2026年8月14日、テスホールディングス(5074)が2026年6月期の通期決算を発表しました。売上高512.17億円(前期比+39.6%)、営業利益53.26億円(同+109.0%)と大幅増収増益。系統用蓄電所EPCの受注急増を背景に「蓄電池テーマの純粋な受益銘柄」として物色されてきた銘柄です。ところが同じ決算発表で約40億円の大口受注解約が開示され、さらに2027年6月期は増収減益予想。株価は5月高値938円から9月4日終値588円まで調整局面にあります。今回はこの「好決算・受注解約・来期減益」が同時に起きた状況を、継続チェックの形で数字から読み解いていきます。
同社の配当利回りは約1.63%(2026年9月4日終値588円、2027年6月期予想配当9.60円ベース/みんかぶ様)であり、当メディアが想定する高配当水準には届きません。本記事は「系統用蓄電池のテーマ株として今仕込むべきか」という成長性・競争力・割安感の観点で分析するもので、配当は参考値として扱います。
所長ダル


はじめに
どんな事業で稼いでいるか
同社は「Total Energy Saving & Solution」を掲げるエネルギー系エンジニアリング企業で、事業は大きく2つに分かれます(決算説明資料 P.13-15)。
1.エンジニアリング事業(フロー型/2026年6月期売上221.97億円)
省エネ設備・再エネ設備のEPC(設計・調達・施工)を行う事業です。顧客からEPCを請け負う「受託型」と、用地取得・許認可から自社で開発し権利売買やEPCを提供する「開発型」に分かれます。開発型は粗利率が高い反面、案件の成否・時期が読みにくいという性質があります。
2.エネルギーサプライ事業(ストック型/同290.19億円)
自社保有の再エネ発電所の売電(FIT・FIP・オンサイトPPA)、O&M(保守)、電気の小売供給、バイオマス燃料(PKS)供給を行います。2026年6月末時点の再エネ発電容量は412.7MW(連結子会社保有分383.5MW)で、佐賀伊万里バイオマス発電所(46.0MW)が本格稼働しました(決算説明資料 P.28、決算短信 P.3)。
EPCで顧客基盤を獲得し、完工後のO&Mや発電事業でストック収益につなげる「循環型ビジネスモデル」を標榜しています。
なぜ今話題なのか
2025年6月期以降、系統用蓄電所・FIP転+蓄電池併設のEPC受注が爆発的に増加したことが最大の理由です。2026年6月期の受注高は426.25億円(前年同期比188.8%)、受注残高は433.04億円(同189.3%)に達し、受注残高の94.5%を蓄電池関連が占めます(決算説明資料 P.19)。再エネ主力電源化(2040年に40〜50%目標)に伴う出力制御回避・調整力ニーズ、さらにデータセンター新設による電力需要拡大が追い風とされ、「蓄電池テーマの純粋な受益銘柄」として物色されてきました。
一方で、通期決算発表と同時に約40億円の系統用蓄電所EPC大口受注の解約が開示され(系統連系の工事費負担金が想定を大幅超過したことによる受注先の事業性判断)、加えて2027年6月期が減益予想となったことで、株価は調整局面にあります。「テーマの旬は続くのか、それとも冷めるのか」の分岐点にある、というのが現在の位置づけと考えられます。
会社概要
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 正式名称 | テスホールディングス株式会社(TESS HOLDINGS CO.,LTD.) | 決算短信 表紙 |
| 証券コード | 5074(東証プライム・建設業) | 決算短信 表紙/みんかぶ様 |
| 代表者 | 代表取締役社長 山本 一樹 | 決算短信 表紙 |
| 決算期 | 6月期(2026年6月期=2025年7月1日〜2026年6月30日) | 決算短信 P.1 |
| 時価総額 | 416億円〜428億円(かぶたん様416億円/IRBANK様428億1,780万円) | かぶたん様・IRBANK様 |
| 発行済株式数 | 70,773,230株(2026年6月末) | 決算短信 P.2 |
| 従業員数 | 526名(連結、2026年6月末/前期比+55名) | 決算説明資料 P.45 |
主要財務指標(2026年6月期通期実績)
| 指標 | 実績 | 前期比 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 51,217百万円 | +39.6% | 決算短信 P.1 |
| 売上総利益 | 10,417百万円(率20.3%) | +39.8% | 決算説明資料 P.5 |
| 営業利益 | 5,326百万円 | +109.0% | 決算短信 P.1 |
| 営業利益率 | 10.4% | 前期7.0% | 決算短信 P.1 |
| 経常利益 | 3,834百万円 | 前期は△641百万円 | 決算短信 P.1 |
