加ペース(+83億円)が上回っているため、現時点では投資負担が利益成長を圧迫する構図にはなっていないと考えられます。
研究開発費はFY2025 193億円→FY2026予想217億円、売上高比率4.6%→4.7%(決算説明資料p.36)。5期連続で比率を引き上げており、先端材料への資源投入が継続しています。
大株主構成については、上位10名は日本マスタートラスト信託銀行11.41%、日本カストディ銀行7.07%、朝日生命4.12%、みずほ信託(退職給付)3.83%、ADEKA取引先持株会3.19%、全国共済農業協同組合連合会2.37%、State Street 2.33%、日本ゼオン2.22%、BNY Mellon 1.92%、昭和興産1.90%、合計40.37%です(有価証券報告書、2026年3月31日現在)。大量保有報告では三井住友DSアセットマネジメント4.81%、みずほ銀行3.63%、アセットマネジメントOne 2.65%、アモーヴァ・アセットマネジメント2.00%等が確認できます。いずれも信託銀行・国内機関投資家・事業会社であり、明確なアクティビストの登場は確認できません。ただし180億円の自己株取得と40%以上の配当性向維持は、資本効率改善への市場圧力を先回りして対応している形とも読めます。
総合評価:A-(前回B→今回A-。1ノッチ引き上げ)
(S/A/A-/B/B-/C/C-/D/Eの9段階評価)
- 前回メモで評価ランク引き上げのカタリストとした2条件のうち、「半導体材料の先行投資回収が進み、増益の主役が化学品事業に戻ること」が明確に達成された(半導体材料の営業利益率20.6%→24.8%、全社増益の82%が化学品事業)
- 通期予想の上方修正と増配が同時に行われ、経営の自信が数字で示された
- 光酸発生剤の能力増強2年前倒しという、需要の強さを示す客観的な事実が開示された
- 財務は有利子負債依存度11.0%へ改善し、自己株消却も完了した
- もう一つのカタリストである「株価がみんかぶ様目標株価水準を明確に下回る水準まで調整すること」は逆行しており、株価は+9.9%上昇。現株価4,551円はみんかぶ様目標株価4,136円を415円上回っています
- 中立シナリオ(会社予想EPS×現状PER)の適正株価が現株価とほぼ一致しており、現水準での上値余地は会社予想の上振れ次第です
- 増益46億円のうち為替が16億円と、実力成長のみで説明できない部分があります
- 中計最終年度の目標(営業利益530億円)には上方修正後も届かない見通しです
「事業として良くなっているか」はほぼ文句なしですが、「今この株価で仕込む妙味があるか」は微妙、という状態と考えられます。A-は「事業評価は高いが、株価が既に相応に織り込んでいる」というニュアンスです。
適正株価試算
EPS×PER法(4シナリオ)
現在株価4,551円(2026年9月4日終値、みんかぶ様)を基準としています。
| シナリオ | 想定EPS | 想定PER | 適正株価 | 現株価比 | 前提条件 |
|---|---|---|---|---|---|
| 強気 | 350円 | 16.0倍 | 5,600円 | +23.0% | 1Q進捗33%のペースが下期も持続し会社予想を上振れ。AI半導体材料の成長性にプレミアムPERが付く |
| 中立 | 330円 | 13.8倍 | 4,554円 | +0.1% | 会社予想EPS329.98円をそのまま使用、PERは現状水準(IRBANK様13.79倍)を維持 |
| 保守的 | 300円 | 12.0倍 | 3,600円 | ▲20.9% | 下期に半導体需要が一服し増益一服。PERが同社の過去平均水準(12倍前後)へ収縮 |
| 弱気 | 165円 | 11.0倍 | 1,815円 | ▲60.1% | EPSが直近の底値水準(2023年3月期163.30円)まで落ち込む |
以下が複合して発生した場合に想定されます。①AI関連の設備投資が調整局面に入り半導体材料の数量が急減、②為替が大幅な円高(150円→130円台)に振れ、営業利益に▲20億円超のマイナス、③中国石化市況の低迷が長期化して樹脂添加剤の市況回復が頓挫、④食品事業の減益が拡大。特に為替と半導体需要の同時逆回転が最も可能性のある経路と考えられます。2023年3月期は原材料高騰と中国減速の同時発生でEPSが163円まで落ちた実例があります。
BPS×適正PBR(2点セット)
BPS 3,315.42円(IRBANK様)を基準としています。
| PBR倍率 | 適正株価 | 現株価比 | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| 1.0倍 | 3,315円 | ▲27.2% | 解散価値水準 |
| 1.2倍 | 3,978円 | ▲12.6% | 2010年以降レンジの中位 |
| 1.37倍(現状) | 4,542円 | ▲0.2% | 現水準 |
| 1.59倍 | 5,271円 | +15.8% | 2010年以降の上限(IRBANK様) |
27/3期末のBPSは、EPS330円-配当132円=内部留保198円が積み上がり約3,513円になると試算されます。これにPBR1.37倍を掛けると4,813円(+5.8%)。PBR1.5倍まで評価されれば5,270円です。
EPS×PER法の中立4,554円とBPS×PBR法の現状評価4,542円がほぼ一致しており、現株価4,551円は「会社予想を素直に信じた場合のフェアバリュー」ちょうどの位置にあると考えられます。つまり現水準で買う場合、「会社予想の上振れ」または「PER・PBRのさらなる切り上がり」のどちらかに賭けることになります。
みんかぶ様目標株価との比較
みんかぶ様の総合目標株価は4,136円で、現株価を415円(▲9.1%)下回っています。判定は「売り」。ただし内訳を見ると、証券アナリスト予想は4,731円(買い、強気3名・買い1名・中立2名・売り0名)である一方、個人投資家予想は2,644円(売り、直近の売買予想比率は買い85%・売り15%)と大きく分かれています。総合目標株価が現株価を下回っているのは、個人投資家の弱気予想が総合値を押し下げているためと考えられます。プロのアナリストは現株価より4%高い水準を見ており、この乖離をどう読むかが判断の分かれ目です。当研究所の中立シナリオ4,554円は、アナリスト予想(4,731円)と総合目標株価(4,136円)の中間に位置します。
【補論】対談で深掘り:ADEKAを「AI半導体銘柄」と呼んでよいのか