| 親会社株主帰属当期純利益 | 2,123百万円 | +936.6% | 決算短信 P.1 |
| EPS | 30.11円 | 前期2.91円 | 決算短信 P.1 |
| BPS | 737.76円 | 前期603.51円 | 決算短信 P.1 |
| ROE | 4.5%(IRBANK様は4.07%) | 前期0.5% | 決算短信 P.1/IRBANK様 |
| ROA(総資産経常利益率) | 2.4%(IRBANK様ROA 1.29%) | 前期△0.5% | 決算短信 P.1/IRBANK様 |
| ROIC | 2.5% | 前期1.4% | 決算説明資料 P.41 |
| 自己資本比率 | 31.6% | 前期28.1% | 決算短信 P.1 |
| 営業CF | 5,099百万円 | 前期7,806百万円 | 決算短信 P.1 |
| 投資CF | △7,311百万円 | 前期△9,165百万円 | 決算短信 P.1 |
| 財務CF | △1,448百万円 | 前期+3,794百万円 | 決算短信 P.1 |
| 現金及び現金同等物期末残高 | 12,825百万円 | △3,605百万円 | 決算短信 P.1 |
| 減価償却費 | 7,096百万円 | 前期4,523百万円 | 決算短信 P.15 |
(参考)配当:2026年6月期年間配当9.54円(前期5.12円)、配当性向31.7%(連結)。2027年6月期予想9.60円、配当性向37.7%。会社は「為替予約に係るデリバティブ評価損益の影響を除いた1株当たり純利益」ベースで連結配当性向30%目安と定義しており、その定義では2027年6月期35.0%となります(決算短信 P.1、決算説明資料 P.37)。
業績推移(過去8期+今期予想)
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 営業利益率 | EPS(円) | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2019/06 | 29,638 | 1,508 | 5.1% | 0.74 | 上場前 |
| 2020/06 | 28,415 | 3,509 | 12.4% | 31.52 | 利益率が大きく改善 |
| 2021/06 | 34,249 | 4,399 | 12.8% | 49.56 | 2021年3月 東証一部上場 |
| 2022/06 | 34,945 | 5,146 | 14.7% | 52.50 | 収益ピーク圏 |
| 2023/06 | 34,415 | 6,864 | 19.9% | 6.95 | 営業利益ピーク。一方EPSは急落(営業外のデリバティブ評価損等) |
| 2024/06 | 30,643 | 2,370 | 7.7% | 16.81 | 転換点(大幅減益)。太陽光案件の一巡 |
| 2025/06 | 36,684 | 2,548 | 6.9% | 2.89 | 増収も経常は△641百万円の赤字。伊万里の建設期 |
| 2026/06 | 51,217 | 5,326 | 10.4% | 30.11 | 蓄電池EPCが牽引し急回復。4Q単独に開発型EPCの一過性権利譲渡益 |
| 2027/06(予) | 64,000 | 4,700 | 7.3% | 25.48 | 増収減益。売上総利益率20.3%→16.3%へ低下 |
出典:IRBANK様「株式指標」、決算短信 P.1-2、決算説明資料 P.34・P.36












継続チェックメモとの照合(前回メモ「for2606_4Q」に基づく評価)
毎回チェックする基本項目
| チェック項目 | 前回(3Q累計) | 今回(通期実績) | 判定 | 評価理由 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 374.44億円(進捗79.7%) | 512.17億円(+39.6%、会社予想510億に対し達成率100.4%) | ◎ | 修正後予想を上回って着地。基準(進捗)をクリア |
| 営業利益 | 35.92億円(進捗99.8%) | 53.26億円(+109.0%、達成率104.4%) | ◎ | 4Q単独で17.34億円を積み増し。「4Q実質赤字」懸念は完全に解消 |
| 営業利益率 | 9.6% | 10.4% | ◎ | 8%台以上の維持ライン超過。前期6.9%から大幅改善 |
| 純利益/EPS | 12.63億円/17.92円 | 21.23億円/30.11円(達成率118.0%) | ◎ | 通期計画18.00億円を大きく上回る |
| 営業CF | ─(四半期非開示) | 5,099百万円 | ○ | 前期7,806百万円からは減少(売上債権+3,101、前渡金+3,064の増加が主因)。配当総額673百万円は7.6倍でカバー |
| 年間配当予想 | 5.80円 | 9.54円(実績)/2027年6月期9.60円 | ◎ | 前回予想5.80円→実績9.54円へ大幅増額。減配シグナルなし |
追加チェック項目(受注動向)
| チェック項目 | 前回(2026年3月末) | 今回(2026年6月末) | 判定 | 評価理由 |
|---|---|---|---|---|
| 受注高 | 387.29億円(3Q累計) | 426.25億円(通期、前年同期比188.8%) | ○ | 量は◎水準。ただし4Q単独では約39億円と3Qまでのペースから鈍化。質(後述)は改善したため総合○ |
| 受注残高 | 451.63億円 | 433.04億円(前年同期比189.3%) | △ | 3月末比では18.6億円減少。さらに約40億円の解約分は2027年6月期1Qに反映予定であり、実質的な残高は約393億円相当。施工キャパシティ(人員+55名)とのバランスは要継続監視 |






注意点①:受注拡大の「量」と「質」のギャップ
| チェック項目 | 判定 | 評価理由 |
|---|---|---|
| エンジニアリング事業のセグメント利益率が前年同期を下回る状態が続いていないか | ◎ | 明確に回復。セグメント利益1,274百万円(前年同期比+254.0%)、売上総利益率も14.0%→20.7%へ改善(決算短信 P.2、決算説明資料 P.18) |
| 受託型・開発型それぞれの粗利率目標を下回っていないか | △ | 受託型EPC(再エネ)は2,078/15,079=13.8%で目標「15%程度」をやや下回る。省エネ受託型は21.5%、開発型は67.4%と目標を大きく上回るが、これは4Qの一過性権利譲渡による特殊要因(質疑応答P.1) |
| 大型案件の納期遅延が繰越工事の増加として表面化していないか | △ | 会社は「開発型の大型案件は系統接続の事情で期ずれしている」と明言。2027年6月期も開発型はあまり見込まず、中型のFIP転+蓄電池併設や「ニッパチ案件」でカバーする方針(質疑応答P.2) |
前回メモで最優先課題としたエンジニアリング事業の利益率は数値上大きく改善しました。ただし改善幅の相当部分は4Qに計上された開発型EPCの権利譲渡(期初計画外・非常に高い粗利率)によるもので、山本社長は「15億円の上振れのうち大半がこれ」と明言しています(質疑応答P.1)。再現性のある構造的改善なのか、単発の押し上げなのかは、2027年6月期の受託型EPC(再エネ)粗利率が計画の16.0%(3,800/23,700)を確保できるかで判断するのが妥当と考えられます。
注意点②:財務健全性と借入動向
| チェック項目 | 判定 | 評価理由 |
|---|---|---|
| 自己資本比率が30%を明確に下回っていないか | ○ | 31.6%(前期末28.1%→改善)。ただし改善の主因は繰延ヘッジ損益+7,618百万円という為替予約の評価益であり、稼いだ利益による自己増強ではない点に留意 |
| 短期・長期借入金の合計が急増していないか | △ | 短期借入金13,916→17,731百万円(+3,815)と増加。長期借入金は66,515→62,145百万円(△4,369)と減少し、合計では微減。リース債務含む有利子負債は約927億円、自己資本521億円に対しD/Eは約1.78倍 |
| 財務上の特約に抵触する兆候がないか | ○ | 経常利益は3,834百万円と黒字転換し、純資産も524億円へ増加。「経常損益を損失としない」「純資産の75%維持」いずれも抵触の兆候なし |






注意点③:株価バリュエーションの過熱感
| チェック項目 | 前回(2026/6/19) | 今回(2026/9/3-4) | 判定 | 評価理由 |
|---|---|---|---|---|
| PSRが1.80倍から大きく上昇していないか | 1.80倍 | 0.81倍(みんかぶ様) | ◎ | 株価下落と売上急増の両面から半分以下に低下。過熱感は解消 |
| 株価が5月高値(1,300円台)を更新するか、下値模索か | 938.0円 | 588.0円 | × | 下値模索が継続。9/4は前日比△17円(△2.80%) |
| みんかぶ様目標株価の更新有無 | 1,331円 | 703円 | × | 大幅に引き下げ。ただし現株価比では+115円(+19.6%)の上値余地を示す |
信用需給ウォッチ(前回未取得→今回取得)
| 日付 | 売り残(千株) | 買い残(千株) | 信用倍率 |
|---|---|---|---|
| 2026/07/31 | 400.0 | 3,882.8 | 9.71倍 |
| 2026/08/07 | 391.1 | 3,454.2 | 8.83倍 |
| 2026/08/14 | 883.3 | 4,055.9 | 4.59倍 |
| 2026/08/21 | 576.7 | 3,908.1 | 6.78倍 |
| 2026/08/28 | 595.0 | 3,526.0 | 5.93倍 |
(出典:かぶたん様)