テーマ①:「AI半導体銘柄」と呼ぶには売上の9%しかない












テーマ②:能力増強「2年前倒し」が意味すること












テーマ③:増益46億円のうち16億円は為替──「実力」はどこまでか












テーマ④:株価予想がプロと個人で真っ二つに割れている












テーマ⑤:中期経営計画『ADX 2026』は最終年度で未達になる公算












「今仕込む」判断の目安となる株価水準
| 株価水準 | 位置づけ |
|---|---|
| 4,000円割れ | みんかぶ様目標株価4,136円を明確に下回る水準。前回メモの「引き上げカタリスト」条件に合致 |
| 3,600円前後 | 保守的シナリオ水準。PBR約1.09倍で、下値余地が限定的になる |
| 現水準(4,500円前後) | 中立シナリオ4,554円・BPS×PBR法4,542円とほぼ一致。「妥当価格で買う」水準であり、大きな割安感はない |
| 2Q決算後(2026年11月予定) | ①半導体材料の営業利益率が24%台を維持、②通期予想の再上方修正、のいずれかが確認できることを待つのが無難と考えられる |
「事業として良くなっているか」はほぼ文句なしですが、株価は中立シナリオとほぼ一致する水準まで既に評価されています。急いで全額を投じる局面ではなく、2Q決算(2026年11月予定)で①半導体材料の営業利益率24%台の維持、②通期予想の再上方修正、③食品事業の採算改善、を確認しながらの時間分散が現実的と考えられます。4,000円割れ、または3,600円前後まで調整する局面があれば、仕込みの妙味は増すと考えられます。
全シナリオが崩れる条件
- 通期予想の下方修正:上方修正した営業利益500億円を大きく割り込む修正が出た場合、すべてのシナリオの前提が崩れます
- 増配方針(配当性向40%以上)の撤回:株価の下値を支える根拠のひとつが失われます
- 中期経営計画『ADX 2026』後継の次期中計で、ROE・営業利益目標が大幅に引き下げられた場合
- 為替の大幅な円高(150円→130円台)と半導体需要の同時逆回転:想定EPSの前提そのものが成立しなくなります
- 食品事業の恒常的な赤字転落:現状は営業利益率4.0%まで低下していますが、これが赤字化すれば全社評価の見直しが必要になります
- 大株主構成の急変:現時点で明確なアクティビストの登場は確認できていませんが、大量保有報告の更新は都度確認が必要です
まとめ
- 1Q営業利益は+42.7%、通期予想も468億円→500億円へ上方修正、配当も120円→132円へ増配。前回B評価からA-へ1ノッチ引き上げ
- 半導体材料は「量」(売上+47.2%)と「質」(利益率20.6%→24.8%)が同時に改善し、光酸発生剤の能力増強を2年前倒しするほど需要は強い
- ただし半導体材料は全社売上の9%に過ぎず、「AI半導体銘柄」と呼ぶには早い。増益46億円のうち16億円は為替寄与で、実力の伸びは割り引いて見る必要がある
- 食品事業は増収減益(営業利益△21.6%)で全社の足を引っ張る構図が新たに浮上
- 信用倍率は25.26倍→11.02倍へ整理され、需給面の重さは軽減。買い残は発行済株式数の0.19%まで低下
- みんかぶ様目標株価4,136円を現株価4,551円が上回るが、証券アナリスト予想(4,731円・買い)と個人投資家予想(2,644円・売り)は真っ二つに割れている
- 当研究所の中立シナリオ試算(4,554円)は現株価とほぼ一致。総合評価はA-で、時間分散での打診買いが現実的と考えられる






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情報基準日:作成日20260904
本記事に登場する「車野蔵人(くるまの くろうど)」は、AIが生成した架空のキャラクターです。実在する人物・アナリストとは一切関係ありません。
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