| チェック項目 | 判定 | 評価理由 |
|---|---|---|
| 信用倍率が低下しているか | ○ | 9.71倍→5.93倍へ低下。ただし決算発表週(8/14)の売り残急増が主因で、その後は売り残の減少で倍率が再上昇する場面も |
| 買い残が発行済株式数の2%(約141万株)を超えていないか | × | 買い残352.6万株=発行済株式数の約5.0%。基準を大幅に超過しており、戻り局面での需給の重石となる可能性 |
| 買い残が直近出来高を上回る規模か | × | 9/4出来高176.5万株に対し買い残352.6万株。出来高の約2日分の潜在売り圧力が滞留 |
| 株価急騰後に買い残が急増していないか | × | 高値圏(5月)で積み上がった買い残の整理が進みきっていないと考えられる |






引き続き良好なら安心できる項目
| 項目 | 前回 | 今回 | 判定 | 前回比 |
|---|---|---|---|---|
| 受注残高に占める蓄電池比率 | 92.8% | 94.5% | ○ | ↑(テーマ性はむしろ強化) |
| エネルギーサプライ事業のセグメント利益 | 29.35億円(3Q累計) | 34.20億円(通期、+39.8%) | ○ | ↑ |
| 自己資本比率 | 30.5% | 31.6% | ○ | ↑ |
| 有力企業との提携数 | 4社以上 | 東京センチュリー、大和エナジー・インフラ、E-Flow(関西電力G)、地盤ネット、Sustech、バディネットの6社超 | ○ | ↑(2026年4月にバディネットと新規提携) |
継続ウォッチ:銘柄固有の注目ポイント
| チェック項目 | 判定 | 評価理由 |
|---|---|---|
| データセンター向け電源供給案件が具体的受注として表面化しているか | ─ | 会社は「中長期的な事業機会の拡大につながる」と回答するに留まり(決算説明資料 P.11)、具体的な受注実績としての開示はなし。前回同様「引き合い」段階と考えられる |
| 太陽光自家消費ニーズが受注に転化しているか | ○ | オンサイトPPAで約12.1MW(供給先9件)の供給を新規開始、今後予定分も約29.9MW(6件)。着実に積み上がり(決算説明資料 P.27) |
| 競合激化により粗利率目標に低下圧力がかかっていないか | △ | 受託型EPC(再エネ)実績13.8%は目標15%をやや下回る。ただし2027年6月期計画は16.0%と改善想定 |
即座に見直しが必要なシグナル
| シグナル | 該当有無 | 評価 |
|---|---|---|
| 通期営業利益が3Q累計(35.92億円)を下回る着地 | 該当なし | 53.26億円で着地 |
| 自己資本比率25%割れ | 該当なし | 31.6% |
| 蓄電池比率80%割れ | 該当なし | 94.5% |
| 大型蓄電池案件のキャンセル・大幅見直し | ⚠該当あり | 熊本県球磨郡錦町の系統用蓄電所(約25MW/100MWh、約40億円)のEPC契約を2026年8月末付で解約。受注先(DEIバッテリーファンドアルファ合同会社)が系統連系の工事費負担金の想定超過と工期長期化で事業性を確保できないと判断したことによる(IR 2026/8/14) |
| コベナンツ抵触の開示 | 該当なし | ─ |
| 配当予想の減額修正 | 該当なし | むしろ大幅増額 |
| エンジ事業セグメント利益率が2四半期連続で前年割れ | 該当なし | 通期で+254.0%と改善 |
形式的にはシグナル該当ですが、
①受託型EPCのため同社側に開発費・持ち出しが発生していない
②2027年6月期業績予想に織り込み済み
③同社の設計・調達・施工に起因するものではない
という3点から、直接の業績インパクトは限定的と考えられます。
むしろ重要なのは、「系統連系の工事費負担金が事後的に大幅増額される」という業界共通のリスクが実例として顕在化したという事実そのものです。山本社長は「2025年末頃に各地、特に東北でそうした見直しが多発した」「以降は一般送配電事業者の確実な回答を得た上で進めている」と説明しています(質疑応答P.4-5)。433億円の受注残高の94.5%が蓄電池である以上、この論点は今後も最重要の監視対象と考えられます。
事業・競争力の評価
本業の稼ぐ力:○
売上高は+39.6%と力強く伸び、営業利益率も6.9%→10.4%へ改善しました。エンジニアリング事業のセグメント利益は+254.0%、エネルギーサプライ事業も+39.8%と両輪が伸びています。
ただし○に留める理由が3つあります。第一に、ROEは4.5%(IRBANK様ベース4.07%)、ROICは2.5%と、資本収益性の絶対水準がまだ低いこと。第二に、2027年6月期は売上+25.0%に対して営業利益△11.8%、売上総利益率が20.3%→16.3%へ4ポイント低下する計画であること。第三に、2026年6月期の増益に一過性の権利譲渡益が含まれることです。「稼ぐ力が構造的に強くなった」と断定するには、もう1〜2期の確認が必要と考えられます。
財務の健全性:△
自己資本比率31.6%は改善傾向にありますが、有利子負債は約927億円(短期17,731+1年内返済6,912+長期62,145+リース債務6,006百万円)に対し現金及び預金191億円で、ネット有利子負債は約736億円。自己資本521億円に対しD/Eは約1.78倍です。
もっとも、これらの多くは再エネ発電所を担保とするプロジェクトファイナンス的性格を持ち、20年程度の売電収入が返済原資となる構造です。減価償却費が70.96億円(前期45.23億円)と大きく、EBITDAベースでは約124億円のキャッシュ創出力があります。それでも有利子負債/EBITDAは約7.5倍と高く、金利上昇局面では支払利息(2026年6月期16.61億円、前期比+4.28億円)の増加が利益を圧迫する構図です。投資CFが△73.11億円と営業CF50.99億円を上回っており、フリーCFは依然マイナスである点も、△とする理由です。
なお、純資産増加9,564百万円のうち7,618百万円は為替予約に係る繰延ヘッジ損益であり、BPS737.76円のうち約140円は評価上の項目です。PBRを見る際はこの点を割り引いて考える必要があると考えられます。
経営方針の透明性:◎
この項目は明確に高評価です。中期経営計画「TX2030」(2030年6月期に営業利益134億円、ROE11.7%、ROIC5.7%)を掲げ、KPI進捗を毎期定量開示しています(決算説明資料 P.41)。
特筆すべきは、2027年6月期の業績予想営業利益47億円が中計目標64億円を17億円(26.6%)下回ることを、要因分解(売上総利益△5.5億円、研究開発費△4.31億円、人件費△2.13億円、その他販管費△5.04億円)まで示して説明している点です(決算説明資料 P.51)。都合の悪い差異を隠さず、その上で「中計目標は変更しない」と意思表示する姿勢は、IR品質として高い水準にあると考えられます。会計上の組替(バイオマス燃料の費用計上区分変更)についても別途補足資料を開示しており、質疑応答の全文公開も含め、情報開示の丁寧さは同規模企業の中で目立ちます。
市場環境コメント
追い風は明確です。2025年2月閣議決定の第7次エネルギー基本計画で2040年の再エネ比率40〜50%(2024年度23.0%)が掲げられ、GX2040ビジョン、カーボンプライシング導入と政策的な後押しが揃っています。再エネ比率の上昇は必然的に出力制御と調整力ニーズを生み、系統用蓄電所の投資機会を拡大させます。データセンター新設に伴う電力需要増も中長期の追い風とされています。
一方、逆風として同社自身が挙げているのは、長期脱炭素電源オークションの要件厳格化、グリッドコード厳格化(JC-STAR等)、野立て太陽光の開発余地減少、容量市場価格上昇による電力調達コスト増、新設一般木質バイオマス(10MW以上)の2026年度以降のFIT/FIP対象外化です(決算説明資料 P.47)。
競合面では、蓄電池EPCには大手電機・重電(GSユアサ、日本ガイシ、富士電機等)や大手ゼネコン、商社系プレイヤーも参入しており、同社の差別化要因は「用地開発から運用までのワンストップ対応」「ベンダーフリーによる価格競争力」「豊富な再エネ施工実績」とされています(決算説明資料 P.42)。市場規模の拡大速度が競争激化を上回るかが、粗利率維持の鍵になると考えられます。
リスク要因
- 系統連系リスク(最大):今回の40億円解約が示したとおり、一般送配電事業者による工事費負担金の事後増額・工期長期化は、同社の努力の及ばない外部要因でありながら受注を消滅させ得ます。受注残高433億円の94.5%が蓄電池である以上、集中リスクは極めて高い状態です
- テーマ集中リスク:蓄電池ブームが一巡した場合の次の柱は、EFBペレット(バイオマス燃料)の商業化とされますが、これはまだ実証段階(インドネシア北スマトラ州、年間生産量約1万t見込み)です
- 顧客集中度:大口受注5件(合計約387億円)のうち、東京センチュリー関連が2件、大和エナジー・インフラ関連が2件と、少数の金融・リース系スポンサーへの依存度が高い構造です。うち1件(大和エナジー系)は今回解約となりました。開発型契約には「開発要件が整わなかった場合、解除となる可能性がある」との注記も付されています
- 為替感応度:PKS燃料をインドネシアから輸入するため為替予約を大量に保有しており、デリバティブ債権175.61億円、繰延ヘッジ損益98.57億円という大きなポジションを抱えています。ヘッジ会計適用により損益への影響は緩和されましたが、2025年6月期にはデリバティブ評価損18.28億円で経常赤字に転落した実績があります。2026年6月期は為替影響で+461百万円の増益寄与がありました
- 設備投資と減価償却負担:佐賀伊万里バイオマス発電所(46.0MW)の稼働で機械装置が287億円増加し、減価償却費は45.23億円→70.96億円へ約26億円増加しました。さらに2027年6月期からは同発電所に約4億円の固定資産税が新規発生します。投資の回収は20年前後の売電収入に依存するため、稼働率・発電量の下振れや出力制御の増加が回収期間を延ばすリスクがあります
- アクティビストリスク:大株主一覧の資料が今回添付されていないため、評価不能(─)とします。次回、IRBANK様または有価証券報告書(2026年9月25日提出予定)で確認が必要です
総合評価:B(前回B据え置き)
「成長株として今仕込む価値があるか」という観点では、評価できる材料と警戒すべき材料が拮抗しているというのが結論です。
プラス材料:業績は明確に回復軌道(営業利益+109.0%)にあり、受注残高433億円は2027年6月期売上計画640億円の68%に相当する厚みがあります。バリュエーションは前回のPSR1.80倍から0.81倍、PBR0.79倍まで低下し、前回時点の「期待先行で手が出しにくい」状態からは明確に脱しました。政策的追い風も本物です。IR品質は同規模企業の中で際立って高い水準です。
マイナス材料:2027年6月期は増収減益で、売上総利益率が4ポイント低下する計画です。中計目標との乖離は17億円(26.6%)。ROIC2.5%は資本コストを下回っている可能性が高く、「規模は拡大しているが価値を創造できているか」がまだ証明されていません。40億円解約が示した系統連系リスクは構造的なもので、94.5%というテーマ集中度がそのリスクを増幅します。信用買い残352.6万株(発行済の5.0%)という需給の重石も、当面の戻りを鈍らせる要因と考えられます。
S〜Aは「今の価格で買っても十分報われる可能性が高い」水準、Cは「様子見が妥当」水準と位置づけたとき、同社は「材料は揃っているが、証明がもう1期分足りない」ためBという判定になります。前回はバリュエーションが高すぎてB、今回はバリュエーションが下がった代わりに来期減益と解約リスクが顕在化してB——同じBでも中身が入れ替わった、という理解が実態に近いと考えられます。
適正株価試算
EPS×PER法(4シナリオ)
現在株価588.0円(2026年9月4日終値、みんかぶ様)を基準としています。2027年6月期会社予想EPS 25.48円/BPS 737.76円/現在の予想PER 23.74倍(IRBANK様)・調整後PER 19.52倍(みんかぶ様)・PBR 0.79倍です。
| シナリオ | 想定EPS | 想定PER | 適正株価 | 現株価比 |
|---|---|---|---|---|
| 強気 | 35円 | 25倍 | 875円 | +48.8% |
| 中立 | 25.48円(会社予想) | 23.7倍 | 604円 | +2.7% |
| 保守的 | 25.48円 | 15倍 | 382円 | △35.0% |
| 弱気 | 17円 | 12倍 | 204円 | △65.3% |
強気(875円):開発型EPCの期ずれが解消し、京都府福知山市の大型案件(蓄電容量約209MWh)が2027年6月期業績予想に追加計上されるケース。会社は「着実に進展しているがスケジュール未確定のため予想には含めず」としており(決算説明資料 P.2)、業績予想には織り込まれていない上振れ余地が存在します。加えて2026年6月期4Qのような権利譲渡益が再現すれば、EPS35円前後は視野に入ります。市場が「蓄電池テーマの成長軌道が本物」と再評価すればPER25倍程度のプレミアムはあり得ると考えられます。
中立(604円):会社予想EPS 25.48円をそのまま採用し、PERも現状水準を維持。現株価とほぼ同水準となり、現在の株価は会社予想を素直に織り込んだ妥当な水準にあると解釈できます。
保守的(382円):EPSは会社予想どおりだがPERが建設業の一般的水準(15倍前後)まで収縮するケース。「蓄電池テーマ株」としてのプレミアムが剥落し、単なる受注産業として評価される場合の水準です。
弱気(204円):EPSが2024年6月期水準(16.81円)近辺まで落ち、PERも12倍まで収縮するケースです。
- 系統連系の工事費負担金増額を理由とした追加の大口受注解約が複数発生し、受注残高433億円の前提が崩れる場合
- 受託型EPC(再エネ)の粗利率が計画16.0%を下回り、13%台以下が定着する場合(人員増強コスト+競争激化のダブルパンチ)
- 金利上昇により支払利息が現状の16.61億円からさらに大きく増加し、経常利益予想2,900百万円が下振れる場合
- 為替が想定と逆方向に大きく振れ、ヘッジ会計の要件を満たさない部分でデリバティブ評価損が再燃する場合(2025年6月期の経常赤字の再現)
- 蓄電池EPCの需給が緩み、受注単価そのものが切り下がる場合
BPS×適正PBR(2点セット)
| 基準 | BPS | 想定PBR | 適正株価 |
|---|---|---|---|
| 会計上BPS | 737.76円 | 1.0倍 | 738円 |
| 会計上BPS | 737.76円 | 0.8倍(現状水準) | 590円 |
| 実質BPS(繰延ヘッジ損益約140円を控除) | 約598円 | 1.0倍 | 598円 |
| 実質BPS | 約598円 | 1.2倍 | 718円 |
EPS×PER中立シナリオ(604円)と、実質BPS×PBR1.0倍(598円)がほぼ同水準の600円前後で一致します。これは偶然ではなく、現在の株価588円が「純資産の実質価値」と「予想利益の妥当な倍率」の両面から、ほぼ整合的な水準にあることを示唆していると考えられます。言い換えれば、現在の株価は割高でも割安でもない、フェアバリュー近辺という解釈が可能です。
みんかぶ様目標株価との比較
みんかぶ様の目標株価は703円(現株価との差+115円、+19.6%)で総合判断は「買い」。一方、AI株価診断による理論株価は549.0円で「割高」判定、個人投資家の予想株価は935円で買い予想87%・売り予想13%となっています(みんかぶ様)。証券アナリストの予想は「対象外」で、カバレッジがない状態です。
目標株価703円は、当レポートの強気シナリオ(875円)と中立シナリオ(604円)のちょうど中間に位置します。前回の1,331円から大幅に切り下がった点は、市場の期待値が現実的な水準に修正されたことを意味すると考えられます。理論株価549円との差(588円 vs 549円)はわずか7%程度で、大幅な割高感を示すものではないと見ることもできます。
【質疑応答編】決算説明会で語られたテスHDの素顔






①「営業利益2倍」の中身を分解する——4Qに何が起きたのか
2026年6月期の営業利益は53.26億円(前年同期比+109.0%)。数字だけ見れば文句なしの好決算ですが、3Q累計時点で35.92億円だったので、4Q単独で17.34億円を稼いだ計算になります。この正体が、2026年7月23日の上方修正の中身でもある「開発型EPCにおける権利譲渡に関する売上」です。



これは「実力なのか、ラッキーなのか」という論点になりますが、答えは両方と考えられます。開発型EPCという高粗利ビジネスモデル自体は同社の実力ですが、その計上タイミングは同社にもコントロールできない——だからこそ2027年6月期予想には開発型をあまり見込んでいない、という構造です。業績の「振れやすさ」を体感するには絶好の事例と言えます。
②40億円の受注が消えた——「系統連系」という見えないボトルネック
2026年8月14日、決算発表と同時に「約40億円の大口受注解約」が開示されました。熊本県球磨郡錦町の系統用蓄電所(出力約25MW、容量約100MWh)のEPCです。解約理由は同社の失敗ではありません。受注先が一般送配電事業者に系統連系を申し込んだところ、工事費負担金が当初想定を大幅に上回り、工期も長期化する見通しとなったため、受注先が事業性を確保できないと判断したというものです(IR 2026/8/14)。






つまり、蓄電池ブームそのものが系統の物理的制約に突き当たり、コストとして跳ね返ってきたという構図です。同社は「以降は確実な回答を得た上で進めている」「問題が一切起こらないと言い切れるわけではない」と述べています。この案件は受託型で開発費の持ち出しがなく、2027年6月期予想にも織り込み済みですが、受注残高の94.5%が蓄電池である以上、このリスクは常に背後にあるという点は、テーマ株を見る際の最重要論点と考えられます。
③中計64億円と業績予想47億円——17億円の差をどう読むか
決算説明資料には、一見矛盾する2つの数字が並んでいます。中期経営計画「TX2030」の2027年6月期営業利益目標64億円と、会社が発表した2027年6月期業績予想47億円。差は17億円(26.6%減)です。






面白いのは、差異の内訳を会社自ら開示している点です(決算説明資料 P.51)。売上総利益の変動△5.5億円、研究開発費増△4.31億円、人件費増△2.13億円、その他販管費増△5.04億円。販管費の増加が計11.5億円で、差異の3分の2を占めます。しかもその中身は「EFBペレット製造事業の費用増」と「想定以上の蓄電所EPC需要により、さらなる人員増強を見込む」——つまり攻めのコストです。
「減益=悪いニュース」と受け取りがちですが、需要が想定より強いから人を採る(従業員は前期比+55名で526名)というのは、成長企業のフェーズとしては自然な姿とも読めます。ただし、その投資が本当にリターンを生むかは2028年6月期以降の答え合わせになります。「減益の中身を見分ける」練習台として優れた事例と考えられます。
④PBR0.79倍は割安か——BPS737円の「140円」に注意
現在のPBRは0.79倍(みんかぶ様)。1倍を割っており、一見すると「解散価値以下」の割安株に見えます。しかしBPS737.76円の中身を見ると、話は少し変わります。






現株価588円をこの実質BPSで割るとPBRは約0.98倍。つまり「1倍割れの割安株」というより「ほぼ純資産並みの評価」というのが実態に近いと考えられます。
この繰延ヘッジ損益は、同社がインドネシアからPKS燃料を輸入するための長期為替予約に由来します。円安が進めば評価益が膨らんでBPSが増え、円高に振れれば逆に縮む。BPSが為替で上下する銘柄という特徴は押さえておく必要があります。実際、デリバティブ債権は前期71.39億円→当期175.61億円へ104億円も増加しています(決算短信 P.9)。
⑤蓄電池ブームの「次」は何か——EFBペレットという第二の柱
説明会で司会者が読み上げた投資家質問が本質を突いています。「蓄電池投資は一過性のものと考えていますが、ブーム終息後に蓄電池に代わる御社の業績基盤となる事業構想はありますか」。






2026年7月、インドネシア北スマトラ州に製造実証工場が完工(敷地面積約11,000㎡、年間生産量約1万t見込み)。現在は実証段階で、2027年6月期は研究開発費が4.31億円増加する要因にもなっています(決算説明資料 P.29、P.51)。山本社長はさらに「2030年以降にペロブスカイト太陽電池や軽量型モジュールが商業化されれば、これまで設置が難しかった屋根上への太陽光設置の可能性が広がる」とも述べています。
「蓄電池で稼いだ利益を、まだ収益化していない次のテーマに投資している」という構図そのものが論点として面白いところです。これは成長企業の王道であると同時に、実証が失敗すれば投じたコストが戻らないリスクでもあります。バイオマス燃料の2027年6月期売上総利益計画は中計比58%減とされており(インドネシア港湾物流の不調が理由)、すでに計画どおりには進んでいないという事実も併せて留意する必要があると考えられます。
「今仕込む」判断の目安となる株価水準
| 株価水準 | 位置づけ |
|---|---|
| 550円台以下(実質BPS約598円割れ) | 純資産面からの下値目処として意識できる水準 |
| 588円前後(現在水準) | 中立シナリオ604円、実質BPS×PBR1.0倍(598円)とほぼ整合。フェアバリュー近辺で、大きな割安感はありません |
| 700円超(みんかぶ様目標株価圏) | 中立シナリオを上回る水準となり、追いかけ買いには慎重さが求められます |
| 上方修正が出た場合 | 京都府福知山市の大型案件(約209MWh)が予想に織り込まれれば、強気シナリオ(875円)が視野に入ります |
打診買い・分割投入が現実的と考えられます。2026年6月期は好決算でしたが、増益の一部は4Qの一過性権利譲渡益によるもので、来期は増収減益計画です。
まずは2027年6月期1Q(2026年11月頃発表)で、
①受託型EPC(再エネ)の粗利率が計画16%圏を確保できているか、
②解約分を反映した受注残高(約393億円想定)からさらなる減少がないか、
③信用買い残352.6万株(発行済の5.0%)の整理が進み需給の重石が軽くなっているか、
を確認してからの本格判断が無難です。
追加の大口案件解約が開示された場合、または自己資本比率が28%を下回った場合は見送りが妥当と考えられます。バリュエーションの過熱感は解消しましたが、上値には信用買い残という物理的な重石があります。急いで全額を投じる局面ではないが、時間分散で拾う価値はある、という整理になります。
まとめ
- 2026年6月期は営業利益53.26億円(+109.0%)と急回復。ただし4Qの上振れ15億円の大半は開発型EPCの一過性権利譲渡益
- 約40億円の系統用蓄電所EPC受注が解約。業績インパクトは限定的だが、受注残高の94.5%を蓄電池が占める同社にとって系統連系リスクが実例として顕在化した点が重要
- 2027年6月期は増収減益(売上総利益率20.3%→16.3%)予想。中計目標64億円との差17億円は「攻めのコスト(人員増強・EFBペレット研究開発)」が主因
- PBR0.79倍は一見割安だが、BPS737.76円のうち約140円は為替予約の繰延ヘッジ損益。実質BPS約598円ベースではPBR約0.98倍でフェアバリュー近辺
- 信用買い残352.6万株(発行済の5.0%)は基準の2%を大幅に超過。戻り局面での需給の重石となる可能性
- 蓄電池ブーム後の次の柱としてEFBペレット(バイオマス燃料)の商業化を計画中だが、まだ実証段階でインドネシア港湾物流の不調により計画比58%減の見通し
- 総合評価はB据え置き。打診買い・分割投入が現実的で、下値の目安は実質BPS約598円割れの550円台






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情報基準日:作成日20260904
本記事に登場する「車野蔵人(くるまの くろうど)」は、AIが生成した架空のキャラクターです。実在する人物・アナリストとは一切関係ありません。
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